私はその実現に立ち会うことは出来ませんが、これは希望的観測でも夢でもありません。確実に起こることだと考える十分の理由があります。その第一の理由は、今アフリカのサヘール地域で起こっていることの本質が、一連の旧フランス植民地での単なるクーデター騒ぎではなく、アフリカ大陸の一般住民、とりわけ、若者たちの意識の地殻変動的な変化の現れであることです。近頃のソーシャルメディアを通しての若者たちの間の相互接触も大きく貢献していると思いますが、この数年の間に、特に2022年に、数多くのアフリカの運動団体によって遂行された地道な努力の積み上げの結果であるとも言えます。現在、最も表面化している問題点は、ネオコロニアリズの宗主側に魂を売り渡してしまったアフリカ黒人指導者側とその支配に反抗する側との抗争です。ニジェールのクーデター勢力との抗争がその一例です。この問題は、あまり遠くない将来、ルワンダのポール・カガメ勢力とM23によるコンゴ地域からの地下資源収奪とそれに反対する現地の若者を主体とする勢力との激烈な抗争の形を取って世界の耳目をさらう事になりましょう。「実際の状況は複雑だ」と専門家たちは言うでしょうが、ポール・カガメが米国の手先となって、現地のアフリカ人を奴隷として酷使して地下資源を国外に持ち出しているという単純な基本的事実は全く否定の余地はありません。
およそ150年前、ベルギー国王レオポルド二世の私的植民地として始まり、今日までに二千万人に近い現地アフリカ人が犠牲となったコンゴ地方からの自然資源略奪の問題の解決が、新しいUSA誕生の戦いの天王山になることも見通せます。
現在のニジェールのクーデターを中心とした報道では、例えば、これはサヘール地域のフランスの支配を米国が横取りする動きだと言うような、如何にも穿った見方が示されたりしていますが、奇妙なほど欠落しているのはブルキナ・ファソの過去の歴史と現在の状況についての報道です。いま彭湃として起こっているアフリカ大陸の真の目覚めはトーマス・サンカラを起点としていると、私は考えます。ブルキナ・ファソのトーマス・サンカラについてはこのブログで何度か取り上げました。今回、改めて、ウィキペディアを覗いて見ましたら、トーマス・サンカラと、その朋友であったのにトーマス・サンカラとその部下十二人を殺害してブルキナ・ファソの政権を奪取したブレーズ・コンパオレについてのかなり詳しい記事が出ていましたので、興味のある方はご覧ください。もっとも、ウィキペディアの記事も米国のプロパガンダ機構(CIA)の統制下に入ってしまったようです。ブレーズ・コンパオレも米国に魂を売ってしまったアフリカ人の代表的な人物の一人ですが、ウィキペディアにはそうは書いてありません:
https://www.unz.com/aanglin/the-cia-is-running-wikipedia-wow-what-a-shocker/
しかし、少し探せば、トーマス・サンカラについての信頼できる記事がいくらも見つかります。その一例:
https://libya360.wordpress.com/2022/11/07/thomas-sankara-decolonization-love-and-trust-in-the-people-a-new-humanity-for-ending-oppression/
フランスのネオコロニアリズム政策に対するアフリカのサヘール地域での今回のクーデター騒乱の中核の事件は、2022年9月30日のブルキナ・ファソで起こったクーデターです。それを率いたのは34歳の若いイブラヒム・トラオレ大尉で、10月5日には正式に大統領に就任しました。トーマス・サンカラの治世は1983年から1987年までですから、サンカラが亡くなった時には未だ生まれてもいませんでした。トラオレはサンカラの熱烈な崇拝者で、出来ることなら、自分がサンカラの再来でありたいと願っているのでしょう。サンカラとおなじ赤いベレー帽を被り、サンカラほどイケメンではありませんが、なかなか見栄も良い若大将で、やがて民政への移行も約束しています。
ブルキナ・ファソの首都ワガドゥグー(Ouagadougou) には、2021年10月に開所した「アフリカの解放と統一のためのトーマス・サンカラ・センター (Thomas Sankara Center for African Liberation and Unity) 」という教育と情宣活動の施設があります。そこでは若い市民たちの教育が盛んに行われているようです:
https://barnard.edu/magazine/fall-2022/revolution-thought-west-africa
センターから発信された次のような記事もあります:
https://libya360.wordpress.com/2023/09/08/55-pan-african-organzations-oppose-sanctions-on-niger/
同じく、センターから発せられた記事:
https://hoodcommunist.org/2023/03/02/the-homeland-or-death-accomplishments-of-the-traore-government-in-burkina-faso/
の中には、The United States of Africa という呼び名が首都ワガドゥグーでは既に広く語られていると書いてあります:
Finally, and perhaps most importantly, the direction of the new administration in Burkina Faso can be measured by its adamant support for the creation of a federation of African states. “The United States of Africa” is a term heard all over the streets of Ouagadougou these days and Prime Minister Kyélem de Tambèla is convinced by the vision.
この記事の結語の部分に次の文章もあります:
In the short time that President Ibrahim Traoré has been in power, he and his cabinet have demonstrated profound admiration for Thomas Sankara. Sankara, along with the 12 other revolutionaries that were assassinated alongside him, was given proper burials at the Thomas Sankara memorial site on February 23rd, 2023. According to Mousbilla Sankara, Thomas Sankara’s uncle, “[This burial is] the first time I’ve seen Catholics, Protestants, and Muslims perform the same ceremony for corpses. It means that it is a sign of union.” The intimate event was reserved for close family members and friends of Sankara but a large public event is planned for October 15th, 2023, the anniversary of Sankara’s assassination. Sankara’s body had been extracted from his modest makeshift tombstone eight years ago for legal reasons. Now he rests in an appropriate location where Burkinabé, Africans, and people around the world can pay him respect.
ブルキナベというのはブルキナ・ファッソの住民のことです。来月10月の23日、サンカラ暗殺から36年目の記念の日に、大きな記念集会が企画されているようです。私たちも、今は亡きトーマス・サンカラに遠く想いを馳せながら、この日を迎えましょう。
藤永茂(2023年9月12日)