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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア・プーチン大統領  極右・ポピュリストからの賞賛 最近の英米の「殺人・汚職」批判

2016-01-29 21:44:57 | ロシア

(病院で治療を受けるリトビネンコ氏 イギリス内務省の公開調査委員会は同氏暗殺をプーチン大統領が「おそらく」承認していたとする調査結果を発表 【1月22日 BBC】)

【「彼は国を動かしており、この国で私たちが擁している人物とは違い、少なくとも彼は指導者だ」】
良く言えば、迅速・果敢に行動する「強い指導者」、悪く言えば、国際的には力で現状を変更し、国内的には人権を無視し、強権的な支配を続ける・・・といったイメージが強いロシア・プーチン大統領ですが、欧州で台頭する極右政治家・政党と折り合いがいいことは以前から言われているところです。

****プーチン大統領の“新しい”友達*****
・・・・ロシアのプーチン大統領は欧州の極右政党指導者を招いたり、その政党に資金など提供し、間接的な形で支援していることが明らかになった。

プーチン氏から最初に声をかけられたのはフランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペン党首だ。ロシア系銀行(FCRB)を通じてかなりの額の資金が同党に流れたといわれる。もちろん、同党はその報道を否定しているが、かなり信頼性があるニュースだ。

フランスのル・ペン氏だけではない。オーストリアの第3政党、野党第1党自由党もここにきてモスクワに党使節団を派遣するなど、モスクワとウィーン間で人的交流を活発化している。オーストリアは元々ロシアとの関係は悪くはなかったが、野党政治家がモスクワ詣でする、ということはこれまでなかった。その背後に、友達を求めるプーチン氏の必死さが感じられるのだ。

オーストリア日刊紙プレッセによると、ロシアに接近中の西側極右政党としては、国民戦線、自由党のほか、ドイツ国家民主党(NPD)、ブルガリアのアタカ国民連合(Ataka)、ハンガリーのヨビックなどの名前が挙げられている。

ハンガリーの場合、与党フィデスのオルバン首相自身がEUのブリュッセルではなく、モスクワに目を向けているといわれるほど、プーチン・ファンで知られている。曰く、欧米諸国を相手に決して媚ないプーチン氏の一貫性のある政策を支持するというのだ。

それではプーチン氏の狙いはどこにあるのだろうか。ズバリ、対ロシア制裁を米国と組んで実施する西側諸国の分断だ。すなわち、西側諸国内に親ロシアの指導者を多く抱えることで、EUの結束を崩し、ひいては対ロシア制裁の弱体化を図るというものだ。

一方、プーチン氏の新しい友達となった西側の極右政党の目的は何か。落ちぶれたといえ、依然軍事大国のロシアとの繋がりを構築することは野党政党としては拍がつく、というものだ。

それだけではない。プーチン氏の伝統的、民族主義的世界観に惹かれている気配が見られる。例えば、同性愛者問題では「それは違う」と堂々と発言する政治家は西側では極右政党以外にないが、プーチン氏は同性愛者問題で終始、反対し、「夫婦は男女の結婚によって成り立つ」と自信をもって発言する。だから、西側の極右政党はプーチン氏に共感を覚えるわけだ。(後略)【2014年11月30日 ウィーン発 『コンフィデンシャル』】
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最近では、アメリカ大統領選挙で共和党候補としてトップを走るトランプ氏との「相思相愛」が話題になりました。

****今度はトランプ氏がプーチン大統領を称賛****
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、2016年米大統領選、共和党指名争いの候補の一人、ドナルド・トランプ氏を「才能ある」「傑出した」人物だと称賛した翌日の18日、今度はトランプ氏がプーチン大統領を「力強く、人気がある」と称賛した。

トランプ氏は米ニュース専門局MSNBCの番組で「彼は力強い指導者であり、パワフルな指導者だと思う。彼は彼の国を象徴している」とプーチン大統領を評した。

トランプ氏は「世間から優秀だと言われることはいつだっていいことだ。それがロシアを率いる人物であればなおさらだ」と述べた。

番組司会者の一人が、プーチン氏は「ジャーナリストや政敵を殺害し、他国に侵攻している」とコメントすると、トランプ氏はこれをはねつけ、「彼は国を動かしており、この国で私たちが擁している人物とは違い、少なくとも彼は指導者だ。わが国でも人はたくさん殺していると思う。世界でも今、愚行は横行している。多くの殺害が行われている」と述べた。

トランプ氏は、ジャーナリストや政敵の殺害について非難するかどうかは、3度質問されてようやく、「ああ、もちろん(非難はする)」と主張を改めた。【2015年12月19日 AFP】
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“英字紙モスクワ・タイムズは、プーチン、トランプ両氏に多くの共通点があると指摘する。差別や人権に配慮した「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」を無視した放言。愛国主義をあおる論調。政治経験が乏しく突然表舞台に現れたところ。実利優先の政治姿勢。なるほど、似たもの同士に見えてきた。”【2015年12月23日 朝日】とも。

【「リトビネンコ氏殺害作戦をプーチン大統領がおそらく承認した」】
最近のプーチン大統領は、欧米の経済制裁と長引く原油価格低迷で苦しくなったロシア経済を支えるべく、また、一時は排除された感もあった国際社会での存在感を強めるべく、欧米との協調姿勢を強める方向にある・・・・といった話は、1月21日ブログ「ロシア 経済制裁と原油価格低迷で市民生活・国家財政に暗雲」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160121でも取り上げたところです。

“プーチン政権も事態の深刻さを認識し、ウクライナ東部紛争をめぐる“和解””志向し始めた。今月にはプーチン大統領に近い新たな協議担当者がウクライナ側と接触し、再停戦や捕虜交換に合意。ウクライナ問題担当のスルコフ露大統領補佐官とヌランド米国務次官補も長時間会談を行った。欧米側にも、シリア問題でロシアの協力を取り付けたい事情がある。”【1月22日 産経】

ただ、ここにきて英米では、上記ブログに追記したリトビネンコ元中佐殺害に関する調査報告など、プーチン大統領を標的にした感もある対応が目立っています。

****ロシア元スパイ毒殺、プーチン大統領が「おそらく承認」 英調査****
ソ連国家保安委員会(KGB)の元情報員だったアレクサンドル・リトビネンコ氏が英ロンドンで放射性物質を使って毒殺された事件をめぐる英国の公式調査で、調査委員会は21日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が毒殺を承認した可能性が高いとする結論を下した。

ロバート・オーウェン判事は、300ページに上る報告書で「ロシア連邦保安局(FSB)によるリトビネンコ氏殺害作戦は、(元FSB長官の)ニコライ・パトルシェフ氏とプーチン大統領がおそらく承認した」と結論付けた。

パトルシェフ氏は、KGBの後継機関であるFSBの元長官で、2008年以降はロシアの安全保障問題の最高政策立案機関である安全保障会議の書記を務めている。

リトビネンコ氏は2006年、ロンドンのホテルで「ポロニウム210」を緑茶に入れられて毒殺された。ポロニウム210は極めて高価な放射性同位体で、外部から隔離された原子力関連施設でしか入手することができない。【1月21日 AFP】
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ロシア政府に対し批判的な態度を示していたリトビネンコ氏は、2006年ロンドンのホテルで放射線物質「ポロニウム210」を緑茶に入れられて毒殺されたと見られています。

イギリス政府が同事件に関する調査を行うと発表したのは2014年、ウクライナ東部でマレーシア航空機がロシア製ミサイルにより撃墜された数日後のことで、ロシアに対する制裁と受け止める見方もありました。調査が実際に始まったのは、昨年1月とのことです。【1月22日 AFPより】

英外務省は、「ロシア政府が国家として関与した可能性のある毒殺は、国際法に違反して英国民に不安を与え、2国間関係を複雑化させる。ロシアは容疑者の身柄を引き渡すべきだ」との声明を発表しています。

もっとも、2007年時点ですでにイギリスがロシアに引き渡し要求している、主犯とされる旧ソ連国家保安委員会(KGB) の元職員アンドレイ・ルゴボイ氏は、2007年12月2日に行われたロシア下院議員選挙に極右政党・ロシア自由民主党の候補者として立候補して当選している「国会議員」ですから、ロシア側が引き渡しに応じることは考えられません。

別にプーチン大統領の肩を持つ訳ではありませんが、一国の元首が政治的殺人に関与したと告発するにあたって、『おそらく』とか『可能性が高い』というレベルというのは、いかがなものか・・・という感もあります。国家関係の決定的破綻を避けるために敢えて曖昧にしたということでしょうか。

“ロシア政府は21日、「冗談なのかもしれない」と一蹴した。”【1月22日 AFP】

“英外務省は駐英ロシア大使を呼び出すなど、ウクライナ危機以来の英露関係冷却化が避けられない情勢だ。”【1月22日 産経】とのことですが、“英国王立防衛安全保障研究所のイーゴリ・スチャーギン主任研究員は「英国とロシアの関係は既に冷え込んでおり、これ以上、関係が悪化する余地がない。シリア問題を巡るロシアとの協力も限定されており、大きな影響はない」とみている。”【1月21日 毎日】とも。

なお、アメリカのアーネスト米大統領報道官は21日、今回のイギリスの調査報告を受けて、アメリカがロシア側に対して「将来的に何らかの措置を取ることを否定しない」と述べ、制裁に踏み切る可能性を示唆しています。

プーチン大統領は「汚職そのものだ」】
「殺人」に続いては「汚職」

****プーチン露大統領は「汚職そのもの」、米政府高官****
米政府関係者が、英国放送協会(BBC)が25日に放送した番組でロシアのウラジーミル・プーチン大統領は汚職に関与しているとして公然と批判した。

ロシアがウクライナ南部クリミア半島を併合したことを受け、米政府は2014年、ロシア政府関係者の資産凍結など対ロシア制裁を発動していたが、プーチン大統領が汚職に直接関与していると批判することはこれまでなかった。

しかし、この日、プーチン大統領の「秘密の蓄財」を追及したBBCの番組「パノラマ(Panorama)」に出演した米財務省のアダム・シュビン財務次官代理は、プーチン大統領は「汚職そのものだ」とコメント。

「私たちは、プーチン大統領が国有資産を使って自身の友人や側近の懐を肥やす一方で、友人とみなしていない人々を主流から外すのを目にしてきた」と、プーチン大統領の個人資産について、米政府関係者としては異例ともいえる強いコメントをした。

「プーチン大統領は、自分に尽くしてくれると考える人物にはロシアのエネルギー資産でもその他の国有事業でも配分するが、そうでない人物は締め出す。私にとって、これは汚職そのものだ」とシュビン氏は述べ、米政府はこうした行為を「何年にもわたってずっと」把握してきたと付け加えた。

番組は、米中央情報局(CIA)の2007年の報告書の内容を引用し、プーチン大統領の資産は約400億ドル(約4兆7200万円)に達していると報じた。

シュビン氏は、「プーチン氏は自身が国から得ている年収は約11万ドル(約1300万円)としているが、これは正確な報告ではない。実際の資産を隠すことに関しては長年、実績を積んでいる」と述べた。【1月26日 AFP】
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シュビン財務次官代理の個人的見解ということではなく、アメリカとしての見解のようです。

****ロシア政府は全面腐敗」=米国務省が懸念****
米国務省のトナー副報道官は28日の記者会見で「ロシア政府の全てのレベルで腐敗していることを懸念している」と表明した。ズビン財務次官代理(テロ・金融犯罪担当)はこれに先立ち、プーチン・ロシア大統領を「汚職そのもの」と批判していた。

副報道官は、汚職は民主制度や民主化プロセスを「むしばむ」と指摘。その上で、「ロシアに対して、汚職の撲滅や透明性の拡大に向けて努力している市民社会を支援するよう促している」と強調した。【1月29日 時事】
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プーチン大統領の「汚職」については、ロシアの野党政治家アレクセイ・ナバリヌイ氏が告発映画を作成したそうです。

****プーチン氏は「汚職の皇帝」 反政権指導者が批判****
ロシアの反政権運動を率いるアレクセイ・ナバリヌイ氏がプーチン政権関係者の汚職を告発する映画を制作した。

同氏は高官らが汚職を通じてロシア経済から約6兆円を吸い上げたと主張。プーチン大統領を「汚職の皇帝」と呼び、汚職が国の治め方になっていると非難する。

米財務省高官のアダム・ズービン氏もBBCの最新インタビューでプーチン氏が汚職によって個人資産を築き上げていると語った。

一方、ナバリヌイ氏の映画の中で名指しで非難されているロシアのチャイカ検事総長は、映画は「売名行為」で、「英国や米国から資金提供を受けて」制作されたものだと逆に非難した。(後略)【1月26日 BBC】
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プーチン政権が構造的汚職体質を持っていること、プーチン氏個人にも『おそらく』相当の資金が流れている『可能性が高い』ことは、驚くものではありませんが、現在のロシアでプーチン大統領を「汚職の皇帝」と名指しするような映画が作成できたことは非常に驚きです。

2015年2月27日、ロシアの首都モスクワにあるクレムリン付近で、プーチン政権を批判していた野党指導者ボリス・ネムツォフ元第一副首相が暗殺され、事件の背景は明らかにされないまま幕引きがなされています。

****ネムツォフ氏暗殺、捜査終了=黒幕説消えず―ロシア****
タス通信によると、ロシア捜査当局は29日、プーチン大統領に批判的な野党指導者ボリス・ネムツォフ氏が2月に暗殺された事件で、実行役など5容疑者を起訴し、捜査を事実上終了した。

捜査当局者は「(首謀者も)11月から国際手配している」と明らかにした。アラブ首長国連邦(UAE)に出国したとみられている。

捜査当局によると、首謀者とされるのはチェチェン系軍人ルスラン・ムフディノフ容疑者。ただ、ネムツォフ氏の弁護士や野党勢力は、チェチェン系軍人ルスラン・ゲレメエフという重要参考人が首謀者ではないかと疑っている。この男は、プーチン大統領に忠誠を誓うチェチェン共和国のカディロフ首長周辺に近く、黒幕説が消えない。【2015年12月29日 時事】 
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反プーチンの活動を続けるアレクセイ・ナバリヌイ氏は、ロシア・プーチン政権が欧米にロシアの「民主主義」を示すために、敢えてその活動を許しているとも思われますが、行き過ぎれば政治的制裁も十分に考えられます。「強い指導者」プーチン大統領には欧米的常識は通用しません。

いずれにしても、最近の英米における「殺人」「汚職」に関するプーチン批判が重なったのは、たまたまなのか、何か意図したものがあるのか・・・そこらはわかりません。
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