私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

レイラ・ギュヴェンさんが釈放されて自宅へ

2019-01-26 21:43:12 | 日記・エッセイ・コラム
アブドゥッラー・オジャランの独房完全隔離の解除を求めてハンガー・ストライキを続けているレイラ・ギュヴェンさんは、1月25日、法廷の命令でディヤルバクル牢獄から出て、自宅に戻りました。今日26日で断食80日目になりますが、「オジャランの隔離状態解除という目的が達せされるまでハンガー・ストライキはやめない」という決意を彼女は明らかにしています:
https://anfenglish.com/news/leyla-guven-released-from-prison-will-continue-hunger-strike-32417
https://anfenglish.com/features/guven-will-continue-her-hunger-strike-until-the-isolation-ends-32425
さすがの英国国営放送BBCも大きく取り上げました:
https://www.bbc.co.uk/programmes/p06z4bbk
家に帰ってきた母親の状態を心配する娘さんの談話が英語に移されて聞くことができます。
 他の情報によると、政治犯としてトルコの獄中にあるクルド人300名近くが、レイラさんに同調してハンガー・ストライキをしているようです。彼女が生命を賭してオジャランと外界との交信を確立しようとするのは、オジャランがクルド問題の糸口だけでなく、今の中東に和平をもたらす大きな可能性を背負っている人物だという認識があるからです。

藤永茂(2019年1月26日)
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アブドゥッラー・オジャランとレイラ・ギュヴェン

2019-01-24 23:24:43 | 日記・エッセイ・コラム
 Dilar Dirikは在英のクルド人女性でロジャバ革命支持の論説を展開している注目すべき存在です。私がロジャバ革命に強い関心を持つようになったのは、この女性に負うところ大です。2019年1月12日付の記事:『Kurdish MP on hunger strike prepared to “protest to the death” (クルド人のトルコ国会議員“死を賭して抗議”のハンガー・ストライキ)』
https://roarmag.org/essays/hunger-strike-leyla-guven-hdp/
で彼女は、トルコの国会議員であるLeyla Güvenという55歳の女性が、獄中にあるクルド人の中心的指導者アブドゥッラー・オジャランの自由を要求して、2018年11月8日に断食を開始し、今や瀕死の状態にあることを報じています。
 オジャランについては、このブログでも以前取り上げましたが、最近の解説としては、『PKKからKCKへ:オジャランの戦略とその限界』と題する今井宏平氏の和文解説論考がありますので参考にしてください:
https://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/PolicyBrief/Ajiken/106.html
 オジャランという人物の歴史的意義は上の記事が与える印象よりも遥かに大きいと私は考えますが、これについては後述することにして、レイラ・ギュヴェンの抗議断食に戻ります。
 レイラ・ギュヴェンは、2018年1月、クルド人が多数を占めるシリア北西部の都市アフリンにトルコ軍が侵攻して不法占拠した時、それに反対する声明を出して、逮捕投獄されました。トルコの総人口(約 8000 万人)の 約20%、1500 万人 のクルド人は、ディヤルバクル市を中心としたトルコの南東部に多く居住 していますが、レイラ・ギュヴェンはこの地区から選出されたトルコ国会議員です。2018年11月8日、ディヤルバクルの法廷に出廷した彼女は、
「今日、オジャラン氏に対する隔離政策は彼のみならず、彼が身を以て代表する社会全体に対して課せられている。隔離は人道に背く犯罪である。私はオジャラン氏の隔離に抗議する無期限のハンガー・ストライキを始める。私は今後この法廷で私自身の弁護は行わない。私は司法が不法な決定を取り消し、この隔離主義政策が終息するまで抗議を続けるであろう。もし必要とあれば、私はこの抗議を死に到るまで続ける決意である」
と宣言しました。自分の収監に対する抗議よりも、死を賭してアブドゥッラー・オジャランの隔離を解く道を選んだということです。
 オジャランは、1999年2月16日、国際逃亡先のケニヤのナイロビで逮捕されてマルマラ海に浮かぶトルコのイムラリ島の独房に閉じ込められました。以来、オジャランの弁護士からの面会要請の回数は750以上に及んでいますが、弁護士の面会は2011年7月27日が最後で、その後、オジャランの弟が2016年9月11日に家族として面会できただけでした。他の通信手段も禁じられていて、1948年4月4日生まれ、70歳に達したオジャランの健康状態は愚か、生死すらも不明の状態が続いて来ました。
 レイラ・ギュヴェンのハンガー・ストライキは国内、国外に広範熾烈な刺激を与え、ストラスブールの欧州議会本会議場前では多数のクルド人活動家が2018年12月17日からハンガー・ストライキをはじめました。フランスの有力な左翼政党の指導者Jean Luc Mélenchon(メランション)もレイラ・ギュヴェンに強い支持を表明し:
https://anfenglish.com/news/french-leader-melenchon-calls-for-action-kurdish-hunger-strikers-32370
また、50人に上るノーベル賞受賞者が一団となって彼女のトルコ政府に対する要求を支持する声明を発し、アブドゥッラー・オジャランの独房監禁をやめ、レイラ・ギュヴェンのハンガー・ストライキを止めて、彼女の生命を危険から救うことを要請しました:
https://anfenglish.com/news/nobel-prize-laureates-urge-turkey-to-end-the-isolation-32385
https://dialogo2000.blogspot.com/2019/01/nobel-laureates-call-to-end-solitary.html
物理や化学の分野で仕事をしてきた私は、オジャラン解放の支持者のリストの中にこれだけ多くの高名な物理学者や化学者を見るのは実に大きな喜びです。物理学者では、Anthony J. Leggett、Gérard Morou、Kip Stephen Thorne、Sheldon Glashow、Steven Weinberg、William D. Phillips、化学者は私が個人的にも会ったことのあるカナダのJohn C. Polanyi をはじめ、11人も含まれています。他の分野のノーベル賞受賞者の名前ももちろん出ています。ぜひご覧になってください。
 こうした世界的な反応のおかげで、トルコ政府はオジャランに家族との面会を許したという報道も流れています。しかし、最も重要なポイントは、米国、トルコ、ロシア、イスラエル、イランを巻き込んでいる権謀術策の巨大な渦巻きの中から、中東の混乱を、そして、世界の混迷と危機を救う護符のようにアブドゥッラー・オジャランの存在が渦巻きから浮上して来つつあることです。この後いかほどの月日が必要か、神のみぞ知るとしか言えませんが、オジャランのRKKの幹部が事あるごとに嘯くように、「やがてエルドアンが倒れる時が必ず来る。オジャランの革命が成就する日が必ず来る」と私は思っています。オジャランが目指す「じゃなかしゃば」、今のようでない別の世界は可能だと私は信じたいのです。
 このブログ記事の締めくくりに、オジャランを知るための良著を2冊あげておきます。まず、中川喜与志著『クルド人とクルディスタン』(南方新社)。
この本については、2016年2月16日日付で、そのタイトルそのままの見出しのブログ記事の中で紹介しました: 
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/b242c45abac3b58cfdf42b2ecc0cae2d
2冊目は
『Abdullah Öcalan PRISON WRITINGS THE PKK AND THE KURDISH QUESTION IN THE 21ST CENTURY 』( International Initiative Edition )
この本の編集者のノートによると、1978年のディヤルバクル市で、アンカラ大学(トルコの東京大学!)学生のクルド人青年のグループが数ヶ月の討論の末、秘密裡に戦闘的な政治集団を結成します。PKKの誕生です。その中に、Abdullah Öcalan , Duran Kalkan, Cemil Baykの名前があり、1980年には、Murat Karayilan が加わります。リーダー格のオジャランは1999年逮捕されてイムラリ島の独房に閉じ込められてしまいますが、他の3人は、この40年間、クルディスタンの山岳地帯に立てこもって、武力抗争を続けて来たわけです。トランプの米国政府がMurat Karayilanには5百万ドル、Cemil Bayk には4百万ドル、Duran Kalkan には3百万ドルの捕獲情報懸賞金を提供したニュースは、2018年11月25日付のブログ記事『米国は実に汚いことをする』で報告しました。
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/a1d7dbd0c4255b090a599e5a0dc3099e
https://www.al-monitor.com/pulse/originals/2018/11/intel-washington-bounty-kurdish-insurgents-pkk.html
上掲のオジャランの著書の読み応えのある序論はCemil Bayk の筆になるものです。

藤永茂(2019年1月24日)
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シリアのクルド人とアサド大統領(2)

2019-01-19 22:45:51 | 日記・エッセイ・コラム
 シリアとはどんな国か、現大統領アサドとはどんな人物であり、どんな大統領か。これは、ロジャバ革命を遂行するクルド人たちにとって、極めて大きな重要さを持つ問題です。アサド大統領についての悪口は沢山見つかります。反シリア政府系の The Syrian Observer からその典型例を二つ引いておきます:
* Rehabilitating Syria’s Assad, the Greatest Criminal of Our Time (今の時代の最大の犯罪者、シリアのアサドを復権させるとは)
https://syrianobserver.com/EN/commentary/47774/rehabilitating-syrias-assad-the-greatest-criminal-of-our-time.html
* The “Good Assad” (“良きアサド”)
https://syrianobserver.com/EN/commentary/47942/the-good-assad.html
私のアサド観あるいは評価は違います。これまで何度か書いてきた通りです。2011年以来のシリア紛争に揉まれて、政治家としての強靭さや狡猾さを身に着けてきたでしょうが、凶悪な犯罪者と化したとは思えません。
 ロジャバのクルド人勢力、ダマスカスのアサド政権、ロシア政府の三者間で行われている協議の報じるElijah J. Magnierという人の筆になる記事:
https://ejmagnier.com/2019/01/10/russian-kurdish-negotiations-in-moscow-turkey-has-defined-its-options-and-washington-is-trying-to-gain-time/
は、アサド大統領がその立場を次のようにロシア側に表明したと伝えています:
「シリアはすべてのシリア人に属し、クルド人たちもシリアの一部だ。従って、彼らの持つ権利は他の市民の持つ権利より多くも少なくもない。クルド人たちはその独自性が保証されようが、特別の譲歩に値する権利があるわけではない。」
さらに、アサド大統領はロシア当局に対して「クルド人は米国占領軍の保護の下にあるにもかかわらず、彼らを裏切り者と見做す事はしない」と約束した事をこの記事は伝えています。これは興味深い情報です。
 裏切りという行為は、志を同じくしていた者の間で起こる現象です。初めから敵対関係が存在する場合に「裏切り」という言葉は使いません。ロジャバの人民防衛隊(YPG,YPJ)が、2015年10月、米軍主導のシリア民主軍(SDF)にその主力として組み込まれた時に、アサド大統領はクルド人が我々を“裏切った”と発言しました。これについては以前このブログでも取り上げました。アサド大統領の今回の“前言取り消し”を、トランプ大統領のシリアからの米軍撤退声明の機をとらえたクルド人懐柔策の一手と見るのが一般でしょうが、私はそれ以上のものを「クルド人を裏切り者と見做す事はしない」というアサド大統領の言葉の中に読みたいと思います。シリアという国は、トルコ、イスラエル、米国、イラン、ロシアの複雑な関係の渦中にあり、本年中にイドリブ県での最終決戦でシリアが勝ってそれでお終いというわけにはとても参りますまい。したがって、前途に待ち構えている極めて困難な時間を生き延びるために、アサド大統領が採用する対クルド人政策は、上に引いた彼の言葉の通り、クルド人たちに特別の権利を与えることのない強硬な性格なものから出発することになるに違いありません。しかし、ロジャバ革命を推進するシリアのクルド人勢力とアサド大統領のシリア政権は強烈な政治思想的基盤を共有しています。それは反米の思想です。「そんな馬鹿な!現にロジャバの人民防衛隊は米国の傭兵部隊としてシリア国土の四分の一を超える地域を支配して、あわよくば今の状態を続け、やがてはクルド人の独立国建設を意図しているではないか」という声が聞こえてきますが、それは米国とイスラエルとトルコ、それにイラク北部にこの三国が作ったクルディスタン自治地域のクルド人たちが実現を試みていることです。現時点では、エルドアン大統領のトルコは米国とひどく仲が悪いように見えますが、これはエルドアン大統領の権謀術策の一部にすぎません。それに比べて、ロジャバ革命勢力とアサド大統領の反米思想は根本的なものです。シリア紛争の今後の紆余曲折は予断を許しませんが、この点だけは、本年中に、明白な事実として我々の眼前に露呈されるでしょう。

藤永茂(2019年1月19日)
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シリアのクルド人とアサド大統領(1)

2019-01-13 22:13:11 | 日記・エッセイ・コラム
 2018年9月16日付のブログ記事『いまシリアのイドリブは世界の中心』
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/3c9aba43c14e3e7fdf17b567490ab8c8
で私は「世界の中心は今シリアの北西部のイドリブ県にあります」と書きましたが、トルコとの国境に接するシリア北西部のイドリブ県は、依然として、世界で最も注目すべき地点であると私は考え、息をこらし固唾を呑んで、成り行きを見守っているところです。緊迫の事態はすでに4ヶ月の長きに及ぼうとしています。一つ間違えば、核ミサイルの発射ボタンが押され、全世界が阿鼻叫喚の地獄になる運命が待ち構えていますが、私は、核戦争の勃発による人類の破局を恐れると同時に、ここに我々の未来への唯一の希望を託したい気持ちを抱いています。そのために、眼前の事態のめまぐるしい変転に一喜一憂するあまり、シリアの情勢について書くことが出来ませんでした。しかし、その間、数人の方々からコメントと豊富な情報と励ましをいただきました。以下に、Hitoshi Yokoo さんのご意見の一部を転載させていただいて、シリアについての私の再発言の出発点としたいと思います:

********************
「ロジャバ革命は、女性の解放、諸民族の共存、諸宗教の共存、持続可能な環境の維持等、人類が背負わされた困難な課題を超克しようとする明確な意志を持って持続されています。チアパスの先住民や分断されて苦渋を味わってきた少数民族の中から、人類の未来を展望する根源的な変革運動が生まれていることに、私は驚くとともに、深い共感を持たずにはいられません。」(Hitoshi Yokoo)
********************

 先ず、これまでこのブログで書き綴ってきた「ロジャバ革命」に托する私の希望と期待を少し過去に遡って振り返ってみたいと思いますのでお付き合いください:

ロジャバ革命の命運(7)(2017年10月30日)
<終わりに近く>
これまで何度も申しましたように、シリアの戦乱は「シリア内戦」ではなくアサド政権打倒を目指した国外勢力による侵略戦争であり、国際紛争であります。そして、このシリア戦争の終結が、軍事的にではなく政治的にもたらされるとすれば、それは結局のところロシアと米国の力の兼ね合いで決まってしまうことでしょう。これが国際政治の計算の非情さというものであり、是非なきことと諦めなければなりますまい。しかし、私は、「ロジャバ革命」を自己の帝国主義的欲望の泥沼の中に引きずり込んで、全くの台無しにしようとしている米国に、限りない嫌悪を覚え、怒りを抑えることができません。米国は実に“汚い”国だとつくづく思います。
 私は4ヶ月ほど前にStephen Gowansの『The Myth of the Kurdish YPG’s Moral Excellence』(クルドの人民防衛隊の道義的卓越性という作り話)と題する記事に接しました。長い論考ですが、要するに、YPGはクルドの無政府主義ゲリラのテロ組織PKKそのものであり、「ロジャバ革命」とい美名を隠れ蓑にして世界の同情と支持を得ようと試みている、という主張です。これを読んだのがきっかけで、それまでの私の「ロジャバ革命」についての認識が甘かったかもしれないと考えるようになり、オジャラン自身のいくつかの著作を読み返し、私なりのsoul- searchingに努めましたが、結果としては「ロジャバ革命」の重大な意義を再確認することになりました。オジャランが獄中から提唱した「ロジャバ革命」の理念は単にクルド問題の解決のみならず、世界全体が直面する危機的状況を解決する可能性を確かに秘めている革命理念であり、これを米国の活殺自在に任せるわけには参りません。

アサド大統領に物申す:ロジャバを救いなさい(3)(2017年12月18日)
<終わり>
ロジャバは北部シリアのトルコとの国境線に沿って東西に並ぶ三つのカントン(行政区画、県のような)、西からアフリン、コバニ、ジィジラ(Afrin, Kobanî, Cizîrê )、からなっています。シリア紛争の結果、コバニとジィジラの二つのカントンはうまく繋がりましたがアフリン地域とコバニ・ジィジラ地域との間にはトルコ軍が北から南に越境進出してロジャバは二つの部分に分断されています。現在、トルコ軍はアフリン地域に侵攻して占領することを目論んでおり、また、コバニに対しても攻撃をかけています。トルコはロジャバ革命に引導を渡したいのです。潰してしまいたいのです。このあたりを中心に今後のシリア情勢は展開すると思われます。米国とイスラエル、それに対する、ロシア、イラン、イラク、それにトルコがどう動くかによって、シリアの近未来は決められるのでしょうが、私が信を置くアサド大統領が、北からの侵入したトルコを北に押し返し、国境線に沿って、アフリン、コバニ、ジィジラの三つのカントンを連続した行政地区として、それまでロジャバ革命を推進して来たクルド人とその地区のアラブ人その他の人々の大幅な自治に委ねる決断を下すことを、私は切に願ってやみません。

ロジャバ革命は死んでいない(3)(2018年8月10日)
<終わり>
アサド政府とロジャバ革命勢力の関係の今後について、著名なシリア人ジャーナリスト、Ibrahim Hamidi、による否定的なシニカルな見解も発表されています:
http://syrianobserver.com/EN/Commentary/34587/Damascus_the_Kurds_Mutual_Delusions">http://syrianobserver.com/EN/Commentary/34587/Damascus_the_Kurds_Mutual_Delusions">http://syrianobserver.com/EN/Commentary/34587/Damascus_the_Kurds_Mutual_Delusions
イブラヒム・ハミディはアサド政府によって投獄された経験を持っています。この練達の士に言わせれば、ロジャバ革命に託す私の夢のような話は、儚いデリュージョン(妄想、思い違い、勘違い)に過ぎないかもしれません。しかし、今、ユーフラテス河の東に広がる、シリア国土の4分の一を占める、地域の少なくとも百万人のオーダーの住民がオジャラン/ブクチンの革命思想を奉じて日々の生活に励んでいるという事実に、私は興奮を禁じ得ません。パリ・コミューンのバリケードに立てこもった人々、ジョージ・オーウェルが讃歌を捧げたアラゴン高原につどった人々の数はせいぜい数万人、それを思えば、今シリア北西部で起こっている事態は、誠に画期的な、真に革命的な事態なのです。シリアという舞台で繰り広げられている諸国間の権謀術数のドラマにはもう飽き飽きです。

 過去の記事の復習はここまでですが、「今シリア北西部で起こっている事態は、誠に画期的な、真に革命的な事態」であるという私の認識は、今も全く変わりません。シリアのアサド大統領も、心の底で、この認識を共有しているだろうというのが、私の直感であり、強い期待です。
 私がいつも訪れるサイトに
https://syria360.wordpress.com
があります。同じ系統のサイトに
https://libya360.wordpress.com
もあります。両方とも充実した長い記事が多く、オススメです。
 Syria360の方に、1月9日、ロジャバのおなじみの人民防衛隊(YPG)の代表者が、トルコの侵略からシリアの領土と国家主権を守るために話し合いに応じる用意があることを表明したという記事が出ました:
https://syria360.wordpress.com/2019/01/09/ypg-commander-warns-of-attempts-to-disintegrate-syria-stresses-kurds-preparedness-for-talks/
続いて同じサイトに、1月10日、ロジャバのクルド人の政治母体であるPKKが、それに関してロシア当局と秘密裏に話し合いを始めたと報じられました:
https://syria360.wordpress.com/2019/01/10/russian-kurdish-negotiations-in-moscow-turkey-has-defined-its-options-washington-is-trying-to-gain-time/
これはElijah J Magnierというジャーナリストによる長い詳細な記事で、オリジナルは
https://ejmagnier.com/2019/01/10/russian-kurdish-negotiations-in-moscow-turkey-has-defined-its-options-and-washington-is-trying-to-gain-time/
にあります。こちらの方には写真も沢山入っています。

 シリア政府とロジャバのクルド人勢力の間で新しい話し合いがあったという報道が、反アサド系のサイトにも、1月11日、現れました:
https://syrianobserver.com/EN/news/47901/mikdad-we-are-in-contact-with-the-kurds-following-turkish-threats.html
続いて12日、青山弘之氏の『シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢』に次のような内容の記事が出ました:
「YPGはシリア軍による国境防衛、シリア民主軍のシリア軍への統合にかかる行程表をロシアに提示」(2019年1月12日)
「『シャルク・アウサト』(1月12日付)は、シリア民主軍を主導する人民防衛隊(YPG)の使節団が、ラタキア県のフマイミーム航空基地にあるシリア駐留ロシア空軍司令部を訪問し、シリア政府との交渉に向けた行程表を提示したと伝えた。
この行程表は4項目からなり、①シリア軍が北部のトルコ国境地帯の防衛にあたること、②シリア民主軍(北・東シリア自治局)支配地域の地下資源の公正な分配を憲法で保障すること、③合意の成立をもって、シリア民主軍をシリア軍に統合すること、④北・東シリア自治区を適切なかたちでシリアの国家に統合し、その存在を憲法で保障すること、を骨子とするという。」
http://syriaarabspring.info/?p=56083  

また、次の報道記事もロジャバのクルド勢力がその生き残りの唯一の望みをアサド大統領のシリア政府との協調にかけようとしていることを示唆しています。
https://southfront.org/kurdish-politician-washington-trying-to-sabotage-talks-between-sdf-and-damascus/

 これらの記事は、ロジャバのクルド人の革命勢力がここにきて急速にアサド政権に接近していることを明らかに示しています。次回には、この緊迫事態の意義についての私の考えを述べたいと思います。

藤永茂(2019年1月13日)
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