
【10月27日 ANN】震源に近いタジキスタンについては情報がありません。

(地震発生後に校舎を出ようとして女子生徒たちが折り重なり倒れ、12人が圧死、25人が負傷。校舎の外に残されていた女子生徒たちの靴(26日、アフガニスタン・タクハル州) 【10月27日 BBC】)
【被害はアフガニスタン・パキスタン両国に 更に増加が懸念される犠牲者】
アフガニスタン北部で26日午後1時半(日本時間同6時)ごろ発生した地震(マグニチュード7.5)の地震が発生した被害が拡大しています。
未だ被害の全容が把握されていない状況ですが、現段階では、アフガニスタンと隣国パキスタン合わせて382人(内訳はアフガンが115人、パキスタンが267人)【10月28日 読売】と報じられています。
今回の地震は、震源の深さが約210キロと非常に深かったため被災の範囲が広いのが特徴で、パキスタンとアフガニスタンの国土の北側のほぼ3分の1から半分の地域に及ぶとも。【10月28日 朝日より】
ただ、震源が深いため、地表の揺れは同規模地震に比べれば小さかったとも思われます。
****アフガニスタン、パキスタンでM7.5の地震 数百人死亡****
・・・・USGS(米地質調査所)は当初、地震の規模をM.7.7と発表した後、M7.5に下方修正したが、それでも強い揺れだったことに変わりはない。世界全体でM7.0を超える規模の地震は年間平均20回くらいしか発生しない。
しかし今回の場合、震源が深かった。今年4月にネパール東部に甚大な被害をもたらしたM7.8の地震は深さ8キロだったが、それに比べて今回の揺れはかなり深い(ネパールでは4月の本震の後には5月初めにM7.3の余震が起きている)。
同様に、2005年のカシミールでの大地震はM7.6で深さはわずか26キロだった。今回の揺れは深さ200キロ以上で、揺れの範囲は広かったが、地表の揺れそのものはほかの地震ほどではなかったようだ。(後略)【10月27日 BBC】
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パキスタンに比べアフガニスタンの数字が比較的少ないのは、山間部であることや、政府支配が十分に及んでいないタリバン支配地域もあることなどから、被害の実態が把握されていないことによるもので、今後、数字は増加するのではないかと懸念されます。
また、そうした地域であるがために救助活動も難航しています。
****山間部の救助難航=死者320人、さらに増加か―アフガン地震****
26日に発生したアフガニスタン北東部を震源とする地震で、アフガン、パキスタン両政府は27日、被害の大きかった地域に救助・支援チームを派遣した。
ただ、震源に近い山間部では通信や交通が遮断されており、被害の全容は明らかになっていない。両国で確認された死者は323人、負傷者は1800人を超え、今後さらに増加するとみられる。
少なくとも229人が死亡したパキスタンでは、救助・医療チームをアフガンとの国境近くの山間部に派遣。空軍輸送機やヘリコプターで被災者支援のための食料品やテント、毛布などを空輸した。
北西部ペシャワルの自治体幹部は「市内では多くの民家や建物が倒壊した。いまだ多数ががれきの下敷きになっており、住民が協力して救出作業に当たっている」と語った。地元メディアによると、山間部では少なくとも45カ所で土砂崩れが発生し、道路をふさいでいるという。
アフガンで確認された死者はいまだ94人にとどまっている。ガニ大統領は災害対策機関に被害実態の把握を急ぐよう指示。しかし、道路などのインフラが未整備の北部地域では、反政府勢力タリバンの支配が強い。救助活動は難航している。
タリバン指導部は27日、「ムジャヒディン(イスラム戦士)に被災者を支援し、慈善団体の活動を手助けするよう指示した」と声明を出した。しかし、現指導部に反発する武装勢力も多く、国際機関や外国のNGOが被災地で救助活動を行うのは難しいとみられる。【10月27日 時事】
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【タリバン:「救助活動を妨害しないよう指示」とは言うものの・・・】
上記記事にあるように、タリバンは国際支援団体に対し、被災者の救助をためらわないよう求めるとともに、戦闘員に対して救助活動を妨害しないよう指示しています。
****タリバン、アフガン地震の国際救助活動を妨害しないと表明****
アフガニスタン北部で26日に発生したマグニチュード(M)7.5の地震による死者数が増加するなか、同国の反政府武装勢力タリバンは27日、国際支援団体に対し、被災者の救助をためらわないよう求めるとともに、戦闘員に対して救助活動を妨害しないよう指示した。
同国では、不安定な治安情勢が救助活動の最大の障害となっており、これまでに何度も支援団体が武装組織の標的となっている。
こうしたなかタリバンは、国際支援団体による救助活動を妨害しないと表明し、戦闘員に対しても被災者を支援するよう命じた。
当局によると、これまでに確認された死者数は、パキスタンで228人、アフガニスタンで少なくとも115人。4000戸以上の家屋が被害を受けたという。
今後、遠隔地との交通や通信手段が復旧するに伴い、死者数はさらに増加すると予想されている。
首都カブールでは、北大西洋条約機構(NATO)がアフガン治安部隊との協力を進めているが、危険を考慮し、依然として被災地域までの交通手段などについて調査している段階だという。【10月28日 ロイター】
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最高指導者オマル師の死亡発表を受けてタリバンの新指導者となったマンスール師は、和平交渉にも前向きだったということで、そうした比較的穏健な姿勢のあらわれでしょうか。
これを契機にタリバンとアフガニスタン政府の間の何らかのコンタクトがあれば、不幸な災害にあって救いともなるのですが、そこまで望むのは無理でしょうか。
もっとも、マンスール師はタリバン内における支配を“一応”確保した形にはなっていますが、先述のような和平交渉に対する姿勢などへの反発から批判勢力も存在すると見られ、どこまで統制が及んでいるのかわかりません。
被害があった地域でタリバンが行政庁舎や警察署を占拠したといったことも報じられています。
こうした行動がマンスール師指導でなされているのか、反指導部勢力なのか・・・わかりません。
いずれにせよ、救助活動には大きな障害となります。
***アフガン地震の被災地、タリバンが行政庁舎占拠****
アフガニスタン北部のタハール州ダルカド郡で28日、旧支配勢力タリバンが行政庁舎や警察署を占拠した。
同州は26日に起きた大地震の被災地で、救援活動への影響が懸念される。
地元当局者によると、タリバンは28日未明に攻撃を始め、政府側の治安部隊少なくとも6人が死亡した。
タハール州など同国北部では最近、タリバンが支配地域を広げている。
タリバンは27日の声明で、「慈善団体は救援物資の配布を自粛しないよう求める」と述べ、被災地支援に協力する姿勢を示していた。(後略)【10月28日 読売】
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【パキスタン政府「われわれは、この状況に十分に対処できる」】
被災地がイスラム武装組織との戦闘状態にあるのはパキスタン側も同様です。
****紛争地、各所に検問所****
今回の地震のもう一つの特徴は、被災地が紛争地と重なっていることだ。
塀の上から転落し、頭骨を骨折したアブドラさん(18)はアフガンとの国境沿いに広がる部族地域内のモーマンド地区から運ばれてきた。アフガン側に潜む反政府勢力「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」とパキスタン軍の間で国境を挟んだ砲撃や銃撃が続いている場所だ。
付き添いの親族の男性は「病院までの道中、軍の検問所が10カ所ほどあり、5時間かかった」と話す。
部族地域の南端にある南ワジリスタン地区では27日も、アフガン側に潜むTTPとみられる武装勢力とパキスタンの治安部隊が国境越しに交戦し、軍当局によると兵士7人が死亡した。【10月28日 朝日】
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パキスタンでは、政府・軍も国際支援団体の現地立ち入りを拒否しています。
****【アフガン地震】死者約370人に 国際救援拒否で被害が拡大 NGO「官僚主義が支援の妨げ」****
アフガニスタン北部で26日に起きた地震で、死者数は27日、アフガン、パキスタン、インドの3カ国で370人を超えた。米国やインド、国連はアフガンとパキスタンに支援の用意があると表明したが、パキスタンは受け入れない意向を示しており、支援の遅れが被害を拡大させかねない懸念が生じている。
各国メディアの報道によれば、死者はアフガンで115人、パキスタンで260人、インドで1人。
インドのモディ首相は26日、パキスタンのシャリフ首相に弔意と支援の用意を伝えた。米政府は「支援の準備はできている」とし、国連人道問題調整室(OCHA)も「パキスタン政府が進めている救援の努力を支える用意がある」との声明を発表した。
しかし、パキスタンのラシード情報放送・国家遺産相は記者会見で、「われわれは、この状況に十分に対処できる」と述べ、当面は国際社会に支援を求めないことを明らかにした。
パキスタンが支援受け入れに慎重なのは、軍情報機関が外国の政府機関や民間団体の活動に神経をとがらせ、特に、国際団体などの支援活動が諜報活動の隠れみのになっているとの疑念を抱いているためだ。
パキスタンは今年6月、イスラマバード近郊に潜伏していた国際テロ組織アルカーイダのウサマ・ビンラーディン最高指導者が2011年に米軍部隊の急襲で殺害されたことに関し、ビンラーディン潜伏の情報収集に関与したとの疑いをかけ国際非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン」の事務所を閉鎖したこともある。
しかし、セーブ・ザ・チルドレンはこれを否定、事務所は間もなく再開され、カーン内相は地元紙に、このNGOが事件に関与した証拠はないと述べている。
イスラマバードの国際NGOの幹部は産経新聞に「政府の対応はとても遅く、官僚主義が支援の妨げになっている。支援に空白ができれば住民への福祉を口実に活動するイスラム過激派に付け入る隙を与える」と訴えた。【10月28日 産経】
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パキスタンでは10年前にも7万人以上が死亡した大地震があり、その復興が未だ進んでいません。
そうしたことも考えると、「われわれは、この状況に十分に対処できる」というパキスタン当局の言葉はとても額面どおり受け取ることはできません。
****<パキスタン地震10年>学校再建まだ半分 屋外で勉強も****
7万人以上が死亡したパキスタン地震の発生から10年が過ぎた。
政府や国際社会は復興に向け支援を続けてきたが、国内で頻発するテロなどのため復興はまだ道半ばだ。特に学校教育は深刻で、政府の地震再建復興庁によると、被災した学校5808校のうち再建されたのは半分にとどまる。
復興庁トップのアブバクル・アミン・バジュワ暫定副長官も「教育の再生が最優先課題だ」と強調する。大規模な被害が発生した北西部バラコットを訪ねると、今もなお子供たちは薄暗い手作りの仮設校舎や屋外で勉強していた。
地震は2005年10月8日朝、インドに近いパキスタン北東部で発生し、規模を示すマグニチュードは7.6だった。復興庁によるとパキスタンだけで7万3338人が死亡、12万8304人が重傷を負った。(中略)
パキスタンは昨年、女子教育の必要性を訴えるマララ・ユスフザイさん(18)がノーベル平和賞を受賞し、教育の現状に注目が集まった。
国連の統計によるとパキスタン全体の識字率(15〜24歳)はこの10年で約10ポイント上昇し、15年の推定値は75.59%。
だが、国内各地で頻発するテロなどのために被災地の学校再建にまで手が回っていないのが実情だ。復興庁のバジュワ暫定副長官は「アクセスの悪さや治安の悪化で復興が遅れている」と語った。【10月9日 毎日】
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災害被災者の人命救助より、閉鎖的な政府・軍の思惑・都合が優先されるというのはパキスタンに限った話ではありませんが、その国の人命・市民生活をないがしろにした姿勢を反映したものとも言えます。