私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

年が暮れ、年が明ける

2019-12-31 20:58:51 | 日記・エッセイ・コラム

 年が暮れ、年が明けます。万感去来。櫻井元さんが寄稿して下さったお蔭で、有難いコメントを四つ頂きましたので、まずはお礼をしたためます。 

津久井様

 米国コネチカット州、ニューヘイブンからのコメント、有難うございます。私も、カナダと米国で暮らした経験を持つものとして、いや、どの土地に住むとしても、個人のレベルでは、心に残る懐かしい経験がいくらもあるのが当然と思います。北米を支配する権力機構に対する私の反感は決定的ですが、連帯できる素地のある普通の人たちは沢山いると思っています。「自分の周りにいる友人、知人たちに、煙たがられないよう気を使いながら「知らしめる」ことを続けていこう」というお言葉は、まことに humane で心に沁みました。 

近藤英一郎様

 多くのことを教えていただいたのは私の方です。他の読者の方々のご参考までに、2011年3月9日付けの私のブログ記事『ハネケの<白いリボン>』:

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/e4c0b4065ae527a36c00dbb3e1d834d6

の前半をコピーします:

「 昨年の暮れ、私のブログを読んで下さったウイーン在住の近藤英一郎という方から、次のようなコメントを頂きました。:

----------

もしお時間がお有りでしたら、ミヒャエル-ハネケの<白いリボン>という映画をご覧になって下さい。

ハネケは、昨今のオーストリアが誇れる唯一の人物です。

日本で上映中のようなことを耳に挟みましたので。

16年間中欧で暮らして、ヨーロッパ人(様々な階層の)の、芯部底部にたびたび触れ、その時の、何ともいえないザラッとしたグロテスクな感触がそのまま描かれているので、心底、驚愕しました。

日本の能の様な印象でした。 

映画がお好きのようですので、お知らせ致しました。 

佳き新年を

近藤英一郎(在ウィーン)

----------               」(引用終わり)

同じミヒャエル-ハネケ監督の映画<AMOUR, 愛>は、今では私が最も愛する映画の一つです。ハネケは「これは介護についての物語ではない。私は愛について語ったのだ」という意味のことを言っています。死ぬまで私はこの稀有の芸術作品を想い続けるでしょう。

한국에서 様

 韓国語でいただいたコメントを翻訳アプリで翻訳すると「한국에서」は「韓国で」を意味し、「선생께서는 후학들에게 늘 모범이십니다.」は「先生は後輩の学者にいつも模範です。」となりました。私は到底このお褒めの言葉に値しませんが、与えてくださった機会に、提案したいことがあります。この頃のご時世では、現職の学校教師はなかなか思った通りのことを発言できない雰囲気の中にあると思います。しかし、定年退職した我々老人教師はもう首を切られる心配もないのですから、いじめを受けやすい若い人たちに代わって、言いたいことをどしどし発言したら良いのではありますまいか。

 もう一つ、ついでに、以前(2017年3月9日)、ブログに書いた文章の切れ端を以下に再録させて頂きます:

「マレーシア当局が証拠不十分のまま拘留期限が切れたとして釈放した北朝鮮国籍の人は、たしか、Choiという名前でした。私が在職したカナダのアルバータ大学でチョイさんという韓国人の夫妻とお知り合いになりました。人間的に実に気持ちの良い立派なご夫婦でした。化学教室内の地位では、チョイさんは万年ポストドックのような立場、私は教授でしたが、理論化学者としての力量は、その鋭さにおいて、むしろチョイさんの方が上だったかもしれません。チョイさんのお父さんは終戦前の朝鮮で反日的な思想の持ち主として当局から睨まれた経験を持った人物だったようです。一方、奥さんのお父さんは京都大学出身で戦後の韓国政界とも関連があったと聞きました。前にも書いたことがありますが、チョイさんは「中国語と違って、朝鮮語の語順は日本語に似ているから」と私を励まして、朝鮮語の個人レッスンを始めてくれたのですが、私がダメで続きませんでした。今でも私はそのことを後悔しています。」

セコイアの娘 様

ご親切なコメントを戴くのは、これで3度目ですね。ご指摘の「ポリティカリーコレクトネスの呪縛」、全く同感です。私が尊敬する Paul Craig Robertsさんも頻りに嘆いていますが、「白いものは何でも悪い」とするのも、実に馬鹿げたポリティカリーコレクトネスの一例でしょう。白いものに良いものが沢山あります。白人にも立派な人たちが沢山います。

以上、この度いただいた四つのコメントについてお礼を申し上げました。 

 2019年の、私にとって最大の痛恨事はボリビアのモラレス大統領が国外追放されたクーデター事件です。これは、カルロス・ゴーン氏の日本脱出などとは比較にならないくらい重要な事件です。世界史的な意義があります。2020年についての私の最大の願いは核戦争の阻止です。もう一つ、踏み込んで言えば、核兵器廃絶の達成です。

 

藤永茂(2019年12月31日)

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侵略の共犯―侵略者のウソに加担する者の罪(7)

2019-12-24 19:32:39 | 日記・エッセイ・コラム

<櫻井元さんの御寄稿の最後の第7部です。藤永茂>

先の講演の中でヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗氏はこう言っている。

「最後に、これが日本の事務所にとても関係があることなのですが、世界にある政府、すなわち人権を尊重する政府の力を借りるという方法です。ヒューマン・ライツ・ウォッチは伝統的にはニューヨークに本部があるので、アメリカ政府あるいは欧米の政府の力を借りるという方法を今まで中心的にとってきました。欧米の各国の首都に事務所がありまして、その事務所の担当者がその各国の外務省、あるいは政治家などとのパイプを持っていますので、そこを利用しながら人権侵害の情報を渡して、外交の課題として取り上げてほしい、実際に言葉で人権侵害を止めろとしっかり発言してほしい、場合によっては制裁も発動してほしいとか、国連の安保理でこれを取り上げてほしいと、いろいろなことを提案しています。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際NGOと言われながらも、まだまだ欧米に事務所が多いです。アジアの中での事務所設立としましては、公式なものとしては日本が初めてです。今年の9月にインドのデリーに事務所ができました。グローバル・サウスと言われているエリアに事務所は少ないのです。事務所を首都に作っていって、首都の外務省、政治家、あるいは有力な知識人という方々とコンタクトを取っていくことによって、そしてメディアとつながっていくことによって、インドなどアジアの中でも様々な国が人権侵害に対して声を上げていくということを実現していかなくてはとヒューマン・ライツ・ウォッチとしては思っています」 

ここには、「世界で人権を尊重する政府とは欧米の政府であり、彼らの力を借りて人権抑圧国に圧力をかけてもらう。制裁も発動してもらうし、安保理でも取り上げてもらう。そのために欧米の政府の要人たちとパイプを密にしている」という内容が書かれている。ヒューマン・ライツ・ウォッチのこの欧米観には呆れるばかりだが、その問題とは別に、これほどまでに欧米の政府への依存度を強め、彼らと昵懇の間柄になってしまうと、政治権力との距離を保つため政府からの資金は一切受けないとしたことの意味も無くなってしまうだろう。欧米寄り、欧米への偏向、欧米のパワーエリートたちとの政策アジェンダの共有という問題が、一部の構成員の問題などではなく、組織の構造的な問題であることがわかる。 

以前にアムネスティを批判した際、アムネスティ米国事務局長のSuzanne Nosselという人物を例として挙げたが、今回はヒューマン・ライツ・ウォッチの事務局長Kenneth Rothという人物を取り上げたい。

 

彼はツイッターを多用するが、例えばシリアについてはこういうことを言っている。 

「シリアの救助隊(ホワイト・ヘルメット)が反アサドの英雄的な側面を見せるので、アサドの擁護者たちは彼らを悪魔のように印象づける必要があるのだ」

「米国政府はシリアのアサドに対して、シリア・ロシア両軍がイドリブの緊張緩和地帯とされる区域を攻撃する際に再び化学兵器を使用しないよう警告した。事前に反政府側を非難するようなシリアとロシアのウソに騙される者など一人もおるまい(訳注:シリアとロシアは、イドリブで反政府側が化学兵器の「偽旗作戦」を実行する動きを事前につかみ警告を発していた)」 

「化学兵器機関(OPCW)の今日の会合で、この機関に化学兵器使用の加害者を特定する権限を新たに与えようという案に対して、次に挙げる9か国だけが反対した。中国、キューバ、イラン、ラオス、ミャンマー、ニカラグア、ロシア、シリア、ベネズエラ。人権侵害を否定する顔ぶれと一緒だ」。 

https://twitter.com/KenRoth/status/860078898788397056 

https://twitter.com/KenRoth/status/1131245036224614400

https://twitter.com/kenroth/status/1011565218709811200

ベネズエラについては次のようなことを言っている。 

「石油が豊富なベネズエラは、かつてラテンアメリカで最も豊かな国だったが、チャベスとマドゥーロの両大統領の下での長年にわたるお粗末な統治、腐敗、弾圧によって、急激なインフレ、企業の倒産、大衆の貧困にさいなまれる国になってしまっている」 

https://twitter.com/i/web/status/1129693417636847618 

ボリビアについては次のような感じだ。 

「ボリビアのエボ・モラレスは『選挙の不正と彼自身の違法な立候補に対して民主主義を守るために起こった反・革命により倒された。軍には、彼を権力の座に居続けさせるべく国民に発砲するという構えがなく、彼を支えることをやめてしまったのだ』」 

https://twitter.com/kenroth/status/1196318814599884801 

先のForbesの記事は、「ロスはイェール大学出身の弁護士で、1987年には連邦検察官として米政府のスキャンダル『イラン・コントラ事件』を担当した経歴をもつ。スーパーエリートの身分を捨てて、ロスはNGOの世界に飛び込んだ」と持ち上げているが、彼が発信している内容はあまりにも事実を歪曲したひどいものばかりで、とんでもない人物だと思う。ヒューマン・ライツ・ウォッチの資金源の問題、政府要人との距離の問題、欧米寄りの偏向の問題などを見てきたが、組織を束ねる事務局長がこのような発言をしているようでは、もはや処置なしだろう。

ヒューマン・ライツ・ウォッチもウソばかりでは成り立たないだろうから、中にはまっとうな主張や報告もあるかもしれない。構成員や支援者の中には偏向とは無縁の善意の人たちがいるかもしれない。しかし、それはこの組織の「免罪符」にはならないだろう。ヒューマン・ライツ・ウォッチがこれまでに犯してきた「侵略者のウソに加担する罪」はあまりにも重すぎるのだ。様々な面で組織的な問題を抱え、Kenneth Rothのような人物が差配するヒューマン・ライツ・ウォッチは到底信頼できるものではなく、欧米の横暴を防ぎ侵略の悲劇を生まないためにも、最大限の警戒が必要だと思う。

かなりNGOの批判を続けてきたが、もちろんすべてのNGOが問題というわけではない。アフガニスタンで長年にわたって支援を続けてこられた中村哲氏が凶行の犠牲となられたが、氏の活動などは本当に尊敬すべきものであり、ここに心からのお悔やみを申し上げたい。不思議なのは、日本国内はもとより世界中で中村氏の死を悼む声が広がるなか、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、国境なき医師団などからは何も言葉が発されていないのだ。それぞれの中央本部と日本支部のサイトやツイッターを見ても、何も中村氏の死に触れていないのだ。同じ国境を越えたNGOとして、国境なき医師団などの場合は同じ医師として、中村氏の死を悼み、許しがたい暴挙に対し一言くらいメッセージを発してもよいと思うのだが。

藤永先生は以前、ペシャワール会の伊藤和也さんが凶行の犠牲になられた際、次の記事を書かれた。

伊藤和也さんは他のNGOに殺された

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/364f8cb22145a097a1282b8dbed926cb 

「侵略される側に寄り添い、民衆の側に立つ真のNGO」と「侵略する側のウソに加担し、欺瞞に満ちた活動をするNGO」、両者の違いをしっかり見極め、侵略者のウソに踊らされないように警戒すること。汚い侵略によって、美しい国土が破壊され、多くの民が命を落とし、難民となり、想像を絶する苦難に遭うなか、そのことの重要性をあらためて肝に銘じていきたいと思う。

 

(文責:桜井元) 

………………………

(おわりにあたって)

藤永先生のブログを拝読するようになってから10年近くが経ちました。記事にコメントをお送りするようになり、しだいに関連する情報などを調べては長めのコメントをお送りするようになりました。そうしたなか、先生からメールを頂き、「テーマは何でもいいので寄稿してくれませんか」という趣旨のお誘いを頂きました。 

有り難いお誘いでしたが、自分などがという恐縮の気持ちがあり、最初は迷いました。ただ、先生のお役に少しでも立てればという気持ちも強く、お引き受けすることにし、これまでにいくつか寄稿させていただきました。

藤永先生には本当に多くのことを学ばせて頂きました。いろいろと調べては書くという作業、英文を翻訳するという作業がいかに大変なことか、私ごときが多少こういう作業をしても感じることですが、先生はそれを本当に長い間、地道に続けてこられてきたわけです。しかも、長い年月の間には、ご病気の手術でブログがお休みになったこともありましたし、奥様の介護についてブログに書かれたこともありました。ご高齢の御身で、本当に頭が下がります。

過日に頂いたメールで、奥様のご容態が難しいとうかがいました。このことは私信の内容ですし、ここに書くべきか本当に本当に迷ったのですが、読者の皆様に藤永先生がどのような状況でブログに取り組まれているかを知っていただきたく、触れさせていただきました。 

読者の皆様、先生は今の状況でなかなかお一人お一人に返信はできないと思いますが、コメント欄などで励ましのメッセージを送って差し上げてください。よろしくお願いします。


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侵略の共犯―侵略者のウソに加担する者の罪(6)

2019-12-23 16:43:25 | 日記・エッセイ・コラム

<櫻井元さんの御寄稿の第6部です。藤永茂>

ヒューマン・ライツ・ウォッチの日本代表を務める土井香苗氏は講演の中でこう言っている。

「私はヒューマン・ライツ・ウォッチに入って、いろいろ驚きました。…中でも一番驚いたことがやはり資金です。…今ヒューマン・ライツ・ウォッチは年間40億円の団体でありまして、毎年40億円くらいの寄付を一般の個人や個人が作った財団を中心に集めているのですが、それを今後5年でなんとか80億円の団体にするのだと、すなわち2倍の予算にするのだということを掲げています。…この前ニュースがありました。ジョージ・ソロスが、今後ヒューマン・ライツ・ウォッチに10年間で100億円あげますと、毎年毎年10億円を出しますというようなことがありました。ソロス氏はヒューマン・ライツ・ウォッチの長年のサポーターで、40億円の内たぶん1億円くらいをくれていただけだと思いますが、長年ずっと20年間くらいたぶん毎年1億円とかそのくらいのお金をくれているドナーの1人だったのですが、ジョージ・ソロス氏は慈善家としても非常に有名でたくさん寄付をしている方なのですが、とは言え、彼自身の財団以外に出すものとしては今までで最大の額だったということで、ニューヨークタイムズの一面に載ったと記憶しています。日本でも日本経済新聞などで取り上げられています。これは偶然そうなったのではなくて、5ヵ年計画を作り、そして40億円のギャップがありますので、このギャップを埋めるためにまず1レイヤー、2レイヤー、3レイヤーと段階的にどうやって40億円を埋めていくかを考えて、最初に一番大口の寄付者を募って、そこからさらに今度は1千万円とか、2千万円レベルで出してくれる人達を募るといったような順番があります。その第一弾がたぶんジョージ・ソロス氏です。とにかく、40億、80億円をはじき出して、世界中のお金持ちからどうやってお金をもらうかということに関して、実際に計画も立ててお金をどんどん集めてくるというそのやり方も、私にしては毎日毎日びっくり仰天です」 

東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

グローバル・リーダーシップ寄付講座(読売新聞社)

土井香苗氏講演 「国際NGO代表となるまで、そして国際NGOのダイナミズム」

http://www.gls.j.u-tokyo.ac.jp/No8Doi.html 

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、寄付金を集めるために豪華なパーティーを開いており、猿田佐世氏(弁護士)のレポートには次のようにあった。

「なお、資金源は寄付が中心である。少額寄付も大変ありがたいことは間違いないが、寄付のスケールが違う。例えば、年に一度資金集めのディナーが世界中で開かれるが、2008年の NY でのディナーの席は最低額1000ドル(約10万円)から。NYでも有名な大博物館 「自然史博物館」 を借り切ってのパーティで、著名な人権活動家の講演を聞き、HRW の一年間の活動報告映画を見るというものであった」 

猿田佐世のニューヨーク便り

米国最大の国際人権NGO

http://www.news-pj.net/npj/saruta-sayo_ny/20090417.html

 

次に紹介するForbesの記事には、豪華なパーティーの様子がこう記されている。

「ホテルオークラ『平安の間』で、極めて異色のディナーが催されたのは4月8日のことだった。集まった数は310人。会場を見渡すと、日本経済を動かすエスタブリッシュメントや、華やかさを彩る芸能人や著名人の姿が目に入る。彼らの参加費は寄付金である。最高額は1,000万円だ。

『こういうのもありなんだね』 着席した夏木マリは辺りを見渡し、驚きの声を漏らしていた。テーブルに並ぶワインやステーキと、壇上に立ったゲストスピーカーが、ミスマッチとしか思えない組み合わせだったからだ。無名のスピーカーは、食事をする人々にこう語り始めた。『カダフィ大佐に対する私たちの闘いは人権闘争でした』…」

エリートNGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチが問う「正義のコスト」

https://forbesjapan.com/articles/detail/2279 

次のレポートは、帝国ホテルでのディナーに参加した方のもので、豪華な会場の様子を映した写真が掲載されている。 

http://www.cashmika.com/2017/05/25/%E2%9C%BE%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%84%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%81%E3%83%A3/ 

次の文章は、ホテルオークラでのディナーでオークションを担当したという業者によるもので、会場では芸能人の余興などがあり、出演したダンサーに「踊ってもらう権利」がオークションにかけられ、激しい競りの応酬の結果、52万円で落札されたなどとある。そして、オークションの流れのなかで寄付金が集められた様子が、こう記されている。

「そしてオークション後半は、HRWの活動を支援するためのロット。昨年同様こちらは競り上げではなく、希望者を募る形でのオークションです。今年サポートする活動は、『中東での緊急調査ミッション』、『HRWモスクワ事務所の活動』そして『HRW東京事務所の活動』でした。中東のミッションは一口50万円、モスクワ事務所のサポートは一口20万円でしたが、いざビッドを募ると中東は5名の方、モスクワは4名の方がビッドされました。いずれの方も躊躇なくパドルを上げていらして、HRWをサポートするという強い意志が壇上にいる私にもはっきりと感じられました。最後の東京事務所へは3万円からサポートが可能ということもあり多くのビッドがよせられました」

ヒューマン・ライツ・ウォッチ チャリティー・ディナー東京 2012

https://www.shinwa-art.com/blog/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E8%B2%A2%E7%8C%AE%E6%B4%BB%E5%8B%95/%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%84%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%83%E3%83%81%E3%80%80%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%BB-2.html 

これが「政府からは一切の資金を受け取らない」と謳う人権NGOの資金集めの形らしい。これではまるで政治家の政治資金パーティーのようだ。高級ホテルの会場、高額のディナー、芸能人を招いてショー、「踊らせる権利」などのふざけたオークション…。悲惨な人権状況の報告を受けながら、高級料理や余興を楽しむという、その精神がまったく理解できない。ただただ違和感しかない。

 

ここまで資金源の問題を見てきたが、次に、人事の問題について見ていきたい。以前、アムネスティを批判した寄稿の中で、ある英文記事から「コンセンサス形成のアウトソーシング」、「人権擁護産業」、「人権活動家の就職用回転扉」という言葉を紹介した。要するに、政府、軍産複合体、シンクタンク、NGO、マスコミなどがネットワークを形成し、欧米の政策アジェンダをPRしていくという構造と、そうした構造の中での人材の行き来を指してのものである。

そこには著名なシンクタンクの名が挙げられていたが、こうしたシンクタンクによる「欧米の政策アジェンダのPR機関」ぶりがいかにひどいものであるかを知るうえで、一例としてブルッキングス研究所による次の研究報告書を紹介したい。ブルッキングス研究所は、米国を代表する伝統的なシンクタンクの一つであり、この報告書は10年前に出されたものだが、米国とイランの間で緊張が高まる今、あらためて注目しておく意義はあると思う。 

WHICH PATH TO PERSIA?

Options for a New American Strategy toward Iran

https://www.brookings.edu/wp-content/uploads/2016/06/06_iran_strategy.pdf 

執筆者の経歴を見ると、CIA、NSC(国家安全保障会議)、イスラエル大使、大統領特別補佐官、国務次官補、国務省政策立案スタッフなど、政府の中枢にいた人物ばかりだ。報告書は、イランに対して米国が今後どのような行動をとるべきかを考えるうえで、重要な行動オプションにつき、それぞれのメリット・デメリットを客観的に考察したという。まず「目次」だけでも見ていただきたい。本当に信じがたい恐ろしい国際法違反の行動オプションが並んでいる。報告書では、これらについて実に淡々と「この場合は、こうしたメリットがあるが、一方でこうしたデメリットもある」という風に記していくのだが、この「デメリット」というのも所詮は米国の目的達成上のデメリット、米国にとってのデメリットであり、「国際法違反の行動として法的にも道徳的にも絶対に許されない」という観点や意識はみじんも感じられない。また、これも報告書を通して言えることだが、米国がかつてイランの民主的政権をクーデターでつぶしたという歴史も、そのことへの反省の意識も、スッポリと抜け落ちてしまっている(この事件についは以下の記事を参照)。

CIA admits role in 1953 Iranian coup

https://www.theguardian.com/world/2013/aug/19/cia-admits-role-1953-iranian-coup

 

イランに対して長年わたり執拗な干渉と敵視政策を続け、イスラエルとイランの対立のなかイスラエルの「核兵器」保有については容認しつつイランの「核開発」だけを攻撃し、各国の努力でようやくたどり着いた核合意すら一方的に破棄し、イランの経済と国民生活を窮地に陥れる制裁を課し、中東と世界の緊張を高めていく傲慢・残忍・無責任な米国。6月にあったタンカーへの攻撃も、米国は直ちにイランによるものと主張したが、これもまた捏造の疑いが濃厚で、ネット上には様々な矛盾を突く声が上がっている(シリアと同様、マスコミはそうした疑問・異論を取り上げないが)。イランに濡れ衣を着せるのも許されないが、「偽旗作戦」のために無辜の船員の命を危険にさらすなど本当に許しがたいことだ。米国が発信し続けるウソには警戒していかなければならない。政府のウソだけではなく、先ほど述べた「コンセンサス形成のアウトソーシング」、「人権擁護産業」、「人権活動家の就職用回転扉」といった現実をふまえ、そうした各種媒体を通したウソにも踊らされないよう注意していかなければならない。


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侵略の共犯―侵略者のウソに加担する者の罪(5)

2019-12-22 19:34:49 | 日記・エッセイ・コラム

<櫻井元さんの御寄稿の第5部です。藤永茂>

以前、アムネスティ・インターナショナルの「人間屠殺場」報告書という強烈な名前の報告書を読んでの感想とネット上の批判の声などを踏まえて、この組織がもっている偏向について批判する文章をいくつか寄稿させていただいた。今回は、シリアの化学兵器使用疑惑につき、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書を批判するかたちになったが、この組織にもアムネスティと同様の偏向の問題があることは確かだ。例えば、以下の記事を参照。 

HRW: Human Rights Watch or Hypocrites Representing Washington (Part 1)

https://journal-neo.org/2014/08/01/hrw-human-rights-watch-or-hypocrites-representing-washington-part-1/

HRW: Human Rights Watch or Hypocritical Representatives of Washington? (Part 2)

https://journal-neo.org/2014/08/06/hrw-human-rights-watch-or-hypocritical-representatives-of-washington-part-2/ 

Smart Power and “The Human Rights Industrial Complex”

https://www.globalresearch.ca/smart-power-and-the-human-rights-industrial-complex/5514739

 

以前にアムネスティを批判した寄稿の中の一つ「アムネスティの偏向の原因を考える」では、資金源の問題と人事の問題を取り上げたが、ヒューマン・ライツ・ウォッチについても共通の問題がありそうだ。 

アムネスティの偏向の原因を考える

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/9cc9436fcf886c8b5986f4965d04beb7 

ヒューマン・ライツ・ウォッチの財政方針を見ると、「ヒューマン・ライツ・ウォッチは独立かつ非政府の組織であり、世界中の個人や財団からの寄付に支えられています。政府の資金は直接にも間接にも受け取っていません(注)」とあり、その(注)を見ると、「ヒューマン・ライツ・ウォッチを支援してくれる財団の中には、政府からの資金を一部受けているものがありますが、私たちはこれらの財団からは民間の資金のみを受け取り、政府の資金は受け取っておりません」とある。 

Financials

https://www.hrw.org/financials

そもそも「直接にも間接にも政府の資金は受け取らない」という厳格なルールの意味は、とりわけ人権NGOとしての性質上、政府からの介入、政府への忖度、政府寄りの偏向がないよう、資金源の面でもしっかり担保しておこうというものだろう。政府の支援を受ける団体からの支援を受けるということが、はたしてその趣旨にかなうものだろうか。(注)の言い訳には非常に苦しいものを感じる。

また、このヒューマン・ライツ・ウォッチの資金源の問題としては、例えば次のようなものもある。投資家で大富豪のGeorge Soros氏は、自身のOpen Society財団と共にもともとヒューマン・ライツ・ウォッチの強力な支援者だったが、2010年に、向こう10年間で1億ドルもの寄付を申し出た。ヒューマン・ライツ・ウォッチ自身、サイト内のニュースで伝えており、このGeorge Soros氏の資金を活用しつつ寄付金をさらに増やし、より強力に圧力をかける団体として世界にネットワークを張り巡らせていくという目標が語られている。

NGO Monitorによると、「2009年から2010年にかけて寄付金が減少し、収入が15%落ち込んだが、2010年9月、億万長者のGeorge Soros氏が向こう10年間で1億ドルの寄付を申し出たことで、この問題は軽減された」とある。NGO Monitorはイスラエルに本部を置く団体で、イスラエル寄りの偏向に注意が必要だが、ヒューマン・ライツ・ウォッチが公開している財務諸表を確認すると、たしかにこの時期、寄付金収入が15%近く落ち込んでいることがわかった。

George Soros to Give $100 million to Human Rights Watch

https://www.hrw.org/news/2010/09/07/george-soros-give-100-million-human-rights-watch 

NGO Monitor

https://www.ngo-monitor.org/ngos/human_rights_watch_hrw_/

Financial Statements (Year Ended June 30, 2010)

https://www.hrw.org/sites/default/files/related_material/Financial-Statements-2010.pdf

 

このGeorge Sorosという人物は、自身の財団のサイトで次のようなメッセージを発信している。タイトルは「ロシアのアレッポ爆撃を止めねばならない」。例のホワイト・ヘルメットの写真をトップに大きく掲げ、こう訴えている。 

「世界は今、歴史的な人道危機を目撃している。それはシリアで起きている。ロシアのプーチン大統領が、子飼いのアサド大統領を支持して犯しているものだ。シリア第二の都市アレッポの支配権を反政府側から奪おうとする政府軍を支援し、ロシア軍機がアレッポの市民の上に爆弾を落としているのだ。 

シリア・ロシア両軍の攻撃は、数百もの人間を殺し、千人以上の人間を負傷させ、残っていた病院を機能不全にし、人々から飲み水を奪った。

ニューヨーク・タイムズはじめどの記事も、アレッポ市民の苦しみや、彼らを救おうと命をかけている医師やホワイト・ヘルメットのような民間人の英雄的努力を鮮明に伝えてきた。事実が完全に確定すれば、プーチンのアレッポ爆撃は現代最悪の戦争犯罪の一つとみなされるだろう。 

ロシア、米国、欧州、そして世界のその他の地域の人々に訴える。ただ傍観するのではなく、言葉を発し広めること、怒りを声に出すことをしてほしい。世論が高まれば、プーチン大統領に人道に対する凶悪な犯罪をやめさせることも可能なのだ」

Russia’s Bombing of Aleppo Must End

https://www.opensocietyfoundations.org/voices/russia-s-bombing-aleppo-must-end

寄付金収入が減ったところへ、かねての大口寄付者である大富豪から新たに巨額の寄付金が舞い込む。団体にとってのその「救いの神」は、シリアの紛争について、反政府武装組織(ホワイト・ヘルメット)の側を支持し、シリア・ロシア両政府の側を激しく非難している。こうした背景のもとで、団体の活動に偏向や歪みが生じるおそれは本当にないものだろうか。

 

そもそも、「政治権力」からの独立も大事だが、大企業や大投資家などの「経済権力」からの独立も必要ではないのか。「政・官・財」の鉄のトライアングルと言われて久しいが(これらを監視すべきマスコミ・有識者・NGOの多くも、その共同体の一員となっているが)、グローバルな巨大資本・経済権力が政治に影響を及ぼしているのは周知の事実。藤永先生のブログでも、とりわけ途上国において、そうした巨大資本がいかに現地の政治を歪め、現地の人々の暮らしを壊し、時に悲惨な紛争まで引き起こしてきたかを、具体的事例をもとに解説してこられた。

「NGOの活動にはカネがかかる」と言われるかもしれないが、彼ら自身の財政方針にあるように徹底した「独立・公正」を期するのであれば、政治権力と経済権力の癒着という現実を踏まえたうえでの自律が必要ではないのか。たとえば、「政治にはカネがかかる」といって大企業からの献金を許せば、政治が歪められてしまうという危惧が昔から指摘されてきたし、実際に企業献金を規制しようという仕組みづくりが不十分ながらも議論され続けてきた。「直接にも間接にも政府の資金は受け取らない」というルールだけでなく(それすら、先に見た財政方針の注記の苦しい言い訳のように、ルール本来の趣旨や原点を置き去りにした甘さが感じられるのだが)、政治権力と共に経済権力からの距離についても担保されるような自律が必要だと思う。

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侵略の共犯―侵略者のウソに加担する者の罪(4)

2019-12-21 14:32:21 | 日記・エッセイ・コラム

<櫻井元さんの御寄稿の第4部です。藤永茂>

ここで「ホワイト・ヘルメット」とは何者かについて、あらためて確認しておきたい。化学兵器使用疑惑が起きるたびに、最初にその「証拠映像」というものをネットに流し、ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書のベースとなるような「目撃証言」なるものを数多く提供してきた組織。「ノーベル平和賞」にノミネートされ、第二のノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞」を贈られ、彼らを扱った映画は「アカデミー賞」や「サンダンス映画祭」の賞を贈られてきた。「ホワイト・ヘルメット」とはいったい何者なのか。

まず彼らのサイトの説明にはこうある。市民の命を救うボランティアのレスキュー隊であり、紛争のいかなる当事者にもくみせず公平中立である、と。

THE WHITE HELMETS: BRIEFING

https://thesyriacampaign.org/white-helmets-briefing/

しかし、この説明はまったく事実に反する。以下の記事にあるように、その実体は欧米のNGOなどが主体となった反シリア政府キャンペーンの一環で、James Le Mesurierという元英国軍人が関わる「プロパガンダ」機関であった(このJames Le Mesurierは先月に変死している)。 

Seven Steps of Highly Effective Manipulators

White Helmets, Avaaz, Nicholas Kristof and Syria No Fly Zone

https://dissidentvoice.org/2015/04/seven-steps-of-highly-effective-manipulators/ 

「救急車の少年」のウソが露呈したように、子供たちを使って偽りの救助の場面を撮影する。先にご紹介したRobert Fisk氏の記事にあるように、「毒ガスだ」と叫んで水をかける偽りの救助の場面を撮影する。黒井文太郎氏が論拠としたヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書を見てもわかるように、偽りの化学兵器被害に関する偽りの「目撃証言」を提供する。これらを通してシリア政府に濡れ衣を着せ、国際社会の非難と武力介入を呼び込もうとする。公平中立を謳うものの、彼らがこうした目的をもって行動しているのはもはや明らかである。Robert Fisk氏の記事にもあるように、彼らは常に反政府側と行動を共にしており、武装組織がドゥーマからイドリブへ去る際には一緒に付いて行っているのだ。

「公平中立」という謳い文句がウソなら、「市民の命を救う」というのもウソだった。次の記事にある動画を見て頂きたい。

Syria's White Helmets, Subject of Oscar-Winning Film, Caught Dumping Dead Soldiers, Fire Volunteer

https://www.newsweek.com/oscar-win-white-helmets-syria-volunteer-dump-bodies-rebels-628407 

下の動画には、反政府武装組織がシリア兵の遺体を乱暴に捨てる場面が映っており(切断した首を掲げるなどの残酷な映像が入る)、ホワイト・ヘルメットのメンバーが行動を共にしていることがわかる。 

https://twitter.com/Ali_Kourani/status/877287658472472579 

下の動画は、反政府武装組織による公開処刑の場面だが、処刑直後に遺体を片付けているのがホワイト・ヘルメットのメンバーだ。

https://twitter.com/BenjaminNorton/status/865033499950145538 

ホワイト・ヘルメット側は、問題が露呈するたびに、組織の問題ではなく個人の問題だと言うのだが、もはやその苦しい言い訳は通用しない。「公平中立に、市民の命を助けるのが使命」など、真っ赤なウソである。

ホワイト・ヘルメットの正体はすでに明らかなのだが、侵略者のウソの加担者たちは、この偽のレスキュー隊を必死に擁護するため、ホワイト・ヘルメットを批判する者を逆に批判し、彼らの記事を「プロパガンダ」「フィクション」呼ばわりしている。例えば以下の英国のガーディアンやチャンネル4などもそうだ。

How Syria's White Helmets became victims of an online propaganda machine

https://www.theguardian.com/world/2017/dec/18/syria-white-helmets-conspiracy-theories 

FactCheck

Eva Bartlett’s claims about Syrian children

https://www.channel4.com/news/factcheck/factcheck-eva-bartletts-claims-about-syrian-children

 

これらに対してはEva Bartlett氏から次のような反論がなされた。ガーディアンやチャンネル4がいかに卑劣な印象操作をしているのかがわかる。Rick Sterling氏からも、ホワイト・ヘルメットの批判者たちへの卑劣なおとしめに対して的確な反論がなされている。

How the Mainstream Media Whitewashed Al-Qaeda and the White Helmets in Syria

https://www.globalresearch.ca/how-the-mainstream-media-whitewashed-al-qaeda-and-the-white-helmets-in-syria/5624930

A Personal Reply to the Fact-Challenged Smears of Terrorist-Whitewashing Channel 4, Snopes and La Presse

https://ingaza.wordpress.com/2018/01/20/a-personal-reply-to-the-fact-challenged-smears-of-terrorist-whitewashing-channel-4-snopes-and-la-presse/

Western Media Attacks Critics of the White Helmets

https://dissidentvoice.org/2018/10/western-media-attacks-critics-of-the-white-helmets/#more-85688 

なお、上記ガーディアンの記事の中に「The mannequin challenge」という見出しがあるが、これに関し、藤永先生のブログへの以前の寄稿につき一部訂正とお詫びをさせていただきたい。「シリアと北朝鮮-ウソから始まる戦争、ウソが煽る戦争(1)」と題した寄稿(2017年4月16日)の中で、私は「以下は、ホワイト・ヘルメットが瓦礫に埋まった男性を救助するシーンを『捏造』するところが流出したものです」と書き、「Hands Off Syria」という団体のYouTubeチャンネルにあった動画を紹介した。しかし、これは「マネキン・チャレンジ」というパフォーマンスで、ホワイト・ヘルメット側の元の動画にはハッシュタグを付けて「#MannequinChallenge」と表示されていたそうだ。この点、私の勘違いで、訂正してお詫びしたい。

だが一方、この動画が「救助の捏造」ではなく「マネキン・チャレンジ」だったとしても、それはそれで問題があることは指摘しておきたい。ホワイト・ヘルメット側も、批判を浴び不適切な行動だったと認めており、謝罪のうえ動画を削除している。また、先のEva Bartlett氏の記事では、次のような批判もされていた。少し長くなるが引用したい。 

「2008年から2009年にかけ、戦闘機・ヘリからの空爆、軍艦・戦車からの砲撃、そして無人機からの攻撃と、イスラエルによる無差別攻撃が22日間も絶え間なく続くなか、私はパレスチナの救助活動を手伝っていた。死者は1400人超、負傷者はさらに数千も多く、犠牲者数は膨大なもので、その大半が市民だった。パレスチナの救助隊は、老朽化した乏しい装備で(この点はシリアの真のレスキュー隊と同じ)、昼夜を問わず市民の救助に当たった。

■訳注:「シリアの真のレスキュー隊」とは、1953年創設のSyria Civil Defenceのことで、ホワイト・ヘルメットの正式名はこの名称をそっくり盗んだもの。欧米メディアは、偽りのレスキュー隊を称揚する一方、この真のレスキュー隊による懸命の活動についてはいっさい触れようとしなかった。ジャーナリストVanessa Beeley氏の以下の記事に詳しい。

EXCLUSIVE: The REAL Syria Civil Defence Exposes Fake ‘White Helmets’ as Terrorist-Linked Imposters

https://21stcenturywire.com/2016/09/23/exclusive-the-real-syria-civil-defence-expose-natos-white-helmets-as-terrorist-linked-imposters/

(Eva Bartlett氏の記事の続き)

私は、ガザの救助隊が市民を救う際に「アッラー、アクバール」などと叫ぶ場面にただの一度も出くわしたことがない(ガザはイスラム教・スンニ派が多数)。ましてや、故意に遺体の上に立ったり、捏造映像の撮影でポーズをとったり、そのほか、シリアのホワイト・ヘルメットが映像の中でしているような不快な行動など、なおさらなかった。彼らは市民の救助とイスラエルの攻撃からの避難とでとても忙しく、無駄口を聞かずに黙々と活動するのが常だった。私が聞いた唯一の叫びは、負傷した市民があげる叫びと、バラバラになった女性を遺体安置所へ運ぶ担架に乗せる際、それを手伝った夫があげた苦痛の叫びだけだ。ガザの救助隊は真の英雄だった。しかし、ホワイト・ヘルメットは決してそうではない。ひどいニセ者にすぎない。 

もしSolon(訳注:GuardianにEva Bartlett批判の記事を書いたOlivia Solon)に、結論先にありきではなく、ホワイト・ヘルメットについて真面目に調査しようとする心があったなら、Guardianとしてどのような調査報道ができただろうか。 

―Solonは、ホワイト・ヘルメットの「マネキン・チャレンジ」動画が背景事実と切り離されて批判されていると書き、この動画をその点で大きく取り上げたが、これは甚だ核心からズレた取り上げ方だと思う。背景事実とは何か。それは、空爆の下で日夜懸命に市民の救助に当たっているとされているホワイト・ヘルメットが、英雄的な救助場面を模した動画を作るためにわざわざ時間を割いたという事実ではないのか。ホワイト・ヘルメットには、非常に精巧なニセのレスキュー動画を作る能力があることを、この動画がはっきりと示したという事実ではないのか。しかし、Solonはこういう点は無視する。…私がかつて行動を共にしたパレスチナの救助隊が貴重な時間をこんな馬鹿げた動画の撮影に割くことなど、想像すらできない」

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