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ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

真実の言葉

2016年04月30日 | 随筆
 外出も殆ど一緒の私達夫婦は、昨日バスで外出しました。あらかたの用が済んで、万年筆のブルーブラックのカートリッジ等が欲しかった私は、待ち合わせの場所を、例によって、本屋さんに決めて文房具店に立ち寄りました。その後本屋さんに行きましたら、平積みの本の中に、「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子著(幻冬舎)と同著者の「面倒だから、しよう」(幻冬舎)が並んで沢山積んでありました。私はどれも既に読んでいましたが、今頃になっても平積みとは、大勢の人が読んでおられるのだと、改めてその作品に目を通したくなり、私の書棚からその二冊を引き出して来ました。それぞれ2012年と2013年に初版が出たものです。
 直ぐに読めて、感動する言葉が沢山並んでいる「置かれた場所で咲きなさい」を繰り返して読んで見ました。
 熊本などで大地震があった時が時だからかも知れませんが、「いつ何が起きるかわからないから、いつも準備しておく。」「苦しい峠でも必ず、下り坂になる。」「どんなところに置かれても花を咲かせる心を持ち続けよう。」そんな言葉が先ず心にすとんと落ちました。
 渡辺和子という人は、9歳の時に、二・二六事件が起こり、当時陸軍の教育総監であられた父上が、青年将校による43発の銃弾によって、射殺される場面を目撃しています。僅か1㍍の近距離で。何とむごい経験でしょう。
 そして18歳でキリスト教の洗礼を受け、聖心女子大学、上智大学、同大学院、そしてアメリカへも留学し、ボストンカレッジで哲学の博士号を取得されています。36歳の若さでノートルダム清心女子大の学長になられました。うつ病を患ったこともありましたが、マザーテレサが来日した時には通訳をされたそうです。「置かれた場所で咲きなさい」は200万部を超えるベストセラーになっているそうで、書籍のそばに大書してありました。
 人は言葉によって心を伝え、共感し繋がりを持ち、かけられた言葉に励まされて、生きて行かれます。ですから、この書物に「〝あなたが大切だ〟と誰かにいってもらえるだけで、生きてゆける」とあるように、ほんの短い言葉でも、その人の人生を変えるほどの威力があり、その言葉に支えられて生きて行くことも出来るのです。
 「きれいさはお金で買えるが、心の美しさは買えない」とか、『「ていねいに生きる」とは、自分に与えられた試練さえも、両手でいただくこと。』 等とありますが、「苦しい試練を有り難いこととして両手で頂く」とは、辛い試練を幾つも幾つも乗り越えられた人にして、初めて言える言葉でしょう。ずっしりと重みのある言葉として受け取れます。
 渡辺氏の場合は、殊に希有の悲惨な情景を目撃したという体験から、キリスト教徒として、常に主とともにあるという深い信仰の心が、バックボーンになって居られるからではないかと思います。
 渡辺和子氏は、坂村真民という仏教詩人の「冬がきたら」を引いて、「人生の冬である高齢者に置き換えて、読んでみると良いでしょう」と言って居られます。
  
冬がきたら
冬のことだけ思おう
冬を遠ざけたりしないで
むしろすすんで
冬のたましいにふれ
冬のいのちにふれよう

冬がきたら
冬だけが持つ
深さときびしさと 静けさを知ろう・・・・・

 「冬は・・・弧独な私に与えられた宝の壺である」と結ばれて居るこの詩は、今の私の老いに対する思いを表しています。」と渡辺氏は綴っておられます。
 この坂村真民という詩人は私も大好きな詩人です。心を打つ沢山の詩を作っています。私は「念ずれば花ひらく」「自選 坂村真民詩集」「坂村真民一日一言」等を持っています。
 また鎌倉・円覚寺の管長の横田南嶺老師も、坂村真民が大好きな方で、日曜説教でも、ご講演でもよくこの真民の詩を引き合いに出されます。説教はネット配信していますので、興味のある方は是非「居士林だより」をご覧下さい。深い感銘を受ける話題で、常に心が洗われる思いです。
 渡辺氏は敬虔なクリスチャン、坂村氏は在家の熱心な仏教徒と、信じる宗教は違っていても、幸福な人生とは何かと言う価値観は共通していることに、私は喜びのようなものを感じます。
 渡辺氏は、本の最後の方に「相手を生かす ぬくもりのある言葉を 使える自分でありたい。」と結んでおられます。これこそが私達の心に共感を呼ぶ、真実の言葉だと思います。
 そしてこの添え書きに、「言葉ほど恐ろしいものはない。使い方を間違えれば、凶器にもなる。ことばを無機質なものにしてはいけない。」とあります。真実のことばの大切さを思います。

 身の周りにこうした感動を呼び、生きる力の湧いてくる、そして生き方を考えさせてくれる「真実の言葉」で綴られた書物を、時々はじっくりと噛みしめながら読み返していきたいと思っています。


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