私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

アルジェリアは再び燃え上がるか

2023-08-30 18:24:33 | 日記・エッセイ・コラム

寺島メソッド翻訳NEWSに『アフリカ:帝国主義と闘うための第二戦線』と言う記事が出ています:

http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-1915.html

以下に訳出するのはその続編です。著者は同じ人物。

 アルベール・カミュは本質的にアルジェリア人であったとする論客も居ます。カミュにとってはアルジェリアもフランスも愛する祖国であったのです。彼はアルジェリアが激烈な暴力闘争によってフランスから独立するのではなく、お互いに相手を認め合う共同体的関係の成立を願いました。そのためにアルジェリア人からもフランス人からも批判され、疎外されてしまいました。少し突飛な考えかもしれませんが、私は、我が沖縄の苦難の歴史を想う時、つい、カミュが抱いたお互いを尊重する共同体関係の夢を思い出してしまいます。閑話休題。モフセン・アブデルムーメン(Mohsen Abdelmoumen)さんの激しい発言を訳出します。特に締めくくりの言葉は激しいものです。以下に訳出:

https://libya360.wordpress.com/2023/08/22/niger-the-vassals-of-paris-receive-the-order-to-attack/

『ニジェール;パリの隷属家臣達は攻撃命令を賜る』

 

ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が報じた、ニジェールへの介入の準備はできていないというECOWASの兵士たちの宣言とは裏腹に、この組織に所属するアフリカ人奴隷たちは、白人の主人から軍隊を起動させ、攻勢に出るよう命じられたことが判明した。戦争は間近に迫っている。西アフリカの太鼓持ち達は、武力介入を断固として拒否したアフリカ連合の決定を足元から踏みにじったのだ。ECOWASのアブデル=ファタウ・ムーサ政務・平和・安全保障担当委員はBBCの取材に対し、作戦開始予定日はすでに決定され、作戦開始の命令を待っていると語った。この植民地化された人物に問いたい。その命令は誰から出されるのか、欧米の手先なのか、それとも欧米そのものなのか?

ニジェールの軍事評議会は8月19日、アリ・ラミン・ゼイネ新首相が出席するECOWAS代表団の受け入れに合意した。

代表団は、退陣したモハメド・バズーム大統領にも会うことができた。ECOWASはバズーム大統領の釈放と復職を粘り強く要求しているが、CNSPは「ニジェールの主権と国民の願望を考慮した対話であることを条件に」対話の用意があると立場を堅持している。実際、ニジェール国民が新政権を支持していることは否定できず、何万人ものボランティアが祖国防衛に進んで参加しようとしている。募集キャンペーンには5万人以上のニジェール人が署名しており、この動員のコーディネーターはこう語っている:

  • 「これは、我々に戦争をもたらそうとしているECOWASに対して、この戦争は政権を握っている軍部の戦争ではなく、ニジェールの人々とECOWASの人間たちとの戦争であることを伝える手段である。我々は準備ができているし、自分自身を犠牲にするつもりだ」。

ロンドン・エコノミスト誌が8月に行った世論調査によると、ナイジェリア人の79%がCNSPを支持すると答えた。

アルジェリアは調停を申し出ており、「取り返しのつかないことになる前に、そしてこの地域が誰も予見できない暴力のスパイラルに陥る前に」交渉を優先するよう全当事者に求めている。 ニジェールはすでにベナン、ナイジェリアとの国境に軍隊を配備し、マリとブルキナファソは戦闘機をニジェールに派遣し、攻撃された場合にニジェールを支援できる態勢を整えており、ニアメの大統領官邸と重要なインフラを守るためにワグネル部隊が配置されている。実際、プリゴジンのIL76はここ数日、シリアを含むさまざまなワグネル基地からニジェールへ少なくとも6回の飛行を行ったとされ、ロシアの戦闘機は戦略的拠点に迅速に配備されている。「グレーゾーン」から、プリゴジンは8月21日、ボランティアを募るビデオを公開した: 「気温は50度以上。PMC『ワグネル』はRPDを率い、ロシアをすべての大陸でさらに偉大にする。そしてアフリカはさらに自由になる。アフリカの人々に正義と幸福を。ISIS、アルカイダ、その他のギャングにとっては悪夢だ。我々は真の英雄を雇う。そして、私たちは決められた、そして私たちが果たすと約束した任務を果たし続ける」。

ティアニ将軍は8月19日の国民向け演説で、CNSPは永遠に政権に留まることはなく、その移行期間は3年を超えないだろうと宣言した。新勢力が政権を獲得した直後に、フランスの植民地協定やその他の植民地時代の協定を認め、これらの国々を永続的な社会経済的衰退に陥れていた親仏憲法を廃止したマリやブルキナファソに倣い、新憲法案を作成するための1ヶ月間の国民対話の開始も発表した。

とはいえ、ティアニ将軍は、ニジェールへのいかなる攻撃も占領とみなされ、毅然とした対応がとられると警告し、「ECOWASは外国軍の協力を得て占領軍を編成し、ニジェールを攻撃する準備をしている」と警告した。そうだ: 「占領」である。ニアメのバルクハン基地前で数日間デモを続けている住民の支持を受け、ニジェール国民評議会は「フランス軍のサービス」を無しにすることを望んでいるにもかかわらず、カトリーヌ・コロンナ仏国防相はバルクハン部隊の撤退を拒否し、この決定を下せるのは正当なバズーム政府だけだと主張している。

また、ル・モンド紙によれば、暫定首相を務めるハスウミ・マサウドゥ前ニジェール外務協力相は、クーデターの数時間後、バズーム大統領を解放するためにフランス軍の介入を承認する文書に署名したという。さらに、情報筋によると、フランスとイスラエルの忠実な付き人であるイヴォリ人のアラサヌ・ウアタラ氏が8月17日にパリを訪問し、その際にエマニュエル・マクロン大統領と、ECOWAS軍が失敗した場合にフランス総局と緊密に連携してニジェールで傭兵作戦を展開することについて話し合ったとのことである。

これらの占領軍の目的は、アルジェリアとその軍隊を攻撃すること以外になく、ニジェールは単なる口実にすぎない。これは、昨年6月にテルアビブで行われたフランス、イスラエル、モロッコ、首長国の諜報機関による会合の結果である。確かにアルジェリアは、その広大な領土と莫大な富だけでなく、誰に対しても屈しない姿勢、ロシアや中国との歴史的な関係、サハラ人やパレスチナ人を支持する揺るぎない姿勢などから、長い間多くの敵に狙われてきた。フランスはアルジェリアから追い出されたときから立ち直ることができず、アルジェリアを敵対的な力で包囲するために、アフリカのチェス盤の上に駒が配置されつつあるのがわかる。

西側諸国では、イスラエルとフランスから金をもらっているブスビール王国が、何年にもわたって私たちに対して絶え間ない多面的な戦争を繰り広げていることは、さまざまな記事で繰り返し述べてきたとおりである。しかも、マフゼンのマスコミは、リビアを葬り去った墓掘り人であるフランスの犯罪者ニコラ・サルコジの反アルジェリア発言を喜んで取り上げた。ちなみに、サルコジはイタリアのブルジョワジー出身の2番目の妻、カーラ・ブルーニ・テデスキとマラケシュの淫らな夜の常連である。カルラの "芸術的 "才能は、メディアで自分の恋愛生活を誇示することだけに限られている。明らかに、売春と小児性愛の王国は、このような人物を惹きつけるに違いない。

東側にはリビアがある。カダフィが崩壊して以来、リビアが混乱に陥ったのは、2007年の選挙キャンペーンの資金を引き出すためにリビアの指導者をパリに招き、武器を売ることで口説き落とした帝国の小男傀儡、サルコジの貪欲さのせいである。NATOの支援で、私たちはリビアがどうなったかを見た。カダフィの死を指して、犯罪者のヒラリー・クリントンは「私たちは来て、見て、彼は死んだ」と笑った。ベンガジでクリストファー・スティーブンス大使がジハード主義者に殺害されたとき、彼女は大笑いはしなかった。それ以来、リビアは帝国主義大国によって活性化された便利なバカたちの戦場となっている: イスラム主義テロリスト、「反乱軍」、武装ギャング、民兵が、リビアの武器庫を利用して、楽しそうに殺し合いをしている。我々の勇敢なANPの兵士たちは、テロリストの侵入を防ぐため、国境で昼夜を問わず警備にあたっている。

チャドとリビアの国境は混迷を極めており、父親の死後、大統領を名乗ったチャド国家元首のマハマット・イドリス・デビは、金採掘場にあるクーリ・ブグーディ軍事基地に移動している。チャドの北に位置するサハラ砂漠のティベスティ山塊のこの地域は、南隣国リビアを拠点とする主要なチャド反政府運動がチャド軍を攻撃するのに好んで使用する地域である。この地域を徘徊するボコ・ハラムは言うまでもない。チャド大統領が滞在している間に、クーリ・ブグーディ軍事基地への攻撃が開始されたようだ。この攻撃を実行した反政府グループは、外国の機関によって活性化させられたと信じるに足る理由があり、そのおかげでフランスは700人の兵士をリビア南部のアルウィグ空軍基地に移送することができた。フランスは今後、1000人規模の増派を計画している。ECOWASがニジェールに介入している現在、1500人のフランス兵がニアメに駐留していることを考えれば、リビアへの増派も決して偶然ではない。

国境は3,700キロに及び、軍隊が警備しなければならない。気温がそれほど高くないにもかかわらず、北部で森林火災が再燃していることは言うまでもない。これらの火災も決して偶然ではない。したがって、フランス人であれ、アフリカの手先であれ、モロッコ人であれ、シオニストであれ、イスラム主義テロリストであれ、あらゆる種類の反乱分子であれ、戦争を企む者すべてに警告する。アルジェリアに最初に手を出した者はに大空の果てに、西の隣国の場合は大西洋に放り込まれ、イワシやカニの餌食となる。アルジェリアは神聖で触れることのできない国であり、全人民がその軍隊に味方する。我々は敵に容赦せず、パリ、ボルドー、ブリュッセル、テルアビブなどで、あなた方の家に火を放つだろう。手遅れになる前に、この警告に耳を傾けることを勧める。

(翻訳終わり)

言及されているワグネル部隊がどうなっているか今のところ不明です。一方、アフリカ大陸西岸のガボンでも軍事クーデターが発生した模様、ここも旧フランス植民地です:https://www.youtube.com/watch?v=WfGpmymZmPo

 

藤永茂(2023年8月30日)

 


アフリカ革命が始まる

2023-08-29 21:03:01 | 日記・エッセイ・コラム

 この日頃、しきりにアルベール・カミュを読んでいます。『反抗的人間』(新潮社、カミュ全集6)の第一章の始めに、奴隷の反抗についての考察が展開されています。「反抗的人間とはなにか?否(ノン)と言う人間である。」(17頁)、「奴隷が主人の屈辱的命令を拒否するときには、同時に奴隷たる身分そのものをも拒否する」、「はじめは、人間の止むに止まれぬ抵抗であったものが、全人間そのものとなり、次には、抵抗と一体となり、抵抗そのものと化してしまう」(18頁)とあります。長らくヨーロッパの奴隷であったアフリカの真の「反抗」が、真のアフリカ革命が始まりました。以下に訳出する記事の著者ジェラルド・ペレイラはよく知られらガイアナ人の論客であり、運動家です。

https://libya360.wordpress.com/2023/08/24/mali-burkina-faso-and-niger-at-the-forefront-of-the-african-revolution/

マリ、ブルキナ・ファッソ、ニジェールがアフリカ革命の最前線に

Gerald A. Perreia(著者)

 

軍の支持を叫ぶニジェールの大群衆

 

ニジェールのアブドゥラフマーン・チアニ将軍

 

ブルキナ・ファソのイブラヒム・トラオレ将軍

 

2023年8月19日、ニジェールのニアメで: ボランティア活動の一環として、数千人の若者が自国防衛のためのボランティア登録の列に並ぶ。大統領警護部隊を率いるアブドゥラフマーン・チアニ将軍は、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体、Economic Community of West African States)や無指名の欧米諸国に対し、介入しないよう繰り返し警告している。「我々はECOWASやその他の冒険者に対し、祖国を守るという固い決意を改めて表明する」。

「ある種の狂気がなければ、根本的な変革はできない。この場合、それは規範の拒否から来るものであり、古い定型に背を向ける勇気であり、未来を発明する勇気である。今日、私たちが極めて明晰に行動できるようになるには、前日の狂人たちが必要だった。私はそのような狂人の一人になりたい。私たちは未来を発明する勇気を持たなければならない」。

- トーマス・サンカラ

歴史は偉大な教師である。歴史から学ばなければ、過ちを繰り返す運命にある。クワメ・ンクルマ(エンクルマ)、セクウ・トゥーレ、モディボ・ケイタ、マリアン・ングアビといったポスト・コロニアル初期のアフリカの指導者たちは、経済的独立と真の独立のための継続的な闘いについて語った。ウォルター・ロドニーが「書類鞄入りの独立」、あるいは、私が「旗と賛歌による独立」と呼ぶような、インチキ独立の罠を熟知していたこれらの指導者たちは、それぞれの民族解放闘争を完遂するために国民を動員し、組織化した。しかし、欧米帝国主義とその手先、あるいは中国の革命指導者毛沢東が「帝国主義の走狗」と呼んだ連中に、これらの先見者たちは打倒されるか暗殺された。歴史を通じて多くの征服者がそうであったように、帝国主義者たちは、彼らの極悪非道なアジェンダを達成するために、反動的な政権や西側の軍事戦力の支援を得た。それは、アフリカを永久的な依存と隷属の状態に保ち、アフリカ大陸の強姦と略奪を続けるためである。

フランツ・ファノンの代表作である『アフリカ革命に向けて』におけるこの見解は、1964年に発表された当時と同様、今日でも重要な意味を持ち続けている。ファノンは、「アフリカの敵の大きな成功は、アフリカ人自身を妥協服従させたことである。そうしたアフリカ人達はルムンバの殺害に直接関わった。傀儡政権の首長を務め、傀儡的独立の只中で、連日、自国民の大反対に直面し、コンゴの真の独立が自分たちを危険にさらすと確信するのに時間はかからなかった」と書いている。

現在時点2023年に飛び移ろう。ECOWAS議長であるナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は、妥協服従したアフリカ人であることを確証するかのように、西アフリカにおけるクーデターの傾向が「憂慮すべきレベル」に達していることに懸念を表明している。もちろん、ティヌブ大統領は、ネオコロニアリズム側についたアフリカ人指導者として掃き捨てられる次の番が自分に回ってくるのではと心配しているのだ。

世界が多極化するなか、アフリカ全土で民衆が立ち上がり、数十年にわたる新植民地支配、搾取、偽りの独立に挑戦している。政治レベルで何が起ころうとも、大衆が立ち上がるときこそ、真に意味のある変革が起こる。歴史を作るのは大衆なのだ。大衆はただその瞬間を待ち構えている、そして、転換点は、その瞬間はもうここにある。

アフリカ、カリブ海諸国、南米、そしてグローバル・サウス全体において、草の根の人々は、世界的に何が起こっているのかについて、アカデミズムの象牙の塔にいる多くの人々よりもはっきり分かっていることが多い。ガイアナの最貧地域では、自分の住んでいる地域から遠くへ旅行したこともなく、本や、場合によってはインターネットにさえアクセスしたことのない人々が、なぜムアンマル・カダフィが殺されたのかについて非常に明確に知っている。一方、世界的に有名なガイアナの経済学者で従属理論家のクライヴ・トーマスは、「カダフィは去らなければならない!」という帝国主義的な語り口を繰り返していた。大衆にとって、知識は書物や他人の話から得るものではなく、つまり、実体のないものではない。体験的な次元を欠いた知識は抽象的なものとなり、南半球の人々が被っている甚大な痛みや、私たちが体験している不公正が私たちの生活のあらゆる側面に与えている壊滅的な影響(私たちや私たちの愛する人たちが生きていけるかどうかさえも含めて)を正当に理解することを妨げる。

したがって、この地球上で毎日何百万人もの人々を苦しめている苦しみを本当に理解しているのは、苦しんでいる人たち自身なのである。ガイアナで言うところの「感じる者は知っている」のである。それを受け入れ、自らそれと闘うことを余儀なくされた人たちこそが、最終的に変化をもたらすのだ。8月7日、スタジアムを埋め尽くし、ニジェールの領空を閉鎖し、降伏を拒否したニジェールの革命家たちを支援した人々である。私がこの記事を書いている間にも、ニジェールを守るために署名をしている何千人もの人々である。ナイジェリアやガーナで、ニジェールへの軍事介入に反対している人々は、これが帝国主義者、特にアメリカとフランスによって企てられた代理戦争であることをはっきりと理解しているからだ。アメリカやフランスに住み、象牙の塔からコメントしているハイチの活動家たちが、良心に目覚めたハイチの路上生活者たちを犯罪者扱いし、いまや互いに戦うのではなく、抑圧者と戦っていると主張する西側のシナリオにひっかかっている一方で、ジミー・シュリジエを理解し、支持しているハイチの人々がいる。

  “民衆が立ち上がると帝国主義は恐れわななく” トーマス・サンカラ

植民地支配後のアフリカの革命的指導者たちの邪魔をした裏切り者たちの政治的後継者たちは、ブルキナ・ファソのイブラヒム・トラオレ、マリのアシミ・ゴイタ、ニジェールのアブドゥラフマーン・ティアニといった新世代のアフリカの革命的指導者たちの邪魔をし、殺す方法を画策している、 リベラル・デモクラシーとは、西欧の植民地的な押しつけであり、民主主義という幻想であり、アフリカ大陸を混乱、持続的な貧困、慢性的な依存という新植民地支配の特徴の中に陥れた罠である。ブルキナ・ファソ、マリ、ニジェールの革命的クーデター指導者たちが断ち切ろうと決意しているのは、この奴隷化の鎖である。イムラン・カーンがパキスタンで断ち切ろうとしているのも、同じ鎖である。

「帝国主義とは搾取のシステムであり、領土を征服するために銃を持ってやってくるという残忍な形でだけ起こるものではない。帝国主義はしばしば、融資、食糧援助、恐喝など、より微妙な形で生起する。私たちは、地球上の一握りの人間が全人類を支配することを可能にするこのシステムと戦っているのある」。

- トーマス・サンカラ

クワメ・ンクルマの言葉を借りよう: 「新植民地主義は、帝国主義の強さの表れではなく、むしろその最後のおぞましい喘ぎである」。帝国は、たとえ公然とそれを認めようとしないとしても、その支配が終焉を迎えていることを知っている。帝国の権力と影響力は、1年前には想像もできなかったほど急速に衰えている。公の場では、アメリカと西ヨーロッパはいつものように傲慢で威勢よく世界の舞台を闊歩しているが、ドアの影ではパニック状態にある。

ECOWAS(Economic Community of West African States)の傘下にあるこの新しい妥協服従したアフリカ人たちは、もちろんフランスとアメリカの支援を受けながら、ニジェールへの軍事介入を推し進め続けている。西側企業のメディアは、クーデター指導者たちが国民の圧倒的な支持を得ているにもかかわらず、ニジェールに「民主主義」を取り戻すと騒ぎ続けている。BBCは何度も同じことを繰り返している。アメリカとEUはニジェールの「政治的混乱」に対する外交的解決策を見つけることに全力を注いでいる、と。混乱に陥っているのは帝国主義者たちであり、クーデター指導者やロシアがどれほど支持され、帝国主義者たちにどれほど憎悪が向けられているかに気づいているからである。

ECOWASは新植民地主義的な組織であり、帝国主義者と結託して既存の政治的・経済的体制を今のままに維持しようとしている。白人至上主義の黒い顔なのだ。ブルキナ・ファソ、マリ、ニジェールのクーデター指導者たちは、このことをよく知っている。この3カ国はすべてECOWASに加盟している。しかし、彼らが排除した親欧米の操り人形とは異なり、これらの革命家たちは見せかけの独立やインチキな自由民主主義を超えることを決意している。ナイジェリアのような無益な新植民地国家は、侵略を口にするよりも、国民の苦しみに目を向けるべきだ。NATOがリビアを空爆して塵と化したとき、この「帝国主義の走狗」たちは何処にいたのだ。実のところ、アフリカの指導者を自称する臆病者たちの中には、リビアを破壊するという押しつけられた決定に従った者もいる。良いニュースは、彼らがアフリカ革命の上昇気流に押し流されてしまうのは時間の問題だということだ。

ECOWASがニジェールに課した最初の期限が切れたとき、なぜフランスとアメリカの支援を受けた侵攻が実現しなかったのか。その理由は、当時も、そして現在も、ニジェール軍だけでなく、真の独立と真の主権がもたらす尊厳をすでに味わったニジェールの人々も相手にしなければならないことを、彼らは悟っていたからである。加えて、妥協服従したアフリカ人たちは、自分たちの恥知らずで裏切り者の振る舞いが今以上に露呈し、それが自国により大きな不穏状態をもたらすことを恐れているのである。

ニジェールのクーデター指導者たちは、フランスの新植民地支配者を追い出すだけでなく、金やウランといった貴重な原材料の供給を差し止めるという制裁措置をとるという、勇気ある、そして、必要不可欠な一歩を踏み出した。これは帝国主義世界に衝撃を与えた。ニジェール産のウランの一部はフランスの原子力発電所で使用されているため、ウランの供給差し止めはフランス政府にとって特に恐ろしいことである。フランス政府は、ニジェールで50年近くウランを採掘している多国籍鉱山会社オラノ(旧アレバ)の大株主である。世界原子力協会(WNA)によると、ニジェールは世界第7位のウラン生産国であり、アフリカで最も品質の高いウラン鉱石を保有している。オラノ社はすでにいくつかの鉱山を枯渇させたが、ニジェールのイモウレン鉱山に狙いを定め、同国にとどまる決意を固めている。世界最大級のウラン鉱床として知られるこの鉱山を、オラノ社はウェブサイト上で「未来の鉱山、イモウレン・プロジェクト」と呼んでいる。

これだけの資源がありながら、ニジェールは依然として世界最貧国のひとつである。フランスでは電球の3個に1個がニジェールのウランのおかげで点灯しているが、ニジェールでは人口の90%近くが電気にアクセスできない。これが彼らがニジェールで取り戻したい民主主義なのだろうか?

フランスの18の発電所にある56基の原子炉を運転するためには、毎年平均約8000トンのウランが必要である。このウランは主に3カ国から調達している: カザフスタン(27%)、ニジェール(20%)、ウズベキスタン(19%)である。ニジェールのウラン生産量は、カザフスタン(43%)、カナダ(15%)、ナミビア(11%)、オーストラリア(10%)に次いで世界全体の5%に過ぎず、フランスはニジェールのウランがなくても何とかなるとはいえ、フランスと西側世界全体にとって最も憂慮すべきは、ニジェールが築きつつある前例である。1973年にムアンマル・カダフィがリビアの石油会社を国有化し、世界的な石油供給危機を招き、その結果、欧米の主要都市で自動車が使えない日が続くなど絶望的な事態に陥った時以来、帝国主義者たちはひどく恐れているのだ。フランソワ・ミッテランが1957年に大胆にも認めたように、「アフリカなしでは、フランスは21世紀に歴史を残せない」のである。

アフリカは世界の真のスーパーパワー

以前の記事でも書いたように、アメリカと西ヨーロッパが、自由で独立して、資源を搾取されなくなった統一アフリカほど恐れるものはない。植民地支配が始まってから今日に至るまで、何百年もの間、捕虜や奴隷にされたアフリカ人たちを無償で働かせ、アフリカの資源を略奪してきた結果、西欧諸国の発展が可能になったことを決して忘れてはならない。彼らは、アフリカが統一され独立すれば、世界的なパワーバランスが完全に変わることを知っている。アフリカが欧米諸国へのすべての原材料の供給をたった1週間でも止めれば、欧米諸国は機能停止に陥ることは、十分に証拠立てられた事実である。

2007年、ギニアのコナクリで、カダフィは数千人の喝采を浴びる群衆を前に、簡潔な見解を述べた: 「ペプシコーラやコカコーラについて尋ねると、人々はすぐにアメリカやヨーロッパの飲み物だと言う。これは真実ではない。コーラはアフリカ産だ。彼らは私たちから安い原料を奪い、それを飲み物にして、私たちに高値で売りつけているのだ。我々は自分たちで生産し、彼らに売りつけるべきなのだ」。

革命指導者イブラヒム・トラオレは、ブルキナ・ファソで原材料の製造と加工を拡大するプロジェクトを実施しながら、まさにこの点を指摘している。これはもちろん、どの国であれ、持続的な貧困と依存から解放されるための闘いにおける基本的なステップである。原材料の輸出を止め、最終製品を地元で生産するようになって初めて、国民の経済的自由と繁栄を達成することができるのだ。

歴史の重要な岐路にある今、アフリカはようやくその計り知れない力に気づきつつある。 というのも、世界的な出来事によってパワーバランスが変化し、中国とロシアが、アフリカが世界の舞台で正当な地位を占めることを後押ししているからである。この瞬間を逃したり、奪われたりすることは許されない。私たちの力に気づくことは、主に心理的な転換であり、精神的な監禁状態から解放されることなのだ。ウラン、金、銅、コバルト、コルタン(携帯電話、ゲーム機、ノートパソコン用)、プラチナ、ダイヤモンド、ボーキサイト、そして特に大量の石油埋蔵量など、現代の産業/ハイテク経済を動かすのに必要な既知の天然資源は、ほとんどすべてアフリカにある。 アザニア(南アフリカ)だけで世界の金埋蔵量の半分がある。コンゴ民主共和国には世界のコバルト埋蔵量の半分、コルタン埋蔵量の80%がある。世界のアルミニウム鉱石の4分の1は西アフリカの海岸地帯で発見され、アフリカ大陸は埋蔵する石油で溢れている。

アフリカと世界中のアフリカ人にとって、今が、決定的な瞬間である。  アフリカが持つパワーの一端を垣間見ているのだ。イブラヒム・トラオレ、アシミ・ゴイタ、アブドゥラフマーン・ティアニは、ガーベイ、ンクルマ、サンカラ、カダフィ、そして植民地主義、新植民地主義、帝国主義の束縛から解放されたアフリカを構想した偉大なアフリカの自由戦士たちの思想を体現している。

我々は、イブラヒム・トラオレ、アシミ・ゴイタ、アブドゥラフマーン・ティアニ達が古くからある帝国主義の武器庫に立ち向かうとき、彼らを支援するために結集しなければならない。彼らを悪者扱いする通常の全面的キャンペーンはすでに開始されており、彼らの心理作戦はすべて、洗練された欺瞞のプログラムに基づいている。もしそれが失敗すれば、皇帝は誰の目にも明らかなように裸であるという現在の世界的な認識からすれば、次の手は、過去に彼らが行ったように、ナイジェリアのティヌブ大統領のような、我々の中の新植民地支配者を利用した軍事介入になるだろう。

妥協服従したアフリカ人は様々な形で現れる。ボラ・ティヌブは明らかなケースで、帝国主義者と公然と手を組んでいるため、すぐに見破られる。しかし、ケニアのウィリアム・ルト大統領のように、概念的に収監された状態にあり、したがって妥協してしまったアフリカの指導者たちの演説に、もっとよく分かっていて良いはずの多くの人々が興奮しているのを私は見てきた。ルト大統領は演説が上手で、バラク・オバマの演説と同じように、彼の演説は期待に満ちている。実際、ルト大統領が最近語った自由で独立したアフリカというビジョンは、革命的としか言いようがないものだ。私は悲観論者になりたくはないが、口がうまいのと断固とした行動は別物であり、悲しいかな、ルト大統領に関しては矛盾が多く、どうしても前者のカテゴリーに入ってしまう。

ルト大統領は新たな財政的取り決めを求めているが、現在の財政モデルが基盤としている新自由主義的資本主義的取り決めの解体については何も言っていない。何故か? 彼の中道右派政党である統一民主同盟が信奉するイデオロギーが新自由主義資本主義だからだ。彼は、不公平な取り決めの中で公正な金融取り決めを行おうとしているのだ。これはまったく不可能な事。彼は "アフロセントリック"という言葉を使っているが、イデオロギー的な概念としてではなく、"アフリカン"と言う代りとして使っているのは確かだ。彼は、私たちの祖先を植民地化し奴隷にし、今日に至るまでアフリカを荒廃させているシステムの枠の中で、母国アフリカの改善を求めているのだ。この同じシステムが、先に述べた真の指導者たちを排除し、新しい公正な経済・金融秩序をもたらそうとする彼らの試みをことごとく挫折させたのだ。そして、マリ、ブルキナ・ファソ、ニジェールの革命指導者たちに反旗を翻しているのは、この同じシステムの擁護者と執行者たちである。ここに、彼の演説を空疎なレトリックに過ぎなくしている矛盾がある。

「我々」が「彼等」にサンクションを加える時が来た

アフリカは今こそ、植民地主義と新植民地主義の名残を断ち切る時なのだ。西側諸国が、自決を求める我々の要求に従うまで、西側諸国への戦略的資源の流入を止めなければならないのであれば、そうすればよい。今こそ、我々が神から与えられた権利を尊重することを拒否する西側資本に制裁を加える時なのだ。西側の対ロシア制裁が完全に裏目に出て、経済的に強くなったロシアと、今や経済破綻の危機に瀕している孤立した西側諸国という結果を招いたことは、振り子がすでに振れていることを世界に示した。西側の覇権は終わったのだ。

アフリカは、遂に、対等なパートナーとして世界のテーブルにつき、自国民の繁栄を求めるのに、これほど良い立場にあることは今までに一度もなかった。世界的な汎アフリカ運動とアフリカ人大衆は、今こそその時だと叫んでいる。 我々は、この夢を実現するために戦い、死んでいった先人たちに、それだけの大きな借りがあるのだ。この動きに参加しないアフリカの指導者たちは、邪魔にならないように退場してもらわなければならない。ECOWASによるニジェール侵攻を許してはならない。

私たちの目の前で起こっているグローバル・シフトは最近の現象ではなく、何十年も前から積み重ねられてきたものだ。アメリカと西ヨーロッパは長い間、閉ざされた扉の影ではパニック状態にあった。反ロシア、反中国のプロパガンダを世界中に浴びせればうまくいくと考えていたのだが、見事に失敗した。グローバル・サウス、特にアフリカの人々の経験は、もちろん西側のプロパガンダに全く反している。欧米による何世紀にもわたる搾取と大量虐殺政策を経験した彼らは、アフリカや南半球のどこにも植民地を持たなかったロシアと中国が、欧米の支配と南アフリカのアパルトヘイトから解放されるための闘いを支援したという事実を決して忘れてはいない。

2007年の『フィナンシャル・タイムズ』紙に掲載された記事で、著者のW.ウォリスとG.ダイヤーは次のように書いている:「欧米列強が本当に懸念しているのは、アフリカ諸国がIMF・世界銀行の融資という懲罰的な条件や、欧米への他の形の金融依存から自らを解放するために、中国との取引を選ぶことである。アフリカ第二の石油産出国であるアンゴラは現在、IMFからの融資を完全に拒否するほど強い立場にある。あるコンサルタントが言うように、石油収入があれば、IMFも世界銀行も必要ない。アンゴラは中国とアメリカとを戦わせる事ことができるのだ」。

もう一つの記事、『アフリカの石油資源をめぐる中国とアメリカの新たな冷戦、ダルフール?問題は石油だ、馬鹿を言うんじゃない』と題された別の記事で、著者のウィリアム・イングダールはこう指摘している:「今日、中国は原油の30%をアフリカから調達している。そのため、ワシントンを激怒させた一連の異常な外交的イニシアチブの説明がつく。中国は、アフリカの莫大な原材料を手に入れるために、無条件でドル債権を利用している。中国が簡単な条件で道路や学校を建設してくれるなら、誰がIMFの苦い薬を必要とするだろうか?このことはアフリカにとって何を意味するのだろうか?どの貿易相手国も厳しい駆け引きをしているが、中には他国よりも良い取引をしている国もあり、さらにアフリカの自決権を尊重してくれている国もあるという事だ」。

ブラック・パワー – アフリカン・パワー

今こそ、ンクルマとカダフィの壮大な「アフリカ合州国」構想の実現に全力を注ぐ時である。この原稿を書いている今、アルジェリアがニジェールでの軍事作戦のために自国の領空を使用するというフランスの要請を拒否したというニュースに心を躍らせている。アルジェリアのアブデルマジド・テブウン大統領は、「軍事介入はサヘル地域全体に火をつける可能性があり、アルジェリアは近隣諸国に対して武力行使はしない」と述べた。私たちがこのレベルの団結と力を達成することができて初めて、世界の中で正当な位置を占めることができる。ようやく、私たちは自分たちのやり方で、自分たちの利益のために、世界の他の国々と関わることができるようになるのだ。10億人の人口に支えられたアフリカは、無視できない要求を突きつけることができるだろう。

2009年、アディスアベバで開かれたAUの会議で、カダフィは西ヨーロッパとアメリカのアフリカに対する態度についてコメントし、次のように述べた:「もし彼等が我々と公平に暮らしたくないのであれば、地球は我々の惑星であることを知るべきであり、彼等は他の惑星に行けばよい」

私たちが求めているのは公平で公正なものであり、不公平で不公正なものだけが恐れるべきものなのだ。

帝国主義はアフリカでしか埋葬できない...

2011年のある記事で、私はセクウ・トゥーレの「帝国主義はアフリカにおいて葬り去られる」という大胆な主張をタイトルにした。欧米の論者には楽観的に過ぎると映ったかもしれないし、実際、現実に即しておらず、むしろ帝国主義の力に押しつぶされつつあると主張する論者もいた。しかし、革命的な汎アフリカの視点から見れば、それは避けられないことなのだ。帝国主義はアフリカでしか打ち負かすことができない。世界的に、とりわけ中南米全域で革命的反撃が行われているが、アフリカが自由になって初めて、帝国主義は最終的に葬り去られるのである。帝国主義者の存在とその宇宙時代なるものを支えているのはアフリカなのだから。

その責任は、大陸とディアスポラにおける革命的な汎アフリカ組織/運動にあり、敵の計画をあらゆる時点で阻止できる明確な分析と戦略を提供することである。私たちは、アメリカと西ヨーロッパの帝国主義、彼らが作り出し、資金を提供し、助長しているいわゆる「ジハード主義者」(別名NATOの歩兵達)、そして彼等がまき散らしている混乱と大破壊、そして彼等の新植民地政権いう邪悪な災いを排除しなければならない。不作為につながる優柔不断な態度をとる余地も時間もない。アフリカにおける帝国主義をきっぱりと葬り去らなければ、我々はきっと崩壊する。

リビア・ジャマーヒリーヤが破壊され、ムアンマル・カダフィが暗殺された後、アフリカのベテラン自由戦士であり、ナミビアの元大統領であるサム・ヌジョマは、アフリカ連合の弱さを極めて厳しく批判し、「リビア空爆を阻止するための軍事的動員を惨めにも怠ってしまったし、アフリカ連合はリビアの領土保全を守るために戦力を動員すべきだった」と述べた。彼は次のようにアドバイスした: 「アフリカ人は、西側諸国が最もよく理解する言葉である戦争を語るべきだ。帝国主義者は、戦うこと以外の言葉を理解しない。私たちは彼らと戦うことで、彼らを大陸から追い出した。もし我々がナミビアやジンバブエなどで戦わなかったら、今日の自由はなかっただろう」。確かに、マリ、ブルキナ・ファソ、ニジェールの勇気ある革命家たちは、サム・ヌジョマの呼びかけに応じて、先頭に立っている。我々は彼等に敬意を表し、あらゆる面で支援することを誓う。全アフリカ人民革命党(AAPRP)が2023年のアフリカ解放記念日のテーマを「新植民地主義を粉砕せよ、アフリカの人々は革命の準備ができている」としたのは偶然ではない。

最後に、クワメ・ンクルマの不滅の言葉を引用する:

「我々は目覚めた。我々はもう眠らない。今日、これから、世界には新しいアフリカ人が誕生する」

上掲の記事の著者については英語原文をそのままコピーします:

Gerald A. Perreira is a writer, educator, theologian and political activist. He is chairperson of Organization for the Victory of the People (OVP) https://www.ovpguyana.org/ based in Guyana and an executive member of the Caribbean Pan African Network (CPAN). He lived in the Libyan Jamahiriya for many years and was a founding member of the World Mathaba, based in Tripoli, Libya. He can be reached at mojadi94@gmail.com .

Other Articles by the Author on Internationalist 360° and Libya 360° Archives

(以上で翻訳終わり)

上の記事の終わりの方に、アルジェリアが「アルジェリアは近隣諸国に対して武力行使はしない」としてニジェール攻撃に参加しないことを表明したと書いてありますが、次回に紹介する記事によると、アルジェリアから、西欧排撃の激烈な雄叫びが挙がっています。アルジェリアはカミュと切っても切れない結びつきがあります。

 

藤永茂(2023年8月30日)


オッペンハイマーは原爆の父ではない

2023-08-21 21:05:04 | 日記・エッセイ・コラム

 ロバート・オッペンハイマーは原爆の父とよく呼ばれますが、父親ではなく、産婆(mid-wife)さんです。わざと奇矯なこと言っているのではありません。日野川静枝さんの優れた論考『科学史入門:原爆開発の起源をめぐって』を読んで下さい。その中にはレオ・シラードの名前は何度も出てきますが、オッペンハイマーのオの字も出てきません:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhsj/31/182/31_103/_pdf/-char/ja

レオ・シラードはとても興味深い科学者です。原子核反応の利用についての特許もいち早く取得していました。原爆も原子炉も自分が生みの親だのにオッペンハイマーとフェルミに横取りされたと思っていたかもしれません。興味のある方はウィキペディアに詳しい解説記事がありますので、これもおすすめです:

https://ja.wikipedia.org/wiki/レオ・シラード#人物

今年の7月に上映が始まったクリストッファー・ノーランのハリウッド映画『オッペンハイマー』をめぐる大騒ぎに直面して、私は「オッペンハイマー現象」という言葉を思い付きました。これは全人類の存続滅亡に関わる核兵器問題について、広島に投下されたウラン原爆「リトルボーイ」と長崎に投下されたプルトニューム原爆「ファットマン」の製造以来、一貫して米国で認められる注目すべき現象であると私は考える様になっています。そのうちに、このブログで「オッペンハイマー現象」のことを論じてみたいと思っています。その時に、原爆の父親は誰かについての私の考えを開陳するつもりです。

藤永茂(2023年8月21日)


青山弘之さんのシリア訪問記

2023-08-14 14:57:43 | 日記・エッセイ・コラム

 東京外国語大学教授青山弘之さんのウェブサイト『シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢』は私が毎日欠かさず訪れるサイトです。8月13日付けで、皆さんに是非読んで頂きたい記事が出ましたので紹介します:

http://syriaarabspring.info/?p=102326

この機会に、前にも取り上げたことのある米国の「シーザー・アクト(法)」という米国国会で決議されたシリア国民に対する残酷な制裁についても、改めて理解を深めて下さい。次のYoutube の話者アルマシアンは、決して、シリア政府お抱えの宣伝マンではないと私は判断しています:

https://www.youtube.com/watch?v=H2fnri-6bu8

(画面のバーを使って最初から見て下さい)

藤永茂(2023年8月14日)

 


アフリカに本当の夜明けが訪れる

2023-08-11 19:28:14 | 日記・エッセイ・コラム

 私はすっかり興奮しています。アフリカ大陸が、いや、世界全体が、本当の夜明けを迎えると予感するからです。

今、アフリカ大陸北部の中央に位置するニジェールで生起している事態は、ウクライナ戦争を超える世界史的意義を持っています。我が国のマスコミは、鉱物資源のおねだりに外務大臣がコンゴ人民共和国を訪問したニュースなどよりも、ニジェールの事を大きく取り上げるべきでしょう。ニジェールで宗主国フランスを追い出そうとしているのは軍の一部将校たちではなく一般人民大衆なのです。フランスと米国は軍事介入の姿勢を示してニジェールに脅しをかけていましたがうまくいきません。フランスや米国は、ニジェールの南に接するナイジェリアや東に隣接するチャドの現政権をまだ掌握しているつもりでしょうが、ナイジェリアとチャドの一般人民はニジェールと同調しています。マリとブルキナファッソは、もしニジェールが米欧の軍事介入攻撃を受けたら、ニジェール軍の側に立って戦う決意を表明しています。ニジェールとマリの北に接するアルジェリアもニジェールの味方をするでしょう。エリトリアは勿論のこと、スーダンも米欧の軍事介入には大反対です。ここでは、米欧が核兵器の使用をちらつかせても全くなんの役にも立ちません。

 お話ししたいことが山ほどあります。まずは、エンクルマ、ルムンバ、サンカラなどのアフリカ独立運動の英雄たちの列に、リビアで惨殺されたカダフィ(ムアンマル・アル=カッザーフィー)を加え、米欧のプロパガンダが冠した汚名をそそいでやりたいと思います。日の出までにはまだ時間がありますから、しっかりと想を練ってから、私の考えを申し上げるつもりです。

 今日のところは、ニジェールの争乱に本気で関心を持って下さる方々の参考までに、最新の情報ソースを四つだけ掲げておきます:

https://www.youtube.com/watch?v=LMiLz2BMmWE

https://www.blackagendareport.com/thousands-rally-support-nigers-coup-leaders-western-backed-ecowas-threatens-military-intervention

https://www.youtube.com/watch?v=lnCKi9PTkLA&list=TLPQMTEwODIwMjNg12P6AUOxgQ&index=5

https://libya360.wordpress.com/2023/08/10/niger-aftermath-of-the-fall-of-qadhafi-in-the-african-sahel/

最後の長い英語記事には遠い過去から現時点までの歴史的展望もあり、歴史に残る写真記録やわかりやすい地図もあります。

 

藤永茂(2023年8月11日)