電脳筆写『 心超臨界 』

人があきらめないと決心すれば
後は努力のみがその報酬を約束する
( ナポレオン・ヒル )

こころのチキンスープ 《 ピクルスの瓶——A・W・コブ 》

2024-07-23 | 06-愛・家族・幸福
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空っぽの瓶の中に最初の硬貨を入れるのを、親父はいつもぼくにやらせてくれた。それが短い、楽しげな音を立てて瓶の底に落ちると、ぼくらは顔を見合わせて笑った。「1セント玉や5セント玉や10セント玉や25セント玉をこつこつ貯めれば」と親父は言った。「お前はきっと大学へたどりつける。わしが必ずそうさせてやるぞ」


◆ピクルスの瓶

『こころのチキンスープ 17』親と子を変えた愛の不思議の物語
( ジャック・キャンフィールド、ダイヤモンド社 (2002/05)、p6 )

物心ついたころから、両親の寝室のドレッサーの脇には、ピクルス用の大きな広口瓶が置いてあった。ぼくの親父は、夜寝る前にポケットから小銭を取り出し、その瓶に投げ入れる習慣だった。

硬貨が瓶に落ちる音は、いつも幼いぼくの心をはずませた。瓶がまだ空に近いときは、チャリンチャリンと楽しげな音。瓶に硬貨がたまってくるにつれて、それも鈍い音に変わっていく。ぼくは瓶の前にしゃがみ込んで、銀や銅の硬貨が窓から差し込んだ陽の光に、海賊の宝物のようにきらめくのをうっとりと眺めたものだ。

広口瓶が硬貨でいっぱいになると、親父はキッチンのテーブルに座って硬貨を束ね、銀行に貯金しに行く。銀行へ行くのはいつだってわくわくするような儀式だった。硬貨は小さな段ボール箱にきっちりと並べられ、トラックにのせられ、親父と僕のあいだの座席に置かれる。

すると親父は、決まってぼくを希望を込めた目で見つめてこう言うのだ。「この硬貨でもって、お前はきっとこの町から出て行くんだ。お前は父さんより立派になるんだぞ。このさびれた町には、お前を引き止めるものは何もない」

そしてまた、束ねた硬貨の入った箱をカウンターの上に滑らせて、銀行の出納係に渡すときも親父は誇らしげに笑いながら言ったものだ。「これはせがれを大学にやる資金ですよ。せがれはりっぱな教育を受けてこの町を出るんだ」

ぼくらは貯金をするたびに、必ずそれを祝ってアイスクリーム店に寄った。いつでもぼくはチョコレート、親父はバニラのアイスクリームをコーンにのせて食べた。店員から釣り銭を手渡されると、親父は大きな手のひらの中の小銭を見せてこう言った。「うちに帰ったら、また瓶に貯金しような」

空っぽの瓶の中に最初の硬貨を入れるのを、親父はいつもぼくにやらせてくれた。それが短い、楽しげな音を立てて瓶の底に落ちると、ぼくらは顔を見合わせて笑った。「1セント玉や5セント玉や10セント玉や25セント玉をこつこつ貯めれば」と親父は言った。「お前はきっと大学へたどりつける。わしが必ずそうさせてやるぞ」

年月が経ち、ぼくは大学教育を終わらせ、よその町で仕事に就いた。初めて実家に戻ったとき、ピクルスの広口瓶は姿を消していた。すでにその目的を果したからだ。かつてピクルスの瓶が置かれていた場所をじっと見つめると、胸がじーんと熱くなった。

父は寡黙な人だった。決めたことは忍耐と信念をもってやり通すことが大事だなと説教したことは一度もなかった。けれど、どんな言葉を並べ立てるより、ピクルスの瓶は雄弁にそのことをぼくに教えてくれた。

やがてぼくは結婚し、あのささやかなピクルスの瓶がぼくの人生でどれだけ大きな役割を果したかを妻のスーザンに話して聞かせた。ぼくにとっては、なによりも父の愛情をはっきりと示してくれるものだったのだと。

家計がどんなに苦しかったときも、親父はこつこつと小銭を瓶の中に貯金し続けた。工場から一時解雇された夏には、週に何べんも乾燥豆を食べなくてはならなかったにもかかわらず、瓶のお金には決して手をつけなかった。

それどころか、少しでもおいしく食べられるよう、ぼくの豆料理にケチャップをかけながら、テーブル越しにぼくを見て、いつになくきっぱりとした調子で言ったのだ。「いいか、大学を卒業したらな」。父の目がきらりと光った。「お前は、自分が望まないかぎり、二度と豆なんか食わないですむんだ」

娘のジェシカが生まれると、ぼくらは最初のクリスマス休暇を両親の家で過ごした。夕食後、父と母は並んでソファに座って、代わる代わる初孫を抱いてあやしていた。ジェシカがぐずり始めたので、スーザンは父から赤ん坊を受け取り、おむつを替えに連れて行った。

居間に戻ってきた妻の目は、なぜか涙で濡れていた。彼女はジェシカを父の腕に戻してから、ぼくの手を取ってそっと寝室へ促した。「見て」とやさしい声で言うと、彼女は目でドレッサーの横の床を示した。驚いたことには、そこにはピクルスの広口瓶が置かれていた。あたかも以前からずっとあったかのように。瓶の底には、すでに硬貨がたまっていた。

ぼくはそこまで歩いて行くと、ポケットを探って硬貨を手につかんだ。ありとあらゆる感慨がこみ上げてきたが、ぼくはその硬貨を瓶の中へ落とした。ふと目を上げると、ジェシカを抱いた親父が静かに部屋に入って来たところだった。ぼくらの視線が絡み合った。父がぼくとまったく同じ気持ちでいることがわかった。言葉は必要なかった。

A・W・コブ
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