マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

国宝「伴大納言絵巻」鑑賞(その1)

2016年05月01日 | 映画・美術・芝居・落語

 出光美術館では開館50周年を記念し「美の祝典」と題して、次の3期に分けて国宝「伴大納言絵巻 上巻・中巻・下巻」を展示している。
 Ⅰ 「やまと絵の四季」の中で絵巻上巻      49日~58日 
 Ⅱ 「水墨の壮美」の中で絵巻中巻       513日~612日 
 Ⅲ 「江戸絵画の華やぎ」のなかで絵巻下巻 617日~718日 

 私達は412日(火)、出光美術館に足を運んだ。ここの会員である妻のお伴なので私1名は入館料無料、とは有難いことである。この絵巻の存在は知っていたが内容は全く知らなかった。出光美術館所有のこの絵巻、10年前にも展示され、その時に妻は図録を購入して来ていたらしいが、それも知らなかった。
 初めてその絵巻を見て驚くとともにその豊かな物語性を実に面白いと思った。私はこの絵巻は、歴史的事実と説話との関連での2段階の理解が必要かとも思った。
  まずは“歴史的事実”
  貞観8866)年閏310日の夜、応天門が炎上。原因は放火とされるが真犯人は不明。その後大宅首鷹取(おおやのおびとたかとり)の告発をきっかけとして、事件は大納言・伴善男らの犯行という結末で決着。

 しかし、伴大納言の犯行の動機が不明であるなど、この事件はいまだ謎に包まれている、というよりはフレームアップ(でっち上げ)の可能性大と見られている。当時の資料から、天皇を取り巻く太政大臣、右大臣、左大臣、大納言の政治的な対立の構図が事件の背後にあったことが浮かび上がり、色々な解釈がなされてきているそうな。

 絵巻は事件から約300年を経過した平安時代末期に制作された。絵の詞書は上巻からは失われているが、中巻・下巻の詞書と同じ文章が、説話集『宇治拾遺物語』巻十の冒頭の「伴大納言焼応天門事」にあるので、それにしたがって復元が可能。それによると、
 絵巻物のストーリーは史実どおりではなく、人々に語り継がれてきた説話をもとに、面白い脚色が加えられていることが判るそうだ。例えば絵巻では
 真犯人伴大納言の犯行動機は自らの出世の為であり、
 事件解明のきっかけはこどもの喧嘩が発端。
 
現代の推理小説の様な展開を見せ、それが漫画的に観られるのだから面白くないはずない。多分、平安時代の人々を念頭に制作されたであろうこの絵巻は現代でも、例えば私などが、その歴史的な興味を越えて、物語そのものに興味を覚えたのだった。
 絵巻の複写が全巻展示されてもいるので、今回の展示だけからでも物語の全てが概観できるが、絵巻そのものの展示は上巻のみ。
 上巻を再現すると



 ”検非違使の出勤”と“何事かと走る人々”で何か事件が発生したことが語られる。



 “朱雀門を駆けぬける人々”と“風下で逃げ惑う群衆”で事件は朱雀門近辺で起こったことが示される。



 “応天門炎上”と“風上側の会昌門前で高見の見物をする官人”で応天門が炎上しそれを楽しんでいる人々が描かれる。




 場面は一転し“仁壽殿の屋根越しに火事場を遠望する男”と“耳をそばだ立てる謎の男”では謎の人物が登場し、
 ”
天皇を諌める藤原良房”では、犯人として左大臣源信が検挙されるが、左大臣源信は彼は犯人ではないと天皇に直訴する藤原良房が示される。
 

 


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