人の思いは、究極において常に同じなのである、人をして会わしめ、人をして別れさせるものが雪であるとするなら、遠山の雪は仏さまそのものである。われわれを動かしている永遠なるものがある。その永遠なるものに動かされている時、人は、生き別れ、死に別れしても、恨みを残さず、念を残さない。ゆえに、「別れてしまった人」というのである。しかし、念は残さないけれども、しかもなお、どうしているかなあと思いやるのである。山頭火にはそれがある。凡夫であり、出来損ないであるからである。しかし思いやる心のなんと温かいことか。悟りきった人間の冷たさと違う、凡夫の温かさがある。 . . . 本文を読む
当時の欧米諸国の平均的な食事では、脂肪の比率が約40パーセント(重量ではなくカロリーによる比率。以下同じ)になっていたのだが、わが国では肉食民族といわれていた彼らも、昔からそのような高脂肪比率の燃料で走ってきたのではなかった。食事が急激に変わってそうなり、ガンや心臓病や糖尿病などが増加したのだ。そこではっきりしたのは、人間は脂肪の比率が40パーセントというような高脂肪燃料で走ってきた車ではないということだった。そのような燃料で走っていると車の調子がおかしくなることだけは確かなのだ。 . . . 本文を読む
なだらかな起伏のつづくコーン・ベルト地帯の美しさは、まったくの絵空事になりつつある。というのも、コーン・ベルトと名づけられたほどの肥沃な土地が、いまや危機に瀕しているのだ。土壌学者によれば、トウモロコシ1ブッシェル(35.24リットル)の収穫につき、1ブッシェル半の表土が雨で押し流されてしまい、さらに半ブッシェルが風にのって吹き飛ばされてしまう。アイオワ特有のプレーリーの芝土の下に2フィート(60センチ)もあった表土層が、いまではその半分しか残っていない。 . . . 本文を読む
順境にいても安んじ、逆境にいても安んじ、常に坦々蕩々(たんたんとうとう)として苦しめる処なし。是(これ)を真楽(しんらく)というなり。萬(よろず)の苦を離れて、此の真楽を得るを学問のめあてとす。 . . . 本文を読む
ところで最近、結城昌子さんの『画家の手もとに迫る原寸美術館』(小学館)という新趣向の画集が、朝日新聞書評欄の再三にわたる推薦のせいもあってよく売れている。わたしは偶然の機会から手に取って、いろいろとおもしろがった。数日ページを繰って飽きなかった。これは音楽の複製技術が、ハイファイとかステレオとか工夫を凝らしたと同じように、何とかして画集の欠点を補おうとしたものである。 . . . 本文を読む
脳インターフェースと仮想空間技術は人間にとっての物質世界の価値を大きく減らすだろう。人工知能ができれば文明の運命を機械にまかせ人間の関与は欲求を出すだけまでに縮小できる。そして精神のダウンロードにより、その欲求を出す主体自体が、完全情報化するに違いない。 . . . 本文を読む
あなたが限界だと思い込んでいることは、これまで数えられてきた考え方の産物にしかすぎない。論理的で科学的な証明を基準とする考え方だ。ところが、今では皆が知っているミクロの世界も、顕微鏡が発明されるまではほとんどの人が信じていなかったのである。 . . . 本文を読む
【概要】―――この戦争は、19世紀以来、満洲進出を狙っていた米国に対し、日本が日露戦争以降、満洲に勢力を伸ばしたため、米国が日本を強引に挑発し、日本の反撃を利用して滅ぼしたものである。米国は同じ目的で、4年前からソ連の起こした支那事変に参加し、蒋介石に莫大な軍事援助を与えていた。日本にとって対米戦は反撃であり、敗戦したが東條英機の主張したように正当な自存自衛戦争であったことを確認したい。 . . . 本文を読む
CO2ゼロという極端な目標は、経済を破壊する可能性の方が高い。政府は、安価な化石燃料の従来通りの利用を禁止し、CO2の回収貯留を義務付けるという。乃至(ないし)は不安定な再生可能エネルギーや扱いにくい水素エネルギーで代替するという。これにより2030年に年90兆円、2050年に年190兆円の経済効果を見込んでいる。だが莫大(ばくだい)なコストが掛かることを以(もっ)て経済効果とするのは明白な誤りだ。 . . . 本文を読む
個人の恣意に生殺与奪の権力を付与する「一発不合格」制度は憲法の禁ずる検閲である。また、国家公務員が特定の教科書会社を差別的に扱うことは、憲法第15条の「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」という規定に明白に違反する。 . . . 本文を読む
世の中には、実物を見ないで思い込みだけで決めつける人がいます。「教育勅語は危険思想だ~」というような人たちです。でも「何がどう危険なのか?」と聞いたら、「学校でそう習った」「世間でそう言われている」「何となく危険」と、結局ここでも「なんとなく」の登場です。 . . . 本文を読む
兵器の研究とは開発だけでなく、攻撃を受けたときの防御策、兵器が暴走したときの制御方法も同時にするのが基本です。たとえば、生物兵器で攻撃を受けたときの最大の防御策はワクチンです。一般的にワクチン開発は最低でも十年は必要と言われていますが、そんなに遅くては生物兵器による感染症で軍隊が機能しなくなる。そのため、各国では平時から軍事研究の一環としてワクチン開発の基礎研究が進められているのです。事実、今回のワクチンの開発が早かった国はアメリカ、イギリス、中国、ロシアと軍事大国ばかりです。 . . . 本文を読む
約40年前、小学校に通い始めた頃に、アジア人の国が世界の巨人・白人帝国のロシアと戦いました。このアジアの国はロシアを大敗させました。そしてその国が、日本だったのです。このニュースがインド全土に伝わると興奮の波がインド全土を覆いました。インドのいたるところで、旅順攻撃や、奉天大会戦、日本海海戦の勇壮な話によって、沸き立っていました。 . . . 本文を読む
【西尾】 今回もあのときと同じです。我々は「慰安婦問題はもうなくなった」と言っているのですが、朝日は「女性の悲劇はある」と主張します。同じように、朝日はあの当時、賠償や補償の問題についてドイツと日本ではそのやり方が違うことをやっと認めました。「ドイツ見習え論」ですすめてきた「個人補償」には、もう論理的根拠がないからです。しかし、「従軍慰安婦」の問題が残っているとして今までの議論を引き延ばし、生き残ろうとした。その流れは今回も同じなのです。 . . . 本文を読む