シリアの政府軍と反政府軍の戦闘の激化が始まっているシリア北西部で政府軍側が化学兵器を使用したらしいというフェイクニューズが、またまた、世界中に流されています。少し落ち着いて考えれば、今になって、シリア軍が化学兵器を使用する理由がありえないことは明々白々なのですが、米国側は世界中がマスメディアの垂れ流す大ウソを易々と鵜呑みにするものと踏んでいるようです。我々はすっかり舐められているのです。
この状況を厳しく批判する論考を櫻井元さんが書いて下さったので、以下に掲載します。引用されている英文の原記事を読むのが気重な方も、最後のパラグラフだけはしっかり読んでください。
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「シリア政府軍が化学兵器を使用した疑い」というニュースは以前から世界中をかけめぐり、日本でもそのたびに大きく報道されてきました。洗浄のための水をかけられる子供たちの姿、酸素マスクをつけられる子供たちの姿、そんな衝撃的な映像が流され続けてきました。いずれも「反体制派」と呼ばれる武装勢力、シリアという独立国家の転覆を図る欧米やサウジなど外国勢力の手先・傭兵たちが発信する映像で、彼らのプロパガンダ手段である偽装レスキュー隊「ホワイト・ヘルメット」の姿が映っているものでした。そうしたなかで特に注目を集めた一つが、2018年4月、首都郊外・ドゥーマへの化学兵器使用疑惑で、米・英・仏の三国は疑惑浮上から間を置かず、シリア政府軍によるものと断定し、一方的にミサイル攻撃を行う暴挙に至りました。
藤永先生は早い時期から、シリア戦争は「内戦」ではなく「諸外国による侵略」であると看破され、政府軍による化学兵器使用疑惑についても侵略側による「捏造」であると批判されてこられましたが、最近になって上記ドゥーマ事件につき「捏造」を裏付ける重要文書が表になり、またもシリアをめぐるウソが露呈するところとなりました。
重要文書とは、化学兵器禁止機関(OPCW)の「Engineering Assessment」という内部文書で、現地を調査した専門家による検証結果が記されていました。以下の「Moon of Alabama」というサイトでは、国際問題についての鋭い論考が展開されていて、藤永先生のブログでもよく引用されてきました。そちらの5月13日の記事に、当該文書についてわかりやすい解説がありましたので、ご紹介します。
Syria - OPCW Engineering Assessment: The Douma 'Chemical Weapon Attack' Was Staged
https://www.moonofalabama.org/2019/05/syria-opcw-engineering-assessment-the-douma-chemical-weapon-incident-was-staged.html#comments
なお、化学兵器禁止機関(OPCW)の「Engineering Assessment」は以下で読むことができます。
https://www.moonofalabama.org/images8/Engineering-assessment-of-two-cylinders-observed-at-the-Douma-incident-27-February-2019-1.pdf
反体制派は、問題のシリンダーはシリア軍がヘリから投下したものだと言うのですが、現地を査察したOPCWの専門家によると、鉄筋コンクリートの建物を貫通したというわりにはシリンダーの損傷が軽微にすぎ、建物の損傷具合とシリンダーの損傷具合とが符合していないそうです。そして、建物にできた穴は通常の迫撃砲などによるもので、シリンダーは「人の手によって」その穴の近くに置かれた可能性が高いと結論づけられています。つまり、「捏造」が示唆されているわけです。
この捏造の問題については、以下のサイトの記事もご参照ください。
Further Evidence US Attacked Syria Based on False Flag
https://syria360.wordpress.com/2019/05/14/further-evidence-us-attacked-syria-based-on-false-flag/
New Report by OPCW Expert Proves Official Conclusions on Chemical Attack in Douma Contradict Facts
https://syria360.wordpress.com/2019/05/17/new-report-by-opcw-expert-proves-official-conclusions-on-chemical-attack-in-douma-contradict-facts/
上の記事には次のような言葉がありましたが、まったくそのとおりと思います。
「米国が戦争に向けて相手国の挑発行動を捏造するのは、なにもシリアのドゥーマの件だけに限られない。2003年のイラク侵略は、完全に捏造証拠にもとづく意図的なウソによってなされ、いまなお米国は、ウクライナで、ベネズエラで、そしてイランに向かって戦争の挑発を続けており、シリアにおいても、もし政府軍がイドリブの奪還を始めれば再び同じことを繰り返してくることだろう。2018年、米国が支援する武装勢力がドゥーマの化学兵器攻撃をいかに捏造したか、欧米のメディアが欧米諸国の軍事介入を後押しするウソを世界中の人々に向けていかについたか、そして、査察に入った人たちが、偽旗作戦としての化学兵器攻撃が捏造された事実をあばく証拠をいかに示したか―。こうしたことを理解しておくことは、将来、偽旗作戦を使った戦争の挑発が起きた際に、その影響力を軽減する方向に役立つことだろう」
いまの日本では、ご高齢の方々を狙った詐欺がはびこるひどい状況となり、マスコミ各社は「詐欺集団のこうしたウソにだまされないで!」と啓発活動を盛んに展開しています。その同じマスコミが、米国の懲りない戦争をめぐるウソについては、ウソの発信者の情報をそのままに大々的に垂れ流し、日々の報道と解説を通して視聴者に刷り込み続けています。大いなる矛盾を感じます。戦争の口実となるウソ、戦争を煽るウソ、終戦を遠のかせるウソにより、どれだけ多くの人的・物的被害が出てきたことか、どれだけ多くの人たちが悲しみ苦しんできたことか、そして、国際の平和と経済の安定とに対してどれほどの危機を招いていることか、その自覚はあるのでしょうか。シリアの国民と政府に対して、日本の視聴者に対して、すみやかにそして真摯に、事実に反した過去の報道と解説を訂正し、謝罪し、正しい報道と解説に切り替えることはもちろんのこと、こうした同じ過ちを二度と繰り返さないよう、徹底した各社ごとの検証とマスコミ界全体での検証が必要でしょう。くわえて、マスコミからお呼びがかかり毎回ウソの解説をしてきたコメンテーターや有識者たちも、同様に真摯な身の処し方が必要でしょう。戦争をめぐるウソは、誠実な人間であれば重い自責の念から職を辞すくらいの罪深いウソです。
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今回のこのブログの見出しは櫻井元さんの論考のタイトルをそのまま借用しました。論考の最後の部分はとりわけ重要な発言です。櫻井元さんがこのようにはっきりと声をあげて下さったことに感謝します。
藤永茂(2019年5月24日)
この状況を厳しく批判する論考を櫻井元さんが書いて下さったので、以下に掲載します。引用されている英文の原記事を読むのが気重な方も、最後のパラグラフだけはしっかり読んでください。
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「シリア政府軍が化学兵器を使用した疑い」というニュースは以前から世界中をかけめぐり、日本でもそのたびに大きく報道されてきました。洗浄のための水をかけられる子供たちの姿、酸素マスクをつけられる子供たちの姿、そんな衝撃的な映像が流され続けてきました。いずれも「反体制派」と呼ばれる武装勢力、シリアという独立国家の転覆を図る欧米やサウジなど外国勢力の手先・傭兵たちが発信する映像で、彼らのプロパガンダ手段である偽装レスキュー隊「ホワイト・ヘルメット」の姿が映っているものでした。そうしたなかで特に注目を集めた一つが、2018年4月、首都郊外・ドゥーマへの化学兵器使用疑惑で、米・英・仏の三国は疑惑浮上から間を置かず、シリア政府軍によるものと断定し、一方的にミサイル攻撃を行う暴挙に至りました。
藤永先生は早い時期から、シリア戦争は「内戦」ではなく「諸外国による侵略」であると看破され、政府軍による化学兵器使用疑惑についても侵略側による「捏造」であると批判されてこられましたが、最近になって上記ドゥーマ事件につき「捏造」を裏付ける重要文書が表になり、またもシリアをめぐるウソが露呈するところとなりました。
重要文書とは、化学兵器禁止機関(OPCW)の「Engineering Assessment」という内部文書で、現地を調査した専門家による検証結果が記されていました。以下の「Moon of Alabama」というサイトでは、国際問題についての鋭い論考が展開されていて、藤永先生のブログでもよく引用されてきました。そちらの5月13日の記事に、当該文書についてわかりやすい解説がありましたので、ご紹介します。
Syria - OPCW Engineering Assessment: The Douma 'Chemical Weapon Attack' Was Staged
https://www.moonofalabama.org/2019/05/syria-opcw-engineering-assessment-the-douma-chemical-weapon-incident-was-staged.html#comments
なお、化学兵器禁止機関(OPCW)の「Engineering Assessment」は以下で読むことができます。
https://www.moonofalabama.org/images8/Engineering-assessment-of-two-cylinders-observed-at-the-Douma-incident-27-February-2019-1.pdf
反体制派は、問題のシリンダーはシリア軍がヘリから投下したものだと言うのですが、現地を査察したOPCWの専門家によると、鉄筋コンクリートの建物を貫通したというわりにはシリンダーの損傷が軽微にすぎ、建物の損傷具合とシリンダーの損傷具合とが符合していないそうです。そして、建物にできた穴は通常の迫撃砲などによるもので、シリンダーは「人の手によって」その穴の近くに置かれた可能性が高いと結論づけられています。つまり、「捏造」が示唆されているわけです。
この捏造の問題については、以下のサイトの記事もご参照ください。
Further Evidence US Attacked Syria Based on False Flag
https://syria360.wordpress.com/2019/05/14/further-evidence-us-attacked-syria-based-on-false-flag/
New Report by OPCW Expert Proves Official Conclusions on Chemical Attack in Douma Contradict Facts
https://syria360.wordpress.com/2019/05/17/new-report-by-opcw-expert-proves-official-conclusions-on-chemical-attack-in-douma-contradict-facts/
上の記事には次のような言葉がありましたが、まったくそのとおりと思います。
「米国が戦争に向けて相手国の挑発行動を捏造するのは、なにもシリアのドゥーマの件だけに限られない。2003年のイラク侵略は、完全に捏造証拠にもとづく意図的なウソによってなされ、いまなお米国は、ウクライナで、ベネズエラで、そしてイランに向かって戦争の挑発を続けており、シリアにおいても、もし政府軍がイドリブの奪還を始めれば再び同じことを繰り返してくることだろう。2018年、米国が支援する武装勢力がドゥーマの化学兵器攻撃をいかに捏造したか、欧米のメディアが欧米諸国の軍事介入を後押しするウソを世界中の人々に向けていかについたか、そして、査察に入った人たちが、偽旗作戦としての化学兵器攻撃が捏造された事実をあばく証拠をいかに示したか―。こうしたことを理解しておくことは、将来、偽旗作戦を使った戦争の挑発が起きた際に、その影響力を軽減する方向に役立つことだろう」
いまの日本では、ご高齢の方々を狙った詐欺がはびこるひどい状況となり、マスコミ各社は「詐欺集団のこうしたウソにだまされないで!」と啓発活動を盛んに展開しています。その同じマスコミが、米国の懲りない戦争をめぐるウソについては、ウソの発信者の情報をそのままに大々的に垂れ流し、日々の報道と解説を通して視聴者に刷り込み続けています。大いなる矛盾を感じます。戦争の口実となるウソ、戦争を煽るウソ、終戦を遠のかせるウソにより、どれだけ多くの人的・物的被害が出てきたことか、どれだけ多くの人たちが悲しみ苦しんできたことか、そして、国際の平和と経済の安定とに対してどれほどの危機を招いていることか、その自覚はあるのでしょうか。シリアの国民と政府に対して、日本の視聴者に対して、すみやかにそして真摯に、事実に反した過去の報道と解説を訂正し、謝罪し、正しい報道と解説に切り替えることはもちろんのこと、こうした同じ過ちを二度と繰り返さないよう、徹底した各社ごとの検証とマスコミ界全体での検証が必要でしょう。くわえて、マスコミからお呼びがかかり毎回ウソの解説をしてきたコメンテーターや有識者たちも、同様に真摯な身の処し方が必要でしょう。戦争をめぐるウソは、誠実な人間であれば重い自責の念から職を辞すくらいの罪深いウソです。
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今回のこのブログの見出しは櫻井元さんの論考のタイトルをそのまま借用しました。論考の最後の部分はとりわけ重要な発言です。櫻井元さんがこのようにはっきりと声をあげて下さったことに感謝します。
藤永茂(2019年5月24日)