崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

『インパール作戦従軍記』

2018年09月04日 05時30分09秒 | エッセイ

 拙著『慰安婦の真実』が広告の所為か、再びベストセラーマークが付いた。読者カードが届いて中には返事を出したものもある。どう読まれるのか。私自身は本をどう読んでいるのか。楽しく、時間潰し、・・・のために、あるいは情報収集、「物知り博士」になりたく読むのではない。私はそれとは違った読書をする。全589ページの『インパール作戦従軍記』を付箋、赤線、ノートなどをしながら読んでいる。火野葦平氏の人生、日本帝国の軍隊、戦争に向けて、同参して、立ち停まって自分の人生を考える時間である。
 彼は戦争を記録する。それはプロパガンダのためではなかった。敗戦の記録になった。日本が勝利したら栄誉ある記録として称賛されたかもしれない。しかし大きいメッセージとなった。私は読み始める前は戦争中には敵の情報やこちらの失敗は隠して戦争賛美をするのではないかと思った。しかし情報量の多少とは関係なく、客観的に扱っている。貴重なメッセージである。むしろ戦争に直接かかわっていない銃後のメディア、行政、民衆がプロパガンダではなかったかと。263ページを引用する。

 自分はかうして、「陣中日記」「戦ひの記」というものをずっと書いてゐる。これを君にあずけるから、読んでもらってよい。自分は一八年も戦地にゐて、豊橋の教導学校、今の予備士官学校に一年教官をしてゐたほか、家族と一緒に暮らしたことがない。これは戦場の実相をもって、子供を教えたい気持ちもあって書きつけたものだ・・・

 


最新の画像もっと見る