verse, prose, and translation
Delfini Workshop
往還日誌(117)
■12月29日、金曜日、快晴。
大宮の常盤珈琲焙煎所でルワンダの豆を見つけた。京都の珈琲ハウスmakiで初めてこの豆を出会って衝撃を受けた。makiのルワンダは、期間限定だったので、すでに入荷はなく、残念に思っていたところだったので、常盤珈琲焙煎所で見つけたときは、嬉しかった。店の女の子に、豆の説明を求めると、「ケーキみたいな風味」と言うので、ほお、と思った。そう言われれば、そうも言えるだろうか。
アフリカ大陸に浮かぶ青い太陽のように、鮮やかで、これまで、飲んだ、どの豆とも違っていた。そう言えば、事務所にいたMくんも、ルワンダの豆が店に入っているというのをめずらしがっていた。彼は、焙煎もやるプロだったのである。
この珈琲に何が合うか。京都の豆腐ドーナツは確かに合うが、関東へ戻って、鎌倉豊島屋の「鳩サブレー」の相性が非常にいいことに気が付いた。
25日のクリスマスは、近隣の蕨市へでかけた。なかなか、行く機会がなく、年末になってようやく行くことができた。「ワラビスタン」というほど、クルド人であふれているわけではない普通の地方都市である。
駅前のエントランスのフェンスにもたれて何人かで話していたり、道を一人で向こうから歩いてくる程度で、1000人のコミュニティといっても、その程度の密度である。
東口にある、「ハッピー・ケパブ」というクルド人の経営している思われる店で、チーズ・ケパブと、チャイと、カザンディビ(キャラメル焼きのプリン)を食べた。それぞれ、美味だった。
店では、「お兄さん、お兄さん」と、クルドのお兄さんが、呼んでくれるので、還暦過ぎたおじさんとしては、少々、くすぐったい。
トルコ系クルド人が蕨は多いので、トルコ料理の店を出しているのだろう。
この「ハッピー・ケパブ」の入るビルの4階が、日本クルド文化協会で、11月29日に、在日クルド人6人とともに、トルコ政府から資産凍結措置を受けている。
テロ組織とトルコ政府が認定するクルディスタン労働党(PKK)と関連があるということだが、トルコのクルド人は1500万人、トルコの総人口は、85,279,553人(2022年、トルコ国家統計庁)であり、比率にして、クルド人は17.6%である。2:8の人口比率で、しかも、軍や諜報機関などの国家機構を備えたトルコと国家を持たないクルド人では、その軍事力は圧倒的な非対称であり、弾圧に対する抵抗の手段はテロ以外にはない。その点で、パレスチナのハマスとよく似ている。
テロ手段に訴えるから悪党で、国家的な暴力を行使すれば善だというのは、物事の表面しか見ようとしない人の言だろう。
ただ、トルコのエルドアン大統領は、10月7日のハマスのアルアクサ洪水作戦以降のイスラエルのガザ攻撃を、強烈に批判している。12月27日のスピーチでは、「イスラエルの攻撃を見ていると、イスラエルが批判してきたヒトラーが懐かしく思える」とまでこき下ろしている。
これに対して、ネタニヤフ首相は、声明で「クルド人に対するジェノサイドを行い、自身の統治に反対するジャーナリストを投獄した世界記録を持つエルドアン氏は、我々に道徳を説く資格などない人物だ」と、切り返している。
エルドアン大統領のイスラエル批判は、当然と言えば当然の批判である。
ただし、人口規模で少数民族問題の深刻さを計るとすれば、クルド人は1500万人、パレスチナ人は、ガザとヨルダン川西岸を合わせて、約548万人(西岸地区 約325万人、ガザ地区 約222万人、2023年、パレスチナ中央統計局(PCBS))で、パレスチナ難民数が、約639万人(2021年、UNRWA)(西岸108万人、ガザ164万人、ヨルダン246万人、シリア65万人、レバノン54万人)であるから、合計すると、1187万人となり、クルド問題が、パレスチナ問題に匹敵する深刻さを持った問題だということはわかる。
こうした深刻な少数民族問題の表れが蕨市のクルド人たちだと言える。
「ハッピー・ケパブ」で働くクルドのお兄さんたちは、歌を歌いながら、料理を作っている。
どこか、懐かしく、どこか、物悲しい歌である。
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