トランプ大統領が、シリア領内のISIS(IS, DAESH) を完全に排除したと宣言しました。
米国の政治評論家エリック・ズエス(Eric Zuesse)は ISISと米国との関係を論じた記事 “HYPER-HYPOCRISY OF THE WEST ABOUT ISIS”
https://southfront.org/eric-zuesse-hyper-hypocrisy-of-the-west-about-isis/
で、
The issue of what to do with the thousands of surviving but (temporarily) defeated ISIS members — and with their spouses and children — has raised hypocrisy to perhaps the highest level in all of history.
と書いていますが、シリア戦争の初期から、IS(DAESH) を強力な傭兵として操り、しかも、SDFの形で、シリア北部のクルド人勢力も傭兵として仕立て上げ、SDF とDAESHを戦わせて、双方に多数の死者を出させるという悪魔の所業である(Diabolic) 極悪非道な大芝居を打たせ続けてきました。たとえHYPER—を頭につけるにしても、この行為を「偽善(HYPOCRISY)」という言葉で呼ぶのは適切でありません。
米国とIS の関係については、仮に核戦争で世界が壊滅しないとして、今から数十年後までに、真摯な歴史家たちによって、その真実が白日のもとに晒されることが望まれます。しかし現時点では、それは圧倒的なプロパガンダによってほぼ完全に遮蔽されています。私が残念に思うのは、日本の専門家、主要メディアのジャーナリストたちが、必要以上に「お上」の意図を忖度して、伝えても自らの職業的安全を保てるような報道ないしは論考をさえ、我々一般庶民に与えてくれないことです。
前回に紹介したANFNEWSいうロジャバ革命系のウェブサイトは、ロジャバ革命に強い関心を持つ私にとって、実に貴重な情報源です。このサイトの伝えるものが全て真実だなどと言っているのではありません。ロジャバ革命を推進しているシリア北東部のクルド人たちは、それこそ、必死ですから、生き残るためにはフェイク・ニューズも流すでしょう。そうした記事も含めてANFNEWSはロジャバ革命の成功に全てを賭けているクルド人が、本当には、何を考えているか、感じているかを、我々に教えてくれます。
例えば、彼らの真の対米感情。今は確かに米国の傭兵です。ロバート・フィスクさんが言うように「勇猛果敢」な傭兵軍団です。現在の情勢のもとで生き残るためにはこれ以外に選択肢はありますまい。しかし、彼らは米国の正体を見抜いています。ベネズエラの情勢を報じる、去る2月24日付のANFNEWSの記事:
https://anfenglish.com/features/what-is-happening-in-venezuela-33175
を読んでみて頂きたいのですが、その前に、典型的なマスコミ報道でニュースの復習をしましょう。2019年2月5日付の[AFP=時事]と2月11日付の[AFP]の記事です:
**********
[AFP=時事] 南米ベネズエラの野党指導者フアン・グアイド(Juan Guaido)氏が、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領への対決姿勢を強める中、同国の軍当局は、待ち望まれた人道支援物資が搬送されるのを前に、コロンビアとの国境に架かる橋を封鎖した。
これに先立って野党が多数派を占める国会は、物資の搬入を阻止して「レッドライン(越えてはならない一線)」を踏み越えないよう、マドゥロ氏の権力基盤の大きな部分を占める軍に警告。ミゲル・ピサロ(Miguel Pizarro)議員は軍に対し、「レッドラインがあり、限度がある。薬や食料、医療用品がその限度だ」とのメッセージを送った。 先月23日に暫定大統領への就任を宣言したグアイド氏は、支援物資が届かなければ、最大で30万人が死に直面すると主張している。 これに対してマドゥロ大統領は、支援物資は米国が主導する侵略の前触れと述べ、「侵略する兵士は一人も入らせない」と述べた。ベネズエラへの軍事介入も排除しない米国は、グアイド氏を暫定大統領として真っ先に承認。中南米の十数か国が後に続いた。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は5日夜の一般教書演説で、「われわれは気高く自由を追い求めるベネズエラの人々の側に立つ」と述べ、グアイド氏に対する米国の支持を改めて断言した。
[2月11日 AFP] ベネズエラ暫定大統領として約50か国が承認している野党指導者のフアン・グアイド(Juan Guaido)国会議長は10日、ベネズエラ軍が人道支援物資の搬入を阻止しているのは「人道に対する罪」だと厳しく批判した。
ベネズエラでは先週、コロンビアとの国境に架かる橋を兵士らが封鎖。米国から送られた医薬品や食品が現地に到着したものの、コロンビア側の国境の町ククタ(Cucuta)に3日にわたって留め置かれている。
ベネズエラ側では10日、数十人の医師らが支援物資の国境通過を求めて抗議デモを行った。参加した医師の一人は、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領はベネズエラの医療を「中世」の水準まで落としたと声を荒らげた。
グアイド氏は首都カラカスで妻と1歳8か月の娘を連れて教会の日曜礼拝に参加した後、記者団に「この状況に責任がある者たちがいる。(マドゥロ)政権はそれが誰かを知っているはずだ」と強調。「兵士たちよ、これは人道に対する罪だ」と述べ、「ジェノサイド(民族虐殺)も同然だ」と批判した。
**********
ここでも、Eric Zuesse の言う通り、米国の偽善はハイパーです。米国は前々から、ニコラス・マドゥロ政権を打倒するために、厳しい経済封鎖をベネズエラに課していて、そのため、国内では医薬品や食品の不足が深刻になり、かつてのイラクと同じく、多数の死者がすでに結果しているのです。
さて、復習ができたので、クルドの報道機関ANFNEWSの記事に戻りましょう。まず始めのところに、
「いわゆる人道支援物資の護送団が到着したコロンビアとの国境で、民衆間の衝突が発生し、少なくとも2名死亡と報じられ、ベネズエラはコロンビアとの外交関係を断絶した。人道支援物資の額は2千万ドルとされるが、米国と英国はベネズエラの海外資産70億ドルをすでに凍結押収している」と書いてあります。続いて、マドゥロ大統領は、昨年5月、自由で民主的な選挙で67%の支持を獲得して合法的に選出された事実を強調した後、困ったことに、世界では、もし諸強国(the strong powers)がある国の選挙の結果を好ましくないと考えると、選挙のやり直しをしようと言い出す。「国民の自由意志とか選択を尊重する話は何処へやら」(So much for respecting the freedom and choice of people.)と書いてあります。この記事の最後の部分を書き写しますので、読んでください:
**********
But the point is, nobody has the right to violate the sovereignty of another state because it does not like its president (legitimately, freely and democratically elected) and nobody has the right to invade another state and tell the people of this state that in fact they have no right to decide freely how and by whom they want to be governed.
Nobody has the right to bring war and despair to a nation and its peoples because they don’t ‘comply’ with another order established and dictated somewhere else, on top of people’s heads and certainly not with people’s interests in mind.
Let’s not forget this.
**********
ロジャバ革命の使命感に燃えるクルド人たちが米国をどうみているのか?
この問いの明白な答えがここにあります。世界の数々の論者たちが「いつの日かクルド人は米国に見捨てられる」と言いますが、私は、反対に、米国がクルド人に見捨てられる日の到来を夢見ています。
藤永茂(2019年3月27日)
米国の政治評論家エリック・ズエス(Eric Zuesse)は ISISと米国との関係を論じた記事 “HYPER-HYPOCRISY OF THE WEST ABOUT ISIS”
https://southfront.org/eric-zuesse-hyper-hypocrisy-of-the-west-about-isis/
で、
The issue of what to do with the thousands of surviving but (temporarily) defeated ISIS members — and with their spouses and children — has raised hypocrisy to perhaps the highest level in all of history.
と書いていますが、シリア戦争の初期から、IS(DAESH) を強力な傭兵として操り、しかも、SDFの形で、シリア北部のクルド人勢力も傭兵として仕立て上げ、SDF とDAESHを戦わせて、双方に多数の死者を出させるという悪魔の所業である(Diabolic) 極悪非道な大芝居を打たせ続けてきました。たとえHYPER—を頭につけるにしても、この行為を「偽善(HYPOCRISY)」という言葉で呼ぶのは適切でありません。
米国とIS の関係については、仮に核戦争で世界が壊滅しないとして、今から数十年後までに、真摯な歴史家たちによって、その真実が白日のもとに晒されることが望まれます。しかし現時点では、それは圧倒的なプロパガンダによってほぼ完全に遮蔽されています。私が残念に思うのは、日本の専門家、主要メディアのジャーナリストたちが、必要以上に「お上」の意図を忖度して、伝えても自らの職業的安全を保てるような報道ないしは論考をさえ、我々一般庶民に与えてくれないことです。
前回に紹介したANFNEWSいうロジャバ革命系のウェブサイトは、ロジャバ革命に強い関心を持つ私にとって、実に貴重な情報源です。このサイトの伝えるものが全て真実だなどと言っているのではありません。ロジャバ革命を推進しているシリア北東部のクルド人たちは、それこそ、必死ですから、生き残るためにはフェイク・ニューズも流すでしょう。そうした記事も含めてANFNEWSはロジャバ革命の成功に全てを賭けているクルド人が、本当には、何を考えているか、感じているかを、我々に教えてくれます。
例えば、彼らの真の対米感情。今は確かに米国の傭兵です。ロバート・フィスクさんが言うように「勇猛果敢」な傭兵軍団です。現在の情勢のもとで生き残るためにはこれ以外に選択肢はありますまい。しかし、彼らは米国の正体を見抜いています。ベネズエラの情勢を報じる、去る2月24日付のANFNEWSの記事:
https://anfenglish.com/features/what-is-happening-in-venezuela-33175
を読んでみて頂きたいのですが、その前に、典型的なマスコミ報道でニュースの復習をしましょう。2019年2月5日付の[AFP=時事]と2月11日付の[AFP]の記事です:
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[AFP=時事] 南米ベネズエラの野党指導者フアン・グアイド(Juan Guaido)氏が、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領への対決姿勢を強める中、同国の軍当局は、待ち望まれた人道支援物資が搬送されるのを前に、コロンビアとの国境に架かる橋を封鎖した。
これに先立って野党が多数派を占める国会は、物資の搬入を阻止して「レッドライン(越えてはならない一線)」を踏み越えないよう、マドゥロ氏の権力基盤の大きな部分を占める軍に警告。ミゲル・ピサロ(Miguel Pizarro)議員は軍に対し、「レッドラインがあり、限度がある。薬や食料、医療用品がその限度だ」とのメッセージを送った。 先月23日に暫定大統領への就任を宣言したグアイド氏は、支援物資が届かなければ、最大で30万人が死に直面すると主張している。 これに対してマドゥロ大統領は、支援物資は米国が主導する侵略の前触れと述べ、「侵略する兵士は一人も入らせない」と述べた。ベネズエラへの軍事介入も排除しない米国は、グアイド氏を暫定大統領として真っ先に承認。中南米の十数か国が後に続いた。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は5日夜の一般教書演説で、「われわれは気高く自由を追い求めるベネズエラの人々の側に立つ」と述べ、グアイド氏に対する米国の支持を改めて断言した。
[2月11日 AFP] ベネズエラ暫定大統領として約50か国が承認している野党指導者のフアン・グアイド(Juan Guaido)国会議長は10日、ベネズエラ軍が人道支援物資の搬入を阻止しているのは「人道に対する罪」だと厳しく批判した。
ベネズエラでは先週、コロンビアとの国境に架かる橋を兵士らが封鎖。米国から送られた医薬品や食品が現地に到着したものの、コロンビア側の国境の町ククタ(Cucuta)に3日にわたって留め置かれている。
ベネズエラ側では10日、数十人の医師らが支援物資の国境通過を求めて抗議デモを行った。参加した医師の一人は、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領はベネズエラの医療を「中世」の水準まで落としたと声を荒らげた。
グアイド氏は首都カラカスで妻と1歳8か月の娘を連れて教会の日曜礼拝に参加した後、記者団に「この状況に責任がある者たちがいる。(マドゥロ)政権はそれが誰かを知っているはずだ」と強調。「兵士たちよ、これは人道に対する罪だ」と述べ、「ジェノサイド(民族虐殺)も同然だ」と批判した。
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ここでも、Eric Zuesse の言う通り、米国の偽善はハイパーです。米国は前々から、ニコラス・マドゥロ政権を打倒するために、厳しい経済封鎖をベネズエラに課していて、そのため、国内では医薬品や食品の不足が深刻になり、かつてのイラクと同じく、多数の死者がすでに結果しているのです。
さて、復習ができたので、クルドの報道機関ANFNEWSの記事に戻りましょう。まず始めのところに、
「いわゆる人道支援物資の護送団が到着したコロンビアとの国境で、民衆間の衝突が発生し、少なくとも2名死亡と報じられ、ベネズエラはコロンビアとの外交関係を断絶した。人道支援物資の額は2千万ドルとされるが、米国と英国はベネズエラの海外資産70億ドルをすでに凍結押収している」と書いてあります。続いて、マドゥロ大統領は、昨年5月、自由で民主的な選挙で67%の支持を獲得して合法的に選出された事実を強調した後、困ったことに、世界では、もし諸強国(the strong powers)がある国の選挙の結果を好ましくないと考えると、選挙のやり直しをしようと言い出す。「国民の自由意志とか選択を尊重する話は何処へやら」(So much for respecting the freedom and choice of people.)と書いてあります。この記事の最後の部分を書き写しますので、読んでください:
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But the point is, nobody has the right to violate the sovereignty of another state because it does not like its president (legitimately, freely and democratically elected) and nobody has the right to invade another state and tell the people of this state that in fact they have no right to decide freely how and by whom they want to be governed.
Nobody has the right to bring war and despair to a nation and its peoples because they don’t ‘comply’ with another order established and dictated somewhere else, on top of people’s heads and certainly not with people’s interests in mind.
Let’s not forget this.
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ロジャバ革命の使命感に燃えるクルド人たちが米国をどうみているのか?
この問いの明白な答えがここにあります。世界の数々の論者たちが「いつの日かクルド人は米国に見捨てられる」と言いますが、私は、反対に、米国がクルド人に見捨てられる日の到来を夢見ています。
藤永茂(2019年3月27日)