電脳筆写『 心超臨界 』

明日への最大の準備はきょう最善を尽くすこと
( H・ジャクソン・ブラウン・Jr. )

後継者選びは、経営者ならば誰しも頭を悩ます問題だろう――森一夫さん

2008-06-17 | 08-経済・企業・リーダーシップ
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後継者というリスク――特別編集委員・森一夫
【「遠みち 近みち」08.06.15日経新聞(夕刊)】

廃業に追い込まれた船場吉兆について不思議でならないことがある。偽装表示や客の食べ残した料理の使い回しに最も責任がある湯木正徳元社長が、吉兆を創業した故湯木貞一氏から薫陶を受けた人物だということである。

正徳元社長は、文化功労者にも選ばれた名料理人の貞一氏の娘婿である。よほど見込まれたに違いない。貞一氏は「人のたべるものというのは、作ってから食べるまでの距離が近いほど、値打ちがあるのです」(「吉兆味ばなし」)と述べている。後継者の一人に選んだ正徳氏が食べ残しを客に出すとは、思いもよらなかったろう。貞一氏に人を見る目がなかったとは軽々に言えない。人間の本性を見抜くのは難しい。

どのような人物を後継者に選ぶかは、事業の持続性を左右する大きなリスクといえる。経営者ならば誰しも頭を悩ます問題だろう。

ニコンの苅谷道郎社長は「役員になるのと、トップになるのとでは、求められるものが違うと最近、思うようになりました」と言っている。「一番違うのは、倫理観、道徳、哲学といった点ですね。トップを制約するものは事実上ないですから、自分をコントロールできない人物がなったら会社はつぶれます」

「もし私が狂ったり、私利私欲に走ったりしたら、従業員やその家族たちを不幸にします。倫理観や人生観をきちんと持っていなければいけないのです」。技術者上がりの苅谷さんは、入社早々から実力を存分に発揮してきた仕事師である。社長になって初めて、その職責の何たるかを実感したようだ。

4月に急逝した味の素の江頭邦雄会長は社長時代に、こんな話をしていた。「私は公平、公正、透明、簡素がモットーだと言い続けてきましたが、もう一つ、社長にとって大事な言葉があります。『謙虚』です。実績が上がってくると、社長はだんだん図に乗ってくる。だから謙虚さが必要なのです。これを忘れたら大変なことになりますよ」。積極果敢な江頭さんが言う自戒の言葉だけに真実味があった。

江頭さんは取締役に就任してから、社長になれたら何をすべきかノートに書いてきた。いろいろ勉強する中で「ある本にポイズン・オブ・パワー、つまり権力の毒が、高い地位にはつきものだという言葉に出合い、心にとめました」と言っていた。

トップに選ばれるような人は仕事ができるのは当たり前だ。問題は品性を備えているかどうかなのである。

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