私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

新型コロナウイルス:キューバと米国

2020-03-25 19:56:48 | 日記・エッセイ・コラム

 米国の南部、南北に伸びるフロリダ半島の突先から南へ150キロのところに細長く東西に伸びる島国がキューバ共和国です。面積で日本の1/3、人口は日本の1/10の小さい国、1959年の革命でこの反米の社会主義的国家は生まれました。以来、多少の曲折はあったにしても、キューバと米国は不倶戴天の敵國として対峙を続けています。今日まで、キューバ共和国が米国によって征服破壊されなかった、キューバが米国の容赦ない残忍な暴力をかいくぐって生き延びてきたという歴史的事実、これは、まさに奇跡と呼ぶにふさわしい事実です。

 今回の新コロナウイルス蔓延という天与の試練の下で、国家を形成する人間集団が如何にあるべきかについての価値基準が全面的に背反する米国とキューバ、この二つの国がどのように振る舞うか、如何にこの試練を克服するか、それとも、屈服してしまうか、私は、固唾を飲んで、事態の進行を凝視しているところです。

 この天災に対する米国の反応は、世界のマスコミが時々刻々に報じています。しかし、キューバという小国がこの事態にどう対処しているかについては、ほとんど報じられてはいません。私たちはキューバの振る舞いを知ることによって、この二つの人間集団の根本的相違を実に明白に感得することができます。キューバの対応についての報道を、私は主にINTERNATIONAL 360° というサイトから得ています。早期の報道の一例はキューバが開発したインターフェロンが中国で新コロナウイルス患者に使用されて有効性が示されたという3月15日付けのニュースでした:

https://libya360.wordpress.com/2020/03/15/covid-19-cuban-interferon-in-china/

次の16日には、新コロナウイルス患者が数人発生した英国系のクルーズ客船「MS Bremar」の寄港をキューバが許したというニュースが同じサイトに出ました:

https://libya360.wordpress.com/2020/03/16/cuba-will-accept-and-assist-travelers-on-british-cruise-ship-ms-braemar/

17日付けの記事の一つによれば、キューバから世界の61カ国に派遣されている2万8千人を超える医師や看護師たちは各現地で新コロナウイルスともたたかっているが、「今の所、彼らの中に被感染者はいない」とキューバ政府当局は発表した由です。

 幸い、新コロナウイルスに対するキューバの対応についての詳細でよくまとめられた記事(スペイン原文からの英訳)が3月22日に出ましたのでお読みください:

https://zcomm.org/znetarticle/cuba-in-the-time-of-the-coronavirus/

今回のコロナ禍へのキューバの反応は迅速でした。発生当時、中国に居た2千人を超えるキューバの医療班員の一部は即刻武漢に赴いて防災に参加しました。キューバ本国内でも、その医療保健制度は優れた機能を発揮しています。3月23日の時点で、1229人が適切な施設で入院治療を受けていて、そのほかに33132人が、自宅で医療要員の監視下にあります。コロナ禍で収入を失った人々に対しては、1ヶ月の収入が確保され、その後の救済策も樹立されているようです。米国の禁輸措置で、食料も一般医薬品も不足して居ますが、政府による配給制度によって、最低限の必要は満たされているようです。

 この全世界を巻き込む新コロナウイルス災害が、何時、どのような形で収束するか、正確な予測は至難でしょう。新コロナウイルスに対して有効なワクチンが十分の量、製造され使用されて、この天災が収束するとしても、それは、おそらく、最短でも、一年は先のこと、その前に米国が数的に最大の被災国となるのは明らかです。その時、人間集団としての米国に何が起こるか?

 これは、今、我々の目の前にある世界と「もう一つの世界」(じゃなかしゃば)との対決です。私が固唾を飲み、息を詰めて、成り行きを見守る理由はそこにあります。

藤永茂(2020年3月25日)

<付記>  ひとりの植物人間が旅立ちました。3月25日は初の月命日、もし西方に浄土があるならば、そこに到って旅装を解き、いまは、大いなる安らぎの中にあるに違いありません。

                浄土あれ天国あれと茜雲、妻逝きし後のヴェランダに立つ

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