私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

老人の心配事

2021-11-15 10:53:29 | 日記・エッセイ・コラム

 TesfaNews (TN)というウェブサイトがあります。これは「アフリカのキューバ」と私が勝手に名前をつけたアフリカ大陸北東部の小国エリトリアの政府の見解を代弁するサイトだろうと思われます:

https://www.tesfanews.net

これまで長い間、しばしばここを覗いてエリトリアの状況を知るようにしていましたが、今年の3月6日以後、記事の更新がぱったり止まってしまいました。それで近頃はほとんど訪れないようになっていましたが、最近、エリトリアの南の隣国エチオピアの内戦のことを、米国メディアや日本のマスコミがしきりに取り上げるようになってきたので、半月ほど前から、このサイトを覗いていますが、正式の記事は、依然として、更新の兆しがありません。ただ、画面の右側に TN News Digest というコラムがあって、その中に最近の日付の記事がいくつか出ているのに気がつき、開けてみると、その中にVoice of Americaと、明らかにエチオピア政府に反対する立場を取るESAT(Ethiopian Satellite)というメディアからの記事が出ているので驚きました。

 こうして、私がエリトリアについての情報源として頼りにしていたサイトの一つがすっかりダメになってしまったようです。また、イラン政府の見解を知るために私が長い間ほぼ毎日訪れていた

https://presstv.com

というウェブサイトは、数ヶ月前に米国政府によって差し押さえられて、見ることが出来なくなりました。

 もう一つ、私がこれまで毎日欠かさず訪れていたウェブサイト

https://libya360.wordpress.com

に、次のような布告が出ました:

Temporary Suspension of Internationalist 360° Publication

Posted by INTERNATIONALIST 360 on NOVEMBER 11,2021

Alexandra Valiente, Editor of Internationalist 360°, has spent the past week in hospital because of complications from a spinal injury. It will be many weeks, perhaps months, before she can return to work as she has a long road of rehabilitation ahead.

Alexandra Valiente については、このブログでも取り上げたことがあります。早く元気になって戻って来てくれる事を祈ります。脊柱の損傷というのは心配です。

 一方、良いニュースもあります。以前は、アフリカについての有用な情報をもたらしてくれていたKeith Harmon Snowという古参のジャーナリストの記事を、久しぶりに読むことが出来ました:

https://dissidentvoice.org/2021/11/the-cult-of-the-toothpick-king-central-africa-revisited/

内容は英国の勇気ある女性ジャーナリスト Michela Wrong のルワンダに関する新著の書評ですが、単なる書評を越えた読み応えのあるルワンダ論、ポール・カガメ論になっています。長い記事の終わりの方に Michela Wrong さんの写真も出ていて、こうした勇気ある発言をする女性に対してはひどいセクハラや恐ろしい脅迫も行われることが具体的に書いてあります。私に有用な視点と情報を与えてくれる勇気のある女性ジャーナリストは、私の必然的に狭い視野の中で数えても、まだ数人はいます、ここでは、あと二人だけ挙げることにします:Ann Garrison とCaitlin Johnstone. アン・ギャリソンの最近の記事を挙げておきます:

https://www.blackagendareport.com/abraham-wodaje-kebede-ground-ethiopia

ケイトリン・ジョンストンの最近の記事としては、彼女がしばしば登場するウェブサイト『マスコミに載らない海外記事』から

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-cd6813.html

を挙げておきます。

 上掲のKeith Harmon Snow の記事を信用すれば、アン・ギャリソンもケイトリン・ジョンストンも醜悪な脅迫や妨害の対象になっていることが推定されます。せめて身体的な危害がこうした人々に加えられないことを祈るばかりです。Alexandra Valiente の脊柱損傷についても、実は、その点を私は心配しています。

藤永茂(2021年11月15日)


エチオピアとエリトリアが危ない

2021-11-08 21:50:48 | 日記・エッセイ・コラム

 今エチオピアが大変なことになっています。丁度、10年前の10月20日にリビヤの指導者カダフィが惨殺され、当時アフリカで最も成功していた国家であったリビアは無残に崩壊し、いわゆる失敗国家(failed state)の見本のような状態になって今日に及んでいます。このところ連日エチオピアの反政府軍勢力が首都アディスアベバに向かって軍を進めているというニュースが報じられ、アビイ・アハメド首相の率いる政府は全土に非常事態宣言を発令しました。リビアの二の舞にならないよう祈っています。

 このブログ記事は11月8日午後に書き始めていますが、そのきっかけは今日の朝日新聞の朝刊の第一面のトップ記事『シリア内戦 拷問克明』という異常なトピックの選択です。この特集記事は1面に続いて2面=『証言次々』4面=『監視と密告の社会』と展開され、この時点で日本を代表する大新聞がこの特集を組むことが、私には全く異様なことに思われます。これは、エチオピアとその隣国エリトリア、それと同時にキューバとベネズエラが恐るべき惨劇に襲われる前兆ではないか、と心配でなりません。このブログを読んでくださっている読者の中には、以前、私がエリトリアを「アフリカのキューバ」と呼んだことを記憶している方もおいでになると思います。

 朝日新聞の今回のシリアの特集記事に触発されて私の心の中で発生した竜巻は大き過ぎて、急には記述できませんが、今は、日本国内でも国外でもしきりに報じられているエチオピアの反政府軍勢力なるもの、TPLF(Tigray People’s Liberation Front, ティグライ人民解放戦線)、についての肝要なコメントだけ書き付けておきます。ティグライ人と呼ばれる人々はエチオピアの全人口の約6%を占める少数民族で、その主要な居住地域はエチオピアの北部で隣国エリトリアと接していますが、1991年から2018年までのおよそ27年間、米国の強い支持の下で、エチオピアを強権的に支配してきました。米国はまたTPLF軍事勢力を使って、隣の「アフリカのキューバ」エリトリアに戦争を仕掛け、エリトリアの「カストロ」イサイアス大統領の政府の転覆を図りましたが、それが成功しない内に、二十数年間、TPLFの圧政にい苦しんだ大多数のエチオピア国民が遂にTPLF主導の政権を失脚させ、アビイ・アハメド首相の率いる新しい政権が成立し、それとともにアビイ・アハメド首相とイサイアス大統領との間に気心が通じ、2國間の紛争が目出度く収束ました。これがアビイ・アハメドのノーベル平和賞受賞の主な理由です。しかし傀儡としてのTPLFの衰退を米国が受け入れる筈がありません。この1年間にティグライ地区は旱魃によるひどい飢饉に襲われ、今はUSAIDを率いるサマンサ・パワーは国連世界食糧計画(UNWFP) を叱咤して大量の食料や支援物資をティグライ地区に送り込んでいます。これは、私の推測ですが、このルートを使って、米国はTPLFの軍事勢力を再増強しているのだろうと考えます。ここで、私の頭の中では、エチオピア情勢とシリア情勢が繋がります。シリアとそのアサド政権を破壊してしまうことを米国は決して諦めていません。シリア領土内には戦乱に苦しんでいる人たちが大量にいます。米国はここでもしきりに“人道主義的支援物資”を送り込んでいます。しかし、これらの支援は明らかにアサド政権に対する反政府勢力の増強に使われています。エチオピアでの人道支援のルートとシリアでの人道支援のルートの果たしている役割の類似性、この辺りに、11月8日の朝日新聞の特集記事の源があるように、私には思えてなりません。

<付録>

 リビアについて、私はカダフィが惨殺される以前からこの国のことが心配になって、2011年の6月1日から7月6日にわたって六回の連続記事を書きました。そのうちの3つとカダフィ惨殺直前にジョン・ピルジャーが書いた記事を下に掲げておきます:

(1)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/2eaa25971be661ca6a89cabe16ea26bb

(5)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/8f040f8b81a6c95c63f9fa5f538dfcc6

(6)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/d1a55721f1007c79fbb1d28bff2f91cb

(アフリカが。コンゴが危ない)(2011年10月27日。ジョン・ピルジャーの記事の翻訳が主)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/cc93ab0c5060537478076023c4ad4a87

 

藤永茂(2021年11月8日)