江戸糸あやつり人形

江戸時代から伝わる日本独自の糸あやつり人形。その魅力を広めるためブログを通して活動などを報告します。

成仏寺

2016-04-12 00:41:59 | 日本の文化について
本当は「成佛寺」と書くのだそうだが、
当寺のパンフレットから表題のようになっている。

ここの修正鬼会は、岩戸寺と交互に、隔年で行われている。
岩戸寺は、この次に紹介するけれども、いかにも鬼会のありそうな
雰囲気があるのだが、
ここは、言っては申し訳ないけれども
建物は普通の民家のようでもあり、
後で見たら1枚も写真に撮っていなかった。

門をくぐったけれども、
どこで手を合わせ、どこを見たらよいかわからない。
脇に墓地があって、
その間から大根をぶら下げた初老の男性がやって来た。
やって来た旨を話し、お参りさせて欲しいと申し出ると
縁側の硝子戸をあけるから、
中に入ってお参りしていきなさいと
快く中に入れてくれた。
その方はご住職だった。

時はちょうど正午を回ったところ、
一人ずつ手を合わせ始めたところでご住職が入ってきて、
東京から来たのか、と尋ねる。
昔何年か東京にいたことがある
という話から始まって、修正鬼会についていろいろ尋ねることができた。

ここはもっと広い境内を持っていたそうだ。
道路の拡幅工事で削り取られたのかと思ったら、
もともとはもう少し離れたところにあったらしい。
僧堂も10ばかりあったそうで、
昔は農家の二男三男で頭のよいものが僧になったから
修正鬼会もこの寺だけで賄えたが、
今は周りの寺々から住職が集まって何とかやり遂げているとのこと。

「人手は沢山いるし、ともかくお金がかかるのだ」

ところがこの寺を支える集落は、戸数は38ほど、
人口も70人に減ってしまったそうだ。
「大学生の子供を持つ親が一人もいないのだ」
つまりは、みなさん60歳以上になるということらしい。

奥さんがお茶を入れて下さった。

「こういうところだけれども、祭りは残したいし、
何とか講堂を新しくしたい!」とご住職。
確かに講堂は、一見して物置にしか見えなかった。
「そのために何をしていると思います?」と奥さん。

宝くじ!

ご住職は毎回宝くじを買い求めているのだそうだ。
すかさず私は、「神頼みですね」と言ったのだが、
誰一人笑わなかった・・・

修正鬼会は勤行が午後3時から始まり、6時間続く。
ご住職はただお経を読むだけと仰っていたが、
15ものプログラムがあり、
その中に食事や清め、結縁の盃の儀、大松明へに火入れなどがあり
読経だけでも相当な迫力だと思われる。

その勤行が終わると、それまで敷いてあった畳が取り除かれ、
板の間に変わり、
午後10時半から僧侶が下駄を踏み鳴らしながら踊り、
午後11時半から3人の僧侶が荒鬼に扮して、
いよいよクライマックスになり、よっぴいて祭りは続く。

今自分の立っているところは、とても生活臭のするところだけれども、
畳が取り払われると、雰囲気は一変するのだろう。
60年代、演劇界は「異化効果」ということがよく言われたが、
ここはもっと昔から自然と「異化効果」を実践していたのだろうか。

これは実際に見て、その様子を目に焼き付けなければと強く思った。

1時間ほどもお邪魔して辞するとき、
門の脇に子供を抱いた大きなお地蔵さんが立っているのに気付いた。
「子安大師さんですよ」
大師というと、弘法大師をさす。
思わず「ここは天台宗ですよね」というと
「地元の人にすると、安産祈願は大師さんになるのですね」
弘法大師は真言宗の開祖だ。
しかも天台宗の最澄とはライバル同士。

八幡信仰といい、ここに日本の宗教観の縮図を見た思いがした。

それにしても、と思う。
何とか祭りを残したい。
宝くじが当たりますように!!!
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