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Pascal 『Pensées』を読む(13)


■旧暦6月19日、火曜日、

(写真)ベルン

今日から、腰をかばいながらの仕事再開。夏は、夏期講習の時期になるので、結構、ハードなのである。ずいぶん、いろいろ、遅れている。村松武司論を書くと言って、諸般の事情から、まったく進んでいない。この夏から、もろもろ、巻き返しを図りたい。

先日、この局面の重要な問題は、虚偽の社会的カテゴリーの生産で、これを生産する資本のエージェントが複数協同している状況を述べた。これは、「イデオロギーの問題」と言っていい。それは、一つには、原発を推進する側のロジックに現れている。財界や政府の原発推進ロジックは、単純で、「電力が足りなくなると、企業が海外に出てゆく」という脅しとも取れるような懸念である。これについては、飯田哲也氏を始め、多くの人が電力の供給余力・潜在発電力を指摘している(たとえば、西日本の電力不足については『週刊ダイヤモンド』(7月19日号)が検証している)が、企業が海外に出てゆくと、停電の頻度や電力料金の問題で、電力コストは逆に高くなる可能性が指摘されている。

ところで、6月24日付けで、経産省・資源エネルギー庁が次のような入札公告を出している。

入札公告

この中に、pdfファイルで仕様書がダウンロードできるようになっている。これをよく見ていただきたい。

仕様書

仕様書

1.件名
平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)

2.事業目的
ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確
な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報
を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害
を防止する。

2.事業目的
ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確
な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報
を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害
を防止する。

3.事業内容
① ツイッター、ブログなどインターネット上の原子力や放射線等に関する情報を
常時モニタリングし、風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不適切
な情報を調査・分析すること。モニタリングの対象とする情報媒体及びモニタリ
ングの方法については、具体的な提案をすること。
② 上記①のモニタリングの結果、風評被害を招くおそれのある正確ではない情報
又は不適切な情報及び当庁から指示する情報に対して、速やかに正確な情報を伝
えるためにQ&A集作成し、資源エネルギー庁ホームページやツイッター等に掲
載し、当庁に報告する。
③ Q&A集の作成に際して、必要に応じて、原子力関係の専門家や技術者等の専
門的知見を有する者(有識者)からアドバイス等を受けること。また、原子力関
係の専門家や有識者からアドバイス等を受ける場合には、それらの者について具
体的な提案をすること。
④ 事業開始から1ヶ月程度で30問以上、事業終了時までには100問以上のQ
&A集を作成すること。

【提案事項】
① モニタリングの対象とする情報媒体(ツイッターは必須)
② モニタリングの具体的な方法と体制
③ Q&A集を作成後、速やかに周知するための具体的な方法
④ 想定される専門家や有識者
⑤ これらを活用した新規提案

【留意事項】
・受託者は、不正確な情報又は不適切と思われる情報媒体や抽出するキーワードに
ついては、資源エネルギー庁担当者と十分に調整すること。
・Q&A集の作成にあたっては、十分な調査・分析を行い、その結果を反映するこ
と。また、Q&A集の最終的な問数については、実態に合わせて資源エネルギー
庁担当官と調整すること。
・原則として、正確な情報提供は即座に行うとともに、その結果については、翌営
業日以内に資源エネルギー庁担当者に報告すること。
・常時モニタリングするために十分な人員を確保すること。

4.事業期間

委託契約締結日から平成24年3月30日まで

5.納入物
・不正確な情報及び不適切と思われる情報並びにそれらに対する正確な情報等をと
りまとめた報告書の電子媒体(CD-R)一式

これは、一見、もっともらしい公平性を装っているが、ここで使われている「正しい情報」、「正確な情報」という言葉に注目してもらいたい。「正しさ」とは、中空に客観的に存在するものではなく、特定の集団にとっての「正しさ」である。「正確さ」とは、どの集団にとっての「正確さ」なのかによって、実質的内容を大きく変える。これまで、経産省は住民の命の安全性という視点で、「正しい情報」、「正確な情報」を提供してきたろうか。これまでの原発をめぐる政府広報(これまでの政府広報)や、3.11以降の原子力村の学者、保安院、安全員会の諸機関の機能不全と欺瞞ぶりを見ていれば、原発の推進を目的にしていることは明らかである。つまり、ウェブを監視して、原発推進へと情報誘導・情報操作・印象操作することを目的にしている。馬鹿は同じ芸を一生繰り返すのである。これは明らかなイデオロギー戦略の一環である。ある意味で、原発推進諸機関は、新種のカルト教団と言ってもいい。そのカルトの裏には、電力会社の独占を基盤にした収益構造とその恩恵を蒙る諸機関のピラミッドがある。それを独占電力会社の収益安定化が国家エネルギー戦略上有益だという盲信で糊塗している。一部で指摘されているように、核兵器開発能力の温存という政策目的も、あるいは、あるのかもしれない。政策目標がたった一つということはありえないからだ。カルトの特徴は、トップが覚めていることにあるのではない。トップも、半分、カルト信者である点にある。



Le temps guérit les douleurs et les querelles parce qu'on change. On n'est plus la même personne: ni l'offensqnt ni l'offensé ne sont plus eux-mêmes. C'est comme un peuple qu'on a irrité, et quéon reverrait après deux générations. Ce sont encore les Français, mais non les mêmes.

※reverraitはrevoir(再会する)の条件法現在だが、なぜ、revrraitではないのか。誤植か、古いフランス語か、不明。

時は、苦痛を癒し争いを終結させる。なぜなら、人は変わるからである。もはや、同じ人間ではありえない。侮辱した方も、された方も、もはや同じ人ではないのである。それは、ちょうど、かつて怒らせた国民を、二世代も経ってから、ふたたび見るのに似ている。彼らはフランス人だが、同じフランス人ではないのである。

■この断章は、個人的な問題を集団に拡大したきらいがあるように思う。個人的な侮辱や痛みは、たとえ、死別や離別のような、社会的なものであっても、集団対集団のレベルの話とは異なるように思う。苦痛や争いが、世代に引き継がれることもありえるし、それを、国家統合に利用する場合もある。また、新たな痛みや争いが起きることで、以前のそれが反復されることもある。人は、個人的には変わっても、社会集団としては、変わりにくいような気がする。それは、集団が自己保存を一つの目標として持っているからであり、そのためには、集団の統合が求められるからである。社会のリベラル度(個人の自由度)は、時間による忘却度と関連性があるのかもしれない。


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