乳歯をぶつけた場合、周囲の骨が軟らかいこともあって、歯が欠けるというよりも、位置がずれたり、押し込まれたように埋まったり、グラグラになる場合が大多数です。
通常歯のグラグラが明らかであると、隣接した健全な歯と繋げるような形で3週間前後固定します。埋まった歯については、以前はもとの位置に戻して固定するというのが一般的で、今でもそのような治療選択をされる歯科や大学病院もあるかと思います。しかしながら比較的最近の臨床研究によると、乳歯で歯が埋まったような外傷の場合、次第に出てくるのでそのままでも良いといわれています。
確かに埋まった歯はグラグラがみられませんし、実際固定も難しいので、そのまま経過を観るわけです。埋まった度合いが重症ほど、もとに戻そうとすると抜ける寸前になったりしますので、一旦固定が成功したとしても、その後どの程度歯が持つのだろうという部分はありますね。
下のX線写真は、1歳前半で上の前歯をダイナミックにぶつけて、歯が上方に埋まりこんで、一見歯が無くなったように見えた患者さんのものです。
そのまま経過を観たわけですが、半年で歯の半分くらいが出てきましたので、重症度から判断してこれくらいが出てくる限界と考え、審美的に補うため、歯の先の部分にコンポジットレジンを被せました。下はコンポジットレジンで被せる前のX線です。
ところが良い意味で予測に反して、その後もじわじわと出てきたようで、1年後には歯のねじれや高さの左右差はあるものの、レジンが不要な程度に出てきましたので、レジンは除去してそのまま経過を観ることとしました。
出てくるまでの経過が予測以上に長かった患者さんですが、歯の根の周囲もほぼOKで、歯の変色が見られませんので、神経血管の状態も悪くはないだろうと思います。
1年後、ちょうどコンポジットレジンが欠けてきたのですが、再治療せず残ったレジンを除去して、経過を観ることとしました。
やはり、埋まった乳歯はそのまま経過をみることで、歯も周囲の組織も回復してくる自力があるだろうと思われます。
私達も患者さん側も楽ですしね。
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