アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ナイルに死す

2013-12-11 21:45:55 | 
『ナイルに死す』 アガサ・クリスティー   ☆☆☆☆  再読。華麗で派手な、おそらくクリスティー最高傑作の一つ。ただし『アクロイド殺し』や『オリエント急行』のようにトリックやサプライズ・エンディングが突出した作品ではなく、ロマンス要素、エキゾチックで豪華な舞台背景、巧みなミスディレクション、緻密なトリック、そしてストーリーテリングと、総合的なバランスに優れたミステリだ。クリスティー本人も自信作だ . . . 本文を読む

Somewhere Deep In The Night

2013-12-09 20:47:55 | 音楽
『Somewhere Deep In The Night』 Swing Out Sister   ☆☆☆☆  スイング・アウト・シスター(以下SOS)は1980年代にデビューしたポップ・ユニットで、男性キーボーディストと女性ヴォーカリストの二人組。エブリシング・バット・ザ・ガール(以下EBTG)と同じ編成だけれども、音楽性的にも良く似ていて、一言で言うとお洒落系、カフェ・ミュージック系である。と . . . 本文を読む

盆栽/木々の私生活

2013-12-07 12:53:24 | 
『盆栽/木々の私生活』 アレハンドロ・サンブラ   ☆☆☆☆☆  これも10月に日本に帰った時、書店でふと見かけて予備知識なく買い求めた本だが、とても良かった。オススメである。チリの作家で、この『盆栽』がデビュー作だそうだ。それとその続編である『木々の私生活』の二篇が、本書に収録されている。  チリの作家だからラテンアメリカ文学ということになるのだろうが、ラテンアメリカ文学の匂いはまったくとい . . . 本文を読む

My Heart Is Home

2013-12-05 21:46:05 | 音楽
『My Heart Is Home』 Roger Nichols & The Small Circle Of Friends   ☆☆☆☆  これは60年代にたった一枚だけアルバムを出し、「渋谷系」サウンドの源流とも言われたロジャー・ニコルズ&スモール・サークル・オブ・フレンズが2012年に出したニューアルバムである。この前、2007年に彼らは「フル・サークル」というアルバムを突然発表したが、こ . . . 本文を読む

境界なき土地

2013-12-03 17:29:59 | 
『境界なき土地』 ホセ・ドノソ   ☆☆☆☆☆  ドノソの長編、というか中篇を読了。Amazonの紹介には「性的『異常者』たちの繰り広げる奇行を猟奇的に描き出す唯一無二の“グロテスク・リアリズム”」なんてあるので、『夜のみだらな鳥』の作者というイメージもあり、どれほどグロテスクな小説なのかとちょっとびびったが、別にそれほどでもなかった。性的異常者というのも、年取ったオカマや棒切れのように痩せた女 . . . 本文を読む

男はつらいよ 寅次郎恋やつれ

2013-12-01 22:46:31 | 映画
『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』 山田洋次監督   ☆☆☆☆  シリーズ第13作。今回は、第9作『柴又慕情』に登場した歌子さん(吉永小百合)再登場の巻である。同じマドンナの再登場はこの時点では初の試み(第15作『寅次郎相合い傘』でリリー再登場となる)。個人的にはそれほどピンと来ない作品だった『柴又慕情』より、今回の『恋やつれ』の方が良いと思う。  まず、色々と新機軸がある。冒頭の夢のシーンはい . . . 本文を読む