ばあさまの独り言

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御霊迎え

2014年08月11日 | 随筆・短歌
 旧暦のお盆が近づきました。私もお盆の仕度をしています。仏具を磨き粉で磨き、仏壇の隅々まで新しい布で拭きました。お花も買って来ましたし、お菓子の供え物や果実の籠盛りもリボンをかけて供えました。これで仏壇はもう一杯のお盆の装いになりました。仏壇の前の左右に、回り灯籠を二つ、組み立てて供えました。回り灯籠が影絵を写しながら回りだすと、今年もお盆が来たかとしみじみと思います。
 何故か今年ほど、義父母や娘を親しく思い出し、「有り難う」と幾多の想い出に浸りながら、懐かしく楽しく仕事をした年も無い気がします。
 我が家では毎年仏具磨きは男性がすることになっていたのですが、今年は妹が「今日は久しぶりに涼しかったので、仏具などみんなで磨いてもうお盆仕度をしたよ」と言うので、それでは私も、と例年より可成り早かったのですが、直ぐにとりかかったのです。
 今エボラ出血熱が問題になっていますが、子供たちの予防注射も、検診も、みんな義父母にお願いしたのだったと、二人の子供のそれぞれに出掛けて頂いた数を考えると本当に沢山お世話になったと、しみじみと感謝しています。夏の暑い日には、義父は黒いコーモリをさして、「暑い陽に当たらないように」といって、お昼寝前のおんぶをして下さいました。体の弱かった義母に代わって、二人がかりで、私達の不在の間のお守りを全て引き受けて貰ったのでした。黒いコーモリのおじいさんのおんぶは、ご近所て有名でしたが、義父は一向に気にしませんでした。暑い夏の日には、朝からビニールのプールに水を張って、日光で温め、水遊びをさせてくれました。もちろんご近所の友達も集まりました。
 私達が庭に二人乗りのブランコを設置しましたので、子供たちも大勢集まり、みんなで乗って遊ぶのですが、なかに腕白な子もいて独り占めして、時折子供たちでもめるのですが、「代わりばんこにね」とよく義母が順番を決め、列になって仲良く乗っていた光景が目に浮かびます。
 少し大きくなると、子供たちは大勢の友達と徒党を組んで、あちらの家、こちらの家と「おじゃましまーす」と声をかけて、ドドッと二階まで駆け上がり、ひと遊びして、また「おじゃましました」と風の如く去って行きました。男の子が草野球をするようになると、私達が息子にキャッチャーミットや面や胸当てや、ボールやバットなど、揃えてやると、みんなで共用していました。 この団地が出来た頃に、丁度家を手にした人々の年齢が似ていましたから、子供たちの年齢も近く、少し離れた市営住宅からも集まって、真っ黒になって一塁しかない野球に熱中していました。 中に三振すると直ぐに泣く子がいて、初めは、みんなで集まって慰めていましたが、やがて少し時間をおくと、自分から立ち直って、元気に仲間に戻るようになりました。子供の世界は何と爽やかなものかと思ったものです。
 日曜日には、夫が毎回キャッチャーを買って出ていました。同じ仲間でザリガニ取りや、蜻蛉やセミを追いかけました。今の子供たちを思うと本当に様変わりしていて、大勢集まって泣いたり笑ったり集団で遊べた幸せな時代だったと思います。その代わりお誕生会となると部屋に入りきらない位大勢集まり、歌を歌ったりゲームをしたり、自分達でルールを決めて楽しんでいました。私はせいぜいフルーツパフェやサンドイッチを作って出したりしただけです。義母がお赤飯を沢山蒸して、一人に一つのパックをお土産に持たせてくれました。何と有り難いことだったか、今思うとそれも又義父母の大いなる愛情に支えられていたのです。
 歳をとるにつれて義父母には、感謝の気持ちがどんどん脹らんで、フトしたことで大変お世話になったことを思い出すようになりました。ですから、お盆の御霊迎えは、私には、心を込めてする、有り難く楽しい仕事なのです。
 義父母に一番感謝していることは、夫を産んで下さったことです。これは何をおいても忘れられない有り難いことです。そして二人のわが子に恵まれ、楽しい家族ができました。何を忘れてもこのことだけは生きている限り忘れず、感謝しなくてはなりません。何と楽しい日々だったか、今はただ有り難い想い出として胸に焼き付いています。
 仏壇の遺影に向かって、「主人と巡り合うご縁を頂いて、有り難うございます。二人の子供も授かりましたし、良い家庭で、ささやかですが、幸せに過ごして居ます。娘はそちらで元気でしょうか。娘よ、もうじき私達も逝きますから、待っていてね。」と途切れる事の無い話しが続きます。
 この幸せな暮らしを続けていられるのも、皆さんに守って頂いているからだと思い、「お陰様で、今日も無事に元気で過ごさせて頂いています。」と心から手を合わせて感謝します。
 本当に、ご先祖さま、特に一緒に暮らした先だった人々の御霊をお迎えして、短い間ですが、共に暮らせるお盆を有り難いと思っています。

故郷の盆の慣わし笹寿司を今年も作る嫁して五十年(某紙に掲載)
 
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