私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

キューバ製コロナ・ワクチン:THE FULL STORY

2021-04-23 23:19:31 | 日記・エッセイ・コラム

 キューバで製造されている5つのコロナ・ワクチンについての詳しい総合報告が出ましたのでお知らせします;

https://libya360.wordpress.com/2021/04/20/cuba-the-full-story-on-soberana-01-02-plus-abdala-and-mambisa/

藤永茂(2021年4月23日)

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 キューバは自力でコロナ・ワクチンを製造した

2021-04-15 15:54:21 | 日記・エッセイ・コラム

 キューバは自国内で自らの科学技術力でコロナ・ワクチンを製造して、それにSoberana02(ソベラナ02)という名前をつけ、3月には安全性テスト最終段階として首都ハバナを中心に大量のワクチン注射を行っています。キューバの総人口は一千百万、数ヶ月のうちに全国民のワクチン接種が済みそうな勢いです。ソベラナとは英語のsovereign にあたり、薬の場合には、特効のある、最善の、といった意味になります。

 メディアも盛んに取り上げるようになってきました。「日本海テレビ」の最新の記事をコピーさせて貰います:

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東京にあるキューバ大使館が14日、新型コロナウイルスに対応したキューバの国産ワクチンの開発状況について講演会を行い、3つのワクチンが最終段階の臨床試験に進んでいると説明しました。

講演会はオンライン上で開かれ、日本のメディアや国会議員、専門家など100人あまりが参加しました。

■国産ワクチン3種が「第3相」
講演した駐日キューバ大使館のミゲル・アンヘル・ラミレス大使は、キューバで新型コロナウイルスに対応した国産ワクチンが現在5種類開発されていると説明し、うち3つのワクチンが最終段階の臨床試験に入っているとして、開発が順調に進んでいると強調しました。

このうち国内の研究所で開発中のワクチン「ソベラナ02」では臨床試験で90%の有効性が確認されたとしています。

■キューバ 高い医療水準
キューバは1959年の革命以降、医療制度の拡充に力を入れる政策が進められ、中南米諸国のなかで高い医療水準にあるとされています。また、予防医療に積極的に取り組みB型肝炎や肺がんワクチンを自国で開発するなど国産ワクチンの開発にも力を入れてきました。

新型ウイルスの感染が拡大する中、アメリカによる経済制裁で、人工呼吸器の輸入が制限されるなど、医療の面でも厳しい状況に置かれていますが、自力で感染拡大防止に努め、新型ウイルスによる犠牲者は比較的低い水準に抑えられています。

■国際社会と協力
キューバの新型ウイルスワクチンについてはアルゼンチンやメキシコなど中南米諸国のほか、インドやパキスタン、アフリカ連合が購入を希望しているとしています。ワクチン開発の臨床試験は外国とも協力して行うということです。

■年内には接種を完了
今後、6月にもワクチンの国内承認をめざし、8月には60歳以上の高齢者全員を含む700万人に接種を行い、年末までには国民全員、1100万人あまりに接種を終わらせたいとしています。

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「週刊東洋経済」の記事:

https://toyokeizai.net/articles/-/419257

もご覧下さい。

NBC News などにも長い記事が出ています:

https://www.nbcnews.com/news/latino/cuba-says-betting-safe-covid-vaccine-rcna643

詳しくて読みやすい記事としては

https://blogs.lse.ac.uk/latamcaribbean/2021/03/31/cubas-five-covid-19-vaccines-the-full-story-on-soberana-01-02-plus-abdala-and-mambisa/

があります。はじめの部分を抄訳します。

「コロナ禍の発生に対するキューバの対処は迅速で、2020年間、1千120万の総人口に対して、感染者12225、死者146に止まったが、2020年11月に空港をオープンしたら、感染者数が急増して、2021年1月だけで前年度全体の数字を超えてしまったが、それでも、2021年3月24日までの感染者は7万人以下、死者数408に止まった。この数値は世界で最低の部分に属する。

 この時点までに、キューバは2万8千人の医療要員を世界の66の国に派遣して、コロナ感染者の治療にあたっている。国内では、2021年3月に国内で生産された二つのコロナ・ワクチンの最終テストの段階に達し、あと三つのワクチンもそれに続いている。この成果は、過去60年間もキューバが米国の貿易封鎖に痛めつけられ、しかも2017年にはさらに過酷な締め付けが始まったことを考えると、特筆に値する。」

  この後、この記事では、キューバでのワクチン開発の有様が具体的に解説されています。注射ではなく、鼻に注入するタイプのワクチンも開発されています。その名前の出所について、次のように解説してあります:

「The other vaccines, Abdala and Mambisa (an intranasal, needle-free vaccine), are produced by the Centre for Genetic Engineering and Biotechnology (CIGB). Abdala is named for a poem by the national hero José Martí, and Mambisa is named for soldiers who fought against Spanish rule in the mid- to late 19th century. These vaccines insert genetic information into a less evolved, unicellular microorganism (the yeast Pichia Pastoris). They build on the long experience and impressive record of the CIGB, whose hepatitis B vaccines have been in use in Cuba for 25 years. 」

 キューバのワクチンの命名については、亡くなったフィデル・カストロが、自分の死後、何事につけても、その名前を使うことがないようにと遺言したから、ワクチンの名前にも使うことが出来ないのだという話を、別の記事で読みました。

 キューバの自力によるワクチン開発に関しては、以前からもかなりの数の報告がありました。以下に、幾つか挙げておきます:

https://libya360.wordpress.com/2021/03/01/soberana-02-could-cubas-covid-vaccine-break-big-pharmas-grip-on-production/

https://www.counterpunch.org/2021/03/15/cuba-working-on-a-peoples-vaccine-the-us-and-the-world-should-get-behind-it/

https://libya360.wordpress.com/2021/03/17/thirty-five-covid-19-landmarks-in-cuba/

https://www.counterpunch.org/2021/03/30/cuba-libre-to-be-covid-libre-five-vaccines-and-counting/

 半世紀以上もの間、しかも最近さらに格段に強化された米国の貿易金融封鎖に苦しみながらも、カリブ海の小国キューバが自力でコロナ・ワクチンを製造して全国民の健康を守り、その上、世界の貧困国家にワクチンを低価格で提供しようとしているという、瞠目すべきmagnificent feat は一体どうして可能だったのでしょうか? これは一国の科学技術政策はどうあるべきか、自然科学者、技術者は人間社会の一員として如何に身を処すべきかに就いての重要な問いかけとして受け取らなければなりません。

 キューバの場合には、故フィデル・カストロの先見の明と努力に負うところが大きかったようです。次の記事はいささかカストロ礼賛過剰の気味はありますが、一読に値します。結語の部分をコピーしてご覧に入れます:

「Because he himself wanted it to be so, none of the Cuban vaccines will bear Fidel’s name, but all of them will bear his humanitarian spirit and his vocation to make a revolution for the excluded of the earth, for those who have no right to anything, not even a vaccine against the pandemic.

When all Cubans and millions of men and women in different parts of the planet are immunized with Cuban vaccines, they should know that this has been possible because that maker of revolutions, that one who overcame death because “to die for the homeland is to live”, the one who made a small Caribbean island become a giant exporter of life and health, dreamed it, thought it and did it.」

https://libya360.wordpress.com/2021/04/05/fidel-father-and-inspiration-behind-cubas-scientific-system/

 

藤永茂(2021年4月15日)

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ハイチは今なお重い苦しみの中に(3)

2021-04-07 19:11:58 | 日記・エッセイ・コラム

  このシリーズで取り上げているハイチについての著書『WE HAVE DARED TO BE FREE (我々は敢えて自由であろうとした)』の紹介を続けます。

 前回ではその序説の大半を訳出しました。そこには著者ダディ・チェリーさん(生物科学准教授の肩書きを持つ生粋のハイチ女性)がハイチ革命の成就にかける高揚した熱意が溢れていました。それは、単に、米国の残忍な圧政からの母国ハイチの政治的独立達成を目指しているのではありません。ハイチ人が求めている「人間の生き方」こそが、今からの世界の人々の生きるべき手本を示しているのだから、この戦いに参加せよと呼びかけているのです。大した心意気ではありませんか。

 ハイチは今なお重い苦しみの中に(1)に述べたように、東日本大震災の前年の2010年1月12日、ハイチ(人口約一千万)を大地震が襲いました。死者行方不明者20万人以上、負傷者は35万を超え、全人口の三分の一が被災するという大国難だったのです。それ以前には著者ダディ・チェリーの職業的生活は全く生物科学の研究に捧げられていましたが、この大震災を機に、彼女は著作家、ジャーナリストとしての活動をも開始します。本書は2010年から2015年にかけて執筆されました。ハイチという極めてユニークな国の歴史と現状、その存在の世界史的意義を知るための最高の好著の一つです。

 本書の第一部は「我々の文化が攻撃されている」で、その第一章は「Link of Vodou to Haitian Culture」と題されています。ヴードゥー教と聞けば、私たちは何かしらおぞましい原始的宗教のように考えがちだと思いますが、これは多分ハリウッド文化の悪い影響でしょう。ヴードゥー教の理解を少しばかり試みる前に、大地震直後のハイチで発生した災害孤児についてのダディ・チェリーの驚くべき発言に耳を傾けることにします。彼女は激震地の外に居たようですが、地震直後から、見舞いや被害状況の問い合わせのメールや電話が殺到します。長年の友人である米国在住の黒人男性からの電話に答えて、彼女は「There are no orphans in Haiti !」と叫んでいる自分に気がつきます。相手には直ぐには理解して貰えません。大地震後の騒乱の中で、米国やフランスなどの熱心な里親希望者の求めに応じて、多数のハイチの子供たちが国外に運ばれていました。人身売買の形を取ることもあったのです。その状況下で、「ハイチには親なしの子供なんか居ない!」とチェリーさんが思わず声を荒立てたのは何故か?

「There was no quick way to explain to this close black-American friend, with no direct knowledge of Haiti, the customs of Haitian families. Would he understand, for example, that women routinely adopt and love the children by the poorer mistresses of their unfaithful husbands? Two of my close cousins come from such arrangements. I could have told him too that a terrible Haitian insult is to be called a “sanmanman.” There is no equivalent word in any other language I know. The literal translation is “mother-less” but this pejorative is worse than bastard. It defines a person who is such a degenerate that no one would mother him ….  」

訳してみます:

「ハイチについて直接的な知識のないこの親友の米国黒人に、ハイチでの家族習慣を手っ取り早く説明するのは無理だった。例えば、女性たちが、不貞な夫と彼女たちより貧乏な情婦の間にできた子供を養子にして愛育することがごく普通に行われていることを、彼は理解するだろうか。私の近親のいとこの内の二人もそうした身の上だ。また、ハイチでは「サンマンマン」と呼ばれることが大変な侮辱であることを彼に話せばよかったかもしれない。私が知っている限りの他の言語には、これに相当する言葉はない。直訳すれば「母親がいない」ということになるが、この蔑称は私生児と呼ばれるよりも悪い。あまりにも堕落した碌でなしなので、誰も母親になってやろうとしないような人間を、その言葉は意味するのだ・・・」

<訳注を二つ>「サンマンマン」はフランス語のsans maman (母なし、サン・ママン) から来たハイチ語です。bastard はson of a bitch と同じく、ひどい罵りの言葉。

  本書の23頁によると、震災の直後、ハイチの子供たちを国外に連れ去ろうとした連中に激怒したハイチ人たちが悪漢たちを殺害する事件が数回発生しましたが、外国メディアには取り上げられなかったようです。誘拐されたハイチの子供たちは臓器密売の犠牲になる場合もありました。

  ヴードゥー教については、本書を含めて多数の解説が読めますが、ここでは元在ハイチ日本国大使の八田善明氏の筆になる興味深い一文から数節を引用させていただきます:

http://www.apic.or.jp/projects/haiti008.html

第8回「ハイチ便り」:ハイチの文化的特色(その3)

  ~ ハイチにおける宗教(キリスト教やヴードゥー教)について ~

寄稿:元在ハイチ日本国大使 八田 善明

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ヴードゥー教

 ハイチには、独自の宗教であるヴードゥー教(Vodou、Voodoo(英)、Vaudou(仏))があります。ヴードゥー教は、必ずしもハイチだけではなく、それらの人々の祖先に当たるダオメ(現ベナン)、トーゴやコンゴ等におけるもの、そして派生した米国のニューオーリンズ等におけるもの等もありますが、ハイチにおける特徴的な要素の一つであることは間違いありません。「ヴードゥー」の語源自体は、ダオメ王国のフォン族のVodun(精霊・神)から来ていると言われ、200年以上前にアフリカからハイチの地に人々と共に持ち込まれました。なお、当時はばらばらであったそれぞれの出身地の信仰が次第に合流し、また、当時の先住民であるタイノ族等の信仰・習慣も合わさり、そして後にカトリック主流の時代にそれらの要素も多く統合(習合と表現されることが多い)しながら独自のハイチ・ヴードゥー教を作り上げたとされています。

 遠く日本の我々からすれば、ヴードゥー教という言葉自体は耳にしたことがあっても、おどろおどろしい呪術的なイメージ止まりのことも多いかも知れません。おそらく、米国によるハイチ統治期間以降ヴードゥーについての紹介が増加し、併せてゾンビや呪術的なイメージが広まり、次第に「ゾンビ」が一人歩きして小説や映画で活躍するようになったものと見られます。また、有名な007の映画「死ぬのは奴らだ」(1973年)でもかなりカリカチュアされたイメージで登場するくらいなので、そうした魔術的なイメージが広がる時代的な背景があったのかも知れません。そうしたイメージ先行の感が拭えませんが、これが何処で信仰され、どのようなものか、まだ実践されているのか等は必ずしも知られていないでしょうし、ハイチと結びつく人も多くはないのではないでしょうか。

 ヴードゥー教は、組織的な見方をした場合、比較的ゆるやかな面があります。厳格な指名/任命による絶対的なピラミッド構造というものではなく、神官への就任についてもフレキシビリティがあるようです。そもそも聖書やコーラン等にあたる厳密な書・聖典はなく、自然の真理に聞くという泰然としたものと捉えられているようです。とは言いつつも、最高指導者は存在し、アティ(ラティ)(Ati:L'Ati)と呼ばれます(王(Roi)や皇帝(Empereur)をいただいている別組織もあり、併存している状況です)。

 口頭で多くを伝承してきたヴードゥー教は、信仰を要素としていますが、同時に生活であり、文化であると捉えられています。かつて、法の整備がなされていない社会において、時に紛争・いざこざの調停の役割を果たし、知恵を授け、病気に対しては薬草を煎じて与え、心身の回復をもたらす機能を担っていたと言います。また、開放的な面も信条としており、男女差なく、色々な意味において同性愛も広く受け入れて、居場所を与えてきたとも言われます。

(日本の宗教的感覚との共通点)
 ヴードゥーの中身を少しずつ聞いていると、何かしら目新しくないことに気がつき始めます。日本の神道などを直接的に重ねる必要はありませんが、「自然」を発祥としている、自然への畏敬や敬愛、祖先や家族への敬意等日本で宗教感もなく比較的自然とされていることに何かと近いことを感じざるを得ません。幸いに、アティや王様とお話をする機会に恵まれましたが、ヴードゥーは、「未知なる事柄へのアプローチであり、永遠の追求である」といった趣旨の事を言われました。また、「自然の中から全て生まれ、最後はそこに戻る」とも言います。ヴードゥーでは、大事なことは「森に聞く」と言いました。分け隔て無く人を受け入れ、癒すことが、ヴードゥーであり、精神的な、スピリチュアルな要素もあるけれども、それは生活であり、社会であり、正義であり、医療であり文化であると説明がありました。

 何かがあれば、森に入るという点では、神社が山や森に構えられていることにも通じそうです。401の精霊がというのも沢山の例えであるとのことで、八百万の神と同じに思えます。何か悪いことをしたときにはバチが当たるという感覚もあるようですし、言霊というのもありそうです。

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 ダディ・チェリー著『WE HAVE DARED TO BE FREE (我々は敢えて自由であろうとした)』は、ヴードゥー教とハイチの人々の生き方との関係を論じた後、2010年の大震災をめぐる米欧諸国の言語道断の振る舞いを中心に据えて、ハイチ独立の歴史を展開します。私もこの時期からハイチに強い関心を抱くようになり、幾度もブログの記事を書きました。それらは2021年3月15日付けの記事:

ハイチは今なお重い苦しみの中に(1)

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/84b59e72450e9b8b811de717a2279bf3

の中に挙げてあります。その中にはハイチについての最近の報道記事も二つ引いておきましたが、便宜のため、再度掲げておきますので、ご覧になって下さい:

https://libya360.wordpress.com/2021/03/12/haiti-a-day-in-the-life-of-fighting-dictatorship-and-neocolonialism//

https://libya360.wordpress.com/2021/02/05/haiti-the-object-of-hatred-and-pillage-of-the-world-s-powers-for-200-years/

 

藤永茂(2021年4月7日)

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