神なき知育は 知恵ある悪魔をつくることなり

 私の母校の工学部の学生が主に使用している校舎(旧称工学部校舎。現大学8号館)の玄関の左側に「神なき知育は 知恵ある悪魔をつくることなり」と記された碑文がある。いまから52年前の1966年に設置された、六畳分はあろうかと云う大きなものである。


 母校の創立者である小原國芳先生(1887-1977。尊敬と敬愛の念を込めて以下、おやじさん)が揮毫したもの。おやじさんは「ガリレオ(・ガリレイ)は、『神なき知育は知恵ある悪魔をつくることなり』と厳しく教えてくれました」と云っていたようだが、ガリレオが残した言葉にこのようなものは見当たらず、実は初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリー(Arthur Wellesley, 1st Duke of Wellington。イギリスの軍人、政治家、貴族。1769-1852)の「宗教なき教育はただ悧巧なる悪魔を造るなり」(Educate men without religion, and make them but clever devils.)を咀嚼した後に自身の言葉として語ったものではないかと思われる。

 いずれにせよ、「科学技術の進歩は、明と暗の両面を持つ。平和利用されれば人間社会を豊かにし、戦争に利用されれば街を破壊し多くの人間の命を奪う。この言葉には、“人間至上主義的・科学万能主義的な考え方や教育が、人の姿をした悪魔をつくっているのではないか。科学技術を学ぶ者も、人間を超越した存在を知り、神を畏怖する心を持った人でなくてはいけない”」と云うおやじさんの強い思いが込められていることは確かだ。

 この「神なき知育は 智恵ある悪魔をつくることなり」が、実は思わぬことろに登場していることが知られている。

 1968年2月、特撮テレビ番組『ウルトラセブン』(第18話「空間X脱出」監督:円谷 一 特殊技術:大木 淳)が放送されたが、当時大きな話題となったこの番組の中に、地球侵略をねらう宇宙人から地球を守るウルトラ警備隊のキリヤマ隊長が「神なき知育は、知恵ある悪魔をつくることなり。どんなに優れた科学力を持っていても、奴は悪魔でしかない」と部下に語るシーンが登場するのだ。

 この「空間X脱出」の脚本を書いたのが当時円谷プロダクションに所属していた金城哲夫(1938-1976)で、氏は私の母校・学科の大先輩(文学部教育学科1962年卒業)。金城氏は碑文が当時の工学部校舎に設置される前の卒業ではあるが、おやじさんのこの言葉は 1935年発行の『小原國芳編 眞人の言葉』に既に掲載されていることから、金城氏は礼拝講話の折などにおやじさんから直接この言葉を聞いていたことは容易に想像がつく。そして、隊長のキリヤマ・カオルにこれを云わしめたのである。

 「神なき知育は 智恵ある悪魔をつくることなり」。科学技術万能と思われがちな時代に生きる私たちこそ、この言葉を重く受け止めなければならない。それは私たち自身のためであり、この地球の未来を託す子供たちのためでもあるのだから。

注:本小文を書くにあたってはhttps://www.tamagawa.jp/introduction/tamagawa_trivia/tamagawa_trivia-76.htmlを参考にした。また引用も多々あることを断っておく。

2022年6月17日追記:金城哲夫氏と玉川学園の関係いついての、より詳しい情報が玉川学園のOfficial Siteに掲載されました。どうぞ下記をご覧ください。
https://www.tamagawa.jp/introduction/tamagawa_trivia/tamagawa_trivia-32.html

 「恩田の森Now」 http://blog.goo.ne.jp/ondanomori に、ただいまは7月23日に撮影した写真を6点掲載いたしております。猛暑が続く森の様子をご覧いただければ幸いです。

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