私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

戦争犯罪者

2016-03-31 21:57:34 | 日記・エッセイ・コラム
 去る3月14日午後10時からNHKBS1の『国際報道』で「進展は?シリア和平協議再開へ」という特集がありました。最初に2011年初めから次第に激化していったシリア国内の反アサド政権の騒乱で政権側の制圧の暴力的画面が紹介され、続いて、これまで反政府運動の多数の団体の間での連携が良く取れてなかったのが、ジュネーブでの和平協議の直前になって一致団結の機運が高まっているという説明がありました。トルコとの国境に近いアレッポあたりの地図が示されて、その絵に10個ほどの反政府団体のマークが書き込まれ、それらが結束を固めようとしている様子が、NHK特派員の現地特別取材として放映されました。
 一般視聴者が受け取る圧倒的な印象は、アサド政権の容赦なき市民弾圧とそれに立ち向かう組織化不十分の反政府シリア国民の苦衷という絵柄でしょう。あまりにひどい偏向番組に呆れて、翌日のシリア特集の続き「シリア・戦争孤児の過酷な現実」は全く見る気を失ってしまいました。アサド大統領の残酷さをことさら強調するためのお涙頂戴番組など見たくはありません。もしも見させてもらえるものならば、このような宣伝番組がどのようなプロセスで出来上がって行くものなのか、現場の人たちがどのような自己嫌悪に耐えてこうした仕事をやっているのか、その鱗片でも見てみたいものです。
 NHK記者の取材を受けた反政府勢力の名前の一つは、なになに旅団とか言っていましたが、それは前前回のこのブログに挙げておいた記事

https://syria360.wordpress.com/2016/03/08/ypg-general-command-statement-regarding-deadly-sheikh-maqsood-attacks/

の中に列挙してある、英語で、battalion とあるものを指しています。
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The factions and battalions that belong to the Syrian Coalition (Islamic Movement of Ahrar ash-Sham, al-Jabha al-Shameea, Brigade of Sultan Murad, Sultan Fatih Battalions, Fa Istaqim Kama Omirt Battalions, Nour ad-Deen Zinki Battalions, 13 Brigade, al-Fauj al-Oal (1st Regiment), 116 Battalion and Abu Omara Battalions), centered in Al-Jandoul rotary, Ristam Basha neighborhood, Bani Zeid, Al-Sakan al-Shababi and Kastello; together they are daily shelling Sheikh Maqsood neighborhood with mortar shells and homemade rockets hell cannons – their snipers are committing most egregious crimes against civilians, women and children, and destroying houses upon its populated civilians.
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上の記事にあるシリア連合(Syrian Coalition、あるいは、Syrian National Coalition, SNC)という反アサド政権の勢力連合体の歴史はシリア紛争の初めに戻って語らなければなりませんが、簡単に言えば、アサド政権転覆を目指すトルコが画策したもので、直接的には北イラクのKRGのバルザーニが操っています。エルドアン大統領と北クルディスタンのバルザーニ大統領はイラク北部で産出する石油の商売でも密接な関係にありますし、エルドアン大統領の不倶戴天の敵であるオジャランのPKKに対してもバルザーニ大統領は、テロリストと見做して、敵対の姿勢を取っています。今回、NHK記者が取材したのはSNCの現地下部組織であるSyrian Kurdish National Coalition(ENKS)に属する“旅団”で、実は、驚くべきことに、このENKSという連合体は、クルド人の代表として、ジュネーブでの和平協議に参加資格を獲得しているのです。ですから、ロシアが主張しているのは、このエルドアン大統領の回し者のENKSに加えて、ロジャバのクルド人の代表も出席させるべきだ、ということです。 
 こういうわけですから、オジャランの教えを体するロジャバのクルド人たち(PYD, YPG, YPJ)とENKSのクルド人たちがうまく行く筈がありません。上に引いてあるウェブサイト記事をお読みになれば、停戦協定を破って、ENKS側がSheikh Maqsood (Şêx Meqsûd)の近郊で、ロジャバのクルド人一般住民に砲火を浴びせてきたことを報じたものです。次の記事は、この事件についてのロジャバのクルド人の女性指導者の一人による言明です。これによると、一般市民に攻撃をかけた部隊にはISも含まれていたようです。それが真実だとすると、ISがエルドアン大統領の手先として働いている場合の実例が、また一つ、得られたことになります。

https://syria360.wordpress.com/2016/03/17/ayse-efendi-ypj-and-ypg-are-the-defense-shield-of-the-people/

実は、この後、シリア北西部のIS支配地域がシリア軍やロジャバ軍によって奪還されるにつれて、敗走した後のIS組織の拠点から、石油取引、負傷兵収容などに関して、トルコとISとの密接な連携を明示する文書が続々発見されています。これらの証拠書類はロシアによって国連に提出されていますから、「もしトルコがISと石油の取引をしているという確かな証拠があれば、私は大統領の席から降りる」と国際的に約束したエルドアン大統領は辞任しなければならないはずですが、勿論、そんな気配はありません。
 これは私の個人的推測ですが、今回のブログの始めに言及したNHK特派員の現地特別取材は、エルドアンのトルコ政府が東京のトルコ大使館を通じて持ちかけてきた要請に始まったものであったと思われます。取材が行われた地区と反政府勢力の性格は、そのまま、シリア紛争が直接的にエルドアン大統領によって推進されてきたことを明らかに示しています。もしシリア内の取材地区がトルコとISを含む反アサド勢力の連絡接触地区として使うことが出来なかったとしたら、シリア紛争は始まらなかったでしょう。この戦争が引き起こした悲劇の規模を考えると、やがて、国際法廷が戦争犯罪者としてエルドアン大統領を厳しく裁く日が到来すべきであります。そうでなければ、最近カラジッチに厳しい判決を下した国際法廷は解体されなければなりません。

藤永茂 (2016年3月31日)
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頂いた幾つかのコメントへのお答え

2016-03-29 16:11:55 | 日記・エッセイ・コラム
 近頃、私のブログ記事に対して頂いた幾つかのコメントに私なりにお答えしようと思います。
 まず、このブログは、日本として重要な問題が多数あるのに、それらを殆ど取り上げず、主に海外の、それも、やや周辺的にも見える問題を主に取り上げている理由を申し上げます。憲法の問題、福島原発に連なる問題、TPPの問題、などについては、私の身辺にも、70代の年齢にもかかわらず、諸種の講演会や抗議集会に出席し、あるいは、街頭に立って呼びかけを実行している人たちが居ます。老老介護的な生活状況にあることを理由に、私は、そうしたことから全く身を引いてしまっていますが、内心いささか忸怩たるものがあります。大昔、私は教職員組合の一員として、プラカードを持って市内電車に乗り、デモ集会に参加したことがありました。その時に感じた一種の気恥ずかしさを、それがどこから来たものか、未だに、内的にきっぱりと処理できずにいます。今も、行動現場に身を挺していない私は、国内的に重要な問題についての現実的知識と感覚に欠けるところがあると思わざるをえません。では、私に出来ることは何か。ブログという形で何を発言すれば役に立つのか。自分の存在価値を見出すことが出来るのか。
 終戦後のボイス・オブ・アメリカの放送に始まり、アメリカ、イギリス、カナダのラジオ、テレビ放送、新聞、週刊誌、月刊誌などとの70年に近い長い付き合いの経験とその記憶、これがほぼ唯一の私の取り柄です。長生きをしたというだけのことですが、その間に随分と大きな変遷がありました。簡単に言えば、親米から反米への変遷です。一例を挙げれば、New York Times、これについては、以前に、懐旧の念を持って書いたことがあります。ワシントン・ポストと共に、ニューヨーク・タイムズとの、一読者としての、私の関係は、一種のラブ・アフェアとやがて訪れた苦い幻滅の長い弧を描くものでした。その幻滅は、大げさに言えば、米国そのものについての決定的な幻滅です。幻と悟った者はその正体を見据えたい気持ちに襲われて、懸命に目を凝らします。過去十数年間の経験から、目を凝らして見るに効果的な場所は、中心的な事件の舞台よりも、周辺的な場所であることを私は学びました。例えば、ヒラリー・クリントンという女性の真の姿が裸のままで露出しているのを見るには、米国本土ではなく、リビア、ハイチ、ホンデュラスなどが格好の場所です。
 報道内容の有用さと信憑性に関して、例えば、ニューヨーク・タイムズとロシア・トゥデイを比較検討する作業は、我々各個人でやれます。時間が必要なだけです。ある場合には5、6年あるいはそれ以上の時間が必要かもしれませんが、普通はそんなにかかりません。私のこのところの経験から、一般論として、NYTよりもRTの方が、現時点では格段に有用で、信憑性も高いと判断しています。自分の意見を正当化する方の報道あるいは論説を選ぶほど耄碌はしていないつもりです。例えば、私の個人的感覚だけを頼れば、アラブの春以来、シリアの現大統領アサド氏はシリア国民に対する意図的な弾圧殺戮行為を犯してはいないと信じたいのですが、私が信頼を置くジャーナリストのロバート・フィスクさんの語り口等から察するに、私の推測的判断は甘すぎると考えざるをえません。
 前にもこのブログで書きましたが、私のブログを覗いてくださる方々ならば、必ずしばしば訪れているに違いない『マスコミに載らない海外記事』というサイトがあります。私は著者に満腔の敬意を表します。これだけの量の海外記事の翻訳をすることが、どんなに大変なことか、私には痛いほど分かります。私の敬意は、また、このサイトにアップされる多数の記事の著者であるPaul Craig Roberts にも向けられます。

藤永茂 (2016年3月29日)
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エルドアン大統領とロジャヴァ革命

2016-03-15 13:51:52 | 日記
 前回のブログで「エルドアン大統領はシリア内でのロジャヴァ革命の発展を最も恐れている」と書きました。また「R2Pは、もうすっかり破綻してしまった標語なので、さすがにこの頃は使われなくなってしまいましたが、とにかく、もう一度復習しておきます。ウィキペディアには“保護する責任( Responsibility to Protect)は、自国民の保護という国家の基本的な義務を果たす能力のない、あるいは果たす意志のない国家に対し、国際社会全体が当該国家の保護を受けるはずの人々について「保護する責任」を負う”とあります。もし、カダフィ政権下のリビア住民を“保護”するためにNATOによるあれほどの猛爆が行われるべきであったのなら、今のトルコ国内のクルド人たちの方が、カダフィ政権下のリビア住民たちの10倍、100倍の保護が必要です。トルコ南東部のクルド系住民は自国政府による残酷な軍事的暴力にさらされていますが、その報道はほとんど行われていません」とも書きました。
 実は、エルドアン大統領がトルコ南東部のクルド系住民に行っている残虐行為(ジェノサイド)についてはRTというロシアのテレビ報道機関(www.rt.com)を覗けば沢山知ることが出来ます。とりわけ、重要都市ジズレ(Cizre)とディヤルバクル(Diyarbakir)の建造物の破壊状況の映像は衝撃的です。報道内容の信憑性は幾つかの理由から十分高いと判断されます。

https://www.rt.com/news/335208-turkey-kurdish-cizre-devastation/

https://www.rt.com/news/335337-diyarbakir-turkish-military-crackdown/

トルコ政府や西側(日本を含む)が「これは対テロリスト作戦だ」と如何に言いくるめようとしても無理で、明らかにクルド人に対するジェノサイドであり、しかるべく取り扱われるべきものです。
 エルドアン大統領が、この時点で、トルコ南東部(北クルディスタン)のクルド人住民に対して大規模のジェノサイド軍事行為に出ているのは、北クルディスタンの南に続いている西(ロジャヴァ)クルディスタンで進行しているロジャヴァ革命が成就して、終戦後のシリアの中で然るべき自治地区としての地位を獲得することを極端に恐れているからです。もしそうなれば、文字どおり地続きの北クルディスタンが、“トルコ内に留まりながら”ロジャヴァ・クルディスタンと同等の自治地区となる決意をますます強く固めるに違いないからです。クルド人たちの目指しているものは、クルド人独自の利己的な独立国家の建設では、もはや、ないのです。これまで、このブログ・シリーズで何度も引用しましたが、再度、ロジャヴァ諸県の憲法の「前文」を読んでみましょう。:

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前文

我々、クルド人、アラブ人、シリア人、アラム人、トルコ人、アルメニア人、チェチェン人の連合体である、アフリン、ジャジーラ、コバネ三県の民主的自治区の人民は、率直かつ厳粛にこの憲章を宣言し、制定する。

自由、正義、尊厳、そして民主主義を求め、平等と環境的持続可能性の原理に導かれて、この憲章は、お互いの平和な共存と社会のすべての要素の間の理解に基づく新しい社会契約を宣言する。それは基本的人権と自由を擁護し、人民の自決の権利をあらためて確認する。

この憲章の下、我々この自治区の人民は、すべての人々が公共生活で自由に自己表現できるように、和解、多元的共存、民主的参加の精神で一致団結する。権威独裁主義、軍事主義、中央集権、公事への宗教的権威の干渉から自由な社会を建設するために、この憲章はシリアの領土的一体性を認め、国内的また国際的平和を維持することを強く願うものである。

この憲章を制定するにあたって、我々は、独裁政治、内戦、破壊から、市民生活と社会正義が保護される新しい民主的社会への遷移の局面を経て、シリアの豊かなモザイックを調和させる社会契約に基づいた政治的システムと市民行政を布告する。

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これは、クルド人の指導者オジャランが長い年月の苦悩に満ちた思索の末に到達した境地であり、結論であり、ロジャヴァ革命はこのオジャランの平和の理念に基づいているのです。この形の平和が中東に、世界に、実現することほど、エルドアン大統領や米国やイスラエルにとって、都合の悪いことはありません。
 3月14日にスイス・ジュネーブで再開されたシリア紛争の和平協議に、ロシアはロジャヴァのクルド人の代表が参加することを主張し、トルコはそれに強く反対していますが、実は、エルドアン大統領がイラク北部のクルド自治区の政府(KRG)の大統領バルザーニを通して操るシリアのKurdish National Council(KNC)というシリアのクルド人組織は、反アサド政権勢力の一団体として、和平協議に参加することになっていますし、シリアでISと戦っているロジャヴァ・クルド人兵士に軍事的攻撃を仕掛けてさえいます。大袈裟に言えば、骨肉相食む悲劇です。それを報じた記事はsyria360.wordpress.comというサイトで読むことができます。

https://syria360.wordpress.com/2016/03/08/ypg-general-command-statement-regarding-deadly-sheikh-maqsood-attacks/

藤永茂 (2016年3月15日)
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シリア戦争は外国の侵略戦争である。内戦ではない。

2016-03-03 21:04:38 | 日記・エッセイ・コラム
 2月27日に発効したシリア停戦は、違反の報道が飛び交ってはいますが、とにかく戦闘行為は大幅に縮小しているようです。シリアのアサド大統領の政権を打倒しようとしている勢力がロシアの参戦によって引き起こされた頽勢を押し返すための時間稼ぎをしているのが、この停戦の本質でしょうが、紛争の渦中にあって極めて困難な生活を強いられているシリア住民への救援物資の輸送配布のニュースがほとんど何も伝わってきません。救援物資と称してトルコがイスラム国に武器弾薬を送ったとか、支援物資を搭載した米国空軍機が、対峙しているクルド軍とイスラム国軍の上空に飛来して、クルド軍側に1個、イスラム国軍側に2個落としたという報道はありますが。
 アラブの春の一環と偽称して外部からのテロリスト勢力がシリアに攻め込んで始まったシリア戦争が、外部からの侵略戦争であり、内戦でないことは明らかで、この戦争の解析は多数行われ、発表されています。私は、一素人としての十分の意識のもとに、「この戦争はトルコの内戦でもある」という見地を披露したいと思います。内戦の内容は、トルコ中央政府による“原住民クルド”に対する討伐撲滅戦争です。かつての北米インディアン撲滅戦争に通うものがあります。あるいは、我がアイヌを想起してもよろしい。
 R2Pは、もうすっかり破綻してしまった標語なので、さすがにこの頃は使われなくなってしまいましたが、とにかく、もう一度復習しておきます。ウィキペディアには“保護する責任( Responsibility to Protect)は、自国民の保護という国家の基本的な義務を果たす能力のない、あるいは果たす意志のない国家に対し、国際社会全体が当該国家の保護を受けるはずの人々について「保護する責任」を負う”とあります。もし、カダフィ政権下のリビア住民を“保護”するためにNATOによるあれほどの猛爆が行われるべきであったのなら、今のトルコ国内のクルド人たちの方が、カダフィ政権下のリビア住民たちの10倍、100倍の保護が必要です。トルコ南東部のクルド系住民は自国政府による残酷な軍事的暴力にさらされていますが、その報道はほとんど行われていません。
 シリアとイラク内のテロリスト勢力(アル・ヌスラ、イスラム国など)とトルコの主要な二つの通路は、シリア/トルコ国境西部のコバニのすぐ西と、イラク北部のイラク/トルコ国境のザホのあたりにあり、現在もトルコとテロリスト勢力の連絡は保持されています。現在、イスラム国(IS、ダーイッシュ)の首都とされるラッカやアル・ヌスラなどの反アサド勢力に占領されている地域での一般のシリア人たちのアサド大統領に対する気持ちがどのようなものであることを正しく知ることは至難の技ですが、私の推量するところを率直に述べれば、「アサド大統領は、今は、そのままで良い。とにかくシリア国内での戦争はやめてくれ。アサド大統領をどうするかは、シリア国民が決める」というのが、今のシリア国民の圧倒的大多数の声だと思っています。私のこの確信の出処は沢山ありますが、一つ一つはヒソヒソ話です。大声ではっきり言えば、消されてしまいますから。そのヒソヒソ話の一つを紹介しましょう。前回のブログでロバート・フィスクという信頼に値する老練のジャーナリスト(レバノンのベイルート在住)の名を挙げました。彼の記事の見出しは「ラッカから追い出された一教師の物語はシリア紛争について実に多くのことを説き明かしてくれる(The story of a teacher evicted from Raqqa illustrates so much about the conflict in Syria)」となっています。

http://www.independent.co.uk/voices/the-story-of-a-teacher-evicted-from-raqqa-illustrates-so-much-about-the-conflict-in-syria-a6887631.html

 フィスクさんの英語は読みやすいので、ぜひ全体を読んで、その行間の‘空気’も読み取っていただきたいものです。記事の始めの部分を掲げ、訳してみます。記事の日付は2016年2月22日。:
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A few days ago, on a hilltop above the Mediterranean city of Latakia, with the sun going down and the whisper of jets – Russian jets, of course – high in the sky, Samah Ismael told the story of her eviction from Raqqa. It is one small tragedy in a million – but it seemed to illustrate much.
This was long before Isis existed, when the Nusra Front – which represented al-Qaeda in those days – was growing in power and when the people living in the little town of al-Sabha on the banks of the Euphrates thought that even then, in 2013, the war which had consumed much of Syria might not touch them. Samah was a 39-year-old government teacher at the Ahmad al-Azawi school and had been happy taking her English classes with 17 and 18 year-olds. Education is free in Syria.
Samah, I should add, is an Alawite, the Shia minority from which Bashar al-Assad comes, although it does not dominate the teaching profession in Syria. She had been living just outside Raqqa for four-and-a-half years. But in March of 2013, she had stayed in the city until 10 at night and noticed that all the government buildings appeared to be empty. There were no police in the streets, no lights in the police station.
Then three days later, just as she was leaving her school after evening class, another teacher, a friend called Ahmad, told her that 8,000 men had come to Raqqa from the east, dressed in black uniforms with guns. Some said they rode in aboard Turkish tanks.
「数日前、地中海沿いの都市ラタキアを見下ろす丘の上、夕日が沈みかけ、空高く飛行するロシア機と思われるジェット機の微かなエンジン音を耳にしながら、サマー・イスマエルは彼女がラッカから追放された話を語ってくれた。それは百万やそこらもある小さな悲劇の一つに過ぎないが、実に多くのことを説き明かしてくれるように思われる。
これはIsis (イラク・シリア・イスラム国家)が存在するずっと前のこと、当時はアルカイダを代表していたヌスラ前線が勢力を増していたが、ユーフラテス河の沿岸の小さな町アルサブハの住民たちは、紛争がシリアの大部分を巻き込んでしまっていた2013年になっても、自分たちのところまでは及んで来ないのではないかと思っていた。サマーはアーマド・アルアザウィ学校の39歳の国家公務員教員として、17歳、18歳の学生の英語のクラスを担当して幸せに暮らしていた。シリアでは教育は無料である。
付言しておくが、サマーは大統領バシャール・アル・アサドと同じ、シーア派の少数派アラウィーに属する。しかし、アラウィー派がシリアの教育を牛耳っているわけではない。彼女はラッカのすぐ外で4年半住んでいたが、2013年の3月のある日、夜の10時までラッカに居て、政府所属の建物すべてに人影がないことに気がついた。街頭に警官の姿はなく、警察署も真っ暗だった。
その3日後、夕刻のクラスを終えて学校から去ろうとしていた時、友人でアーマッドという名の、もう一人の教師が、黒色の制服を着て銃を携えた8000人の男たちが東の方からラッカにやってきたと彼女に告げた。彼らはトルコ軍のタンクに乗ってやってきたと話す人もいた。」
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逐語訳はここまでにして、あとはあらましの話にします。なお、上の話で、8000人というまとまった数の反政府勢力の軍隊が、突然、東の方からラッカに乗り込んできたという事実は、重視すべきです。噂であったにしろ、彼らがトルコの戦車で乗り込んできたと伝えられてことも重大な意味を持っています。
さて、サマー先生の話の続き:
 アラウィー派の政府職員として、どうしなければならないかを彼女はすぐに悟りました。荷物をまとめ始めたその夜、年配の男性と5人の若者が彼女の住まいのドアを叩きます。一人は家主の男、黒色の服装で銃を持った若者たちは、すべて彼女のクラスの生徒で、ほとんどは16歳。サマーの視線を避けて、うつむきがち。「ここを出て行ってくれ。そうしなければ、家に火をつけて燃やしてしまう」と言い残して去って行きました。サマーはちっとも怖くなかったとフィスク氏に語ります。:
“Why wasn’t I afraid? I suppose because this is my country and it was because I was a teacher – their teacher – that they didn’t hurt me. They were all from farming families. There had beengovernment reforms and their families were new farmers with new lands and so the parents were comparatively quite rich. The whole countryside is rich. They grow corn, grapes, cotton...”
サマーは何故ラッカの近郊から追い出されたのか? それは彼女がシーア派の少数派アラウィーに属し、政府職員(学校教師)であったからです。
 連日ニュースで伝えられるように、米国もロシアもNATO諸国もISをやっつけようと空爆を続けているのでしょうか? フィスク氏は「我々はそう信じることになっているが、ラッカから聞こえてくる風の便りによれば、空爆はあまり行われてはいないようだ」と言っています。はてさて何のことやら。
 これは付け足しですが、シリア/トルコ国境西部のコバニのすぐ西のトルコ側には、今、トルコ陸軍の重装備の1~2万の精鋭が集結して、おおっぴらなシリア侵攻の機を狙っていると伝えられますが、トルコの重戦車が勝手にシリア国内に乗り込む事態は、上掲のサマーさんの話の中にも出ていますし、これは私の確かな記憶ですが、例のコバネの死闘でクルド人軍がコバネの町をISテロリストから取り戻した直後、コバネの街路をトルコ軍の戦車の列が威嚇的に行進したことがありました。いま現在、西部の要衝コバネの町は、またまた、IS勢力の攻撃にさらされています。この場合、IS軍がエルドアン大統領の意向を体して代理戦争を行っているのは明らかです。エルドアン大統領はシリア内でのロジャヴァ革命の発展を最も恐れているのです。やがて再論します。

藤永茂 (2016年3月3日)
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