孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

カンボジア 最近の話題から(タイとの関係強化 野党党首への逮捕状 カネがすべての社会)

2015-12-20 23:28:48 | 東南アジア

(経済成長著しいカンボジア、最近はプノンペンにこういう高層建築も出現しているようです “flickr”より By Nam Keng https://www.flickr.com/photos/65877070@N05/19946007021/in/photolist-dnSRFj-gj7XdG-pgEw74-auXEWA-dnX4MV-dRpdMd-e615LV-woyuYM-p8qvSu-rjQfEb-q9D3yM-qP1hVM-qNYJuP-fCyuPM-avB9nk-fCyv1a-qyr4s3-vjvPUt-zgZxqH-porW3C-dRpdnw-zfWgSY-e611Tr

フン・セン首相、12年ぶりにタイを公式訪問
タイとカンボジア・・・・隣国であり、文化・言語的にも非常に近く(タイのTV放送をカンボジアの人はおおよそ理解できるようです)、歴史的にも深いつながりがあり(主には侵略したり、されたりという歴史ですが)、現在も経済的に強い結びつきがある両国ですが、そういう“近い”関係にあるだけに、優越感とかコンプレックスといった感情も含めて、微妙な国民感情があるようです。

もっとはっきり言えば、近親憎悪的な敵対感情でしょうか。まあ、日本と韓国・中国など、隣接する国家・民族間にはごく普通に見られるものと言えば、そうでしょう。

タイから見れば、経済的には圧倒的に優位な立場にあり、政治的にも洗練された民主主義国家として自負もあると思われます。(最近のタイ軍事政権のもとでは、タイの民主主義も怪しいところが多々ありますが)
カンボジアからすれば、そうした“上から目線”のタイがなにかと神経に触るところもあるのでは。

当ブログでも何回か取り上げたように両国は領土問題も抱えており、世界遺産に登録されたヒンズー教寺院遺跡「プレアビヒア」周辺地域の帰属を巡って衝突していましたが、2013年11月に国際司法裁判所(ICJ)は、寺院と周辺の限られた土地について、1962年判決に引き続き、改めてカンボジア領と認定しました。

ただ、寺院の北西側にある丘陵地の頂の部分は、62年判決で「係争地になっていない」とし、今回も明確な線引きを示さず、「両国が協力し遺産を保護しなければならない」とし、紛争の政治的な解決を促しています。

その後、国境問題についての両国の動きは聞いていませんが、タイの方は軍事クーデターでそれどころではない事情もあるのでは・・・。

****貿易拡大、鉄道運行で合意=12年ぶりタイ公式訪問―カンボジア首相****
カンボジアのフン・セン首相は18、19の両日、タイを訪問し、プラユット暫定首相らと会談した。

共同声明によると、両国政府は2国間貿易の拡大や、両国の首都を結ぶ鉄道の運行開始で合意した。フン・セン首相がタイを公式訪問するのは12年ぶり。

声明などによれば、双方は現在年50億ドル(約6000億円)規模の2国間貿易額を2020年までに3倍に拡大することを目指す方針で一致。16年末までに、バンコク―プノンペン間の鉄道運行を開始することでも合意した。

タイのメディアによると、両国国境にあるタイのアランヤプラテートとカンボジアのポイペトを結ぶ鉄道は、カンボジアでポル・ポト派が実権を掌握した1970年代以降、運行を停止したままになっている。【12月19日 時事】 
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“フン・セン首相がタイを公式訪問するのは12年ぶり”という事実が、上述のような両国関係を示していますが、とにもかくにも関係改善に向かうことは結構な話です。

そのうち列車でバンコクからプノンペンへ旅行してみましょう。

カンボジアが近年経済的には急成長しており、日本企業も生産拠点として注目していること、ただ、労働問題がネックとなっていることなどは、2014年4月9日ブログ「カンボジア 高成長の制約要因となっている労働問題 ストライキ 工場労働者の集団失神」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140409や2014年1月9日「カンボジア 賃上げ要求デモへ治安部隊発砲  グローバル化の途上国・先進国への影響」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140109などでも取り上げてきました。

労働問題というよりは、強権的とも言われるフン・セン首相のもとでの内政問題というべきでしょうか。

安倍首相は11月21日にフン・セン首相と会談して、支援を明らかにしていますが、経済的な関係強化に加え、中国との関係が強いカンボジアを取り込みたい思惑もあるのでしょう。

****メコン整備に170億円支援 日カンボジア会談で首相表明****
安倍晋三首相は二十一日午前(日本時間同)、カンボジアのフン・セン首相とクアラルンプールで会談し、カンボジアを含むメコン川流域のインフラ整備の一環で、国道整備のための円借款約百七十億円の供与を決定したことを伝えた。フン・セン首相は「日本の支援に感謝する」と謝意を示した。

安倍首相は、中国が南シナ海で進める人工島造成について深刻な懸念を示し、平和的解決に向け、カンボジアにも協力を求めた。

また十月に野党・救国党の国会議員に対する暴力事件が発生するなど、カンボジア国内の政治情勢が緊張していることに関し憂慮を表明。次回国民会議選挙に向け、与野党の対話による解決を促した。【11月21日 東京】
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最大野党党首に逮捕状
長く政権を独占してきたフン・セン首相ですが、2013年8月22日ブログ「カンボジア フン・セン首相・与党が辛勝するも、野党躍進 “内戦後”の終焉」でも取り上げたように、国内批判も高まり、2013年7月の総選挙では与党が議席数を大きく減らしたものの、過半数は維持するという結果になっています。(野党側は“与党辛勝”という結果を認めず、混乱もありました)

いずれにしても、首都プノンペンや人口の多い州では、野党が与党を上回り、有権者の不満が都市部ほど強いことを示しました。

選挙後も政権と野党の緊張関係は続き、野党党首のサム・レンシー氏に逮捕状が出される事態となっています。(同氏は現在出国中)

****野党党首、議員資格を喪失=帰国なら逮捕―カンボジア****
カンボジア下院は16日の声明で、最大野党・カンボジア救国党のサム・レンシー党首が議員資格を喪失したと発表した。

7年前の名誉毀損(きそん)事件でプノンペンの裁判所が13日に同党首の逮捕状を出したのに伴う措置。

サム・レンシー党首は韓国に滞在中。警察当局は帰国次第逮捕する方針だが、同党首はフェイスブックを通じ「数日中にカンボジアに戻る」と表明した。

地元メディアによると、サム・レンシー党首は2008年に行った演説で、ホー・ナムホン外相が1970年代後半にポル・ポト政権の収容所を運営していたと発言。名誉毀損で訴えられ、11年に欠席裁判で禁錮2年の有罪判決を受けていた。【11月16日 時事】 
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アメリカ・オバマ大統領が仲介に動いているといった話も聞きますが、定かなところは知りません。

“サム・レンシー氏はフン・セン首相と対立し、09年にフランスに出国。その間に公共財産破壊の罪などで実刑判決を受けた。しかし、13年7月の総選挙前に国王の恩赦を受け帰国。救国党は総選挙で躍進し、サム・レンシー氏は18年に予定される次期総選挙での政権交代を目指していた。”【11月13日 毎日】

最大野党・カンボジア救国党のサム・レンシー党首については、リベラル派ということで、フン・セン首相の力による政治、そのもとでの腐敗・汚職の蔓延というカンボジアの問題を改善してくれることが期待もされています。

ただ、個人的には、これまでも政治危機のたびにフランスへ逃れ、フランスとカンボジアを行ったり来たりしてきた経歴、あのポル・ポト、クメール・ルージュによる悲劇・狂気の大虐殺のときも国内にいなかったこと(いたら生きていませんが)に、政治家として強靭さに欠けると言うか、やや物足りないものも感じます。

フン・セン首相に問題があるのは事実ですが、「フン・センは自分たちと一緒に、厳しいポル・ポト時代を生き抜いてきた。サム・レンシーはその時、フランスでエアコンのきいた部屋にいた。ベトナムの力を借りたかもしれないが、実際にポルポト政権を倒したのは人民党だ」という国民の声には(ポル・ポトを倒したのがベトナムか人民党かという判断は別にして)重いものもあります。

カネがすべて・・・
カンボジア社会の世相を示すリポートを目にしましたので、紹介します。

****轢き逃げ大国カンボジアの“壮絶すぎる闇”をジャーナリストが語る! 現地で暮らす日本人も笑いながら・・・****

【金がすべて。悲しすぎる価値観がはびこるカンボジアの闇】
「カンボジアの富裕層が爆発的に増えている」という報道を最近よく見かける。確かに富裕層は多い。しかし、それ以上に貧困にあえぐ者たちが多いのが実情だ。そして、その彼らの暮らしぶりはおそらく読者の想像をはるかに超えているだろう。

首相であるフン・センの30年にも及ぶ独裁政治中に、汚職がはびこり、警察は腐敗、街の治安は最低レベルだ。今も昔も富裕層の多数は政府関係者で、貧困層は1日3ドル以下の生活が続いており、"貧困層の人間は金持ちのペットの命よりも軽い"とさえいわれる。

そういった勝ち負けの区別がはっきりしている文化が長く続いたことで、この国は「金さえあればなんでもできる国」になってしまった。

私がカンボジアに住んだ上で感じた、本当の姿を伝えていきたいと思う。

■交通事故にあったらサヨウナラ

つい最近、街を歩いていると背後から大きな音がした。振り向いたところ、そこには大量の血を流す人が地面に倒れ、その近くにはボンネットがへこみ、明らかにぶつかったとみられる車があった。人身事故だ。そして、その車はゆっくりとUターンをし、停車。私は、ただただ呆然としているだけだったのだが、次の瞬間...、

 ブンッ!!! と、車が横になっている被害者の上を通過し、逃走した。

後から知ったことだが、これは後々トラブルにならないように、被害者を殺害し証拠隠滅を図っているのだという。車を運転するカンボジア人の約半数がこのような行動をとるそうだ。

その後現場に救急車は、来た。しかし、被害者の身元や金を持っているかいないかなどがわからない場合は、放置してどこかへと消えてしまう。

ちなみに交通事故の死亡率は日本が0.5%に対して、カンボジアは50%を超えるという。スマートフォンで事故の現場を撮影していた目撃者はいた。だが、"いた"だけだった。

■治安の悪さは観光客にまで影響を
治安のよくないカンボジアのプノンペンでは、旅行客への恐喝が流行っている。たとえば、これは当地ではメジャーな乗り物である三輪タクシー・トゥクトゥクでの出来事だ。

カンボジアを訪れればトゥクトゥクに乗ることもあるだろう。
ドライバーたちは、みな陽気だ。彼らと接しているとあまり言葉が通じなくとも、思わず笑いがこぼれる。私たちを歓待してくれている、そう思ってしまってもおかしくはない。

そして、目的地付近へと近づくと、ドライバーはおもむろになにかしらの葉っぱが入った袋を渡し、金銭を要求してくることがある。袋の中身はマリファナだ。知ってかしらでか、はたまた外国にいるため高揚しているためだろうか、興味本位で買ってしまう人も中にはいる。

ここで買わなければどうということはないが、もし買ってしまうとどうなるか。ドライバー、もしくは目的地周辺に居た共犯者から、「マリファナを所持していることを警察に話すぞ」と、脅されるのだ。薬物はこの国では禁止されている。ほとんどの旅行客は恐喝者たちの脅しに屈し、口止め料を払ってしまう。

では、このようなトラブルが発生した場合どうすればいいのか。簡単な方法がひとつだけある。脅迫者たちに啖呵を切ればいい。

「確かに問題だ。だけど俺は金を持っている。お前がなにかしようとしたら全力で潰してやるからな。警察はどちらの味方をするのかな? そもそも警察は君の話を聞くのか?」

 脅迫者たちはスゴスゴと引き下がるだろう。この国では金を持つものが正義だ。貧困層よりも金を持つとみられる観光客の方が優遇される。旅行の際はくれぐれも気をつけていただきたい。

■金は命より価値を持つ...!
私は、カンボジアで金の力を使って生きる日本人と接することが多かった。この地に長く住む日本人たちの中には、培ってきた価値観がガラッと変わるものもいる。

「人を轢いたことがある」と笑いながら話す男性もそのひとりだ。

「混沌とした所では、人身事故はもうしょうがないことだよ。むしろ、あまりにちんたら走ったら普通にぶつけちゃいますし。ま、何かあればお金で解決できますからね」と明るく話す彼の車は傷跡だらけだ。

また彼はカンボジアでは殺人までもが日常的に行われているという。

「だいたい、金を持っている政府系の奴らだって、ちょっと気にくわないことがあればすぐ人を殺しているじゃない。最近だって、万引き犯が集団で暴行されて殺されるのを見たよ。窃盗を犯すやつは殺してもいいというのがカンボジア人のしきたりだしね。こんなのは日常ですよ。それなりの金を渡せば、人を銃で殺すこともできるし、戦車に乗ることもできる」

彼は、もしなにかしらトラブルが発生した場合も冷静になり、金を使いどう解決するかを考える事が大切だと、この地ならではの生き方を説く。

■希望と腐敗が表裏一体
カンボジアには、日本の北九州市下水道局が整備したため、水道水が飲めるエリアもある。また、食糧自給率は120%を越えている。カンボジアに必要なのは食糧や物資でもない、現金なのだ。

しかし、あらゆる国が援助をしていても、この腐敗しきった国では官僚のポケットマネーにされてしまう。また、カンボジア支援事業を行うNPOの一部では、募金活動の資金を一切渡さず、私腹を肥やす団体もあるという。

飯が食えないほどの貧乏ではないが、最悪の環境。それを、改善するためのすべての機能は腐敗している。

この絶望的な状況から希望を模索していくために、我々ができることはなんだろうか? 私は長くこの地に留まっているが、その手段を未だ見つけることができていない。願うならば、笑いながら人の生死を話す人間になる前に、何かしらの手段を講じたい。【12月1日 東海林裕士氏 TOCANA】
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上記リポートがカンボジア社会のすべてを表している訳ではなく、いいこと、悪いことを含めて、実際にはもっともっといろんな側面があると思います。

そのことを踏まえたうえで、ひとつの参考になるリポートかとは思います。
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