孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トルコとロシアの対立  圧力をかけ続けるロシア 謝罪を拒否するトルコ 改善の兆しは未だ見えず 

2015-12-26 23:27:41 | ロシア

(エルドアン政権との対話は行わないと強調するプーチン大統領 【12月18日 NHK】

執拗にトルコを威圧するロシア
11月24日にトルコとシリアの国境地帯でロシア軍機がトルコに撃墜された事件に対するプーチン大統領の怒りが収まらないようです。

11月28日にはプーチン大統領が対トルコ経済制裁を導入する大統領令に署名。ロシア国内におけるトルコ産品の輸入やトルコ企業の活動、ロシアからのトルコ観光などを大幅に制限するなど幅広い内容で、トルコに対し圧力をかけています。

ロシアは、シリアにおけるロシア軍の装備などをトルコを「威嚇」する形で強化しています。

****シリア空爆機に空対空ミサイル=撃墜でトルコ威嚇か―ロシア****
ロシア国営テレビは30日、シリア空爆に参加するロシア軍の戦闘爆撃機スホイ34に、空対空ミサイルが装備されたと伝えた。トルコによるロシア軍機撃墜を受け、空爆だけでなく空戦用に能力を広げてトルコを威嚇する狙いがありそうだ。

ロシアはシリア軍事介入に際し、過激派組織「イスラム国」掃討が目的だと説明している。しかし、同組織が空軍を持たないにもかかわらず、ロシア軍は空戦用の戦闘機スホイ30を運用。ロシア軍機撃墜後は、最新鋭地対空ミサイル「S400」も展開した。プーチン大統領は、トルコの「敵対行為」を理由に挙げ、反撃を警告している。 【12月1日 時事】
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ロシア側は、領空侵犯の事実の有無に加え、トルコがISと石油取引を行っており、それを隠すためのロシア機撃墜だったと非難しています。

プーチン大統領は3日の年次教書演説で、トルコ政府を「テロリストを支援している」と改めて激しく非難しています。

****露大統領、トルコは「撃墜を後悔し続ける****
ロシアの戦闘機がシリア国境付近でトルコ軍に撃墜された問題で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は3日、トルコ政権は撃墜を後悔することになるだろうと述べた。
一方のトルコ政府は、撃墜で死亡した露軍操縦士への哀悼の意を示した。

プーチン大統領は定例の年次教書演説で、「わが国の国民の殺害という凶悪な戦争犯罪を起こしておきながら、トマト(の禁輸措置)や建設などの分野の制限ですむと思うなら、大間違いだ」「われわれは、相手に自分たちが何をしたのかを常に思い知らせる。彼らは、自分たちの行為を後悔し続ける」と述べた。

ロシア政府はこの演説から間もなく、トルコと続けていた天然ガスパイプライン建設計画の協議を打ち切ると発表した。

同日にはトルコのメブリュト・チャブシオール外相とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、セルビアの首都ベオグラードで会談。撃墜問題の発生以降、初めて両国の閣僚レベルでの会談が実現した。

チャブシオール外相は会談後、死亡したロシア人操縦士に対して哀悼の意を表明。しかしロシア側が求めていた謝罪声明はなく、ラブロフ氏との40分に及ぶ会談でも事態の突破口は開けなかったと認めた。

ロシアは、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領とその家族が、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」との違法な石油取引に関与していると非難しているが、エルドアン大統領は3日、これを真っ向から否定。ISと石油取引をしているのはロシアの方で、その証拠も入手していると反論した。【12月4日 AFP】
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ロシアの強固な姿勢の背景には、NATO加盟国ながら国境管理に問題があるトルコを揺さぶることで、シリアにおけるロシアの立場を有利にしたいとの思惑も指摘されています。

****<露軍機撃墜>ロシアの狙い・・・課題抱えるトルコが米側弱点****
トルコによるロシア軍機撃墜を受けた両国の対立は、長期化の様相を呈している。ロシアは今回の事件をシリア問題における自国の立場の強化や米欧を揺さぶるための「カード」として、最大限活用する狙いとみられる。(中略)

ロシアがトルコを執拗(しつよう)に威圧する背景には、トルコがシリア領空爆で米国主導の有志国連合に加わり、北大西洋条約機構(NATO)の一員という点がある。

ロシアはシリア問題を巡り、国境管理などで課題を抱えるトルコが米側陣営の「弱点」になっていると判断した模様だ。

ロシアにとってシリアのアサド政権は中東で影響力を発揮するための重要な足場であり、シリア情勢打開へ向けた政治プロセスで自国の発言力を高めることを外交目標とする。

トルコとの対立は、アサド大統領退陣を求める米欧をけん制する手段となっている。

ロシア科学アカデミーのアラブ専門家、クズネツォフ氏はプーチン政権のシリア戦略について、「内戦の解決に成功し、自国の影響下にある政権を構築できれば、ロシアは中東の『調整者』になりうる。欧州は対露関係改善を迫られるだろう」と分析する。【12月4日 毎日】
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その後もロシアの強硬姿勢は変わっていません。

****ロシア軍への脅威「せん滅」=トルコけん制―プーチン氏****
ロシアのプーチン大統領は11日、国防省で演説し、トルコ・シリア国境でのトルコによるロシア軍機撃墜を念頭に「再び挑発しようとする者に警告したい。ロシア軍の部隊や基地を脅かす者はせん滅する」と述べた。

ロシア国営テレビが伝えた。ロシアが求める謝罪を拒否するトルコを、強くけん制した格好だ。【12月11日 時事】 
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****ロシア艦、トルコ漁船に警告射撃=エーゲ海で接近は「挑発****
エーゲ海の公海上で13日、ロシア黒海艦隊の警備艦「スメトリブイ」が、接近してきたトルコの漁船に警告射撃した。人的被害の情報はないが、ロシア国防省は「トルコによる挑発行為」と非難した。(後略)【12月14日 時事】 
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トルコ側が求めた首脳会談も、「謝罪」を前提とするロシアが拒否したようです。

****ロシア・トルコ首脳会談が中止に 関係改善遠のく****
15日に予定されていたロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領による首脳会談の中止が決まった。ロシアのペスコフ大統領報道官が14日、明らかにした。両国の関係改善は当面望めない状況だ。

タス通信によるとペスコフ氏は、ロシアのサンクトペテルブルクで予定されていた首脳会談について「行われない」と述べた。トルコ軍機によるロシア軍機撃墜後、エルドアン氏はプーチン氏との会談を申し入れていた。トルコにまず謝罪するよう求めているロシア側が蹴ったとみられる。【12月14日 朝日】
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トルコ国内外で揺さぶりをかけるロシア
プーチン大統領は17日の会見でも、撃墜への謝罪を拒否するエルドアン政権との対話は行わない考えを改めて強調しました。

****プーチン大統領“トルコと対話行わない****
ロシアのプーチン大統領は年末恒例の大規模な記者会見を開き、ロシア軍の爆撃機の撃墜を受けて緊張が続くトルコとの関係について、エルドアン政権との対話は行わないと強調し、トルコに対する経済制裁を拡大する可能性も示唆しました。(中略)

この中で、緊張が続くトルコとの今後の関係について、「政府間のレベルでトルコの指導部との関係を立て直す見通しはない」と述べ、撃墜への謝罪を拒否するエルドアン政権との対話は行わない考えを強調しました。

さらに、トルコとの人的な交流は続けるべきだとしながらも、「経済分野で一定の制限を行う必要に迫られている」として、トルコに対する経済制裁を拡大する可能性も示唆しました。

一方、ロシアがトルコ南部で進める原子力発電所の建設計画については、「ロシアの原子力公社とトルコのパートナーの企業どうしの問題だ。ロシアの経済的な利益を損なう措置は取っていない」と述べ、ロシア側が一方的に計画を破棄することはないとしています。

また、ロシアからトルコ経由でヨーロッパ南部にガスパイプラインを建設する計画についても、EU=ヨーロッパ連合が支持すれば進めるとしており、巨大プロジェクトに関しては当面、状況を見守る姿勢を示しました。【12月18日 NHK】
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このエルドアン政権との対話は行わない姿勢は、“事態収拾にはエルドアン大統領の退陣が必要との考えを示唆した発言だ。”【12月18日 朝日】とも。

そこまで言うと、当分の間は関係改善は望めない話にもなりますが、現実にはどこかで手打ちがなされるのでしょう。

ロシアはトルコ国内のクルド系野党勢力にも接近し、エルドアン政権を揺さぶる構えです。

****ロシア外相がトルコ野党党首と会談****
ロシアのラブロフ外相はトルコの野党党首と会談し、ロシアの爆撃機がトルコ軍に撃墜されたことを巡って対立を深めるエルドアン政権に圧力をかけるねらいがあるものとみられます。

ロシアのラブロフ外相は23日、モスクワを訪れたトルコの野党でクルド系政党のデミルタシュ党首と会談し、ロシアとトルコの2国間関係について意見を交わしました。

会談の冒頭、ラブロフ外相は「今のトルコの指導部がロシアの爆撃機に対して取った行動に対するロシアの対応は、すべてのトルコ国民に向けられているわけではない」などと述べ、農産物の輸入禁止などの制裁はあくまでもエルドアン政権に向けられたものだと強調しました。

これに対し、デミルタシュ党首は「われわれは、爆撃機が撃墜されたときのトルコ政府の対応を批判した。国家間の問題は起こりうるが、われわれは対話のドアを常に開き、民主的な手段で解決に努めるべきだ」と応じました。

シリアとトルコの国境付近で先月、ロシア軍の爆撃機が撃墜されたことを巡って、プーチン政権とエルドアン政権は対立を深めていて、今月15日に予定されていた首脳会談もキャンセルされました。

ロシアとしては、トルコ政府に長年反発してきたクルド人を支持基盤とする野党と関係を深めることで、エルドアン政権に圧力をかけるねらいがあるものとみられます。【12月24日 NHK】
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また、虐殺問題やアゼルバイジャンとの領土問題などでトルコと対立関係にあるアルメニアとの軍事関係を強化する形で、トルコ包囲網を強化しています。

****ロシアとアルメニア、カフカスにおけるMDシステムを統合****
ロシア国防省のショイグ大臣は水曜、モスクワで、アルメニアのオガニャン国防相と、カフカスの集団安全保障地帯に統一地域MDシステムを創設することに関する合意に調印した。(中略)

現時点でロシアはキルギスとタジキスタンとも統一地域MDシステムの創設を図っている。カザフスタンとは2013年に調印がなされており、ベラルーシとは既にロシアのMDシステムは統合されている。

CIS諸国国防大臣会議では、地域原則に基づくCIS諸国の対空防衛力統合はCISの統合MDシステムの発展における最重要の方向性である。【12月23日 SPUTNIK】
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ロシアが鳴り物入りで始めたブラックボックス解析は・・・・
一方、撃墜事件の真相を明らかにするうえで重要となるブラックボックス調査作業をTV中継して、透明性をアピールしていましたが・・・・。

****ブラックボックス解析不可能=トルコによる撃墜機―ロシア****
トルコとシリアの国境地帯で11月、ロシア軍機がトルコに撃墜された事件で、ロシア国防省当局者は21日、解析を試みたブラックボックスの内部が損傷しており「データ復旧は不可能だ」と説明した。タス通信が伝えた。

撃墜をめぐり、トルコはロシア軍機の領空侵犯を主張する一方、ロシアはシリア領空を飛行していたと反論している。ロシアは18日、ブラックボックスの解析に着手。透明性をアピールするため国営テレビで作業を一部生中継した。【12月22日 時事】 
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TV中継を観て、ロシアは記録内容に自信があるのだろうかと訝しく思っていたのですが。
内部損傷云々は本当だろうか・・・・あるいは、結果がわかっていての演出だったのか・・・・という感もありますが、下衆の勘繰りでしょうか。

“下衆の勘繰り”ということでは、トルコ・エルドアン大統領の“美談”も。

****トルコ大統領、一般男性の飛び降り自殺を阻止****
トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領が25日、同国イスタンブールのボスポラス橋から飛び降りようとしていた男性に対して弁舌を振るって説得し、自殺を思いとどまった男性と握手を交わす出来事があった。

男性は、金曜日の礼拝を終えたエルドアン大統領が欧州とアジアをつなぐ同橋を車で通り掛かったときにちょうど自殺しようとしていたとみられている。

通信社ドーガンによれば、男性は家庭の問題で以前から抑うつ状態にあったという。ボスポラス海峡に架かるボスポラス橋は高さ64メートルで、自殺が多い。【12月26日 AFP】
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動画を見たところ、あきらかに上記記事と異なるのは、自殺しようとしている男性を実際に説得しているの大統領ではなく、シークレットサービスの男性です。

自殺を思いとどまった男性は車中で待つエルドアン大統領のもと連れていかれますが、大統領はこの間スマホで電話中。自殺未遂原因となったトラブルの関係者へ「善処するように」との指示を行っているのでしょうか。

暗殺を恐れて毒見までさせているというエルドアン大統領ですが、こんな不審者を近づけていいのでしょうか?
あまりのタイミングに、当然に「ヤラセ」ではないか・・・との声は多々ありますが、まあ「ヤラセ」ならもっと上手に演出するのでは・・・という感もあり、真相はわかりません。

トルコは、ロシアに代わる新たなエネルギーの調達先としてイスラエルに接近
閑話休題
ロシア・トルコの対立ですが、トルコはロシアへの謝罪を拒否する一方で、2010年のイスラエル軍によるトルコのガザ支援船襲撃事件を受けて関係が悪化したイスラエルとの関係修復を進めています。

****トルコ ロシア関係悪化でイスラエル接近か****
爆撃機の撃墜以降、トルコとロシアの関係が悪化するなか、トルコとイスラエルが関係の修復に向けた秘密交渉を行っていると伝えられ、トルコがロシアに代わるエネルギーの調達先として、イスラエルへの接近を図っているものとみられています。

トルコとイスラエルは2010年、パレスチナ暫定自治区のガザ地区に支援物資を届けようとした市民団体の船がイスラエル軍に拿捕(だほ)され、銃撃でトルコ人9人が死亡したことをきっかけに、事実上の外交断絶の状態が続いてきました。こうしたなか、両国のメディアは、双方が関係の修復に向けてスイスで秘密交渉を行い、条件を確認したと伝えました。

具体的には、イスラエルが遺族への補償のための基金を立ち上げること、トルコがこの件に関する申し立てを取り下げ、イスラム原理主義組織ハマスへの支援をやめることなどが条件になっているということです。

そのうえで、両国は、イスラエル沖からトルコに天然ガスを供給するパイプラインの建設に向けた協議を始めるとしています。

22日には、トルコがイスラエルの要求に応える形で、ハマスの幹部を国外に事実上、追放しました。

両国の接近は、トルコ軍によるロシア機の撃墜以降、トルコとロシアの関係が悪化するなか、ロシアに代わる新たなエネルギーの調達先を確保したいトルコと、地域大国であるトルコと良好な関係を築いて自国の安全保障を強固にしたいイスラエルとの間で思惑が一致したことによるものとみられています。【12月23日 NHK】
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未だ「落としどころは」は見えず
今後、ロシアとトルコの対立がエスカレートした場合、あくまでも可能性の話としては、黒海と地中海をつなぐボスポラス海峡をトルコが封鎖することで、シリアへの艦船からの攻撃だけでなく、シリアに展開するロシア軍やシリア軍が日々必要とする厖大な武器・弾薬等の補給を担っているロシア海軍黒海艦隊の動きを封じるというオプションもあります。

しかし、現実的な問題としては、そこまでいけば「戦争」を覚悟したものになり、いかに強気のプーチン・エルドアン両大統領もそれは考えていないでしょう。

先述のように、どこかで手打ちがなされるのでしょうが、今のところその「落としどころ」は見えていません。
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