待っていた報告書が発表されました。
https://www.iaea.org/sites/default/files/22/09/ukraine-2ndsummaryreport_sept2022.pdf
全体で52頁、本文は45頁、後にAnnex(添付文書)が続きます。本文は175の区切られた文章からなり、通読して、これはウクライナ側(国連を牛耳っている米欧側)の意向に沿った文書であることがはっきり分かります。原発地域を占領しているロシア軍については、第13頁に
- The team observed the presence of Russian military personnel, vehicles and equipment at various places at the ZNPP, including several military trucks on the ground floor of the Unit 1 and Unit 2 turbine halls and military vehicles stationed under the overpass connection the reactor units.
とあり、同ページに三、四台のトラックの写真があります。ウクライナ側はIAEAの視察団が来たので重火器は撤去したのだと言っています。解明されることが最も期待された事項、即ち、どちらの側が砲撃しているのか?については全くはっきりした言及がありません。砲撃についてはAnnex I: Chronology of Events since 28 April 2022 に、8月5日に砲撃が再開され、6日には従業員1名が負傷したとあり、7日、11日、21日、22日、26日、27日、さら、9月2日、4日にも砲撃を受けたと記録されています。
こうした砲撃については前々回のブログ記事で国連におけるロシア側からの抗議について記述しました:
その後、米国政府だけでなくウクライナ当局も自分の側が砲撃した事を認める発表(ウクライナ語)を行いました:
https://www.rt.com/russia/562082-ukraine-admits-bombing-npp/
IAEAの報告に対するロシアのコメントが国連安全保障理事会で述べられました。これは礼儀正しい態度で貫かれた言明で、一読に値します:
https://libya360.wordpress.com/2022/09/06/unsc-russia-comments-on-iaea-nuclear-plant-report/
この言明の中程に、IAEAのチームがウイーンに無事に帰着した時、国連側がロシア当局に“the Russian Federation did everything necessary to ensure safety of the IAEA inspectors who visited Zaporizhzhia NPP”と感謝の意を表したことも述べてあります。この事実は別の一般ニュースでも報じられていました。
ザポリージャ原発周辺の事態の真相についての私に考えは、このロシアの国連代表が述べたことにほぼ一致します。私の判断はロシア側のプロパガンダに引きずられた結果では決してありません。
ザポリージャ原発を巡って生起している事態を見守っているうちに、私は、恐ろしい可能性に気がつきました。軍事の専門家の大多数が、既に考えていることであろうと推測します。それは、核爆弾を使わなくても、敵国を核攻撃できるという事実です。通常のミサイルか、あるいは、お流行りの無人ドローンを飛ばして、敵国の原子力発電所を破壊すればそれで足ります。放出される放射性物質が敵国の人々を痛めつけてくれます。
日本原子力産業協会のプレスリリース(2021年5月):
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2021/05/doukou2021-press_release.pdf
に世界の原子力発電開発の現状 を示す一覧表があります。これによると大小の世界39カ国が原発用原子炉を持っています。その総数約600基。今の若い方々は戦争という物をご存知でない。今のロシアとウクライナの戦争というのは極めて普通でない様相の戦争だということが分かっておいででない。普通の戦争はこんなものではありません。戦時中の日本国内の空襲の事を覚えている老人たちに尋ねてみて下さい。
原子力発電は、この危険性だけでも、廃絶に向かわなければなりません。
藤永茂(2022年9月10日)
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