崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「真っ白になった」

2009年05月19日 05時26分40秒 | エッセイ
 韓国映像資料院と芸術総合大学の芸術院を訪問して施設をみて、担当者たちから説明を聞いた。前者は古い映像資料を発掘、保存、活用しているが、後者は創作、教育を行っているので両方に行って全体的に機能していることがよく分かった。その中で資料院のフィルム保管所でフィルムの保存状態が悪いものが真白く粉がふいているようになっているのが印象的であった。記憶が「真っ白になる」まさにそのものであった。最近古いBHSをDVD化しているが、中には画像が悪くなったものが多い。真っ白になっていくのはそれだけではない。自分の記憶も薄れていって、真っ白になっていくのだ。今、脳の活動に感謝している。
 スケージュルはハードで夕食には久しぶりにソウル明洞で画家安暎子氏の娘夫婦に御馳走になった。最終的には癌のため半年の寿命と宣告されたが、画家として最後まで絵を描き、周辺を奇麗に整理整頓して最後を迎えての臨終だったと言う。その話を聞きながら画帳を見て「尊厳死」の標本であると思った。彼女が亡くなった後彼女が使った箪笥などは空っぽであったという。周りを空っぽにし、脳を真っ白にしていくのが昨日の教訓であった。

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