ばあさまの独り言

ばあさまから見た世の中のこと・日常生活のこと・短歌など

バカのバカは?

2010年07月11日 | 随筆・短歌
 過日急に暑くなった日の夕方近く、庭のピンクの西洋紫陽花の一株がしおれていて、急いで水を与えたのですが、とうとうしおれたままで枯れていきました。この紫陽花は、娘夫婦と鎌倉へ行って紫陽花展を見た時にとても気に入って、帰って直ぐに近くの花卉センターで買ったもので、娘が亡くなった今は、大切な記念の花なのです。
 この紫陽花が植えてあった場所の右には、以前枇杷の大木があって、毎年沢山の実が成り小鳥の格好な餌になっていたのですが、或る年ハラハラと葉が散り始め、年々弱ってとうとう枯れてしまったので、庭師さんに切って頂きました。
 何故でしょう?と聞きましたら、「恐らく灯油を零したのではないですか」とのこと、夫は、「そうそう何時だったか零した覚えがある」と言いました。近くに灯油タンクが設置してありますので、零れると確かにその場所に流れて行くのです。以来枇杷の後に植えた木は、次々とことごとく枯れてしまうので、今は大きな樹になるものは諦めて、少し土を新しく入れて、去年1m50cm程の小手毬を植えてあります。
 ピンクの紫陽花はその隣ですから、もしかしたら灯油のせいではなく、私の手入れが悪いのではないかと思い、枯れた一株を取り払って、隣に生きていた一株から、小さい鉢に挿し木をしました。
 ピンクの紫陽花の隣の、もう一種類もついでに挿し木にして、万一枯れても困らないようにしようと、毎日祈るような気持で二鉢の紫陽花に水をやっているところです。これは、青い額紫陽花で、少し離れた家のご主人から枝を一本分けて頂いて、私が挿し木にして増やしたものです。
 その方の奥様は、退職後不定愁訴のような体調不良を訴えられて、もう十数年も殆ど外出されることはありません。特にこの数年は全く外出されなくなり、80歳近いご主人が家事一切をしておられます。私達がウォーキングでたまたま通りかかる時に、良く立ち話をするのですが、先日はご自分が玄関先の石段で転び、頭を打ってしばらく意識を失っていて、病院へ行ってきたと仰り、何時自分の方が先に逝くかも知れない、と不安を訴えられました。
 夫は、それまでも時々は、奥様の症状(次々とあちこち具合が悪くなる)から鬱病を疑い、それとなく精神科の受診を勧めていたのですが、矢張り抵抗があるようで、神経内科を受診したりしておられました。その後も病状は一向に好転しないまま今日に至りました。 私は、とても黙って見て居られない思いで、「私は喪失鬱になったことがあり、直ぐに精神科で受診して、薬を飲んでお陰で良くなりました」と言いました。夫も近くの病院に心療内科があるから、と勧めましたら、今回はとても喜ばれて「直ぐに連れていきます」と仰っておられました。
 鬱病も次第に一般的な病気であると、認知されるようになり、良い薬も出て良くなる病気です。速く正しい治療をされれば、こんなに長く外出も出来ないような暮らしはしないで済んだのではないか、と思うとお気の毒です。尤もこれは医学に無縁な私の一方的な思い込みかも知れません。
 ところで、先日新聞に「紫陽花はバカでも育てられる」と読者の投稿が載っていました。
「それでは私は、バカのバカかしら」とがっかりして言いましたら、夫が「バカのバカとは、ひっくり返すと天才ということだ」と言いました。励ます積もりで言ったのでしょうが、これを聞いて私は益々落ち込んだのです。
 暑い日が続くようになって、挿し木にはふさわしくない時期なのですが、暑さにしおれてしまわないように、水やりの管理をして、何とか育てています。今度そのご主人にお会いした時は、お元気でにこやかな笑顔に出会いたいものだと二人で話し合っています。
 
 鬱といふ文字にも慣れてうつ去りぬ六月の空は深き青なり (某誌に掲載)



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