裏焼きのピアノ

 カメラにフィルムを詰めて写真を撮っていた時代の話しだ。プリントする際に、引き伸ばし機のフィルムキャリアにネガを裏返しに入れてしまうと左右が反転したプリントが出来上がった。これを「裏焼き」と云うのだが、左ハンドルのカローラだとか、「私の彼は左利き」(古い!)になってしまったりするので、面白がってわざと裏焼きして遊んだりもした。

 

行ったことのない場所の風景写真などだと気が付かないことも多いが、人物の場合には髪の分け目とかペンを左手に持っていたりすることですぐに気が付く。それらが判らにように帽子を被ったり、手に何も持たない場合でも、人の顔は微妙に左右非対称なので裏焼きにすると違和感があってすぐに気が付くことになる。はい、裏焼きの見本。

 

 

ピアノ教師の皆さんにはお馴染みの『ムジカノーヴァ』3月号の表紙だが、表紙イラストのピアノが全然「馴染じゃない」ことにすぐに気が付く。このピアノのイラストだけが左右逆、つまり裏焼き状態なんだな。専門誌でこんな間違いあるのかと驚くのだが、いくら何でも音楽之友社がここまで間抜けな間違いをすることはないだろうから、エイプリールフールには早いけれど「受け狙い?」かと思うのだが、まじめに間違ったのだとしたら、それはそれは大変な事である。

 

 

 

最初にご覧いただいた表紙を「裏焼き」にしたのがこちら。当然だけれど、文字は全て裏返しだが、その中でピアノのイラストは普通の向きに直っている。ところで、先の裏焼きのピアノを見ていると、実際にこういうピアノがあったとしたら、果たして弾けるだろうかと云う興味が湧いてくるのだが、知人のピアノ弾きは言下に「弾けない」。

 

ピアノじゃないけれど、郷秋<Gauche>の高校時代にこう云う同級生がいた。フォークギターを弾く彼は左利きなのだが、最初は普通に、と云う事はつまり弦を左手で押さえて右手で弾くようにと習い始めたのだが違和感が強くて、結局彼は6本の弦を通常とは逆順に張って、弦を右手で押さえて左手で弾くことでギターをマスターしたとの事。ピックガードがサウンドホールの両側に張られていたから、彼の楽器は遠目にもすぐにわかった。

 

そんな同級生はいたけれど、ヴァイオリンやチェロの弓を左手に持つ演奏者を郷秋<Gauche>は見たことがない。郷秋<Gauche>が見たことがないだけで実際にはいるのかも知れないけれど、ソリストなら問題はなさそうだが、楽器や腕がぶつかってしまうからオーケストラでは弾けないだろうな、きっと。

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