非破壊スキャン機?

 スキャン機と云うのはようするにスキャナーの事だが、「非破壊」とは随分仰々しい言葉だ。放射線や超音波を使って構造物や物品を破壊せずにその内部や表面の検査をする「非破壊検査」などで使われる言葉だが、この場合には書籍を破破壊、つまり製本(糊付け)部分と表紙を切り取り両面印刷された単票の状態にしてスキャンするのではなく、書籍のページを開いた状態でそのページをスキャンしデータ化するスキャナーと云う意味である。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/dandoyasuharu/20130616-00025738/

 勿論、メーカーはそんなお堅い言葉は使ってはおらず、 「多彩な原稿をそのまま置いて高速読み取り」と極々普通の表現。
http://scansnap.fujitsu.com/jp/product/sv600/
 いつもの事とは云え、どうしてマスメディアは耳目を引こうと必要以上に大仰な書き方をするのだろうか。それはさておいて、富士通のScanSnapもついにここまで来たか、と云う感じであるなぁ。しかも5万ちょっとで買える。


 もうモデルチェンジをしてしまっているので旧型と云う事になるが、郷秋<Gauche>がオフィスで愛用しているScanSnap(S1500型)である。原稿送り側と受け側のトレイを開いているので大きそうに見えるが、開いている部分をパタパタと畳んでしまうとデスクの隅に置いてもじゃまにならない程の大きさである(載っている原稿はA4)。

 さて、先にご紹介したWeb上の記事では「非破壊」の前に「書籍流通に大波乱か」とも、またしても物々しい書き方をしているが、郷秋<Gauche>思うに大波乱は起こらない。だってそうだろう。従来型のScanSnapは単票の原稿を入れればA4裏表を同時に一枚3秒ほどで、ボタン一つで、コーヒーを飲んでいる間に読み込んでくれるが、 「多彩な原稿をそのまま置いて高速読み取り」のSV600型は、製本されたものでも読み込めるけれど、ページを自分でめくらなければならないのだ。

 A3(A4サイズの本の見開き)を3秒でスキャンすると云うから郷秋<Gauche>が使っているS1500型と同じ速さだが、ページを、自分で、1枚ずつめくらなければならない手間を考えてもみて欲しい。こんなことをしてまで手持ちの書籍・雑誌を電子データ化したいのは余程の新し物好きか、余程お時間のある方、あるいは著作権法違反を承知の上で人気作家の新刊本をデータ化して小遣い稼ぎをしようと云う犯罪者予備軍に限られるのではないだろうか。

 もう一歩進んで、書籍のページを1ページずつ確実にめくってくれるロボットが付属するようになれば話は別だが、実際にそのような装置は既に開発済みで、まずは大学図書館等大規模な図書館で蔵書のデータ化が開始されようとしている。問題はデータ化した後の保存装置の規格やフォーマットにあるのだが、これはまた別の問題である。

 ScanSnap SV600型が凄いのは、先にも書いた通り5万円そこそこで手に入ると云う事である。事務用コピー機(例えばXEROX)はスキャナーとレーザープリンタとが一つの筐体に入ったものだから、そのスキャナーを使って書籍等を電子ファイル化することが出来る。でも、フルカラー機だと1台200万円位(買い取り価格)はしてしまう。

 郷秋<Gauche>のオフィスで使っているXEROXはネットワークにつながっているから、これでスキャンして、デスクのPCでその電子データ(PDF)を利用することが出来る。もっとも単票であれば何十枚でも勝手に読み込んでくれるから良いのだが、製本されている書籍・雑誌の場合には、付っきりでページをめくらなければならないので書籍一冊を丸ごと取り込もうなど、ゆめゆめ考えもしない。低価格のページめくりロボットが登場しない限り、「非破壊」で書籍をデータ化するのは現実的ではないのである。

「恩田の森Now」に、15日に撮影した写真を掲載いたしましたのでどうぞご覧下さい。
http://blog.goo.ne.jp/ondanomori/

コメント ( 0 ) | Trackback (  )