漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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サウスバウンド・奥田英朗覚書

2008-02-01 | 
以前「空中ブランコ」を読んでその軽快な文章がすごく楽しかったので、手を出してみました。
それにこれ、「父も母も元過激派だ!」というキャッチフレーズ。

この父、相手が議論をふっかけようとすると、すぐに「展開してみろ」とくる。

この感覚、やけになつかしい。
「空気、読めよ」とかなんとか言って曖昧に過ごしている昨今、しっかり相手に話を伝えるようなことをしなくなってるかもなあ・・・

主人公は小学生の息子。
上巻は、東京中野界隈でいじめにあいながらも大人に頼れない子供世界の中で、それでも「明るく」悩んでいる。
その描写は確かにしっかり「展開して」いて、なるほど子供の時はそうだったかもしれないと感じ入る。

自分のまわりのどんなに小さな「世間」でも、なかなかこれを無視して生きるって難しい。
なのにこの父と母は、国に属す必要なんてないと考えるからすごい。

下巻では、楽園を南の島に求めた父と母の生き方が中心となる。
日々自給自足の生活。余れば分け与え足りなきゃもらう。

だけど、自然が、人間の生活より有り余るほど豊かでなきゃ、こんな生活は成り立たない。
今や、どこまででもリゾート開発の波がやってくるし、こんなおおらかな生活ができるとこなんて、きっともうないなあ。

奥田英朗 1959年岐阜県岐阜市に生まれる 「空中ブランコ」で直木賞受賞