私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

フェイクニューズ

2018-12-15 21:46:40 | 日記・エッセイ・コラム
 今年のノーベル賞受賞者本庶さんは、ストックホルムで「受賞の電話が遅れて届いた時、フェイクニューズかも、と思った」という意味のジョークを達者な英語で喋っておられました。日本では「フェイクニュース」、この忌まわしい言葉は、確かに世界語になってしまったようです。笑い事ではありません。
 この10年近くの間、米国が、ヒューマン・ライツ・ウォッチや国連を使って政権交代を企てて来たエリトリアとその独裁者イサイアス・アフェウェルキに関して、実に興味深いインタビューのトランスクリプトと動画(YouTube)に行き当たりました。トランスクリプトはエリトリア贔屓のThomas Mountainの紹介ですから、彼なりの編集が行われたのではないかと、少し心配になりましたが、幸いにも、元のインタビューの動画も視聴することができました。トランスクリプトの内容は十分正確です:
https://www.tesfanews.net/president-issias-aferwerki-vs-al-jazeeras-2010-interview/
https://www.youtube.com/watch?v=O0uQwODNkTA
2010年2月20日、アルジャジーラの女性記者Jane Duttonはエリトリアの大統領イサイアス・アフェウェルキに面会してインタビューを行いました。国連安全保障理事会がエリトリアに対する厳しい制裁措置を決定したのは2009年12月23日、つまり、インタビューはそのすぐ後に行われたわけです。国連の制裁に反対した唯一の国はリビア、そのリビアのカダフィ政権は、2011年、NATOの猛爆によって崩壊し、カダフィは惨殺されたことを思い出しておきましょう。
 米国が国連を操ってエリトリアに制裁を課した理由は全てがフェイクニューズに基づいていました。フェイクニューズとは、どこからか本当でない誤った情報が伝えられる誤謬ではなく、一定の目的を持って作られ(fabricate)、捏造(fake)されるものです。ジェイン・ダットンがアフェウェルキに投げつけた質問(詰問?)の全てがフェイクニューズに基づいていたことは、今日、明白に立証されているとマウンテン氏は言い切ります。その通りだと私も思います。
 この白人女性記者は、一貫して何とも無礼千万な詰問調でインタビューを行いますが、相手は兎にも角にも一国の大統領、然るべき礼節をわきまえるべきでした。この挑発的な侮辱行為に対するアフェウェルキ大統領の態度は見事なものです。挑発に乗らず、24分間、最後まで冷静を保ち続けます。
 上掲のマウンテン氏の論説に引用されているインタビューのトランスクリプトの全文を訳出するのは荷が重すぎますので、最後の部分だけ原文に続いて訳出します。PIAはアフェウェルキ大統領(President Isaias Afwerki)を意味します。インタビューはエリトリアの首都アスマラで行われました。
Jane Dutton: Human Rights Watch says that you are turning this country into a giant prison and creating a human rights crisis….
PIA : You can walk around and see if that is true again. It is a lie.
Jane Dutton: Why then do people come under the orders ‘shoot to kill’, if they want to leave this country?
PIA : No, no, not at all. If you are telling thousands are leaving this country then how do you think that can happen? If you are telling me that hundreds of thousands have left this country and asked for asylum
how can you imagine that happened?
Jane Dutton: Who do you consider your friends?
PIA : Where do you mean?
Jane Dutton: In the world…
PIA : A few, a bunch of liars may not be my friends but the whole world is behind Eritrea. Everybody is asking why all these lies? Why all these sanctions? Why this and that? It is an expression of the support of people. The minimum you can imagine sensible people asking simple questions about all the fabrications they hear everyday. That is by way of questioning the credibility of those telling the lies.
This means, it is a support for the one which is being victimized without any evidence. That is very important to remember. And those people who are asking the simple questions are behind Eritrea.
Jane Dutton: Can you just tell us a little about your aspirations?
PIA : We don’t need war. We have fought for so many decades and we know what it means to go into war. It is very senseless to imagine that you can waste your time and resources doing things that do not deserve any
penny.
We are focused on doing ‘the right things in this country. And we don’t need to do it by forcing people to believe this or that. People are seriously engaged in what they are doing to change their quality
of life.
Those who have never tried it may fantasize about going to war. We have been there for so many decades, almost two generations. At least we will not be like Kenya, Nigeria, Ethiopia, Somalia, Sudan.
We are better off.
“We are number one in this continent.”
<翻訳>
JD:  ヒューマン・ライツ・ウォッチは、あなたがこの国を巨大な監獄にしつつあり、人権危機を引き起こしていると言っていますが・・・
PIA: ご自分で歩き回って、それが本当かどうかご覧になってください。それは嘘です。
JD: 嘘だとしたら、人々がこの国から出て行こうとすると、‘射殺せよ’という命令の下に身を晒すことになるのは、何故ですか?
PIA: いや、いや、そんなことは全くない。あなたは、先ほど、何千人もの人が国外に脱出していると言ったが、射殺されるのなら、どうしてそれが可能なのです? あなたは、何十万という人がこの国を去り、他国に亡命保護を求めていると、私に言ったところだが、どうしてそんなことが起こると想像できるのですか?
JD: あなたは、誰があなたの味方だと考えますか?
PIA: どこでの話ですか?
JD: 世界で・・・
PIA: 僅かな数の、嘘つき連中は私の味方ではないでしょうが、全世界はエリトリアを支持しています。こうした嘘は何のため? これらの制裁は何故?何故こうしたり、ああしたり? 誰もが頭を傾げています。これは、人々の支持の表れなのです。せめて、想像だけでもしてみて下さい;物のわかった人々は、毎日聞かされる作り話の全てについて単純な疑問を呈しているのです。それは、つまり、嘘をついている連中は信用できないと言っていることに当たるのです。これは、何の証拠もなしに罰を受けている者に対する支持なのです。この事はよく覚えておく必要があります。こうした単純な疑問を呈している人々はエリトリアの味方なのです。
JD: あなたの大きな望みについて少し伺えますか?
PIA: 戦争はもう沢山です。我々は、もう何十年もの間、戦い続けて、戦争するということが何を意味するかを知っています。時間と資源を無駄に浪費して、一文の得にもならないことをやろうと考えるのは実に無意味なことです。この国では、成すべきことを成すことに集中しています。そして、我々は、それを成すのに、人々にあれこれ強制的に信じさせる必要はありません。人々は自分たちの生活の質的向上を目指して真剣に働いています。そうしたことをやってみたことのない人々は、戦争に訴えようかという幻想を抱きがちです。我々は何十年もの間、ほとんど二世代もの間、そうした状態にありました。少なくとも、我々は、ケニヤ、ナイジェリア、エチオピア、ソマリア、スーダンの様にはならないでしょう。我が国はずっとましです。“この大陸で我が国はナンバーワンです”<翻訳終わり>
 上に掲げた通り、このインタビューはYouTubeのサイトで視聴することができます。英語が使われていますので、興味のある方は是非ご覧になってください。英語版Wikipedia によれば、Jane Duttonは有力なテレビ・パーソナリティのようで、その記事の中に面白いことが書いてあります:
For the strand Talk to Al Jazeera, Jane travelled to interview the famously camera-shy President of Eritrea, Isaias Afewerki, his country's sole head of state since independence in 1991. The interview is an internet favourite as the response to most of the questions was to denounce them as lies, without offering clarification or elaboration. (注:strandはテレビの連続番組のこと)
つまり、私がここで取り上げたダットンのインタビューは、彼女が投げかけた質問の殆どを、何の弁明も釈明もなしに、「嘘っぱち」だと弾劾するアフェウェルキ大統領の反応が面白いと、ネット上で人気を博しているというのです。確かに、このインタビュー動画の視聴回数は79万5千を超えています。しかし、視聴してご覧になればわかるように、証拠を求められているのは、むしろ、ダットンの方です。一つだけ例をあげれば、ダットンが「昨年、あなたを暗殺する企てがありましたが・・・」と断定的に畳み掛ける所がありますが、これは全くのフェイクニューズであったことが明らかになった時のことを私は今でもはっきり記憶しています。
 このジェイン・ダットンという人のように、過去にフェイクニューズを撒き散らして特定のアジェンダを持った権力機構に進んで奉仕した人々には、フェイクニューズがフェイクニューズであることがはっきりしたら、一定の責任を取ってほしいと、私は、いつも思うのですが、世の中はそんな風には作動していません。
 これは蛇足になりますが、私が「稀代のコンマン(詐欺師)」と見做すオバマ前米国大統領が「大統領の座にしがみつくアフェウェルキのような連中」に与える御託宣を伝える面白い動画を見つけたので紹介します:
https://www.youtube.com/watch?v=PiKz-WNyQJI
これと、エリトリアに国連の制裁が課せられた後に、アフェウェルキ大統領が国連で行なった講演:
https://www.youtube.com/watch?v=S7z1fpBdd-E
を比べてください。そして、オバマとアフェウェルキのどちらが詐欺師らしいか、判断してください。画面の右肩には如何にも悪者そうなアフェウェルキの顔が掲げてあります。

藤永茂(2018年12月15日)
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エリトリアに異変が

2018-12-04 23:22:17 | 日記・エッセイ・コラム
 2018年11月14日、国連安全保障理事会は全会一致で、エリトリアに対する制裁措置を解除しました。UN Security Council で全会一致とはあまりお目にかかることではありません。2009年12月24日に米国の圧力で採択されたこの制裁措置の理由は「エリトリアがソマリアのテロ勢力を支持している」というものでした。それが事実でなかったことは今では確立されています。米国は「アフリカのキューバ」「アフリカの北朝鮮」という異名を頂戴したエリトリアという、約500万の人口、ほぼ四国ほどの面積の社会主義小国を無理矢理に潰しにかかったのでしたが、この小国は、10年近くの間、この大国難を見事にしのぎ切りましした。
 今回、なぜ制裁が解除されたのか? 今から、エリトリアという国はどうなるのか? これは大問題です。このブログでは、以前から、エリトリアのことを取り上げてきました。その最初は2011年12月7日付けの『アウンサンスーチー:櫻井元さんへのお答え』 だったと思います。その後私は『エリトリアの人々に幸いあれ』という見出しで2014年12月7日から5回続き、『なぜエリとりだけを』 という見出しで2015年6月3日から3回続きの記事を書きました。
 アウンサンスーチーという政治家についての櫻井元さんの直感は見事に当たっていたようです。ノーベル平和賞をはじめ、彼女に与えられた数々の賞の取り消しが話題になっていますが、同じ問題は、アムネスティ・インターナショナルのような人権NGOにもあると考えられます。こうした国際的な賞そのものに、そもそも、問題があると言うべきかもしれません。まず、以下に、『アウンサンスーチー:櫻井元さんへのお答え』 を再録します:
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アウンサンスーチー:桜井元さんへのお答え
2011-12-07 11:20:48 | 日記・エッセイ・コラム
いま『パトリス・ルムンバの暗殺』と題して、キャンベル教授の論考:
50 years after Lumumba: The burden of history, Iterations of assassination in Africa (ルムンバから50年:歴史の重荷、アフリカにおける暗殺の繰り返し)
の翻訳を続けていますが、前回(2011年11月30日)のブログに対して桜井元さんから重要なコメントを頂き、アウンサンスーチーについての私の見解を求められましたので、今回はそれにお答えしたいと考えました。コメントの冒頭には
■ 新聞やテレビで、米国のヒラリー・クリントン国務長官がミャンマーを訪問したニュースが報じられました。背景には米国と中国との勢力争い、対北朝鮮戦略などがあるそうですが、それにしてもよくわらかないのがアウンサンスーチーという人物です。民主化運動の指導者で1991年にノーベル平和賞を受賞した彼女は、自邸でヒラリーと抱き合い、「われわれが一緒になれば、民主化の道を逆行することはないと確信している」と語ったそうです。ちなみに、映像に移った自邸というのがたいそうな豪邸でした。■
とあります。
 私はもともとアウンサンスーチーについて強い関心を持ったことがなく、勉強もしていませんから、妥当な判断を下す能力も資格がありませんが、米国が彼女を自己の情宣活動の一つの駒として利用して来たのは明白な事実であり、その点ははっきりと断定することが出来ます。その動かぬ証拠の一つは、米国がこの10年間に取って来たハイチのアリスティド元大統領に対する処置です。ハイチ問題については、このブログで何度も取り上げてきましたので、出来れば読んで下さい。この10年といえば、ミャンマーの軍事政権によるアウンサンスーチーの政治活動の抑圧と自宅軟禁を米国が声高に非難していた時期と重なりますが、同じ米国は、一方で、アリスティドと彼の民衆的政治基盤に対して、ミャンマー政府とは比べ物にならない暴力を行使していたのです。米国の暴挙について日本版ウィキペディア「ジャン=ベルトラン・アリスティド」をお読みになる場合には、どういうわけか、米国寄りの宣伝臭が強く残っている事にご注意下さい。英文Wikipediaの「Jean-Bertrand Aristide」の内容は日本語版より遥かに充実していて、かつ、より公平正確です。日本語版と英語版との両方を読み比べると、こうした政治的外交的事象についての真実を押さえることがどんなに難しいことかが痛感されます。
 その最近の例の最たるものはリビアです。NATOの3万発のミサイル攻撃とそれにカバーされたおそらく万のオーダーの傭兵によって成し遂げられたリビアの独裁制から“民主制”への移行が一体何であったのかがはっきりするには未だ数年はかかるでしょう。この日頃、私の心を痛めているのは、北アフリカの人口5百万の小国エリトリア(Eritrea)の命運です。もう程なくこの黒人小国は米欧によって粉砕抹殺されてしまうでしょう。今度も表向きはUNとNATOと現地代理戦傭兵隊によってエリトリア人が凶暴な独裁者から救われ、“民主”政権が樹立されることになりましょう。これだけは間違いのないところですが、皆さんが、この国が瓦解してしまう前に、この国の国民生活についての幾つかの基本的事実を知ることがどんなに困難かを実地に経験して頂きたいと、私は強く願います。そのため少しばかり実地の案内をします。
(1) http://kaze.shinshomap.info/series/rights/10.html
 人間を傷つけるな!  土井香苗    10/01/31
 第10回 エリトリア人弁護士から見た“世界最悪”の独裁政権国家
 戦争や虐殺など世界各地で今日もなおつづく人権蹂躙の実情に対して監視の目を光らせる国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)。2009年春開設したHRW東京オフィスの土井香苗ディレクターが問題の実態を語る。
 「北朝鮮よりも“人権”のない国?」
<藤永註>この記事によると、絶望的な独裁制の下でエリトリア国民は塗炭の苦しみにあると思われます。
(2) http://std-lab.typepad.jp/yamada/2008/09/stop-aids-0d48.html
山田耕平の「愛」がエイズを止める!!(第6弾)
~エリトリア自転車&STOP AIDツアー
<藤永註>ところがこちらの記事は次のように始まります。:
「ただいまエリトリアから帰国しました!
多くの人たちにですが、どうだった?って聞かれましたが、まずお伝えしたいのは、アフリカでこんなに治安も良く、安全な国があったとは思わなかったということです。
アフリカの多くの国では、首都を夜歩くなんて自殺行為に等しいのが現実ですが、エリトリアの首都アスマラは本当に治安が良く、安全でした。また首都アスマラはゴミもほとんど落ちておらず非常に綺麗で、またイタリア植民地時代のコロニアルな雰囲気の建物が残っていて、素晴らしい町並みです。」
この文章を読みながら、私はリビアの首都トリポリについても似たような印象を伝えた記事を思い出していました。
(3) http://www.moj.go.jp/content/000056397.pdf
出身国情報レポート「エリトリア」  2010年6月
 <藤永註>この50頁にわたるpdfは米英側のほぼオフィシャルなエリトリアの誹謗文献の典型であろうと私は判断します。この書き物の内容は(1)の国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の報告に依存して大きくいると思われます。
(4) http://blackagendareport.com/content/eritrea-island-food-africa’s-horn-hunger
Eritrea: An Island of Food in Africa’s Horn of Hunger
by Thomas C. Mountain 08/10/2011
Drought kills, but spiraling food prices can also bring hunger. While Ethiopia exported food for cash as drought and famine loomed, Eritrea is like “an island the size of Britain where affordable bread is there for all and slowly but steadily, life gets better.” Meanwhile, in Ethiopia, “basics like wheat, barley, sorghum and chick peas become so expensive malnutrition rates for children spike.” Naturally, Ethiopia is a U.S. client state, while Eritrea is on the American hit list.
<藤永註>この記事の著者は2006年以来エリトリアに住んでいる英国系白人の独立ジャーナリストで、現エリトリア政府に同情的姿勢を明白にしている人物ですが、独裁者Isaias Afwerkiの回し者ではないと私は判断しています。参考までにこの記事の終りの部分をコピーして訳出します。:
■ Life expectancy in Ethiopia is falling, maybe plunging is a better word, while even the World Bank uses words like “dramatic” to describe the improvements in life expectancy in Eritrea. Eritrea is one of the very few countries in the world that will meet the Millennium Development Goals (MDG), especially in the area of health for its children, malaria mortality prevention and reduction of AIDS.
Hillary Clinton may call Eritrea a dictatorship and Ethiopia a democracy but if one measures human rights by access to clean drinking water, food, shelter and medical care rather than stuffed ballot boxes and fixed elections, then the descriptions would have to be reversed.
The Horn of Africa may be the Horn of Hunger for millions but in the midst of all the drought, starvation and suffering there lives and grows an island of food security, little Eritrea and its 5 million people.
Unfortunately, none of this may be enough to prevent the UN inSecurity Council from passing even tougher sanctions against Eritrea in an attempt to damage the Eritrean economy and, inevitably, hurt the Eritrea people. This is all done, once again, in the name of fighting the War on Terror, or more accurately, the War on the Somali people. (エチオピアの平均寿命は降下している、いや急落していると言った方が良いが、その一方で、(すぐ隣りの)エリトリアでは、世界銀行ですらが“劇的に”という表現を使うほど、平均寿命が延びているのだ。エリトリアは(国連の)ミレニアム開発目標(MDG)で、特に児童の健康、マラリアによる死亡防止、エイズの感染減少の分野で、目標の達成が期待されるごく少数の国家の一つである。ヒラリー・クリントンは、エリトリアは独裁国家、エチオピアは民主国家と言うだろうが、もし、人権というものを、インチキ投票箱,お手盛り選挙ではなく、クリーンな飲料水、食べ物、住まい、保健医療が得られるかどうかで測るならば、エリトリアが民主国で、エチオピアが独裁国ということになるだろう。アフリカの角(アフリカ大陸の右肩の地域)は何百万かの人々にとって空腹の角とも言えようが、この旱魃と飢餓と受難のただ中で、小さなエリトリアとその5百万人の国民は、食糧不安のない孤島として、生活し、成長している。- 以下略 -)■
 これを読みながら、私の想いは又しても今回NATOによって“民主化”されない前のリビアに立ち返ります。エリトリアでは毎年国際的な自転車レースが行なわれています。今年の国外からの参加者の数人が上掲の(2)の山田耕平氏のエリトリア描写と殆どそっくりの観察を報告しています。また、エリトリアが国連のミレニアム開発目標に関して優れた成果をあげていることはネット上に沢山の公式データがあります。リビアの場合にも国連がその国民生活の質の良さを確認するデータを発表していたことはこのブログでも報告したことがありました。もう間もなく、この小国は大国のエゴイズムによって粉砕され、私は「エリトリア挽歌」を書く羽目になるのでしょう。
 エリトリアの独裁者イサイアス・アフェウェルキは、その独裁の熾烈さにおいて、ルワンダのポール・カガメとよく同列視されます。決定的な違いは、米欧にとって、カガメが飛び切りの優等生であるのに、アフェウェルキは言語道断の非行人物だということです。アウンサンスーチーとアリスティドとの相対地位とも通じている所があるかも知れません。

藤永 茂     (2011年12月7日)
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 TesfaNewsというエリトリアの報道機関(ブログ)があります。テスファとは、アフリカーンス語で「希望」を意味するそうです。自己紹介によると、政府、政治団体、宗教団体から独立した民間の報道媒体のようですが、堅実味のある論説やニュースを読むことができます。念のため、ABOUT US の原文を引いておきます:
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ABOUT US
‘Tesfa’ is a Geez word meaning “Hope”
TesfaNews.net is a blog that is dedicated to inform, entertain and inspire the Eritrean people inside and abroad by amplifying every positive and ‘Tesfa’ news available about or related to ERITREA.
TesfaNews is not affiliated to any governmental, political or religious organization. Rather, it is simply a pro-Eritrea (as a country, not necessarily regime) news and views website with an online presence through www.tesfanews.com and www.tesfanews.net
Our programs are picked and posted independently that are in line to our motto.
We are inspired and driven by nothing but the LOVE of Eritrea.
Any one who stands for the same cause can directly contribute articles, links, photos and videos to this website.
We look forward to hearing all your comments and criticisms.
TesfaNews Team
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 このTesfaNewsに、11月24日、『エリトリア:喜びとその未来』というしっかりした論説が出ました:
https://www.tesfanews.net/eritrea-sanctions-joy-future/
その一部を転載翻訳します:
First, congratulations must go to the people of Eritrea – the soldiers, the youth, the civil servants, the elders, the farmers, and the mothers and fathers. This latest development can only be regarded as an undeniable victory for them. Do not forget that the international sanctions were just one part of the larger strategy devised by the previous US and Ethiopian governments to isolate and weaken Eritrea, hoping to cause its collapse, implosion, or submission.
「まず第一に、「おめでとう」の祝辞はエリトリアの人々——兵士たち、若者、公務員、お年寄り、農民、そして、お母さんたちとお父さんたちに贈らなければならない。この最近の事態展開はエリトリアの人々にとっての紛れもない勝利というほかはない。忘れてならないのは、この国際的制裁措置が米国とエチオピアの前政権によってたくらまれた、エリトリアを孤立させ、弱体化し、あわよくば、その崩壊、内部暴発、あるいは、その降伏を狙った、より大きな戦略の単なる一部分であったことだ。」
 しかし、問題は今後(future)にあります。米国が急にニコニコ顔をエリトリアに見せ始めた理由は、中国、ロシアとのアフリカにおける覇権争いにあります。テスファニューズは、この米国政府の豹変が、トランプ大統領の国家安保担当補佐官ジョン・ボルトンの進言によるものと報じています。必死に生きるアフリカのキューバ、アフリカの北朝鮮、エリトリアの未来を占う能力は私にはありません。しかし、エリトリアを崩壊に追い詰めようとした米国政府に易々として協力したヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルのようなNGOを批判することは出来ます。今回の、エリトリアをめぐる米国の豹変は、国際的人権NGOの本質を誰の目にも明らかな形で白日のもとに露呈する結果になりました。

藤永茂(2018年12月4日)
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