崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「安全第一」

2011年07月18日 05時49分00秒 | エッセイ
 工事現場などではよく見かけるが、私にとってあまりかかわりのないような「安全第一」に関する研究の文化人類学的研究書が届いた。著者の金子毅氏は真鍋祐子氏の夫君であり、この春、九州大学からこの論文で博士号を取得した方である。目下韓国・世明大学校で日本語の教員として勤めている。この本が早期に出版されてよかったと思っている。東日本大震災で日本人が今、否もっと早く安全を考えるべきであったこととの関連で時宜を得たのである。昔バス交通会社の経営者から聞いた言葉を思い出す。事故がなければもうかる事業だという。大型事故で破産することもある。大型災難では国家も破局になるかもしれない。軍隊も安全のために存在するのである。そのもっとも根底にあるのは人間は誰しもミスをするということである。それを甘く考えて「失敗は成功の元」とかいわれているが、多くは失敗は失敗で終わる。その安全の装置として「安全第一・safety-first」が生まれたのである。
 意外なことは韓国・浦項製鉄の従業員に「安全第一」が浸透していると言及されている。私のような一般の韓国人が安全第一の意識が高いとは思わないが、企業指導者によっては安全対策が高くなる可能性もあるという例であろう。しかし如何に安全第一とはいっても「安心」するとは限らない。極端に言うと危機の中でも安心している人もいるが、安全の中にも不安な人も多い。私は昔、浦項から鬱陵島へ行くために、小さい船に乗った時、波が高く乗船した人がぎゃあぎゃあ騒いでいるが船頭はあわてる様子もなく落ち着いて(?)いたので私も安心したことがる。危機にすべての人が戸惑ってはいけない。安心を発信する人もいて欲しい。

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