米欧の圧倒的な暴力によって破壊し尽くされたカダフィのリビアの惨状がとうとうマスメディアの報道に大写しになり始めました。隠しおおせなくなったからです。
日本人の大部分はリビアのことなんか殆ど忘れてしまったでしょうが、米欧の暴挙を進んで支持し、独裁者を排して民主主義国として誕生した筈の新生リビアを言祝いだ論客たち専門家たちは、今どういう心理状態にあるのでしょうか? やはり気になります。
これらの人たちは強大なマスコミのシステムの上で発言の場を持ち、世間的にvisible(目立つ)な地位を占めています。メディア(報道媒体)を通じて一般大衆に影響を与える見地から、こうした人々をひっくるめてジャーナリストと呼ぶことにします。ジョージ・オーウェル(彼自身も広義のジャーナリストでした)が大昔に既に喝破したように、報道言論に対する権力側のコントロールはジャーナリストたちによって自主的に(voluntarily)行なわれます。ボランティア活動です。何故そんな情けないことになるのか? 現実的な欲望に支配されてしまうからだと思います。ビジブルなままで居たい、発言の場を失いたくない、高収入を落としたくない、消されてしまっては元も子もない。心理層的にその一つ上のレベルで彼らは自己弁護に極めて能弁なのが普通です。自分自身をうまく丸め込んでしまうのでしょう。こうして、彼らは権力側の意向に見事に身をすり寄せた発言を始めるのだろうと考えられます。
それにしても、今になって、実は新生リビアは目を覆うようなひどいことになっている事を報じるジャーナリストたちの筆致には、つい頭をかしげてしまいたくなります。筆者の本心が何処にあるかが、正直なところ、私には的確に読めないからです。本心を隠しているのではなく、病膏肓に入るということかも知れません。それを特に痛感したのは、英国のフィナンシャル・タイムズ紙の10月11日の社説『首相拉致で露呈したリビアの惨状』です。日本経済新聞に出た翻訳を借用します。:
***********************
(2013年10月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
リビアの首都トリポリの中心部でゼイダン首相が一時拉致された事件は、同国政府と西側諸国にとって不吉な前兆だ。カダフィ政権崩壊から2年近くたつが、リビアの民主主義への移行は混乱に陥っている。
ゼイダン氏は10日、首相の住居に押し入った武装勢力に拉致された。米国が国際テロ組織「アルカイダ」幹部のアナス・リビー被告を拘束した際に、リビア政府が黙認したとされることに対する報復なのは明らかだ。首相は数時間後には解放されたが、拉致のダメージは深刻で長期に及ぶだろう。首相の警護が手薄であることが明らかになったからだ。ゼイダン氏は名ばかりのリーダーにすぎない。
今回の拉致事件で、発足から日が浅いリビア政府のもろさが露呈した。昨年、比較的自由な選挙が実施されたにもかかわらず、リビアには信頼できる中央政権がなく、様々な民兵組織が国土を支配している。民兵組織の多くはリビア政府に雇われているが、政府に従う組織はほとんどない。
最大の問題は治安だ。政府は政治家や活動家、裁判官、治安当局者への相次ぐ襲撃に脅かされている。昨年には駐リビア米大使が殺害され、わずか1週間前にも武装勢力による攻撃を受けロシアの外交官が避難する騒ぎがあった。
■西側諸国は関与を続けるべき
暴力事件の多発は経済にも打撃を与えている。リビアはアフリカ最大の石油埋蔵量を誇るが、深刻な混乱を受けて政府は電力を確保するために軽油の輸入に踏み切った。不法行為の横行で、海外投資家や専門家による国の再建も進んでいない。
カダフィ政権崩壊を達成したからといって、西側諸国はリビアに背を向けるべきではない。自らの利益のためにも関与し続けることが必要だ。リビー被告を拘束した対テロ軍事作戦で、リビアが無法地帯と化し、アルカイダの関連組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」の新たな隠れ場所になるリスクがあることが浮き彫りとなった。リビアから欧州を目指す難民がさらに増えることを望む者はいない。イタリア南部沖で先週沈没した移民船も、リビアのミスラタから出航していた。
とはいえ、国際社会がリビアの問題を全て解決できるわけではない。最終的に国の命運を握るのはゼイダン首相だ。首相は西側が援助した資金を民兵組織を政府支配下に置く手段として使わず、組織の衝突を解決するために使っている。首相が心を入れ替えない限り、リビアが破綻国家に仲間入りするのを恐々と見ているしかない。
********************
上の記事についてのコメントを始める準備として、いわゆるリビア内戦(本当はほぼ全く国外で用意された外戦)のお復習いをします。
2011年2月17日リビア東部のベンガジで「アラブの春」と見せかけた(今はその見せかけも消えてしまいました)民衆反乱が、2月20日には同様の反政府デモが首都トリポリでも発生しました。カダフィ政府はその鎮圧に動きましたが特別猛烈ではありませんでした。しかし、2月27日、半国際的規模でNTC(National Transitional Council)という臨時政権組織があっという間に出来上がって、3月10日にはフランスが先頭を切って、リビア国民を代表する政府組織としてNTCを承認しました。3月17日には国連の安全保障会議が賛成10、反対0、棄権5(ロシア、中国を含む)で決議1973を議決し、それには「リビア内の民間人を守るために必要なあらゆる手段を使用する」ことが承認されていて、3月19日にはフランス空軍を主力とするNATO空軍の猛爆が開始されました。トントン拍子の展開、何という手回しの良さ!! このNATO空軍の猛爆は10月末に終了するまでに、出撃回数2万6千回、ミサイル爆撃行1万回を数えました。8月22日に反政府軍が首都トリポリに入り、10月20日にカダフィの出身地シルテでカダフィは惨殺されます。10月23日、リビア開放宣言、26日、シルテが破壊し尽くされて陥落し、リビア戦争は終結を迎えました。
翌2012年7月“民主選挙”が行なわれ、GNC(General National Congress) が成立し、2012年11月、臨時政府(NTC)が解散して、外国帰りの操り人形ゼイダン氏が正式政府の首相に就任しました。
私はNATOの爆撃が始まった直後の2011年3月30日のブログ記事『リビアは全く別の問題である』を、次のように結びました。:
■「現在、欧米とアラブの反カダフィ勢力は強力ですから、カダフィの命運は尽きたのも同然でしょう。一巻の終わりです。しかし、今度の裏切られた「アラブの春」の情景の中に、嘘に塗り固められた、しかし、それ故に赤裸々な欧米諸国の真の姿を見抜いた無数の若い黒人たちが、北アフリカにも、南アフリカにも、いや世界中に、居ることでしょう。彼らの力のマグマがゆっくりと沈殿し鬱積して、何時の日か、アフリカの地底から天に向かって噴き上がる日が必ず来るに違いありません。「アフリカの春」はどうしても実現されなければなりません。」■
さて、過去の復習が終った所で、もう一度、フィナンシャル・タイムズ紙の本年10月11日の社説『首相拉致で露呈したリビアの惨状』を読んで下さい。戦争を起こした米欧が予期しなかった困難がリビアを襲っていることがもう覆い隠せないことはこの社説からも明らかですが、問題はこれを書いた論説委員の語り口です。リビアが呈している惨状はひとえにゼイダン首相の無能のせいだと決めつけています。特に後半の「西側諸国は関与を続けるべき」という所では、西側諸国が巨額の軍事費をつぎ込んでカダフィ政権を倒してやったのに、ゼイダン首相に率いられるリビア人たちはヘマばかりやっている、このままでは我々も損害を蒙るから、これから先も助けてやらなければなるまい、という語り口、そして、その最悪の部分は次に原文を掲げる終結部です。:
■ However, the wider world cannot fix all of Libya’s ills. Ultimately, Mr Zeidan must get a grip on his country’s destiny. The prime minister has been too willing to buy off the warring militias with western cash rather than using these subsidies as a lever to place them under government control. Unless he gets a grip, the west can only look on in horror as Libya joins the dismal ranks of failed states. ■
何という、最も悪しき意味で paternalistic な恩着せがましい言葉使いでしょう。
実は、米欧側はこの侵略戦争で狙った目的は十分に達成に成功したのです。米欧の本心は「後は野となれ山となれ(After us the deluge)」以外の何ものでもありません。もともと“独裁者”カダフィの暴虐からリビアの一般市民を守るなどという口実は始めから終りまで真っ赤な嘘でしかなかったのですから。
その事は上の社説の書きぶりにも現れています。一般市民の住み心地では、アフリカ大陸で最高の水準にあり、衣食住、教育、医療保険などの社会政策の面では米国の中下層民のそれより遥かに恵まれていたリビアの人々の日常生活の激変苦難については、この記事では、ただ二カ所、首都トリポリでさえ社会的混乱から停電がしばしば起っていること、生活環境の劣悪化を逃れようとして海に出た難民船がイタリーの沖で難破沈没して多数の死者がでたこと、を報じるのに、
「リビアはアフリカ最大の石油埋蔵量を誇るが、深刻な混乱を受けて政府は電力を確保するために軽油の輸入に踏み切った。不法行為の横行で、海外投資家や専門家による国の再建も進んでいない。」
「リビアから欧州を目指す難民がさらに増えることを望む者はいない。イタリア南部沖で先週沈没した移民船も、リビアのミスラタから出航していた。」
といった調子であくまで欧米側の利害本位の筆致です。このフィナンシャル・タイムズ紙の社説を書いた論説委員がリビアの人々のむごたらしい苦難の実情を知りながら、フィナンシャル・タイムズ紙として許されるトーンに筆を落として書いたのか、それとも、筆者自身の考え方がそのまま社説に表れているのか、私はいささか判断に迷いますが、おそらくこの語り口は筆者自身のものであろうという気がしてなりません。(続く)
藤永 茂 (2013年10月31日)
日本人の大部分はリビアのことなんか殆ど忘れてしまったでしょうが、米欧の暴挙を進んで支持し、独裁者を排して民主主義国として誕生した筈の新生リビアを言祝いだ論客たち専門家たちは、今どういう心理状態にあるのでしょうか? やはり気になります。
これらの人たちは強大なマスコミのシステムの上で発言の場を持ち、世間的にvisible(目立つ)な地位を占めています。メディア(報道媒体)を通じて一般大衆に影響を与える見地から、こうした人々をひっくるめてジャーナリストと呼ぶことにします。ジョージ・オーウェル(彼自身も広義のジャーナリストでした)が大昔に既に喝破したように、報道言論に対する権力側のコントロールはジャーナリストたちによって自主的に(voluntarily)行なわれます。ボランティア活動です。何故そんな情けないことになるのか? 現実的な欲望に支配されてしまうからだと思います。ビジブルなままで居たい、発言の場を失いたくない、高収入を落としたくない、消されてしまっては元も子もない。心理層的にその一つ上のレベルで彼らは自己弁護に極めて能弁なのが普通です。自分自身をうまく丸め込んでしまうのでしょう。こうして、彼らは権力側の意向に見事に身をすり寄せた発言を始めるのだろうと考えられます。
それにしても、今になって、実は新生リビアは目を覆うようなひどいことになっている事を報じるジャーナリストたちの筆致には、つい頭をかしげてしまいたくなります。筆者の本心が何処にあるかが、正直なところ、私には的確に読めないからです。本心を隠しているのではなく、病膏肓に入るということかも知れません。それを特に痛感したのは、英国のフィナンシャル・タイムズ紙の10月11日の社説『首相拉致で露呈したリビアの惨状』です。日本経済新聞に出た翻訳を借用します。:
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(2013年10月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
リビアの首都トリポリの中心部でゼイダン首相が一時拉致された事件は、同国政府と西側諸国にとって不吉な前兆だ。カダフィ政権崩壊から2年近くたつが、リビアの民主主義への移行は混乱に陥っている。
ゼイダン氏は10日、首相の住居に押し入った武装勢力に拉致された。米国が国際テロ組織「アルカイダ」幹部のアナス・リビー被告を拘束した際に、リビア政府が黙認したとされることに対する報復なのは明らかだ。首相は数時間後には解放されたが、拉致のダメージは深刻で長期に及ぶだろう。首相の警護が手薄であることが明らかになったからだ。ゼイダン氏は名ばかりのリーダーにすぎない。
今回の拉致事件で、発足から日が浅いリビア政府のもろさが露呈した。昨年、比較的自由な選挙が実施されたにもかかわらず、リビアには信頼できる中央政権がなく、様々な民兵組織が国土を支配している。民兵組織の多くはリビア政府に雇われているが、政府に従う組織はほとんどない。
最大の問題は治安だ。政府は政治家や活動家、裁判官、治安当局者への相次ぐ襲撃に脅かされている。昨年には駐リビア米大使が殺害され、わずか1週間前にも武装勢力による攻撃を受けロシアの外交官が避難する騒ぎがあった。
■西側諸国は関与を続けるべき
暴力事件の多発は経済にも打撃を与えている。リビアはアフリカ最大の石油埋蔵量を誇るが、深刻な混乱を受けて政府は電力を確保するために軽油の輸入に踏み切った。不法行為の横行で、海外投資家や専門家による国の再建も進んでいない。
カダフィ政権崩壊を達成したからといって、西側諸国はリビアに背を向けるべきではない。自らの利益のためにも関与し続けることが必要だ。リビー被告を拘束した対テロ軍事作戦で、リビアが無法地帯と化し、アルカイダの関連組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」の新たな隠れ場所になるリスクがあることが浮き彫りとなった。リビアから欧州を目指す難民がさらに増えることを望む者はいない。イタリア南部沖で先週沈没した移民船も、リビアのミスラタから出航していた。
とはいえ、国際社会がリビアの問題を全て解決できるわけではない。最終的に国の命運を握るのはゼイダン首相だ。首相は西側が援助した資金を民兵組織を政府支配下に置く手段として使わず、組織の衝突を解決するために使っている。首相が心を入れ替えない限り、リビアが破綻国家に仲間入りするのを恐々と見ているしかない。
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上の記事についてのコメントを始める準備として、いわゆるリビア内戦(本当はほぼ全く国外で用意された外戦)のお復習いをします。
2011年2月17日リビア東部のベンガジで「アラブの春」と見せかけた(今はその見せかけも消えてしまいました)民衆反乱が、2月20日には同様の反政府デモが首都トリポリでも発生しました。カダフィ政府はその鎮圧に動きましたが特別猛烈ではありませんでした。しかし、2月27日、半国際的規模でNTC(National Transitional Council)という臨時政権組織があっという間に出来上がって、3月10日にはフランスが先頭を切って、リビア国民を代表する政府組織としてNTCを承認しました。3月17日には国連の安全保障会議が賛成10、反対0、棄権5(ロシア、中国を含む)で決議1973を議決し、それには「リビア内の民間人を守るために必要なあらゆる手段を使用する」ことが承認されていて、3月19日にはフランス空軍を主力とするNATO空軍の猛爆が開始されました。トントン拍子の展開、何という手回しの良さ!! このNATO空軍の猛爆は10月末に終了するまでに、出撃回数2万6千回、ミサイル爆撃行1万回を数えました。8月22日に反政府軍が首都トリポリに入り、10月20日にカダフィの出身地シルテでカダフィは惨殺されます。10月23日、リビア開放宣言、26日、シルテが破壊し尽くされて陥落し、リビア戦争は終結を迎えました。
翌2012年7月“民主選挙”が行なわれ、GNC(General National Congress) が成立し、2012年11月、臨時政府(NTC)が解散して、外国帰りの操り人形ゼイダン氏が正式政府の首相に就任しました。
私はNATOの爆撃が始まった直後の2011年3月30日のブログ記事『リビアは全く別の問題である』を、次のように結びました。:
■「現在、欧米とアラブの反カダフィ勢力は強力ですから、カダフィの命運は尽きたのも同然でしょう。一巻の終わりです。しかし、今度の裏切られた「アラブの春」の情景の中に、嘘に塗り固められた、しかし、それ故に赤裸々な欧米諸国の真の姿を見抜いた無数の若い黒人たちが、北アフリカにも、南アフリカにも、いや世界中に、居ることでしょう。彼らの力のマグマがゆっくりと沈殿し鬱積して、何時の日か、アフリカの地底から天に向かって噴き上がる日が必ず来るに違いありません。「アフリカの春」はどうしても実現されなければなりません。」■
さて、過去の復習が終った所で、もう一度、フィナンシャル・タイムズ紙の本年10月11日の社説『首相拉致で露呈したリビアの惨状』を読んで下さい。戦争を起こした米欧が予期しなかった困難がリビアを襲っていることがもう覆い隠せないことはこの社説からも明らかですが、問題はこれを書いた論説委員の語り口です。リビアが呈している惨状はひとえにゼイダン首相の無能のせいだと決めつけています。特に後半の「西側諸国は関与を続けるべき」という所では、西側諸国が巨額の軍事費をつぎ込んでカダフィ政権を倒してやったのに、ゼイダン首相に率いられるリビア人たちはヘマばかりやっている、このままでは我々も損害を蒙るから、これから先も助けてやらなければなるまい、という語り口、そして、その最悪の部分は次に原文を掲げる終結部です。:
■ However, the wider world cannot fix all of Libya’s ills. Ultimately, Mr Zeidan must get a grip on his country’s destiny. The prime minister has been too willing to buy off the warring militias with western cash rather than using these subsidies as a lever to place them under government control. Unless he gets a grip, the west can only look on in horror as Libya joins the dismal ranks of failed states. ■
何という、最も悪しき意味で paternalistic な恩着せがましい言葉使いでしょう。
実は、米欧側はこの侵略戦争で狙った目的は十分に達成に成功したのです。米欧の本心は「後は野となれ山となれ(After us the deluge)」以外の何ものでもありません。もともと“独裁者”カダフィの暴虐からリビアの一般市民を守るなどという口実は始めから終りまで真っ赤な嘘でしかなかったのですから。
その事は上の社説の書きぶりにも現れています。一般市民の住み心地では、アフリカ大陸で最高の水準にあり、衣食住、教育、医療保険などの社会政策の面では米国の中下層民のそれより遥かに恵まれていたリビアの人々の日常生活の激変苦難については、この記事では、ただ二カ所、首都トリポリでさえ社会的混乱から停電がしばしば起っていること、生活環境の劣悪化を逃れようとして海に出た難民船がイタリーの沖で難破沈没して多数の死者がでたこと、を報じるのに、
「リビアはアフリカ最大の石油埋蔵量を誇るが、深刻な混乱を受けて政府は電力を確保するために軽油の輸入に踏み切った。不法行為の横行で、海外投資家や専門家による国の再建も進んでいない。」
「リビアから欧州を目指す難民がさらに増えることを望む者はいない。イタリア南部沖で先週沈没した移民船も、リビアのミスラタから出航していた。」
といった調子であくまで欧米側の利害本位の筆致です。このフィナンシャル・タイムズ紙の社説を書いた論説委員がリビアの人々のむごたらしい苦難の実情を知りながら、フィナンシャル・タイムズ紙として許されるトーンに筆を落として書いたのか、それとも、筆者自身の考え方がそのまま社説に表れているのか、私はいささか判断に迷いますが、おそらくこの語り口は筆者自身のものであろうという気がしてなりません。(続く)
藤永 茂 (2013年10月31日)