(9月25日、国連総会で「世界中の子供たちが教育を受けられるよう約束してほしい」と訴える マララ・ユスフザイさん https://www.youtube.com/watch?v=ib2JkDAailw )
【後を絶たない少年兵】
世界各地の「児童」に関する話題
アフリカなどの紛争においては「少年兵」がごく普通に利用されています。政府軍を含む敵対する勢力双方が拉致などによって得た「少年兵」を戦わせているケースもよくあります。
****コンゴの少年兵、依然3600人=東部で次々新武装勢力―ユニセフ代表****
国連児童基金(ユニセフ)のコンゴ(旧ザイール)事務所のパスカル・ビルヌーブ代表(58)が来日し、政情不安が続くコンゴで、武装勢力の戦闘員などとして活動する18歳未満の少年兵が「依然として3600人前後いる」と訴えた。早急な対策の必要性を強調している。東京都内で23日、時事通信のインタビューに語った。
コンゴでは2002年の内戦終結後も、北キブ州など東部を中心に武装集団が活動を続けている。12年ごろから活発化した武装勢力「3月23日運動」の活動は下火になったが、「ある勢力が姿を消すと、別の勢力が取って代わる」(ビルヌーブ代表)状況だ。
子供が組織に加わる例も後を絶たない。13年3〜8月には南部カタンガ州で、国連の啓発活動などを通じ少年兵550人超が解放された。
少年兵は戦闘員のほか、食料調達係やスパイとして働かされている。
ビルヌーブ代表によれば「最も多いのは拉致されたケース」で、9歳や10歳という児童もいる。大半が武装勢力や民兵組織「マイマイ」に所属。以前はコンゴ政府軍も少年兵を使っていたが、代表は「政府軍に関しては、国連への報告が大幅に減り、事態は改善している」と話す。【7月23日 時事】
*****************
シリア・イラクで活動する「イスラム国(IS)」も少年兵を利用しているようです。
結果、少年兵の犠牲者も増加します。
****「イスラム国」少年兵ら30人死亡=仏軍のシリア初空爆****
在英のシリア人権監視団は30日付の声明で、フランス軍がシリアで27日に初めて実施した過激派組織「イスラム国」に対する空爆で、未成年の戦闘員集団「カリフの幼獣たち」のメンバーら30人が死亡したと明らかにした。
仏軍の空爆の標的は、東部デリゾール州にある訓練施設。指導者のバグダディ容疑者を「カリフ」(預言者ムハンマドの代理人)と見なす「イスラム国」は、シリアの支配地域内で18歳未満の子供らを組織し、自爆テロを実行させるなどしている。【9月30日 時事】
********************
【注意を引きにくい少女らを使った自爆テロ】
女子の場合は、性的な関係を強要するなどの他、相手に警戒されにくいということで自爆テロにも利用されています。
****<ナイジェリア>子供5人が自爆テロ ボコ・ハラム関与か****
英BBC放送によると、西アフリカ・ナイジェリア北東部の中心都市マイドゥグリで1日、5人の子供が実行犯とみられる自爆テロが相次いで起こり、実行犯を含む計15人が死亡した。イスラム過激派組織ボコ・ハラムの犯行が疑われている。
爆発はモスク(イスラム礼拝所)と、ボコ・ハラムに対抗する自警団のリーダーの家屋で発生した。BBCは治安当局者らの話として、自爆したのが9〜15歳の少女4人と少年1人だったと報じた。
ボコ・ハラムは昨年から、少女らを実行犯に仕立てた自爆テロを繰り返している。北部の中心都市カノでは昨年7月下旬、自爆テロが4回起こり、いずれも10代の少女が実行犯と伝えられた。
今年2月には北東部ポティスクムで7歳前後の少女によるとみられる自爆テロも発生し、実行犯の低年齢化が指摘されている。ボコ・ハラムが、テロ警戒の注意を引きにくい少女らを使っているとの見方もある。(中略)
国連児童基金(ユニセフ)は今年5月、昨年以降に起きた北東部での自爆テロのうち、少なくとも4分の3で女性や子供が実行犯だったとの見解を発表した。【10月3日 毎日】
*********************
【内戦長期化で教育が「大きな代償」を払っている】
少年兵や自爆テロに利用されないまでも、紛争が激化すれば、当然ながら児童の教育機会は奪われます。
****中東の紛争、子ども1300万人の教育機会奪う 国連****
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は3日、中東地域の紛争により教育の機会を奪われている子どもは1300万人以上に上り、こうした子どもたちが学校に戻ることができなければ「一世代の希望」が打ち砕かれてしまうと警告する報告書を発表した。
この報告書は、中東の6か国・地域における紛争の教育への影響をまとめたもの。それによると、暴力によって8850校以上がもはや使えない状態になっている。
また報告書では、その場しのぎの防空壕として使われる教室、試験を受けるために戦闘の前線を横切らなければならない子どもたちなど、生徒や教師が直接的な被害を受けている事例が紹介されている。
シリアとイラク、リビア、パレスチナ自治区、スーダン、イエメンでは昨年、計214校が攻撃を受けたとされる。
報告書はまた、シリアでは4年半に及ぶ内戦で教育が「大きな代償」を払っていると指摘。内戦が始まって以来、4校に1校が閉鎖されており、200万人以上の子どもが退学を強いられた他、50万人近くが教育を受ける機会をなくす恐れがあるとしている。
ユニセフ中東・北アフリカ地域事務所のピーター・サラマ(Peter Salama)代表は、「学校が受ける物理的な損傷だけでなく、学童たちの一世代が自分たちの希望や将来が打ち砕かれるのを見て感じる絶望」が問題だと指摘している。【9月3日 AFP】
********************
教育機会を奪われた子供たちは「戦闘」が日常の生活に身をゆだねることで、戦うことしか知らない人間へと成長します。こうして紛争は世代を超えて長期化していきます。
****<シリア内戦>学校行けぬ子供270万人超 NGO訴え****
米下院外交委員会の中東北アフリカ小委員会は8日、内戦が続くシリアで子供が直面する危機的な状況について公聴会を開いた。
証言した国際人道支援NGO(非政府組織)の幹部らは、戦闘や生活苦などのため就学できない子供がシリア内外で総人口の1割以上の270万人を超えると指摘。「子どもが子どもでいられなくなっている」と訴えた。
学校が攻撃され生徒が死傷したり校舎が軍事目的に使用されたりもしており、難民受け入れの拡大や財政支援強化を強く呼びかけた。
国連児童基金(ユニセフ)によると、シリア国内外で就学できない子供は内戦前の総人口約2200万人の約12%にあたる270万人。国内の学校の半分は閉鎖され教師5万2500人が辞職に追い込まれた。
証言したNGO「セーブ・ザ・チルドレン」のバーニス・ロメロ上級部長によると、北部アレッポ、イドリブと中部ハマ各県で支援している学校では、過去2年間に攻撃や軍事的使用が51例発生。
また、3月にはシリア北部の学校がミサイル攻撃を受け子供5人と教師3人が死亡し56人が負傷した。
また、国内の学校1000校が仮設基地や戦闘準備拠点、拷問・拘束施設として使われたという。
NGO「ワールド・ビジョン」のマーク・スミス上級部長は、5年目に入っている内戦が「シリアの子どもたちの1世代全体に影響を与えつつある」と事態の深刻さを強調。学校や病院に対する攻撃、父母らとの死別や生活のため労働を強いられることなどが常態化しつつあり「子どもが子どもでいられなくなっている」と指摘した。
シリアでは約400万人が国外で難民に、800万人近くが国内で避難民になっており、国民の過半数が家を追われている。このうちほぼ半数は18歳未満の子供とみられている。【10月9日 毎日】
*********************
【マララさん「私たちの将来に投資すると約束してください」】
ノーベル平和賞受賞者、マララ・ユスフザイさんは、「無人機ではテロの思想を殺すことはできません。そうした考えをやめさせ、子供たちに銃を取らせたくないのであれば、本を与えなければなりません」と語り、各国が軍事よりも教育や医療に振り向けることこそがテロや過激思想に対抗する最善の道だと訴えています。【9月25日 朝日より】
****<マララさん>「教育は平和、私たちの将来に投資を」国連で****
◇総会で演説 加盟国と同じ若者193人がランタン持ち
教育は希望、教育は平和です−−。女子教育の普及に取り組む昨年のノーベル平和賞受賞者、マララ・ユスフザイさん(18)が25日、国連総会で演説した。来年からの開発目標「持続可能な開発のための2030アジェンダ」採択のため集まった世界の指導者に「私たちの将来に投資すると約束してください」と訴えた。
マララさんは4階バルコニー席から演説し、国連加盟国数と同じ193人の若者がランタンを持ち、周囲に集まった。マララさんは、多くの子供がテロの犠牲や難民となっている現状を指摘。「教育は特権でない。権利だ」と主張し、子供が教育を受ける環境作りの重要性を説いた。
演説後の記者会見で、マララさんは「教育を通して健康を増進し、飢餓と闘い、貧困を減らし、社会に平等をもたらすことができる」と述べ、子供への教育の促進こそが、あらゆる開発目標の実現につながると強調した。【9月26日 毎日】
*********************
マララさんの故郷パキスタンからは、災害によって崩壊した教育現場がその後もなかなか復興しない事例も報告されています。
****<パキスタン地震10年>学校再建まだ半分 屋外で勉強も****
7万人以上が死亡したパキスタン地震の発生から10年が過ぎた。
政府や国際社会は復興に向け支援を続けてきたが、国内で頻発するテロなどのため復興はまだ道半ばだ。特に学校教育は深刻で、政府の地震再建復興庁によると、被災した学校5808校のうち再建されたのは半分にとどまる。
復興庁トップのアブバクル・アミン・バジュワ暫定副長官も「教育の再生が最優先課題だ」と強調する。
大規模な被害が発生した北西部バラコットを訪ねると、今もなお子供たちは薄暗い手作りの仮設校舎や屋外で勉強していた。
地震は2005年10月8日朝、インドに近いパキスタン北東部で発生し、規模を示すマグニチュードは7.6だった。復興庁によるとパキスタンだけで7万3338人が死亡、12万8304人が重傷を負った。
バラコット中心部から約5キロ。山道を登っていくと、トタンで造った粗末な建物から子供が教科書を朗読する声が聞こえてきた。「地震後、自力で建てた。10年たっても新校舎はない」。集落唯一の学校で校長を務めるスレイマン・ミヤさん(54)が嘆いた。
地震で2階建ての校舎は倒壊。生徒約300人のうち約30人が死亡した。1年後、教師らがトタンなどの資材を集めて仮校舎を建て、授業を再開した。
だが、電気はなくすきま風もひどい。特に、夏は暑く屋外で授業するしかない。政府からの補助はない。生徒数は地震前の約半分に減った。小学6年のムハンマド・ザイード君(11)は「早くちゃんとした学校で勉強したい」と話した。
パキスタンは昨年、女子教育の必要性を訴えるマララ・ユスフザイさん(18)がノーベル平和賞を受賞し、教育の現状に注目が集まった。
国連の統計によるとパキスタン全体の識字率(15〜24歳)はこの10年で約10ポイント上昇し、15年の推定値は75.59%。
だが、国内各地で頻発するテロなどのために被災地の学校再建にまで手が回っていないのが実情だ。復興庁のバジュワ暫定副長官は「アクセスの悪さや治安の悪化で復興が遅れている」と語った。【10月9日 毎日】
*********************
【約1億6,800万人もの子ども達が、児童労働に従事】
紛争国以外でも、「強制労働」という形で児童の教育機会が奪われているケースもあります。
****子ども含む北朝鮮の「強制労働」を批判 欧州団体が報告書****
子どもを含む北朝鮮住民が国家から「強制労働」を強いられており、これを中断させるため国際社会が北朝鮮に働きかけなければならないという指摘が出た。
欧州北朝鮮人権協会(EAHRNK)は2日、北朝鮮の強制労働の実態に関する報告書で「子どもや成人、収容所の収監者、海外派遣労働者など、大部分の北朝鮮住民が強制労働を強いられている」と主張した。
報告書は北朝鮮脱出住民(脱北者)のインタビューを通じ「北朝鮮は法律で労働者の権利を保障しているが、実際にはほとんど守られておらず、北朝鮮で起きている強制労働は国際法に違反する」と強く批判した。
特に、児童・生徒の場合、夏休みや冬休みはもちろん、正規の授業時間にも田植えや鉄道補修、まき拾いなどの肉体労働に組織的に動員されていると指摘した。
子どもたちは金銭的な報酬を受けられないばかりか、割り当てられた仕事をこなすことができなかったという理由で体罰を受けることもあるという。
EAHRNKは「こうした強制労働は子どもたちの成長と教育の機会を妨げ身体的な傷をもたらすほか、精神的な健康も害する」と主張。
また、「成人も職業選択の自由を奪われ、国家が強制的に割り当てる仕事に就き、国によるプロパガンダや監視、洗脳など精神的虐待が日常的に起こる作業環境で働き、報酬もきちんと受けていない」と伝えた。
報告書はこうした北朝鮮の強制労働の実態を改善するためには、国際社会が北朝鮮に圧力をかけなければならないと強調した。【10月2日 聯合ニュース】
*******************
「強制労働」ではなくても、貧困などから労働に従事せざるを得ない「児童労働」が世界各地で見られること、そうした労働によって私たち先進国消費者が享受する多くの商品が生産されていることは周知のところです。
****あなたは、世界で約1億6,800万人もの子ども達が、児童労働に従事していることをご存じですか?****
■子どもの心身の発達や社会性や教育面での発達を阻害するような有害な児童労働に従事している子どもの数は、世界で1億6,800万人におよびます。
■開発途上国では、5歳~14歳の子どものおよそ13%が児童労働に苦しんでいます。
■児童労働に従事する子どもの数が非常に多いとされる南アジア地域のパキスタンでは、学校に通っていない子ども(7歳~14歳)の88%が働いていると報告されています。またインドやバングラデシュでも、その割合は40%以上と見積もられています。 【ユニセフHP】
**********************
【日本で増加する児童虐待】
こうした世界各地の「児童」の現状に比較すると、日本の状況は格段に恵まれています。
ただ、まったく問題がない訳ではなく、「児童虐待」が増え続けている現状があります。実態として増えているのか、表面化することが増えているのかはわかりませんが。
****児童虐待で死亡、13年度69人 妊娠期から支援、急務***
2013年度に児童虐待による死亡が確認された子どもは69人で、無理心中以外の36人のうち0歳児が4割強を占めた。加害者の4割強が実母で、望まない妊娠だったケースも多く、妊娠期からの支援の重要性が浮き彫りになった。厚生労働省が8日、公表した。(中略)
全国の児童相談所(児相)が14年度に対応した児童虐待件数の速報値は8万8931件で、24年連続で過去最多を更新した。
前年度からの増加幅は2割。虐待された子だけでなく、目撃したきょうだいも心理的虐待として13年夏から対象に加えたことも背景にある。
一方、虐待対応にあたる専門職の児童福祉司の数は昨年4月時点で2829人。15年間で2・3倍に増えたが、同時期の虐待件数は7・6倍で、急激な増加に人材確保が間に合っていない。【10月9日 朝日】
********************