崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

日韓関係へ提言

2013年08月05日 05時05分28秒 | エッセイ
韓国では兄弟喧嘩を見て「喧嘩しながら育つ」といい、夫婦喧嘩は「刃物で水を切るようなものである」といい、「喧嘩」という言葉や諺を肯定的に表現する場合が多い。喧嘩は多いが、大体の喧嘩は口論であり、暴力になることはほぼない。暴力といっても鼻血ぐらいである。私の友人の日本人の人類学者が数十年前韓国に訪ねて来た時、私は彼を大邱の西門市場へ案内したことがある。市場を歩いて4件ほど口論喧嘩を見かけた。喧嘩を見物する人が多かった。私は気にしなかったが、彼は驚いた表情で私に聞いた。「何人くらい死者が出たのか」と。私は笑った。彼は後に日本人からみた韓国人の喧嘩を分析した論文でそれを触れている。私から見て、日本ではじっと我慢していて静かに刃物で刺すような事件が多いと感ずる。口論や喧嘩でもやったら解決されたような問題での殺人が多いと感ずる。韓国人の喧嘩は日本の相撲のようなものである。私は日本の相撲を初めてみて笑ったことがある。塩を巻き、前準備のような仕草、パフォーマンスが異様で、まるでショーを見る感じであった。
 私は日韓関係がギクシャクするのを兄弟喧嘩のように見ている。私は半世紀ほど日韓を往来して生きてきているが、戦前は別として、国交のない関係(今でも北朝鮮)時期を含めて最悪の関係が長く続いたが「冬のソナタ」以後友好関係が急進して最良好関係であった。現在はさまざまな問題、主に政治的に日韓関係がギクシャクし冷たくなっている。しかし両国の民衆レベルでは親善が進んでいて、今は政府やメディアの宣伝に一方的に振り回されることは少ない。私は今の関係が最悪の関係とは思わない。兄弟関係のように見ていて、つまり喧嘩しながら親しくなると期待している。
 韓国側にいう。多かれ少なかれ日本への開放政策が韓国の発展に有効であったこと考えてほしい。その点北朝鮮とは根本的に異なる。韓国は今眩しいほど経済的に発展してきた国であり、その韓国から日本を見ると老化現象が目立ち韓国に負けて廃れていくように感じるかもしれない。しかし老化現象も韓国より先進していることを意味する。5年あるいは10年の内に韓国も高齢化時代を迎えるだろう。
 日本にいう。日本は先進国であり、敗戦国であることを自覚すべきである。日本はもっと謙遜あるべく、戦争で被害を受けたこともあるが、基本的には戦争、植民地、占領などで主にアジアに広く加害したことを反省すべきである。加害と被害を総合的に反省すべきである。
 在日にいう。日韓の間には「在日」がいる。私もニューカマーの一人として在日社会へ溶け込もうとしている。しかしオールドカーマーからは私は異様な存在かもしれない。在日はマージナルやハーフではなく、ダブルだという。二重文化者的存在として貴重である。彼らは兄弟喧嘩の仲裁者的な存在であると思う。民族によるアイデンティティだけではなく、韓国文化を持ちながら日本文化へ溶け込むべきである。むしろ日韓の両文化を遠ざけている人が多いのは残念である。日韓関係へ積極的に提言など発信するよう願う。