孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

寒波にも増して凍りつく難民をめぐる政治の雰囲気

2016-01-24 22:14:18 | 難民・移民

【1月24日 AFP】

寒波に襲われるアジア・アメリカ
記録的な寒波の襲来で、南国・鹿児島も現在-2℃、強風(今日の瞬間最大風速19m)とともに朝から断続的に雪が降り続いています。

奄美大島でも115年ぶりに雪が降ったとか。

日本だけでなく、アジア各地、アメリカも強い寒波に襲われています。

****凍える寒気、アジア各国にも=各地で記録的低温****
日本の上空に流れ込んだ非常に強い寒気の影響は、中国や韓国、台湾などアジア各地にも及び、24日は記録的な低温が相次いだ。

普段は比較的温暖な台湾では、台北市の24日の最低気温が過去44年で最低となる4度を記録。市内を一望する台北郊外の陽明山では、約7年ぶりの降雪となった。

台湾よりも緯度が低い香港は、24日の最低気温が3.1度。1957年2月に記録した2.4度に次ぎ、59年ぶりの寒さに覆われた。香港最高峰の大帽山(標高957メートル)では氷点下5度を観測し、珍しい降霜を見ようと押し寄せた住民の中に体調を崩す人が続出。地元メディアによれば50人近くが低体温症で病院に搬送された。

韓国ソウルも2001年以来15年ぶりの低温に見舞われ、24日の最低気温は極寒の氷点下18度だった。凍結した水道管の破裂事故も相次ぎ、気象当局は11年5月以来の寒波警報を発令。年間を通じて温暖な南部・済州島では、大雪や強風で航空便の運航が中止された。

春節(旧正月)の大移動が始まった中国でも、北京の24日の最低気温は氷点下11度、上海でも氷点下7度を記録。過去30年間で最も寒かった23日に比べると峠を越したものの、依然として寒さに震える日が続いた。【1月24日 時事】 
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春節を迎える北京では23日、最低気温は氷点下15.2度、最高気温も氷点下13度にとどまり、過去30年間で最も寒い1日となったそうです。

アメリカ・ニューヨークのマンハッタンでも積雪が60cm。

****アメリカ東海岸 記録的大雪で混乱広がる****
記録的な大雪に見舞われているアメリカの東海岸では、ニューヨーク市内で一般の車の通行を禁止する措置がとられたり、鉄道やバスが運休したりするなど混乱が広がり、ワシントンとニューヨーク州など11の州が非常事態宣言を出して警戒を呼びかけています。

記録的な大雪に見舞われているアメリカの東海岸では、多いところでは降り始めからの雪の量が1メートルを超え、首都ワシントンとニューヨーク州など11の州が非常事態宣言を出し、厳重な警戒が続いています。

この雪で23日、ニューヨーク市内で雪が関連する事故で3人が死亡するなど、これまでに各地で少なくとも合わせて14人が死亡しました。
ワシントンでは降り始めからの雪の量が50センチを超えるなど記録的な大雪となっていて、地下鉄とバスがこの週末すべて運休しています。

ニューヨークのマンハッタンでも雪の量が60センチを超え、23日午後から地下鉄をのぞく多くの鉄道やバスが運休し、一般の車の通行を禁止する措置が続いています。(後略)【1月24日 NHK】
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寒さの中で難民らは・・・
こういう日は、暖かくした部屋の窓から外の吹きつける雪を眺めていると、たとえあばら家でも家があることのありがたみを感じますが、家も故郷も捨ててそまよう生活を余儀なくされている難民も多くいます。

冬場の悪天候を押して渡航を試み、命を落とす難民らも後を絶たないようです。
なお、ギリシャ・アテネの24日の最低気温は2℃、最高気温も7℃とのことです。

****エーゲ海で難民乗せたボート転覆相次ぐ 45人死亡****
中東やアフリカなどからヨーロッパを目指す難民や移民が、ことしに入っても後を絶たないなか、エーゲ海では難民や移民を乗せた3隻のボートが相次いで転覆して合わせて45人が死亡しました。

ギリシャ沖とトルコ沖のエーゲ海で22日、難民や移民を乗せた合わせて3隻のボートが相次いで転覆しているのが見つかりました。

地元の沿岸警備隊によりますと、これまでに70人余りが救助されましたが、子ども20人を含む45人の死亡が確認されました。このほかにも数十人が行方不明になっているということです。

救助された人の中にはシリアからの難民もいたということですが、詳しくは分かっておらず、沿岸警備隊などが調べています。

国連によりますと去年、中東やアフリカなどからヨーロッパに流入した難民や移民は100万人を超えました。例年、冬を迎えるとヨーロッパに流入する難民や移民の数は減少する傾向にありますが、ことしは去年の同じ時期の6倍に当たる、およそ3万7000人がすでにギリシャに到着したということで、難民の流入を防ぐ見通しは依然として立っていません。【1月23日 NHK】
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トルコ・ギリシャ間の海域における今年に入ってからの死者はすでに100人を超えています。

行く手を閉ざされ、暴発する人々も報じられています。

****シリア国境で衝突、12人死亡 ヨルダン****
ヨルダンの軍当局者は23日、同国国境でシリアから入国しようとした36人のグループと国境警備隊の間で衝突が発生し、12人が死亡したと発表した。グループのうち数人は武装していたという。

ヨルダン軍のウェブサイトによると、負傷した者やシリア側に逃走した者もいるという。軍当局者はまた、薬物200万粒以上を押収したと述べた。

ヨルダンは、シリアから難民に紛れて過激派戦闘員が入国することに対し、繰り返し懸念を表明。国境警備を厳格化し、難民受け入れ数を制限している。

現在、約1万6000人のシリア難民が国境に押し寄せているが、入国を許可されるのは日に数十人程度だという。

国連(UN)の統計によると、シリアで内戦が勃発した2011年以降に同国を脱出した約400万人のうち、ヨルダンが受け入れたのは約60万人。

一方、ヨルダン政府は、内戦を逃れてヨルダンに入国したシリア人は140万人以上に上るとしている。【1月24日 AFP】
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なお、砂漠の熱い国のイメージがある中東各国ですが、シリア・ダマスカスの24日の最低気温は3℃、あさって火曜日の予想は-5℃となっています。

混乱は英仏海峡でも。

****仏港に難民ら数百人乱入、35人逮捕 フェリー運航停止に****
仏北部カレーのブシャール市長は23日、同市の港に難民ら数百人が乱入し、このうち50人が船に乗り込む騒ぎがあったと明らかにした。

CNN系列局のBFMTVによれば、35人が逮捕された。逮捕者のうち、24人が難民で、11人が難民支援を行っている活動家だという。

難民らは支援者らのデモ隊が見守る中、フェンスを破壊して港へなだれ込んだ。

英国のフェリー会社によると、この騒ぎでカレーと英南部ドーバーを結ぶフェリーの運航が約2時間にわたって停止。港自体も一時閉鎖された。

ブシャール市長はフェイスブックを通し、「難民支援をかたる者たちによるデモの本質は経済生活の妨害であることが、改めて証明された」と非難した。

この騒ぎに先立ち、カレー中心街では同日、難民支援を掲げる団体が当局の許可を取ってデモを展開。仏メディアによると約2000人が参加していた。

カレー近郊の大規模な難民キャンプでは、英国に不法入国しようとする難民らが推定で約6000人、劣悪な環境の中で暮らしている。仏当局は最近、貨物用コンテナに暖房や電気設備を備えた仮設住宅を用意し、キャンプからの移動を促している。【1月24日 CNN】
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フランスやイギリスは日本以上に寒さの厳しい国ですが、パリの24日の最低気温は5℃、最高気温は12℃と、比較的穏やかだったようです。

冬の寒さ以上に凍る難民をめぐる政治の雰囲気
冷え込んでいるのは天候だけではなく、難民らを受け入れる国々の人々の心も同様です。

デンマークで検討されている、「新たに到着した難民は最大1万デンマーククローネ(約17万円)と「思い出の品」は保持できるが、それ以外はすべて没収する」という法案については、1月15日ブログ“欧州難民問題 デンマークの「財産没収」法案とシャルリー・エブドの風刺画”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160115でも取り上げました。

****[FT]難民から財産没収、酷なデンマークの抑制策(社説****
欧州で冬の寒さが厳しくなるにつれ、難民をめぐる政治の雰囲気も凍るような冷たさになっている。昨年中東やアフリカから欧州大陸に何十万人もの難民が押し寄せたとき、多くの国々の反応は寛大だった。

今では到着する難民に反感を抱く有権者も出てくる中、各国政府が厳しい対応に転じている。

これまで難民を最も歓迎していたドイツは、罪を犯した難民を国外退去させる、より厳しい法案を可決した。スウェーデンは国境検査を導入することでその人道的アプローチを後退させつつある。

だが、特に注目を集めているのは、デンマークの大胆かつ物議を醸す対策だ。(後略)【1月15日 日経】
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大量の難民流入に社会不安が高まる北欧フィンランドでは、移民排斥・人種差別的な姿勢を鮮明にする自警団が台頭しています。

****移民急増のフィンランド、黒服自警団の台頭を懸念****
バイキングのシンボルとフィンランド国旗をあしらった黒いジャケットを着た、愛国者を自称する「オーディンの戦士たち」が、移民からフィンランド人を守るという名目で街路をパトロールする──。そんな状況がフィンランド政府と警察を困惑させている。

欧州の北端に位置するフィンランドには、隣国のスウェーデンとは異なり、大量の難民を受け入れてきた経験がほとんどない。

だが今日、他の欧州諸国と同様に、フィンランドも急増する亡命希望者への対処に追われ、関係当局は移民排斥を掲げる自警主義が発生するのではないかと憂慮している。(後略)【1月18日 ロイター】
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移民制限を掲げる保守政党「真のフィンランド人」党を含む連立政権は、自警団グループによるパトロールを「移民排斥・人種差別的な姿勢が見られ、彼らの行動は治安を改善していない」(オルポ内務相)と批判していますが、亡命希望者への対応を厳格化するよう求める世論の圧力にさらされています。

移民・難民受け入れに厳しい中東欧諸国
中東欧諸国は、更に移民・難民受け入れに厳しい対応を示しています。

****EU難民分担、ハンガリーも提訴****
AFP通信などによると、ハンガリー政府は3日、欧州連合(EU)が決めた加盟国の難民分担受け入れ計画の無効を求め、EU司法裁判所に提訴したと明らかにした。この種の提訴は、スロバキアに続いて2カ国目。

ハンガリー政府は9月以降、難民流入を阻止するため、国境を封鎖。「難民割り当てはテロの脅威を高める」などとEUの決定に反発していた。【2015年12月4日 時事】 
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****難民流入は「組織的侵略」、若い男性はISと戦闘を チェコ大統領****
チェコのミロシュ・ゼマン大統領は26日、中東シリアやイラクから大勢の難民が欧州に押し寄せている現在の状況は「組織的な侵略」であるとの認識を示し、若い男性は国を逃れる代わりに「武器を取って」イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」と戦うべきだと付け加えた。(後略)【12月27日 AFP】
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****ギリシャ北部国境にフェンス要求****
ハンガリーのオルバン首相とスロベニアのツェラル首相は22日、欧州に殺到する難民らを阻止するためギリシャ北部の国境沿いにフェンスを設置するよう求めた。【1月23日 時事】
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中東欧諸国をリードするひとりが、90年代に東欧各地で広がった民主化革命に身を投じたリベラル派の闘士から“転向”したようにも見える、ハンガリーのオルバン首相。

****かたくなに難民阻み、喝采 ハンガリー****
・・・・オルバンの政治基盤は底堅い。党首として率いる「フィデス」は、10年の総選挙で3分の2を超える議席を獲得。緊縮財政を迫るEUに対し、年金基金の国有化などの「禁じ手」を使って財政の立て直しを進めた。新しい憲法も制定し、政府の権限を拡大した。

外国から「強権政治」と批判も浴びたが、国民からは「外国の干渉をはねつける強いリーダー」とさらに支持を集めた。難民問題に対するかたくなな姿勢も、好意的に受け止められた。その結果、オルバンの支持率は4月の28%から10月に43%に跳ね上がった。・・・・【2015年12月16日 朝日】
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もうひとつ、ハンガリー・オルバン首相にならったような強権支配を強めるのがポーランド。

****ポーランド、強権政治 司法権制限・報道介入の恐れ****
ポーランドのシドゥウォ新政権の「改革」が、国内外で「強権的」と批判を浴びている。

司法の権限や報道の自由を制限しかねない法制度に変更。反政府デモが相次ぐ。

欧州で難民排斥など排外主義的な動きが強まるなか、堅調な経済で東欧の「優等生」と呼ばれた同国の豹変(ひょうへん)に、欧州連合(EU)も懸念を強めている。

「自由なポーランド!」「民主主義を壊すな!」
首都ワルシャワの中心部で9日、約2万人が声を上げた。昨年12月に1千人規模で始まった反政府デモは毎週のように行われ、23日にも大規模デモが計画されている。

2004年にEU加盟を果たした同国は、EUからの潤沢な補助金などで経済成長を続けたが、国民の貧富の差は拡大。

その不満を吸収する形で、愛国主義的な色彩が強い保守政党「法と正義」が昨年10月の総選挙で8年ぶりに政権に返り咲いた。欧州各国で排外主義の動きが台頭するなか、EUが加盟国に割り当てを決めた難民の受け入れにも反対して支持を集めた。(後略)【1月21日 朝日】
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東欧諸国については、第2次世界大戦中のユダヤ人排斥に見られる排他的土壌を指摘する向きもあります。
ドイツは過去の歴史に向き合い再出発しましたが、東欧諸国は残忍な過去と折り合いをまだつけていないとも。

****第2次世界大戦の暗い過去****
・・・・この場合、歴史は比喩ではない。それどころか、現在露呈している東欧の人々の態度の根本原因は第2次世界大戦とその余波に見いだすことができる。

ポーランド人について考えてみるといい。反ナチスのレジスタンス運動に正当な誇りを持つポーランド人は実は、戦時中にドイツ人よりも多くのユダヤ人を殺した。

ポーランドのカトリック教徒はナチス占領下で犠牲になったが、ナチズムの究極の犠牲者の運命にあまり慈悲を抱くことができなかった。(中略)

占領下に置かれた欧州社会はすべて、程度の差こそあれ、ユダヤ人を破滅させようとするナチスの取り組みに加担した。それぞれの社会は、その国特有の事情やドイツの支配の状況によって異なる貢献を行った。

だが、地域が擁する絶対的なユダヤ人の数とナチスの占領体制の比類ない無情さのせいで、ホロコーストが最も陰惨に繰り広げられたのは東欧だった。

歴史と向き合ったドイツ
戦争が終わった時、ドイツは戦勝国の非ナチ化政策と、ホロコーストを扇動、実行した自国の責任のために、残忍な過去と「向き合う」しか選択肢がなかった。これは長く、難しいプロセスだった。

だが、ドイツ社会は歴史上の悪事を意識し、今日の難民の大量流入が突き付けるような道義的、政治的課題と対峙できるようになった。

そして、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は移住者に関し、東欧のすべての指導者を恥じ入らせるような圧倒的なリーダーシップの模範を示した。

対照的に東欧はまだ、その残忍な過去と折り合いをつけていない。それができた時に初めて、東欧の人々は悪から逃げてくる人々を救う自分たちの責任を認識することができるのだろう。【2015年9月16日 JB Press】

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