先日(9月4日)の記事「私のフェミニズム」の中で
「本の話が長くなってしまいましたが、キューバ革命に参加した女性たちについてカストロが発した言葉を、私は鮮明に覚えているので、実は、この本にあったと思って懸命に探したのですが、見つかりませんでした。カストロは次のようなこと言ったのです。
「小銃の数が充分でない時には、女性の兵士に優先して配る。彼女らの方が、男たちより頼りになる。」
カストロのこの内容の発言の出どころをご存知の方はぜひ教えてください。」
とお願いを書きましたら、平尾みち子さんと大橋晴夫さんから早速ご指摘をいただきましたので、原文そのままを引用させていただきます。
平尾みち子さんから:
「カストロが女性について語った部分を「フィデル・カストロ みずから語る革命家人生」イグナシオ・ラモネ著2011年岩波書店発行で探してみました。上巻の第10章 革命初期の過程と問題 女性差別(p256〜p258)の項で女性部隊の働きについて男たちに「女性兵士の方が君よりも優秀だからだ」(p258上段)と語っています。英語版でカストロの発言を探すのに手がかりになるのではと思い書き出してみました。)
大橋晴夫さんから:
「藤永ブログクルドの女性たちは闘う2020-08-19に以下の記述がありました。
私は、もう一冊、皆さんに紹介したい本を思い出しました。戸井十月著『カストロ、 銅像なき権力者』(新潮社、2003年)です。その213頁にあるカストロの言葉から引用します:
「日本はどうか知りませんが、キューバでは女性の活躍がめざましいんです。キューバでは三年の徴兵制度がありますが、女性は免除されています。そのせいもあるかもしれませんが、ともかく女性が優秀です。技術者も六五%が女性だし、医大生の三人に二人が女性です。
女性はよく勉強するし、本質的に男より勇気があります。革命の時も、敵から奪った武器を優先的に女性に渡しました。どうして男より先に女に武器を渡すのだと怒る男たちもいましたが、私には、女性の方が勇敢に闘うことが分かっていました。彼女たちは、子供のために命を懸けて闘いました。男たちが逃げても女たちは逃げず、少人数でも進んで行きました。子供を守ろうとする母親の力に勝るものはないのです」
(付記)『アンネの日記』について、私の犯した重大な誤りを指摘してくださったのも平尾みち子さんです。あらためて深く御礼を申し上げます。
藤永茂(2025年9月8日)
このブログの記事「悪魔の代弁人」(2025年8月16日付)に、今日まで、15のコメントを頂きました。それは、一、二を除き、「櫻井元」さんと「睡り葦」さん、お二人の間のやり取りですが、拝読しながら、私は、これぞ冥利に尽きるというものと痛感いたしました。コメンテーターとしてのお二人はよく存じていますが、面識はありません。年齢も存じ上げません。察するに、このお二人同士も、面識はおありでないのだろうと思います。しかし、お二人の間の会話の豊かさ、温かさ、これが、私のブログの中で行われたということ、これは冥利以外の何ものでもありません。みなさんの味読をお願いします。
私は「くたばれAI, くたばれSNS」と題する記事を書きましたが、内容を修正する必要があるように感じます。インターネットという媒体を通じて、人間と人間との見事な絆が成立可能だということですから。
歳をとって、頭もぼやけて来ましたので、この辺でブログ書きをやめようかと思いましたが、この冥利を授けていただいて、少し欲が出ました。行先は「はてなブログ」を考えています。
藤永茂(2025年9月5日)
私は戦時中に基礎教育を受け、信時潔作曲の「海行かば(うみゆかば)」を大声で歌っていた人間で、フェミニストというのは、女の肩を持つ軟弱な男のことだと思っていました。戦後にはこれよりは少しマシになりました。ベッティ・フリーダン、シモン・ド・ボヴォアール、マーガレット・ミードなどの名前を覚え、そのうちにアナーキズム(無政府主義)に興味を持つようになり、ウィリアム・ゴドウインとメアリー・ウルフストンクラフトを知るようになりました。ここでこの二人の間にできた娘については、ウィキペディアの記事を借用します:
「1797年、メアリは結婚制度を否定することで知られた無政府主義の思想家ウィリアム・ゴドウィンの子を身ごもった。結婚制度を共に否定してきた二人だったが、生まれてくる子が私生児ゆえに社会や法的権利上で差別されることを恐れ、同年3月29日、ロンドンの教会で結婚式を挙げた。これまでの自分たちの主張を覆す「教会での挙式」を選んだため、二人は多くの友人を失った。同年8月30日、ロンドンで娘メアリ・ウルストンクラフト・ゴドウィンを生んだが、出産からわずか11日後の9月10日、38歳で産褥熱のため死亡した。なお、娘メアリ・ウルストンクラフト・ゴドウィンは、後にロマン派詩人パーシー・ビッシュ・シェリーと結婚し、メアリ・シェリーと名乗り、小説『フランケンシュタイン』の作者として名高い。」
このあと、テレビの番組で英国にエミリー・ウィルディング・デイヴィソン(1872−1913)という列女とサフラジストというフェミニズム運動のことを知りました。
こんなふうに書くと、私がいっぱしのフェミニズム思想家かと勘違いする人々もおありかと思いますが、そうではありません。私は、人生の終わりにあたって、女性のほうが男性よりも立派な人間だという確信に至った人間です。この確信は、何よりも先ず、誤嚥性肺炎を避けるために胃瘻装着の手術を受け、加えて、最も深い程度の認知症に苦しみつつ、世を去った私の妻の人間としての振舞いから得たものです。戦場で果てた兵士たちの多くが最後に発した言葉が「おかあさん」であったと、戦後に、広く伝わりました。これは、母親が母乳を与えたという単なる事実の故でないことが、私にはよくわかります。
しかし、ここでお話ししたい私のフェミニズムの二つの主要な源であるフィデル・カストロとアブドウラ・オジャランです。
私はカストロの長い間のファンです。キューバという国のファンでもあります。カストロについては、彼の公式の伝記とになされている本があります。2006年にスペイン語でスペインで出版されました。英語訳は2007年に出版され、「口述自伝」となっていて、細字で725頁の大冊です。著者はフィデル・カストロとイニャシオ・ラモネの二人になっています。ラモネは1943年スペイン生まれのフランスの著名なジャーナリストで、1991年から2008年までフランスの有名月刊誌「ル・モンド・ディプロマティック」の編集総長を務めました。1998年に執筆した「もうひとつの世界は可能だ」という記事は有名です。
日本でも、岩波書店がこの本の重要性を認め、早くも2011年に、
フィデル・カストロ (上、下) みずから語る革命家人生
というタイトルで出版されました。それには、
「歴史に残る貴重な発言を満載.著名ジャーナリストとの一〇〇時間余におよぶ対話で語り尽くした,稀有な革命家の〈大河的人生〉」
という紹介がなされています。しかし、私はこの翻訳書には接したことがありません。残念ながら、今は「品切れ」で、入手も困難の様子です。私の手元にある英訳書は、アマゾンで見ると、ハードカバー(¥17,962)、ペーパーバック(¥4837)で、古本だと¥1544で入手できるようです。
内容を少し紹介します。上掲の岩波版のタイトルには不正確なところがあり、原著(英訳書)の正確なタイトルは、
A SPOKEN AUTOBIOGRAPHY FIDEL CASTRO FIDEL CASTRO & IGNACIO RAMONEET
となっていて、はっきりと、カストロとラモネの共著になっています。これは重要な点だと思います。28章から成っていて、ラモネがあらゆる質問をして、それにカストロが率直に答える形になっています。カストロ、キューバに大いに関心があり、英語を読むことにあまり苦痛を感じない人々には、絶対のお薦めです。
本の話が長くなってしまいましたが、キューバ革命に参加した女性たちについてカストロが発した言葉を、私は鮮明に覚えているので、実は、この本にあったと思って懸命に探したのですが、見つかりませんでした。カストロは次のようなこと言ったのです。
「小銃の数が充分でない時には、女性の兵士に優先して配る。彼女らの方が、男たちより頼りになる。」
もしカストロのこの内容の発言の出どころをご存知の方はぜひ教えてください。
さて、話がすっかり長くなってしまいましたので、私のフェミニズムのもう一つの源として掲げたアブドウラ・オジャランについては、詳しくは、機会をあらためて報告したいと思います。ただ、ほぼ偶然にとても興味ぶかい日本語の記事に遭遇しましたので、ここで
紹介させていただきます:
https://wired.jp/2021/02/10/jin-jiyan-azadi/
女性、人生、自由──クルド女性防衛隊をめぐるフォトエッセイ
ぜひご覧ください。
藤永茂(2025年9月4日)
NHKの番組 BS「世界のドキュメンタリー」で、フランスで制作された二つの作品『AI
不都合な真実』、『SNSのワナ』が放映されました。必見です。私達は、AIやSNSがな
くても、結構、生きて行けます。この二つのドキュメンタリーに描かれているような恐ろ
しい害毒があるのならば、廃止してしまうべきです。それにしても、この必見のドキュメ
ンタリーで、AIやSNSの害毒に対して、果敢に声を上げ、戦っているのは全て女性である
ことは注目に値します。女性のほうが、男性より人間の生命を守る意志が強いことの証拠
だと私は考えます。AIに学問として興味を持っている学者も数多いますが、AIもSNSも、
それを推進している力は、圧倒的に、金儲けを追求する力です。
藤永茂(2025年8月31日)