孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中南米諸国の治安事情  「麻薬戦争」メキシコと、左翼ゲリラとの和平交渉が進むコロンビア

2016-01-04 22:01:27 | ラテンアメリカ

(就任翌日に武装集団に銃撃され死亡したメキシコ・テミスコ市のモタ市長(AP) 【1月3日 産経ニュース】)

中南米諸国が独占する「世界の殺人発生率 国別ランキング」】
「世界の殺人発生率 国別ランキング」なるものを統計サイト“GLOBAL NOTE”(http://www.globalnote.jp/post-1697.html)で調べると、以下のようになっています。

数字は人口10万人あたりの殺人事件による死者数です。
殺人の定義は原則として「非合法かつ意図的に他人を死に至らしめたもの」で、傷害致死、紛争による殺害は含まれていません。

1 ホンジュラス 84.29
2 ベネズエラ 53.61
3 米領ヴァージン諸島 52.64
4 ベリーズ 45.095
5 ジャマイカ 42.88
6 エルサルバドル 39.79
7 レソト 38.03
8 グアテマラ 34.57
9 セントクリストファー・ネイビス 33.42
10 南アフリカ 31.86
11 コロンビア 31.84
12 トリニダード・トバゴ 30.21
13 バハマ 29.70
14 ブラジル 26.54
15 プエルトリコ 26.49
16 セントビンセント・グレナディーン 25.51 1
17 ドミニカ共和国 22.03
18 セントルシア 21.57
19 モントセラト 20.40
20 ツバル 20.09
21 ガイアナ 19.46
22 メキシコ 18.91

ちなみに、日本は218か国中の第211位で、0.28となっています。小さな都市国家を除くと、世界でも一番安全な国となっています。

22位までのうち、中南米諸国が19か国、アフリカがレソトと南アの2か国、それと南太平洋のツバル・・・ということで、圧倒的に中南米諸国に集中しています。(聞いたことがないような名前の国は、中米カリブ海の島国です)

もっとも、紛争地域の危険度は上記の比ではないでしょうから、必ずしも上記の国々が一番危ないという訳でもないでしょうが。
そもそも犯罪統計などが十分に調査されていない国もありそうですし・・・。

それにしてもラテンアメリカ諸国の“存在感”は圧倒的です。

メキシコ 犯罪撲滅訴えた新市長、就任翌日に麻薬密売組織によって殺害
“22位”までにしたのは、メキシコをランキングに入れるための私の恣意的操作ですが、これまでも「麻薬戦争」として何回も取り上げたきたメキシコの治安は、ラテンアメリカにあってはさほどひどいものではないようにも見えます。

ただ、下記のようなニュースを見ると、いまだに「麻薬戦争」を脱することができずにいるようです。

****メキシコ 犯罪撲滅訴えた市長 就任翌日に殺害****
メキシコ中部で、犯罪撲滅を訴えて当選した女性市長が、就任した翌日に銃で撃たれて殺害され、警察は麻薬密売組織などの犯罪組織が関わったとみて調べています。

メキシコ中部のテミスコ市で、麻薬取り引きなどの犯罪撲滅を訴えて当選したギセラ・モタ市長が、就任した翌日の2日、自宅にいるところを銃で撃たれて殺害されました。

テミスコ市当局などによりますと、犯行には9人が関わり、車で逃走を試みたということで、警察が追跡して銃撃戦となり、このうち2人の容疑者を殺害したほか、複数を拘束したということです。

地元メディアなどによりますと、容疑者のうちの1人は50万ペソ(日本円にしておよそ350万円)を報酬として受け取って犯行に及んだと、警察に供述しているということです。

警察は、モタ市長が麻薬取り引きなどの犯罪撲滅を訴えていたことから、麻薬密売組織などの犯罪組織が関わったとみて調べています。

AP通信は、公益団体の話として、メキシコでは過去10年間で自治体のトップが100人近く殺害され、大きな社会問題になっていると伝えています。【1月4日 NHK】
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警察との銃撃戦の結果2人の殺人容疑者が死亡し、5人が逮捕されています。逮捕者の中には32歳の女1人と17歳の少年1人が含まれているそうです。【1月4日 「音の谷ラテンアメリカニュース」より】

州政府は、1月1日から新市長となった33人の警護体制の強化を行うと発表しています。

「音の谷ラテンアメリカニュース」によれば、ここ数日だけでも以下のような事件が並んでいます。

12月29日「ミチョアカン州の高速道路に死体4体 メキシコ」
12月29日「25歳の若者を銃殺した殺し屋3人が警官隊との銃撃戦で死んだ メキシコ ベラクルス州」
1月3日「新年早々バラバラ死体 メキシコ ミチョアカン州」

また、アメリカ合衆国麻薬取締局(DEA)は、メキシコの各麻薬組織の縄張りを図示した「2015メキシコ麻薬マップ」なるものを公表しています。
DEAの報告によれば、メキシコにはいかなる麻薬カルテルにも支配されていない地域があり、メキシコシティーもそのうちの1つです。

さすがに首都は麻薬組織の支配にはないのか・・・というのは甘い考えで、“(メキシコシティーでは)ここ数か月陸橋から死体がつるされるといった事件が続いており、激しい縄張り争いが続いていると推測されています”【12月28日 「音の谷ラテンアメリカニュース」】とのことです。

縄張りが明確でない地域ほど危ないようです。

コロンビア 殺人犠牲者は10年前との比較で32%の減少
一方、冒頭ランキングでメキシコを抑えて11位にランクインしているコロンビア。

この国も、左翼ゲリラ、麻薬組織、右翼準軍事組織が入り乱れて治安が悪い国ですが、左翼ゲリラとの和平交渉が進展していることは、2015年9月27日ブログ「南米コロンビア  左翼ゲリラ組織との和平交渉が「6カ月以内の和平実現」に向けて進展」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150927などで取り上げてきました。

その後も和平交渉は進んでいるようです。

****内戦犠牲者に補償へ=左翼ゲリラと合意、和平前進―コロンビア****
半世紀にわたり対立を続けたコロンビア政府と左翼ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)は15日、内戦の犠牲者をめぐり、補償の仕組みを検討し、行方不明者の捜索、特定などを行うことで合意した。意見の隔たりが大きかった課題で双方が歩み寄り、和平交渉は大きく前進した。

サントス大統領は「かつてないほど和平に近づいている」とツイッターに投稿。和平交渉の最終合意妥結に強い期待を示した。

交渉地キューバの首都ハバナで15日、発表された共同声明では、内戦の実態を解明する組織として、真実委員会の設置を宣言した。内戦中の人道上の罪を裁く特別法廷設置も確認し、保護を求める内戦犠牲者への安全の保障も約束された。【2015年12月16日 時事】 
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そうした左翼ゲリラとの和平交渉が進展している状況もあってか、国内の殺人も改善傾向にあるようです。
治安当局は銃器所持制限策が効果をあげているとしています。

来年の「世界の殺人発生率 国別ランキング」では、大きく順位をさげそうです。

****2015年コロンビアで1万2193人が殺された****
コロンビア警察の発表によれば、2015年12月の殺人被害者数は1112人で、2015年1年間の殺人被害者総数は1万2193人でした。

前年2014年の殺人被害者数より1150人減少しており、昨年のコロンビアの殺人率(10万人当たり1年間に殺害される人数)は25人となっています。

昨年の殺人被害者数は30年前の1万2922人と近い数字ですが、コロンビアの人口は増加を続けており、当時の殺人率は40人でした。

大晦日の殺人被害者数は前年の大晦日より16人少ない28人であったとコロンビア警察長官ロドルフォ パロミノ将軍が明らかにしています。
「減少率は44%です。政府の進めた銃器所持制限策が功を奏したと言えます。」

コロンビアの殺人被害者数は減少を続けており10年前との比較で32%の減少、6000人以上の命が救われた事になります。
国防省のデータによれば、2005年の殺人被害者数は1万8111人でした。(後略)【1月3日 音の谷ラテンアメリカニュース】
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大晦日1日の殺人被害者26人というのも“大幅改善”で、“コロンビアでは例年大みそかには新年を祝って空に向けて発砲する不届き者が後を絶たず毎年のように死傷者が出ていますが、2015年の大晦日は1人も流れ弾によって死傷していません”とのことです。

なお、福島第2原発の事故があったからといって、日本全土が危険な状態になっている訳ではないのと同様に、上記のような数字はあくまでも南米社会の「一面」を示すものにすぎず、別に普段の市民生活の中を銃弾が飛び交っている訳でもありません・・・多分。
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