今年のノーベル賞受賞者本庶さんは、ストックホルムで「受賞の電話が遅れて届いた時、フェイクニューズかも、と思った」という意味のジョークを達者な英語で喋っておられました。日本では「フェイクニュース」、この忌まわしい言葉は、確かに世界語になってしまったようです。笑い事ではありません。
この10年近くの間、米国が、ヒューマン・ライツ・ウォッチや国連を使って政権交代を企てて来たエリトリアとその独裁者イサイアス・アフェウェルキに関して、実に興味深いインタビューのトランスクリプトと動画(YouTube)に行き当たりました。トランスクリプトはエリトリア贔屓のThomas Mountainの紹介ですから、彼なりの編集が行われたのではないかと、少し心配になりましたが、幸いにも、元のインタビューの動画も視聴することができました。トランスクリプトの内容は十分正確です:
https://www.tesfanews.net/president-issias-aferwerki-vs-al-jazeeras-2010-interview/
https://www.youtube.com/watch?v=O0uQwODNkTA
2010年2月20日、アルジャジーラの女性記者Jane Duttonはエリトリアの大統領イサイアス・アフェウェルキに面会してインタビューを行いました。国連安全保障理事会がエリトリアに対する厳しい制裁措置を決定したのは2009年12月23日、つまり、インタビューはそのすぐ後に行われたわけです。国連の制裁に反対した唯一の国はリビア、そのリビアのカダフィ政権は、2011年、NATOの猛爆によって崩壊し、カダフィは惨殺されたことを思い出しておきましょう。
米国が国連を操ってエリトリアに制裁を課した理由は全てがフェイクニューズに基づいていました。フェイクニューズとは、どこからか本当でない誤った情報が伝えられる誤謬ではなく、一定の目的を持って作られ(fabricate)、捏造(fake)されるものです。ジェイン・ダットンがアフェウェルキに投げつけた質問(詰問?)の全てがフェイクニューズに基づいていたことは、今日、明白に立証されているとマウンテン氏は言い切ります。その通りだと私も思います。
この白人女性記者は、一貫して何とも無礼千万な詰問調でインタビューを行いますが、相手は兎にも角にも一国の大統領、然るべき礼節をわきまえるべきでした。この挑発的な侮辱行為に対するアフェウェルキ大統領の態度は見事なものです。挑発に乗らず、24分間、最後まで冷静を保ち続けます。
上掲のマウンテン氏の論説に引用されているインタビューのトランスクリプトの全文を訳出するのは荷が重すぎますので、最後の部分だけ原文に続いて訳出します。PIAはアフェウェルキ大統領(President Isaias Afwerki)を意味します。インタビューはエリトリアの首都アスマラで行われました。
Jane Dutton: Human Rights Watch says that you are turning this country into a giant prison and creating a human rights crisis….
PIA : You can walk around and see if that is true again. It is a lie.
Jane Dutton: Why then do people come under the orders ‘shoot to kill’, if they want to leave this country?
PIA : No, no, not at all. If you are telling thousands are leaving this country then how do you think that can happen? If you are telling me that hundreds of thousands have left this country and asked for asylum
how can you imagine that happened?
Jane Dutton: Who do you consider your friends?
PIA : Where do you mean?
Jane Dutton: In the world…
PIA : A few, a bunch of liars may not be my friends but the whole world is behind Eritrea. Everybody is asking why all these lies? Why all these sanctions? Why this and that? It is an expression of the support of people. The minimum you can imagine sensible people asking simple questions about all the fabrications they hear everyday. That is by way of questioning the credibility of those telling the lies.
This means, it is a support for the one which is being victimized without any evidence. That is very important to remember. And those people who are asking the simple questions are behind Eritrea.
Jane Dutton: Can you just tell us a little about your aspirations?
PIA : We don’t need war. We have fought for so many decades and we know what it means to go into war. It is very senseless to imagine that you can waste your time and resources doing things that do not deserve any
penny.
We are focused on doing ‘the right things in this country. And we don’t need to do it by forcing people to believe this or that. People are seriously engaged in what they are doing to change their quality
of life.
Those who have never tried it may fantasize about going to war. We have been there for so many decades, almost two generations. At least we will not be like Kenya, Nigeria, Ethiopia, Somalia, Sudan.
We are better off.
“We are number one in this continent.”
<翻訳>
JD: ヒューマン・ライツ・ウォッチは、あなたがこの国を巨大な監獄にしつつあり、人権危機を引き起こしていると言っていますが・・・
PIA: ご自分で歩き回って、それが本当かどうかご覧になってください。それは嘘です。
JD: 嘘だとしたら、人々がこの国から出て行こうとすると、‘射殺せよ’という命令の下に身を晒すことになるのは、何故ですか?
PIA: いや、いや、そんなことは全くない。あなたは、先ほど、何千人もの人が国外に脱出していると言ったが、射殺されるのなら、どうしてそれが可能なのです? あなたは、何十万という人がこの国を去り、他国に亡命保護を求めていると、私に言ったところだが、どうしてそんなことが起こると想像できるのですか?
JD: あなたは、誰があなたの味方だと考えますか?
PIA: どこでの話ですか?
JD: 世界で・・・
PIA: 僅かな数の、嘘つき連中は私の味方ではないでしょうが、全世界はエリトリアを支持しています。こうした嘘は何のため? これらの制裁は何故?何故こうしたり、ああしたり? 誰もが頭を傾げています。これは、人々の支持の表れなのです。せめて、想像だけでもしてみて下さい;物のわかった人々は、毎日聞かされる作り話の全てについて単純な疑問を呈しているのです。それは、つまり、嘘をついている連中は信用できないと言っていることに当たるのです。これは、何の証拠もなしに罰を受けている者に対する支持なのです。この事はよく覚えておく必要があります。こうした単純な疑問を呈している人々はエリトリアの味方なのです。
JD: あなたの大きな望みについて少し伺えますか?
PIA: 戦争はもう沢山です。我々は、もう何十年もの間、戦い続けて、戦争するということが何を意味するかを知っています。時間と資源を無駄に浪費して、一文の得にもならないことをやろうと考えるのは実に無意味なことです。この国では、成すべきことを成すことに集中しています。そして、我々は、それを成すのに、人々にあれこれ強制的に信じさせる必要はありません。人々は自分たちの生活の質的向上を目指して真剣に働いています。そうしたことをやってみたことのない人々は、戦争に訴えようかという幻想を抱きがちです。我々は何十年もの間、ほとんど二世代もの間、そうした状態にありました。少なくとも、我々は、ケニヤ、ナイジェリア、エチオピア、ソマリア、スーダンの様にはならないでしょう。我が国はずっとましです。“この大陸で我が国はナンバーワンです”<翻訳終わり>
上に掲げた通り、このインタビューはYouTubeのサイトで視聴することができます。英語が使われていますので、興味のある方は是非ご覧になってください。英語版Wikipedia によれば、Jane Duttonは有力なテレビ・パーソナリティのようで、その記事の中に面白いことが書いてあります:
For the strand Talk to Al Jazeera, Jane travelled to interview the famously camera-shy President of Eritrea, Isaias Afewerki, his country's sole head of state since independence in 1991. The interview is an internet favourite as the response to most of the questions was to denounce them as lies, without offering clarification or elaboration. (注:strandはテレビの連続番組のこと)
つまり、私がここで取り上げたダットンのインタビューは、彼女が投げかけた質問の殆どを、何の弁明も釈明もなしに、「嘘っぱち」だと弾劾するアフェウェルキ大統領の反応が面白いと、ネット上で人気を博しているというのです。確かに、このインタビュー動画の視聴回数は79万5千を超えています。しかし、視聴してご覧になればわかるように、証拠を求められているのは、むしろ、ダットンの方です。一つだけ例をあげれば、ダットンが「昨年、あなたを暗殺する企てがありましたが・・・」と断定的に畳み掛ける所がありますが、これは全くのフェイクニューズであったことが明らかになった時のことを私は今でもはっきり記憶しています。
このジェイン・ダットンという人のように、過去にフェイクニューズを撒き散らして特定のアジェンダを持った権力機構に進んで奉仕した人々には、フェイクニューズがフェイクニューズであることがはっきりしたら、一定の責任を取ってほしいと、私は、いつも思うのですが、世の中はそんな風には作動していません。
これは蛇足になりますが、私が「稀代のコンマン(詐欺師)」と見做すオバマ前米国大統領が「大統領の座にしがみつくアフェウェルキのような連中」に与える御託宣を伝える面白い動画を見つけたので紹介します:
https://www.youtube.com/watch?v=PiKz-WNyQJI
これと、エリトリアに国連の制裁が課せられた後に、アフェウェルキ大統領が国連で行なった講演:
https://www.youtube.com/watch?v=S7z1fpBdd-E
を比べてください。そして、オバマとアフェウェルキのどちらが詐欺師らしいか、判断してください。画面の右肩には如何にも悪者そうなアフェウェルキの顔が掲げてあります。
藤永茂(2018年12月15日)
この10年近くの間、米国が、ヒューマン・ライツ・ウォッチや国連を使って政権交代を企てて来たエリトリアとその独裁者イサイアス・アフェウェルキに関して、実に興味深いインタビューのトランスクリプトと動画(YouTube)に行き当たりました。トランスクリプトはエリトリア贔屓のThomas Mountainの紹介ですから、彼なりの編集が行われたのではないかと、少し心配になりましたが、幸いにも、元のインタビューの動画も視聴することができました。トランスクリプトの内容は十分正確です:
https://www.tesfanews.net/president-issias-aferwerki-vs-al-jazeeras-2010-interview/
https://www.youtube.com/watch?v=O0uQwODNkTA
2010年2月20日、アルジャジーラの女性記者Jane Duttonはエリトリアの大統領イサイアス・アフェウェルキに面会してインタビューを行いました。国連安全保障理事会がエリトリアに対する厳しい制裁措置を決定したのは2009年12月23日、つまり、インタビューはそのすぐ後に行われたわけです。国連の制裁に反対した唯一の国はリビア、そのリビアのカダフィ政権は、2011年、NATOの猛爆によって崩壊し、カダフィは惨殺されたことを思い出しておきましょう。
米国が国連を操ってエリトリアに制裁を課した理由は全てがフェイクニューズに基づいていました。フェイクニューズとは、どこからか本当でない誤った情報が伝えられる誤謬ではなく、一定の目的を持って作られ(fabricate)、捏造(fake)されるものです。ジェイン・ダットンがアフェウェルキに投げつけた質問(詰問?)の全てがフェイクニューズに基づいていたことは、今日、明白に立証されているとマウンテン氏は言い切ります。その通りだと私も思います。
この白人女性記者は、一貫して何とも無礼千万な詰問調でインタビューを行いますが、相手は兎にも角にも一国の大統領、然るべき礼節をわきまえるべきでした。この挑発的な侮辱行為に対するアフェウェルキ大統領の態度は見事なものです。挑発に乗らず、24分間、最後まで冷静を保ち続けます。
上掲のマウンテン氏の論説に引用されているインタビューのトランスクリプトの全文を訳出するのは荷が重すぎますので、最後の部分だけ原文に続いて訳出します。PIAはアフェウェルキ大統領(President Isaias Afwerki)を意味します。インタビューはエリトリアの首都アスマラで行われました。
Jane Dutton: Human Rights Watch says that you are turning this country into a giant prison and creating a human rights crisis….
PIA : You can walk around and see if that is true again. It is a lie.
Jane Dutton: Why then do people come under the orders ‘shoot to kill’, if they want to leave this country?
PIA : No, no, not at all. If you are telling thousands are leaving this country then how do you think that can happen? If you are telling me that hundreds of thousands have left this country and asked for asylum
how can you imagine that happened?
Jane Dutton: Who do you consider your friends?
PIA : Where do you mean?
Jane Dutton: In the world…
PIA : A few, a bunch of liars may not be my friends but the whole world is behind Eritrea. Everybody is asking why all these lies? Why all these sanctions? Why this and that? It is an expression of the support of people. The minimum you can imagine sensible people asking simple questions about all the fabrications they hear everyday. That is by way of questioning the credibility of those telling the lies.
This means, it is a support for the one which is being victimized without any evidence. That is very important to remember. And those people who are asking the simple questions are behind Eritrea.
Jane Dutton: Can you just tell us a little about your aspirations?
PIA : We don’t need war. We have fought for so many decades and we know what it means to go into war. It is very senseless to imagine that you can waste your time and resources doing things that do not deserve any
penny.
We are focused on doing ‘the right things in this country. And we don’t need to do it by forcing people to believe this or that. People are seriously engaged in what they are doing to change their quality
of life.
Those who have never tried it may fantasize about going to war. We have been there for so many decades, almost two generations. At least we will not be like Kenya, Nigeria, Ethiopia, Somalia, Sudan.
We are better off.
“We are number one in this continent.”
<翻訳>
JD: ヒューマン・ライツ・ウォッチは、あなたがこの国を巨大な監獄にしつつあり、人権危機を引き起こしていると言っていますが・・・
PIA: ご自分で歩き回って、それが本当かどうかご覧になってください。それは嘘です。
JD: 嘘だとしたら、人々がこの国から出て行こうとすると、‘射殺せよ’という命令の下に身を晒すことになるのは、何故ですか?
PIA: いや、いや、そんなことは全くない。あなたは、先ほど、何千人もの人が国外に脱出していると言ったが、射殺されるのなら、どうしてそれが可能なのです? あなたは、何十万という人がこの国を去り、他国に亡命保護を求めていると、私に言ったところだが、どうしてそんなことが起こると想像できるのですか?
JD: あなたは、誰があなたの味方だと考えますか?
PIA: どこでの話ですか?
JD: 世界で・・・
PIA: 僅かな数の、嘘つき連中は私の味方ではないでしょうが、全世界はエリトリアを支持しています。こうした嘘は何のため? これらの制裁は何故?何故こうしたり、ああしたり? 誰もが頭を傾げています。これは、人々の支持の表れなのです。せめて、想像だけでもしてみて下さい;物のわかった人々は、毎日聞かされる作り話の全てについて単純な疑問を呈しているのです。それは、つまり、嘘をついている連中は信用できないと言っていることに当たるのです。これは、何の証拠もなしに罰を受けている者に対する支持なのです。この事はよく覚えておく必要があります。こうした単純な疑問を呈している人々はエリトリアの味方なのです。
JD: あなたの大きな望みについて少し伺えますか?
PIA: 戦争はもう沢山です。我々は、もう何十年もの間、戦い続けて、戦争するということが何を意味するかを知っています。時間と資源を無駄に浪費して、一文の得にもならないことをやろうと考えるのは実に無意味なことです。この国では、成すべきことを成すことに集中しています。そして、我々は、それを成すのに、人々にあれこれ強制的に信じさせる必要はありません。人々は自分たちの生活の質的向上を目指して真剣に働いています。そうしたことをやってみたことのない人々は、戦争に訴えようかという幻想を抱きがちです。我々は何十年もの間、ほとんど二世代もの間、そうした状態にありました。少なくとも、我々は、ケニヤ、ナイジェリア、エチオピア、ソマリア、スーダンの様にはならないでしょう。我が国はずっとましです。“この大陸で我が国はナンバーワンです”<翻訳終わり>
上に掲げた通り、このインタビューはYouTubeのサイトで視聴することができます。英語が使われていますので、興味のある方は是非ご覧になってください。英語版Wikipedia によれば、Jane Duttonは有力なテレビ・パーソナリティのようで、その記事の中に面白いことが書いてあります:
For the strand Talk to Al Jazeera, Jane travelled to interview the famously camera-shy President of Eritrea, Isaias Afewerki, his country's sole head of state since independence in 1991. The interview is an internet favourite as the response to most of the questions was to denounce them as lies, without offering clarification or elaboration. (注:strandはテレビの連続番組のこと)
つまり、私がここで取り上げたダットンのインタビューは、彼女が投げかけた質問の殆どを、何の弁明も釈明もなしに、「嘘っぱち」だと弾劾するアフェウェルキ大統領の反応が面白いと、ネット上で人気を博しているというのです。確かに、このインタビュー動画の視聴回数は79万5千を超えています。しかし、視聴してご覧になればわかるように、証拠を求められているのは、むしろ、ダットンの方です。一つだけ例をあげれば、ダットンが「昨年、あなたを暗殺する企てがありましたが・・・」と断定的に畳み掛ける所がありますが、これは全くのフェイクニューズであったことが明らかになった時のことを私は今でもはっきり記憶しています。
このジェイン・ダットンという人のように、過去にフェイクニューズを撒き散らして特定のアジェンダを持った権力機構に進んで奉仕した人々には、フェイクニューズがフェイクニューズであることがはっきりしたら、一定の責任を取ってほしいと、私は、いつも思うのですが、世の中はそんな風には作動していません。
これは蛇足になりますが、私が「稀代のコンマン(詐欺師)」と見做すオバマ前米国大統領が「大統領の座にしがみつくアフェウェルキのような連中」に与える御託宣を伝える面白い動画を見つけたので紹介します:
https://www.youtube.com/watch?v=PiKz-WNyQJI
これと、エリトリアに国連の制裁が課せられた後に、アフェウェルキ大統領が国連で行なった講演:
https://www.youtube.com/watch?v=S7z1fpBdd-E
を比べてください。そして、オバマとアフェウェルキのどちらが詐欺師らしいか、判断してください。画面の右肩には如何にも悪者そうなアフェウェルキの顔が掲げてあります。
藤永茂(2018年12月15日)