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BEGINの本を少々

2022年08月20日 | ブックレビュー

 

 BEGINというのはバンドのことですが、ちょっと興味があるので本を2冊ほど読みました。今回読んだのは以下の2冊。

・さとうきび畑の風に乗って 1998年発行 278ページ
・肝心(ちむぐくる) 2005年発行 約420ページ

 BEGINは、ヴォーカル&ギターの比嘉栄昇さん、ギターの島袋優さん、ピアノの上地等さんからなる3人組ですが、「さとうきび畑の風に乗って」(以下「さとうきび畑」)はそれぞれが各自の生い立ちやデビューからそれまでのことを書いており、「肝心」は三人の鼎談を中心にディスコグラフィーやライブの記録も掲載されています。

 BEGINは1990年にデビューしましたが、「さとうきび畑」がデビュー8年目、「肝心」がデビュー15周年の時の本です。実は昨年「肝心」を読んで、先日「さとうきび畑」の方を読みました。順番は逆です。

 彼らはご承知の通り「イカ天」でチャンピオンとなり鳴り物入りでデビュー、「恋しくて」がCMソングにもなって大ヒットしたものの、その後はCDもあまり売れず一時期低迷してたのが、2000年頃から「涙そうそう」「島人ぬ宝」などでブレイクして沖縄の音楽シーンを代表する存在となって今に至ります。

 1998年の段階ではちょっと人気が盛り返してきてた頃ですが、まだいわゆる島唄は歌っておらず、「さとうきび畑」の中でもハワイアンに興味を示していたり、メンフィスとかナッシュビルの事が書かれています。

 そして2005年の「肝心」では、そのナッシュビルやメンフィスでの体験がキッカケで、本場のブルースを目指すこととは逆に「自分たちのルーツとなる音楽はなんだろう?」という事を考え始めたことが語られています。

 イカ天では三人だけの演奏でバカ受けしたわけですが、実際プロとして活動していくには演奏力が未熟だったり引き出しが少ないと判断され、デビュー後のコンサートツアーではドラム、ギター、ベース、キーボード、バイオリンとサポートメンバーが5人もいたのだとか。そして全国どこへ行ってもホールは超満員、しかし肝心のメンバーの方はギターとピアノがサポートメンバーに比べるとあまりにも弾けないということで、本人たちもそうだし、イカ天の時の演奏を期待したお客さん達もかなり戸惑いがあったようです。その辺の苦悩はどちらの本にも綴られています。

 それでヴォーカルの比嘉さんが頑張って自分たちの味を出そうとしても、あとの二人が気が引けてついてこないというもどかしさがあったというのは、特に「さとうきび畑」からヒシヒシと伝わってきます。イカ天をはじめ各種コンテストから出てきたバンドがデビューしてほどなく解散するケースはよくありますが、同様の事情なのでしょうね。

 簡単なコードで作った曲がレコーディングの段階で難しいコードに変えられ、それをメンバーが弾けず、自分たちの音楽が自分たちのものではなくなる感覚があったというのはよくわかります。さらに、アルバムを作るにも曲が足らず、他の人が作った曲が集まっては来たけどそのデモテープがどれも半端なくレベルが高くて「これがプロの世界か…。」と衝撃を受けたり。

 BEGINがここでくじけなかったのは、三人が元々友達同士だったこと、それぞれの音楽に対する思いが強かったこと、あとはメンバーの性格によるものでしょう。(ここが一番大きいような気がして、それが大事だと思うのですが。) あとは、売れなくなって予算がなくなり、サポートミュージシャンをつけられなくなって三人でライブをやるようになって、自分たちの音楽を取り戻した感覚があったのも運命というものかも。

 そもそもブルースバンドとしてデビューしたのが、石垣島の出身だからといっていわゆる島唄を歌う事や、比嘉さんが三線を弾くことに迷いがあったというのも、今となっては意外な気もしますが、そこを吹っ切って自分たちの限界を突き破り世界を広げたというあたりは「肝心」に詳しいです。私の場合はこちらを先に読んで、最近「さとうきび畑」を読んだので、既に答えを知ってたような感じもありました。

 それにしても、ずっと興味を持たなかったこのバンドに、実は私の好きなギタリストの山田直毅さん、大森信和さんが深く関わっていたことはこの2冊を読んで知りました。もう30年以上やってるバンドなのに、Wikipediaには案外情報が少なく、なんとこれらの本の事も書かれていないという…。まあそのあたりもこのバンドの持ち味という気がします。「俺が!俺が!」という匂いは昔も今もまったくないですしね。

 ということで、関心のある方はこれらの本をお探し下さい。普通に新品で買えないのが少々ハードル高いですが、結構面白いし興味深い本です。


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