崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

鞭は生きる知恵

2013年07月03日 05時19分12秒 | エッセイ
 現在出版社数か所にそれぞれ進行中の原稿があるがなかなか進まない。ある原稿はゲラが出て数年にもなっている。それでも昨日、数年前から書いているもう一つの原稿を出版社へ送った。大きい重荷を下ろしたような解放感がある。この原稿はなぜ遅くなったかを反省してみると、私も多少慎重になったのと放っておいた時間が長かった。自分なりには考えているつもりが結果としてはただ何もせず時間を流したのではないかと反省する。多くの人の遅さと「慎重さ」もただ放っているところがあるのではないか、と推察する。「放っておく」ことは怠けること以外に熟考すること、時期や状況を読むことでもある。
 私の恩師の著作集が韓国で毎年1冊以上出ている。数年前刊行委員の一人である私に90歳の先生からの電話で「遺稿集を作るつもりか」と催促の電話を受けたことがある。その催促の言葉で委員たちと出版社が一気に早くなったのである。競馬の騎手が鞭を振るのは殴るのではない。鞭は生きる知恵でもある。催促しながら、催促されながら生き、生かされているのでのる。