崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

安重根記念碑

2013年07月01日 05時28分00秒 | エッセイ
 10年ほど前ハルビン駅の駅務室で安重根が伊東博文を暗殺した所をお尋ねしたが誰もが初耳のような表情をしていたのを覚えている。この度、訪中している韓国の朴槿恵大統領が習近平国家主席と昼食をともにした時に伊藤博文を暗殺した独立運動家、安重根の記念碑を建てるよう求めたという。政治家はナショナルインタレスト国益を優先する発言と理解すればよいのかもしれない。しかしそれはナショナリズムの問題だけではない。深く考えなければならない。ヒットラーの暗殺計画者たちの中のボンヘッファー牧師を始め、彼女の父なる朴正熙大統領の暗殺者の金載圭の問題に返って来る。3.1運動の発祥地である東京の韓国YMCAに記念堂の提案などしても良いのだろうか。この安氏の問題は日中友好以外に複雑な否定的な問題を含んでいる。他の国に自国の愛国記念碑を建てようとするのはグローバル的なようでありながら、敵対関係を生じさせることにもなりかねない。政治的、法律的問題以前に根本的な問題である。「決める政治家」を求める言葉があるが、深く考えないと決めることは難しい。ある人は関連法律を調べて当否を決めるかもしれない。しかし世論に載って軽薄に発言したり、物事を決めたりしてはいけない。
 朴大統領は「口が重い」と高く評価されるが、考え方も「重く」してほしい。外国に民族英雄の記念碑をという発想は奇発ではあるが考慮すべき余地が多い。