「第Ⅲ章-3 中世の典型ー3:方丈建築」 日本の木造建築工法の展開

2019-05-25 12:02:39 | 日本の木造建築工法の展開

PDF「日本の木造建築工法の展開 第Ⅲ章ー3-1」A4版6頁  (PCの方は、左上の「開く」をクリックし、さらに「Word Onlineで開く」をクリックしてください。)

 

Ⅲ-3 中世の典型-3:方丈建築・・・柱間はすべて開口装置

  禅宗様の寺院には、他の寺院とは異なり、住職・住持の居所的建物:塔頭(たっちゅう)に、方丈(ほうじょう)建築と呼ばれる独特の形式の建物が設けられるようになります。これは古代の寝殿造の姿をのこし、後に客殿建築書院造(しょいんづくり)へと連なり、さらには近世の武士階級の住居に大きな影響を与えるつくりの建物です。 

 註 塔頭:禅宗で大寺の高僧の没後、その弟子が師徳を慕って塔の頭(ほとり)に構えた房舎。 転じて、一山内にある小寺院。大寺に所属する別坊。  方丈:(一丈四方。畳四畳半の広さの部屋。)寺院の長老・住持の居所。(広辞苑による) 

 方丈建築には、中世初頭までの、特に上層階級の建物づくりで見られた技術的な展開が、すべて注ぎ込まれていると言っても過言ではありません。

 さらに特筆すべき点は、鴨居敷居樋端ひばた)を設けて建具を滑らす画期的な技術の発案により、間仕切を、壁ではなく建具、特に引戸に置き換えていることです。その事例を古い順に見てみます。 

 

1.東福寺(とうふくじ) 龍吟庵(りょうぎんあん) 方丈 1428年頃建立  所在:京都市 東山区 本町15丁目

 現存最古の方丈建築。杮葺き(こけらぶき)。 応仁の乱(1467年~1477年)以前は、基準柱間は1間:7尺前後が普通で、その後は6尺5寸程度になると言われる。

 この建物は基準柱間が1間:6尺8寸で計画された、応仁の乱以前の工法の貴重な遺構である。

  

東福寺 地域 航空写真      google earth より   円で囲んだ箇所が龍吟庵 その西南が東福寺の境内          

 

方丈を南西から見る(竣工写真) 土塀の右手が玄関 玄関の屋根(唐破風)は、方丈の屋根とは独立し、軒下に入り込む。 重要文化財 竜吟庵方丈修理工事報告書より 

 

                  

玄関       日本建築史基礎資料集成 十六 書院Ⅰより     修理前の南面全景   修理工事報告書より      

 玄関独立の屋根が、軒下に入り込む。(こけら)葺き。寝殿造中門廊(ちゅうもんろう)~主屋の接続法の継承と考えられる。なお、近世の客殿建築になると、玄関の位置が変り、屋根も主屋と一体に取込まれるようになる

  方丈の南面 広縁 修理工事報告書 

 基準柱間が6尺8寸のため大らかな感じを受ける。柱径広縁側柱(がわばしら)以外、仕上りで4寸8分角広縁側柱は、2間+4間+2間の構成。(平面図参照)

 室(しっちゅう)の中央2間が戸口で、双折(ふたつおり)両開き桟唐戸(さんからど)。 室中の残りの両端1間、上間(じょうかん)下間(げかん)の室中寄りの1間は、外側に1間幅の蔀戸(しとみど)内側に明り障子2枚引違い(平面図参照)

 

 原色 日本の美術10より

 方丈西側:破風の壁は、木連格子(きづれごうし)(桁行断面図参照)。

 継手肘木柱芯位置。上間3間のうち中央部1間は、外側に両開き板戸内側に明り障子4枚引分けその他は、北面開口も含め舞良戸(まいらど)2枚+明り障子1枚の構成。(平面図参照)

  舞良戸(まいらど)2枚+明り障子1枚の開口装置は、雨戸が発案されるまでの標準的な仕様。

  日本建築史基礎資料集成 十六 書院Ⅰより              

 平面図 基準柱間は6尺8寸。 空間は、下間(げかん)南~室中(しっちゅう)~上間(じょうかん)の3室と、北側の3室の2列で構成。北側の3室は、私的な用途に使われたと考えられている。 室中北面の壁は、縦板張りの壁(写真参照)。

 

 桁行断面図 断面図で色を付けた部分は小屋裏 桔木登り梁は、室中(方丈)を囲む諸室の小屋裏四周に設ける。破風(はふ)には木連格子(きづれごうし)が入っている(西側写真参照)。  

 実線赤丸箇所:、破線赤丸箇所:大引足固@1間。足固以外のは、付長押の内側小屋は図の通り。 

 寸法は、内法位置:厚1.2寸×丈3.0寸蟻壁位置:厚1.1寸×丈2..8寸(後の詳細図参照)。

  

 (「Ⅲ-3-1 室中  写真」へ続きます。) 

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