孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

温暖化対策 COP21に向けて噴出する議論 京都議定書に代る新たな枠組み合意は可能か?

2015-10-22 23:48:18 | 環境

(米航空宇宙局(NASA)の科学者チームの発表によれば、今後100~200年間で100センチ以上の海面上昇が起きるのは避けられないとのこと。また、グリーンランドた南極の氷床が急速に崩壊すると、100~200年間で最大3メートルの海面上昇が起こり得る・・・とも 【8月27日 AFP】 氷床は気温上昇でジワジワ解けるのではなく、あるとき巨大な塊が崩落するとのこで、その時海面も一気に上昇するのでしょう。)

米中の削減目標提示で、合意に向けて“弾み”も
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地球温暖化対策を巡っては先進国だけに温室効果ガスの削減を義務づけた「京都議定書」に代わり、すべての国が参加する2020年以降の新たな枠組みについて、来月30日からパリで開かれる国連の会議、COP21での合意を目指しています。

この会議を前に190余りの国が実務者レベルで交渉を行う最後の作業部会が日本時間の19日、ドイツのボンで始まりました。【10月20日 NHK】
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これまで温暖化に対する自国の対策については、途上国が削減義務を負わないことから京都議定書から離脱したアメリカ、先進国に削減義務を負わせることで自国の経済成長への影響を避けてきた中国、この両国が昨年11月に削減目標を公表、温暖化対策は9月25日の米中首脳会談でも両国が合意できた数少ない成果ともなっています。

レガシーづくり励むアメリカ・オバマ政権は、巨大ハリケーンや今も続く西部の大干ばつなど、度重なる自然災害によって気候変動問題へ真剣に取り組む必要を感じ始めているようにも見えます。
中国は、この問題でイニシアティブを取ることで、国際的な影響力をたかめようという思惑もあるようです。

*****<米中首脳会談>習氏、温暖化対策は前向き****
中国の習近平国家主席は25日、米中首脳会談に合わせ、途上国への資金支援など新たな地球温暖化対策を表明した。

世界最大の温室効果ガス排出国で、対策に後ろ向きだった中国の方針転換をオバマ米大統領は歓迎。
11月末からパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での新たな温暖化対策の国際枠組み合意に向け、弾みがつきそうだ。

中国は、温暖化対策を進める途上国に対し200億元(約3800億円)の支援を表明した。これまで「温暖化の責任は先進国にある」などを理由に「途上国」として振る舞っていた中国が支援する側に回ることは、温暖化対策の責任をある程度認めたと言える。

COP21では2020年以降に途上国も含めたすべての国が参加する新枠組み合意を目指している。しかし、交渉は難航しており、先進国から途上国への資金支援が合意のカギを握っている。

また、中国はこれまで地方レベルで試験的に実施していた温室効果ガス排出量取引制度を17年に中国全土に拡大する方針を表明した。昨年11月に示した「30年ごろをピークに二酸化炭素(CO2)排出を減少させる」という目標達成に向けた初めての具体策だ。主要産業を対象に排出量の上限を定め、達成できない場合は、別の企業などが削減した分を購入して目標達成する仕組み。

米中は昨年11月にそろって削減目標を表明。米国は、国内の火力発電所から排出されるCO2を大幅に削減する規制案をまとめ、中国にも対策を働きかけてきた。

温暖化対策の新枠組み合意を政権のレガシー(遺産)と位置づけるオバマ大統領と、国際的な影響力を拡大したい習氏の思惑が一致しており、COP21で合意を主導する狙いがあるとの見方もある。

一方、日本は、削減目標の国連への提出が7月にずれ込み、国の地球温暖化対策計画の策定も遅れている。

中国の環境政策に詳しい明日香寿川(あすか・じゅせん)・東北大教授(環境政策学)は「評価できる内容だ。途上国への資金支援は途上国と先進国の対立解消に役立つ。排出量取引導入は日本の先を行っている」と話す。【9月26日 毎日】
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各国の目標提出期限とされていた10月1日、世界第3位の排出国ながら、これまで削減目標を国際的に公約してこなかったインドが、温室効果ガスの排出量について、2030年に国内総生産(GDP)当たり05年比で33〜35%削減する目標を国連に提出したことで、各国の目標が出そろいました。

*****主要国の温室効果ガス削減目標*****
 中国 2030年にGDP当たり05年比60〜65%減(遅くとも30年を排出のピークとする)
 米国 25年に05年比26〜28%減
 欧州連合 30年に1990年比40%以上減
 インド 30年にGDP当たり05年比33〜35%減
 ロシア 30年に90年比25〜30%減
 日本 30年に13年比26%減
 韓国 30年に対策を取らなかった場合に比べ37%減
 カナダ 30年に05年比30%減
 ブラジル 30年に05年比43%減
 メキシコ 30年に対策を取らなかった場合に比べ25%減
 インドネシア 30年に対策を取らなかった場合に比べ29%減
 豪州 30年に05年比26〜28%減
 南アフリカ 遅くとも25年を排出のピークとする【10月2日 毎日】
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ぶり返す「先進国」「途上国」の問題
米中の合意で“新たな温暖化対策の国際枠組み合意に向け、弾みがつきそうだ”とのことではありますが、実際ふたを開けてみると、従来からの先進国対途上国の対立もあらわになって、簡単ではなさそうです。

****温暖化対策作業部会 合意草案に反発相次ぐ****
・・・・議長が作成した合意文書の草案について、発展途上国グループの代表の南アフリカが「途上国の利益を損なうもので著しくバランスを欠いている」として修正を求める意見を表明しました。

政府関係者などによりますと、このあとの会合でも途上国からは草案について、自然災害による被害の補償や被害対策などで先進国による資金支援が明確でないことや、排出削減を進めるべき先進国の責任が途上国と明確に区別されていないことなどについて反発が相次いだということです。

これを受けて議長が2日目までに途上国側の意見を盛り込んで、新たに草案を作り直すことになり、合意に向けた交渉は今後も難航が予想されます。(後略)【10月20日 NHK】
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議長が作成した合意文書の当初草案では、「先進国」「途上国」との記述はなく、全ての国が「それぞれ国情にあわせて」対策を進めるとしていました。
これに先進国の責任を問う途上国が反発し、合意案に「先進国」「途上国」の表現が復活しました。

****温暖化責任、問う声再び 対策議論、国連作業部会 「先進」「途上」の二分表現復活****
新たな温暖化対策の国際枠組みを議論する国連の作業部会で、各国の対策に「差」を設ける議論が焦点になっている。

次期枠組みには全ての国が参加し、温室効果ガス削減や経済力が弱い国への支援に取り組むが、いまの温暖化を招いた先進国や、現在の排出量が多い新興国の責任を問う声が高まっている。
議論の行方によっては、日本を含む先進国により多くの負担が求められる可能性もある。
 
「これはバランスを欠く。条約の原則を書き換えるものだ」。19日にドイツ・ボンで始まった作業部会の冒頭、途上国を代表して南アフリカが切り出した。

批判したのは、共同議長がまとめた次期枠組みの骨格となる合意案。「先進国」「途上国」との記述はなく、全ての国が「それぞれ国情にあわせて」対策を進めるとしている。反発を受け、合意案に先進国、途上国の表現が復活した。

京都議定書では「共通だが差異ある責任」という原則に基づき、先進国のみに削減を義務づけ、途上国を支援する枠組みにした。

しかし、いまや世界の排出量の6割を途上国が占める。中国やインドなどの新興国は排出量が急増し、経済力もつけてきた。日本や米国は「差異ある責任」は認めつつも、「旧来型の二分論はのめない」と主張。新興国は削減だけでなく、資金支援でも応分の負担をするよう求める。

途上国も一枚岩ではなくなってきている。温暖化の被害を受けやすい南太平洋の島国は、新興国に対しても削減を求める。

中南米諸国は「途上国も応分の負担を」と、自らも削減や資金支援を打ち出し、合意をまとめようとしている。中国は、独自に約3800億円の支援を表明して途上国の支持を得ようとしている。(後略)【10月22日 朝日】
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南太平洋の島国は、“気候変動による海面上昇などで直接的な影響を受ける途上国の間で焦燥感が高まっている。これらの国々は先進国に加え途上国も積極的な温室効果ガス排出量削減に取り組むべきだと声高に主張。気候変動の原因を作ってきた先進国の責任追及を重視する従来の途上国の立場とは一線を画している。”【10月21日 産経】との立場です。

中南米諸国については、“氷河消失による洪水や水不足などに直面する南米のペルーやチリ、コロンビアなども「全ての国が法的拘束力を受け入れるべきだ」との声をあげる。”【同上】とのこと。

アメリカ、中国、インドに関しては
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ただし途上国と位置づけられてきた中国は6月末に国連に提出した文書で「パリでの合意は法的拘束力を持つことになる」としながらも、先進国と途上国の責任に差をつけるよう強調。インドも先進国を追及する姿勢を崩していない。

また米国ではオバマ大統領が気候変動問題に積極的だが、排出量削減は経済活動の足かせになると懸念する共和党主導の議会が障害になることは確実だ。コーカー上院外交委員長は「法的拘束力がある合意は条約とみなされ、上院での批准が必要になる」として、オバマ政権を牽制している。【同上】
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東日本大震災後に原発が停止し、今後の原発利用を含めたエネルギー政策に関する国民的合意が明確でない日本は目標作成に苦慮し、従来「05年度比」としてきた基準年を「13年度比」に置き換えることで見かけ上の削減率を上積みする対応も。

ただ、“京都議定書の基準年の90年比にすると、日本の目標は約18%減にとどまり、温暖化の被害を受けやすい島しょ国などから上積みを求める声が出そうだ。”【4月30日 毎日】との指摘もあります。

従来から繰り返されている「先進国」「途上国」の議論について言えば、現在の危機を招いた先進国が大きな責任を負っており、もし全ての国が参加する対策が途上国の成長を妨げるというのであれば、厳しい規制によって先進国の豊かさを犠牲にしてでも、結果的にゆるい規制の途上国に所得・富を移転してでも、地球全体の利益を考える・・・というのが正論でしょう。

もちろん、「自分の収入が減るとき、職が失われるとき、そんなことが言えるのか?」という話にもなりますし、現実問題として先進国の経済が停滞・後退すれば、一番しわ寄せが行くのが途上国でもあります。

ただ個人的には、目先の自分の利益を追求することに終始した議論というのも、つまらない話のように思えます。バランスの問題でしょうが。
欧州の先進国に押し寄せる難民の問題も似たような話でしょう。

【「2度目標」では不十分との指摘も
COP21など現在の温暖化対策は、「地球の温暖化を産業革命前と比べて2度以下に抑える」ということを基本に構築されており、その対策がまとまらず、すったもんだしています。

しかし、そもそも「2度目標」が達成できても安全は保証されない、これまでの予想よりずっと危険な事態が起こる・・・という話もあるようです。

*****温暖化がもたらす想定外の未来*****
・・・そして今、気候変動研究の第一人者であるジェームズ・ハンセンが、「2度目標」に大きな疑問を投げ掛けた。

温室効果ガスの排出量を現在の目標よりも速いペースで削減しなければ、今世紀末までに海面上昇は数メートルに達する恐れがある。そうなれば現在の子供たちが生きている問に、東京、上海、香港、ニューヨーク、ロンドンなどの沿岸都市は人が住めなくなる。政治家やメディアは、2度目標を安全なガードレールのように考えているが、2度の温暖化でも非常に危険だ・・・・。(中略)

ハンセンは88年、米上院の公聴会で地球温暖化の危険性について証言。誰よりも早く気候変動の脅威を「予言」
した人物と考えられており、今回の論文にも大きな注目が集まっている。(後略)【8月25日号 Newsweek日本版】
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ハンセン氏らは、地球上の氷床が解けて、予想よりもずっと早いペースで海面が上昇していると主張しています。
まあ、そうなのかもしれませんし、違うかもしれません。

ただ、今の「2度目標」を前提にした対策もままならないのに、それでもダメだと言われても・・・困ります。
被害が現実のものとならない限り、こうした問題には本腰がはいらないのが現実です。
そして、その時にはすでに手遅れのことも多々あるのでしょう。
私はかまいませんが、若い人たちは大変です。

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