漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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窪美澄著「水やりはいつも深夜だけど」本音でぶつかるには

2014-12-29 | 
短編5編すべてに植物の名前がついてます。その植物を知っているとさらにイメージがふくらみます。

日本人は島国でほとんど単一民族で育っているので「他と違う」ことをすごく恐れるし、「あうんの呼吸」とかいってはっきり言わないで、もう一歩を踏み込まない傾向にあると思う。
角が立たないように取り繕ううちに本音の付き合いができづらくなってしまうよね。
そんな繊細なところをドキッとするほどクリアに描き出しています。
たくさんの民族が入り乱れている環境だったらはっきり主張しないとつぶされてしまうだろうし、だからこういうことはすごく日本人的なことなんだろうなあ。子育て中のママさんたちにおすすめの一冊。

・ちらめくポーチュラカ:セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価におびえる主婦
・サボテンの咆哮:仕事が忙しく子育てに参加できず、妻や義理の両親に疎まれる夫
・ゲンノショウコ:自分の娘の発達障害を疑い、自己嫌悪に陥る主婦
・砂のないテラリウム:出産を経て変貌した妻に違和感を覚え、若い女に傾いてしまう男
・かそけきサンカヨウ:父の再婚により突然やってきた義母に戸惑う、高1女子

胸が熱くなったのは第3話「ゲンノショウコ」
内心、嫌だと思うことを思わず強く避けてしまう自分の行動。
「ゲンノショウコ」は「現の証拠」
飲むとすぐに治ってしまうの意味。
発達障害という遺伝的、そして道徳的問題だけど、
そんなわだかまりの垣根をすんなり超えてしまったのは幼いわが子の大らかな行動でした。

第5話の「かそけきサンカヨウ」は気持ちの繊細で優雅な女の子の話。
サンカヨウの花は咲いたときは白いけど、雨や露にあたってガラスのように透明になる花。

http://grapee.jp/5818から

第1話のポーチュラカはあの「五行草」の園芸品種。

窪美澄 1965年東京都稲城市生まれ
晴天の迷いクジラ
ふがいない僕は空を見た
よるのふくらみ