漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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鏑木蓮著「エンドロール」:生きざまが後の人の力になる

2016-03-29 | 
物語の後半、続いて解説文、訳もなくじりじりと涙が滲みます。

読みながらいろいろなことを思います。
自分の父は子供や青年のころどんな暮らしをしたのか、母はどうだったか、驚くほど知らない。
死なれてから、あらためて叔父や叔母に尋ねたり、古い写真を見たりすると、
まるでモノクロ映画を見ているかのように情景が浮かび、
ああ、こんな人生を歩んだ人に、自分は育てられたのかと心が熱くなることがあった。

それはたいして特別な出来事ではないけれど、知ることで、覚えておくことで、
新たな自分の行く末の糧になっていくのだなあと、この本を読んで確信した。

孤独死した老人。彼がどこで生まれ、どんな人と出会い、どう考えたのか、
それを知りたくなった男は、その老人の住むアパートのバイト管理人。
家族や他人とのかかわりを煩わしく思う、映画好きのバイト暮らしの29才。
この老人とのかかわりはほぼないに等しく、たまたま第一発見者となった。
だが老人の遺品の中の八ミリ映像に心打たれ、にわかに彼の過去を知りたくなるのだ。
徐々に明らかとなる戦前から戦後を生きた人々の姿。
そのひとつひとつの出来事に、何か自分の足元がしっかりしてくるように感じた。

鏑木さんがこの物語を書き上げた直後にあの大地震が起こり、
その半年後に出版された(2011/11題名しらない町 2014/01文庫化時に改題エンドロール)とき、
この本によって、突然の死に別れに戸惑う人々が救われた気持ちになったそうだ。
映画好きに特におすすめ。

鏑木蓮 1961年生まれ 京都


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