私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

サパティスタは強くなり大きくなりつつある(1)

2019-04-24 23:19:04 | 日記・エッセイ・コラム
 前回には、ロジャバ革命の人々がサパティスタ革命に強い連帯感を持っていることに注目しました。私は1968年にカナダに移住して、初めて、北米大陸の原住民である、いわゆるエスキモー(イヌイット)やインディアンの存在を自分自身の具体的な経験として意識するようになりました。今、振り返ると、それは私のその後の精神的生活のバッソ・コンティヌオ(通奏低音)になってしまったとさえ思われます。サパティスタ革命はメキシコの最貧州チアパスの原住民の農民が主体となっている革命運動です。この革命運動に私が関心を持つのは当然の成り行きですが、これを圧殺しようとする力が、本質的には、リビアを破壊し尽くし、シリアを破壊し、ベネズエラを破壊しようと猛威を振るっている国際的暴力と同一であるというのが、私の現在の確信ですので、今から数回、サパティスタ革命運動について書いてみたいと考えます。とは言え、この問題に対する私の感情的なコミットメントは強いものの、専門的な知識は薄っぺらなものですので、皆さんと一緒に、インターネットを頼りにして、復習、学習をしたいと思います。
 ジョン・バージャー(John Berger, 1926-2017)を知っていますか? 生まれは私と同年の偉大な美術評論家、小説家で、2017年1月2日、90歳で亡くなりました。その直後に書かれた紹介文がありますので、
https://i-d.vice.com/jp/article/vbe5zm/remembering-john-berger
その一部を引用します:
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 バージャーは才能溢れる、頭脳明晰な、素晴らしい小説家だったし、革新的な美術評論家でもあった。バージャーの登場の前と後では、イギリス国民全体のアートに対する考え方がまったく違う。「彼がいたからこそアートを理解できた」と感じるひとも少なくないだろう。「アートの見方を教えてくれた」という偉大なる功績を遺したバージャーだが、彼は原理を大切にする人だった。生涯を通してマルクス主義を貫き、崩れゆく資本主義を厳しく非難する視点から生命と人生を考え、ひとびとへの慈悲から小説を書いた。この同情と慈悲の心こそがバージャーの特筆すべき点であり、この特徴をもって彼は現代きっての偉大なる知識人となった。彼は常に、民衆のための公人としてあり続けたひとだった。
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 このジョン・バージャーが2001年に出版した著書『The Shape of a Pocket』の終わりに近く「Correspondence with Subcomandante Marcos」と題した一文があります。これは、1995年、バージャーとサパティスタ革命の実質的指導者マルコス幅司令官との間で行われた交信を描いた美しいエッセーです。マルコス幅司令官と名乗る男は何者か? もしご存知なければウィキペディアをご覧ください:
https://ja.wikipedia.org/wiki/マルコス副司令官
 フランスの田舎で早春を迎えた老齢のバージャーは、昨年と同じあたりに巣を作る場所を求めて、ゆっくりと羽ばたいて空に舞う夫婦のサギを見上げながら、思いをメキシコのチアパスに馳せてマルコスに語りかけます:
 And this made me think of you in Chiapas and of your struggle to restore what has been stolen from the people by those who in this life know two things: how to transfer money and how to drop bombs. In their world there are no homecoming and there never will be. Four things came together in my head: the spring, the resistance of the Zapatistas, your vision of a different world and the slow beat of the herons’ wings.
「そしてこの情景を前にして、私はあなたとあなたの闘争に思いを馳せました。この世で知っていることといえば、資産をあちこち転がす方法と爆弾を落とす方法の二つだけという者達が土地の住民達から盗んだものを取り返し元に戻す、あなたの闘争です。この盗賊達の世界には里帰りなどというものはありません、ありえません。四つのことが一緒になって脳裡に浮かびます:春、サパティスタスのレジスタンス、今とは違う世界のヴィジョン、それに二羽のサギの悠然とした羽ばたき。」
 たまたま、バージャーのこのエッセーを読んでいた時、私は前回で紹介したANFNEWSの記事「Kurdish Women's Movement paid tribute to Emiliano Zapata」に出会いました。記事の中ではサパタとオジャランが並べてありますが、現実的にはオジャランとマルコス副司令官とを対にしたほうが適切かもしれません。マルコス副司令官と名乗る人物に興味を持った方は、ぜひ私の尊敬する硬骨のジャーナリストChris Hedges の次の記事も覗いてみて下さい。「我々の誰もがサパティスタスにならなければならない」という呼びかけです。
https://www.truthdig.com/articles/we-all-must-become-zapatistas/ 

藤永茂(2019年4月24日)
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サパタとオジャラン

2019-04-17 23:03:18 | 日記・エッセイ・コラム
 ロジャバ革命の命運が心配でならない私はANFNEWSというサイトを日に2回以上訪れます。ロジャバ革命を推進しているシリアのクルド人たちは、今の時点では、すっかり米国の地上代理軍の役割を押し付けられて、米国、トルコ、ロシアの政治的駆け引きの渦中でもがき苦しんでいますが、このANFNEWSに現れる記事を注意深く読むことで、彼らの真意が読み取れるように思われます。
 4月14日には
Kurdish Women's Movement paid tribute to Emiliano Zapata
と題する記事が出ました:
https://anfenglish.com/features/kurdish-women-s-movement-paid-tribute-to-emiliano-zapata-34290
 ご存知のメキシコの革命家エミリアーノ・サパタは、1919年4月10日、裏切り者によって暗殺されました。今年はその100周年記念の年というわけです。上の記事を、少し不分明な点もありますが、訳出します:
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 クルド人女性運動:エミリアーノ・サパタの暗殺から100年、人民たちの革命は一致団結して前進する
 1919年4月10日、革命家エミリアーノ・サパタはメキシコのモレロス州チナメカで暗殺された。サパタはサパチスタ運動の立ち上げやあらゆる形の搾取に反対する社会運動を鼓舞することになった。
 今年の4月9日と10日の二日間にわたって、サパタの熱い志が抑圧に反抗する世界中の人民たちの熱望を代表することを想起して、国際的、国内的動員が行われ、クルド女性運動(Kurdish Women Movement)からの公式声明が、メキシコのアミルシンゴでの全国原住民会議総会とチナメカの町で行われた大行進で読み上げられた。
 以下はその声明の全文である。
「親愛なる女性たち、同志たち、闘争に参加する姉妹、兄弟たちへ、
本日、我々クルド女性運動は、世界中の人民の自由、女性の自由の歴史によって進展されてきた自治的な倫理的また政治的価値を脅かすあらゆる不正行為に対して我らの社会を守ることと、居住の土地と自由を愛することにおいて、団結し参加する。この祖先の歴史の共有はエミリアーノ・サパタが遂行した終わりなき闘争を我々にとってより身近なものにする。それは現在も続いている。国家的、人種差別的、資本主義的、家長主義的搾取のない世界、そこでは女性が、生活の全ての面で、変革の原動力となるような世界を建設するすべての手立てを我々が獲得するまで、今の強度のままで闘争は続き、終わることはないであろう。
 あらゆる植民地化、資本主義、国家組織の前線で、女性は最初の最高に搾取される植民地であることを、これまで我々は何度も言ってきた:我々は極めて根源的な判断を下したのだ。
 今日、我々は言う、この判断はそれに対する解答を掘り起こし、より根源的な解決法を見出した。それは資本主義的近代性のルーツにまで戻って、女性の奴隷化のない別の生活様式を創造し、その結果として、社会全体の生活様式を創造する方法だ。 
 我々は、多くの世界が移行できる、もう一つの別の世界が可能であることの証を、今日、ロジャバで示している。
 今や、イスラム国の広域的資本主義システムが生み出した聖戦勢力は、デラゾール地域で、我らの女性人民防衛軍によって決定的に打ち負かされた。この勝利は、多種多様の人々の自由な思考のおかげで、北クルディスタン、ロジヘラ(注:イラク北部クルド人地域)、そして北シリアの民主的連邦革命プロジェクト地域に現在存在する数百万の女性と男性の自主的組織体の異文化間勢力のおかげで、獲得された。
 モレロスからクルディスタンへ、我々は、民主的現代性の流れの中で一体となる。体の皮膚の下に闘争を感じつつ我々は横に並んで行進する。市街から森林へ、監獄から山々へ、サミール・フロレスのような、革命に命を捧げた全ての人々の思いを感じながら。我々の希求を結び、諸大陸を結ぶ橋を架けてくれた、サキネ・ジャンシス、ベルタ・カセレス、マリエル・フランコ、バティ・カリニョ、アルゼンチン革命家アリナ・サンチェスたちの精神を携えて、我々は、その数をいやまし、より強力になって、行進を続けている。
 エミリアーノ・サパタ暗殺100周年記念にあたり、彼の生涯、彼の功績に対する然るべき賛辞を超えて、我々は今日発言する:我々はこの地球という惑星の至る所の最前線で、大地の守護者、我々が毎日呼吸する大気の守護者、河川の守護者として戦う原住民、原住民女性たちに対する我々の歴史的な負債を、今こそ世界の全女性が家長制的ファシスト的資本主義の打倒に立ち上がることによって支払いたい、と。
 これらの夢と同様の想いに駆られて、この権力世界組織とトルコ国家独裁政権に反抗し、レイラ・ギュヴェンは、世界中からの数千の政治犯活動家とともに、ハンガーストライキを開始して、今まで150日を超えて続いている。その行為は、普遍的自由の概念に連なり、20年以上も厳重警備の監獄に完全隔離されている民主的連邦主義の革命的哲学者アブドゥラ・オジャランの隔離状態を打ち破ることを目的としている。
 今日、レイラ・ギュヴェンの先駆的行動を通して、クルド人たちが実行している抵抗は歴史的な高さにある。
 トルコ国によって占領されたクルド人のアフリン市の解放は抵抗運動の次のステップであるべきであり、アフリンの解放は、日々に強大になる女性革命の力により、ファシズムとの決別に我々を導くであろう。
 エミリアーノ・サパタとアブドゥラ・オジャランが我々に示したように、彼らの抱いた理念は阻止できない。 それらの理念は各世代を鼓舞し、生活共同体を強靭にする。我々はサパチスタの姉妹たちが我々に与えてくれた光を消すことはなかった。その光は、抑圧されている世界のあらゆる場所で、今までにも増して、我々の挑戦と我々の夢を輝かせ、それらを希望と自由の炎に、現在のシステムを代替する炎に変えるであろう。女性のグローバルな民主的連邦主義に基づいた自治政府の形で、個別多数が力を合わせ、もっと美しく公正な、もう一つ別の人間の生き方を発展させるのだ。
 この鮮明な約束とともに、我々はこの祝典と今日の会合に敬礼を捧げる。
サパタ万歳! 戦いを続けよう!」
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 何と胸がすくような宣言ではありませんか。これを、現在、悲劇的な苦境に追い込まれたロジャバのクルド人女性たちの現実逃れの、強がりの叫び声として冷笑する向きもあるかもしれません。私は、ここに、希望の光を見ます。今は米国の狂人政治家たちに引き摺り回されていても、クルドの女性たちは、自らの理想を堅持して、じっと耐えているのです。上の声明文の前半に、数名の女性の名前があげられています。原文を写しておきますので、時間をお持ちの方々は、ネットで調べてみてください:
With the spirit of Sakine Cansiz, of Berta Caceres, of Marielle Franco, of Baty Cariño, of our revolutionary Argentina Alina Sanchez, who built bridges between our desires and continents, we continue to walk, multiplied and stronger.

 次回は、ロジャバ革命運動とサパチスタ革命運動の関係などを考えます。

藤永茂(2019年4月17日)
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リビアでの戦闘は内戦ではない

2019-04-10 22:17:28 | 日記・エッセイ・コラム
 リビアで始まった戦闘は内戦ではありません。国の外からリビアをコントロールし続けようとする勢力と、それと戦って、リビアを自分たちのものとして奪還しようとするシリア国民の意志との戦いです。  
 Alexandra Valiente という名前に憶えがありますか? 前に2度書いたことがあります:
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/28204ac13fe4c6c7b8b0d3a9d58f4978
世界情勢についての発言者として、私が最も頼りにしている女性の一人です。4月7日、アレクサンドラ・バリエンテさんは「トリポリを解放する(Liberating Toripoli)」という声明を発表したので訳出します:
「国連とメディアは現在のリビア情勢を、相争う派閥勢力の間の紛争であり、外交的駆け引き、平和的交渉、そして、外部からの、外交的あるいは軍事的介入を含む各種の干渉を必要とする情勢だとして描いている。
彼らの関心事はリビアの一般市民の擁護ではなく、彼ら自身の搾取的な地域政治的利益だ。真実は、トリポリの戦いはリビア人の間の戦いではなく、リビアの人民とリビアの正規軍が外国からの侵略者に立ち向かっているのである。
リビアの情勢はシリアの情勢に平行している。シリアでは正当な政府軍が、US-EU-NATO の占領軍と、その代理軍として、“ダエッシュ”という上部組織の下で戦っているIS軍からの攻撃に対して、祖国の軍事的防衛に従事している。リビアでは、“ダエッシュ”はLIFG(Libyan Islamic Fighting Group) を含んでいる。
この理由で、人民運動や諸部族とその報道機関からの声明は、事態の真実を世界に告げる闘争において、信頼すべき参照文献なのである。
テロリズムと外国による占領からのトリポリとリビア全土の解放は国際的な支持と連帯に値する。   アレクサンドラ・バリエンテ」
 このバリエンテさんの発言の前々日、4月5日付で
Statement of the Libyan People’s National Movement
https://libya360.wordpress.com/2019/04/06/statement-of-the-libyan-people-s-national-movement-in-support-of-the-libyan-armys-advance-in-tripoli/
と題する声明がリビア東部の都市ベンガジで発表され、4月6日には、その英訳がlibya360のウェブサイトに掲載されましたので、下にコピーします:
UNOFFICIAL TRANSLATION
Statement of the Libyan People’s National Movement
Proud of the progress of the Libyan Arab armed Forces towards
the capital of Tripoli and its liberation

In these crucial hours, the Libyan Arab armed forces, with their loyal officers and soldiers, are advancing to liberate the bride of the sea and the river, Tripoli, the flower of the cities, which is bound by terrorist militias, gangs of prostitutes, criminals and foreign political actors.
Thousands of Libyan cities and tribes from all over the country are taking part in this battle. They have no faith but the homeland, no purpose but sovereignty and security, and the hope of saving Libya from the void of falsehood.
The forces of evil are uniting against the efforts of the Libyan armed forces, from the Muslim Brotherhood terrorist movement to the LIFG militias and the political gangs subordinate to the West. Therefore, the movement affirms that the correct position in history is only with full support of our courageous officers and soldiers, laying aside political and social classes in order to provide civil, social and media coverage of the movement of our heroic army.
The Libyan People’s National Movement affirms to the international community that the will of the armed forces is an authentic expression of the will of the Libyan people and that standing against them is an outright violation of the right of the Libyans to defend their sovereignty, wealth and future from terrorism and takfiri criminality.
The liberation of Tripoli, the capital of the country, is a historic opportunity to build a new, independent, stable and secure Libya by the efforts of all its people, in which justice and equality among its citizens will be achieved. The sovereignty and wealth of the people will be found in a popular democratic political system with no monopoly in the name of religion.
The movement calls upon all its supporters deployed throughout Libya and all the supporters of the homeland to exert every effort to achieve lasting victory and reiterates the call for all soldiers, non-commissioned officers to join their brothers and comrades in the armed forces to answer the call of duty in response to the calls of the sons the Libyan people to rid them of the futility of militias and criminal gangs.
May Allah have mercy on the martyrs of the armed forces, and Libya live as a free and secure nation.
Libyan People’s National Movement
Released in Benghazi
5 April, 2019
  
 この声明を出した「Libyan People’s National Movement(LPNM, リビア人民国家運動?)」は旧カダフィ政権支持の心情を持つ人々が立ち上げた政党的集団の名称で、Libyan Popular National Movement あるいは Libyan National Popular Movement とも英訳されています。2011年2月、いわゆるリビア内戦が勃発し、米欧の大規模軍事介入によって、8月にはリビア政府は事実上崩壊、カダフィ少佐は10月に惨殺されました。LPNMは2012年2月15日には早くも結成されましたが、同年7月の米欧主導の総選挙には参加を禁じられました。しかし、その後、次第にその力を増して今日に至っています。この政党的集団の意図するところは、例えば、次の声明を読めば明らかに理解できます:
https://www.pambazuka.org/democracy-governance/statement-libyan-national-popular-movement-seventh-anniversary-february
 このところリビアでの武力衝突激化が急にマスコミを賑わしています。朝日新聞を例にとれば、4月9日の朝刊には
「国家が東西に分裂した状態にある北アフリカのリビアで、対立する政治勢力同士の衝突が激化している。2011年にカダフィ政権が崩壊して以来、不安定だった治安はさらに悪化しており、新たな内戦に発展する事態も懸念されている。発端は4日、リビア東部トブルクを拠点とする武装勢力「リビアと国民軍」(LNA)のハフタル司令官が、暫定政府が支配する首都トリポリへの進軍を命じたことだ。」と報じられています。国連が支持するトリポリの暫定政府を率いるシラージュ暫定首相もハフタルも元はカダフィ政権に仕えた人物で、ハフタルはアメリカの支援を受けてカダフィに反旗を翻し、その後アメリカに亡命して市民権を取り、CIAの要員となった人物です。そのハフタルが率いる軍事勢力のトリポリ占領の動きを、アレクサンドラ・バリエンテさんが、そして、LPNM が全面的に支持するという構図を我々はどう理解すれば良いのか?
ハフタルという有能なリビアの軍人が自分の配下に入ったかなり強力な軍隊(リビア国民軍)を使って一国の主となる野心に燃えている、ということかもしれません。しかし、ハフタルという男が個人としてCIAを裏切ったかどうかは、いわば、小さな問題です。今、リビアで繰り広げられている戦いの真実は、バリエンテが言うように、
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真実は、トリポリの戦いはリビア人の間の戦いではなく、リビアの人民とリビアの正規軍が外国からの侵略者に立ち向かっているのである。
リビアの情勢はシリアの情勢に平行している。シリアでは正当な政府軍が、US-EU-NATO の占領軍と、その代理軍として、“ダエッシュ”という上部組織の下で戦っているIS軍からの攻撃に対して、祖国の軍事的防衛に従事している。
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のです。リビアでの戦いの構図は、シリアでの戦い、ベネズエラでの戦いの構図と同じになりつつあるのです。これが、今から展開されようとしているリビアの“内戦でない内戦”の実相です。

藤永茂(2019年4月10日)
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レスリー・マーモン・シルコウ『死者の暦』

2019-04-03 22:57:57 | 日記・エッセイ・コラム
 米国によるベネズエラの現政権転覆の企てはますますその狂気を増しています。2月7日の夕方5時、ほぼ全土が停電に襲われ、電話や交通機関も機能しなくなりました。マドゥロ大統領は、ベネズエラの水力発電、配電の中枢を狙ったサイバー攻撃は米国によるものとして、非難する声明を出しました。米国のポンペオ国務長官は“There is no food, no medicine, now there is no electricity, next, there will be no Maduro” (食料もないし、薬もないし、今度は電気もないときた、お次はマドゥロも消えてなくなるさ)と嘯きました。これが一国の国務長官の言放つ言葉として許せるものしょうか! ベネズエラの一般国民から、食料、医薬品、電力を奪っているのは米国なのですから、これこそ残酷性の極致です。
https://libya360.wordpress.com/2019/03/10/venezuela-in-the-dark-a-chronicle-of-sabotage/
 4年ほど前(2015年2月18日)、私は『もっとも残酷残忍な国は?』と題する記事で、米国という国の建国以来の残酷残忍性を論じました:
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/3c0b797a4727fc9dc5279fd9a8cf04b5
それより少し前の記事『良く生きる(3)』(2014年10月6日):
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/d8de14305e5495abd2637ad6a3b71832
の{訳注3} の中で
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 このシリーズの初回『良く生きる(VIVIR BIEN)(序)』にも書きましたが、モラレスにはこれといった学歴がありません。その彼が、アメリカ合州国は退廃の度を増し、崩壊の途上にあると言います。一方、ひと頃はアメリカの哲学界のスターであったリチャード・ローティは、1998年、『Achieving Our Country (和訳:アメリカ---未完のプロジェクト)』で、アメリカという国の過去と現在と未来に就いて、私から見れば、まったく見当違いの謬見を述べています。例えば次のくだり:
「アメリカ合衆国は人類の新たな友愛を希望して創立された最初の国であるので、アメリカ合衆国は長い間の約束が最初に実現される場所となるだろう。」(小澤訳、23頁)
こんな事を書く位ですから、北米原住民の女性作家レスリー・マーモン・シルコウの『死者の暦(Almanac of the Dead) 』に込められた、アメリカというプロジェクトに対する著者の激しくも正当な怒りを、ローティは全く誤解してしまって、それを彼女の自己嫌悪の表現であると取り違えてしまいます。絶望的です。このシルコウとモラレスのアメリカ合衆国観、未来に対するヴィジョンは殆ど完璧に重なります。こうした事に就いては、拙著『アメリカン・ドリームという悪夢』の一節「シルコウと『死者の暦』」(202頁~)を見て頂ければ幸いです
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北米原住民の女性作家レスリー・マーモン・シルコウの『死者の暦(Almanac of the Dead) 』(1991年出版)に言及しました。この小説は原英文で763頁の長編小説で、日本語訳が出る可能性は希薄ですが、なかなか面白い話が展開されています。上掲の拙著の一部を転載します:
『死者の暦』では、指導者を車に仕掛けられた爆弾によって殺されたエコ・テロリストたちの一集団は、やがて全米の発電施設と高圧送電網に一斉攻撃を掛けようと計画している。また、ここにアワ・ジーと名乗る韓国人の天才コンピューター・ハッカーがいる。アワ・ジーは日本とアメリカ合州國の人種差別と帝国主義を憎悪している。彼は、全米にまたがる相互送電システムをコントロールしているコンピューターソフト網を緊急の場合に機能不能にするウィールスを完成し、エコ・テロリストを側面から助けようとしている。しかも、エコ戦士たちにそれを知らさないままで。しかし、『死者の暦』の過激性はサイエンス・フィクション的な思いつきの過激さや、一部インテリ書評家が好んで酷評した性的モチーフの過剰にあるのではない。」
ここで、1991年にフィクションとして登場した一国全土の発電送電システムへのテロ攻撃が、現実に米国によってベネズエラに対して行われたという事実の重みを十分に認識しなければなりません。実は、既にオバマ政権の初期(2010年頃)、Nitro Zeus と名付けられたサイバー攻撃計画が、主にイランの送電や通信のネットワークを標的として推進されました:
https://www.nytimes.com/2016/02/17/world/middleeast/us-had-cyberattack-planned-if-iran-nuclear-negotiations-failed.html?_r=0&mtrref=undefined&gwh=1915890CF33F5F8F996668DA689CD7D2&gwt=pay 
 ベネズエラに対する停電攻撃は2019年3月7日に又行われて6日間の全国的停電をもたらし、続いて3月25日にも水力発電所に対して大規模の攻撃が行われました。しかし、大きな社会的困難にもかかわらず、ベネズエラの一般大衆は冷静に持ちこたえています。もしもベネズエラが米国の理不尽な政権転覆の暴挙を跳ね返すことに成功すれば、それは全世界にとって決定的な転換点になるかもしれません。
https://libya360.wordpress.com/2019/03/31/the-south-the-blackout-and-beyond-as-chavismo-mobilizes-in-venezuela-the-united-states-increases/-pressure

藤永茂(2019年4月3日)
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