孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

混迷を続ける中部アフリカ諸国・・・・中央アフリカ、コンゴ、ブルンジ

2015-12-18 22:21:18 | アフリカ

(11月30日、中央アフリカ・バンギのイスラム教徒の住む地区を訪れ、人々に手を振るローマ法王フランシスコ(AP)【11月30日 産経フォト】)

中央アフリカ:忘れ去られた人道危機
フランス・パリやアメリカで十数人が殺害されれば大ニュースとなって連日取り上げられ、国際的な関心が寄せられますが、ベイルートのテロやシリアの戦乱で数十人が死亡しても、たいしたニュースともなりません。

ましてや、アフリカの奥地で内戦が起きようが、数百・数千人が殺害、あるいは飢えで死のうが、世界からは殆ど関心を払われることもない・・・というのが日本や欧米世界の現実です。

そんなアフリカ奥地の話題。

文字通りアフリカ大陸中部に位置する中央アフリカでは、一昨年来、イスラム武装武装勢力と政府軍の戦闘、キリスト教系大統領の追放、旧宗主国フランス軍の介入、キリスト教系女性大統領の誕生、キリスト教民兵による報復・・・といった内戦による混乱が続いていますが、一応、昨年7月に戦闘を続けていたイスラム教徒とキリスト教徒の武装勢力が停戦に合意した形にはなっています。

少年兵の解放などについても、2015年5月7日ブログ「中央アフリカ 忘れ去られた人道危機 ようやく少年兵解放の動き」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150507で取り上げました。

しかし、混乱は未だ収まっていないようです。

****<中央アフリカ>イスラム系の武装勢力が自治政府樹立宣言****
キリスト教徒とイスラム教徒の対立が続くアフリカ中部・中央アフリカ共和国で、イスラム教徒主体の武装勢力が15日までに、北部カガ・バンドロを拠点とする自治政府樹立を一方的に宣言、分離独立を目指す意向を明らかにした。

中央の暫定政府は宣言に猛反発して国際社会の介入による独立阻止を訴えており、混乱が広がる恐れもある。

ロイター通信によると、武装勢力幹部は「まず望むのは自治だ。その後、独立を検討する。イスラム教徒は無視され、北部は中央政府から見捨てられてきた」と述べた。

中央アフリカはキリスト教徒が全体の約5割で多数派を形成し、イスラム教徒は北部を中心に約15%を占める。

イスラム教徒主体の武装勢力セレカが2013年3月に首都バンギを攻略し、当時のボジゼ大統領が国外に脱出。その後、セレカが支配を強めたが、ボジゼ政権を支えたキリスト教徒側も武装して抗戦。

両教徒の宗教対立に発展し、衝突が全土に拡大した。この結果、人口の約2割が難民・避難民となり、深刻な人道危機が起きた。

今回独立の意向を表明したのは、セレカ系の組織。暫定政府は今月27日に大統領選などを実施して、政情安定化の道筋をつけたい意向だが、セレカ側がこれに反旗を翻した形だ。

暫定政府だけでなく、同国に展開する国連PKOも国家分断の動きを強く非難しており、緊張が高まりそうだ。【12月16日 毎日】
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イスラム教徒とキリスト教徒の武装勢力の対立・抗争については、宗教ではなくもっと何か深いものに根差しているとの指摘も。

****中央アフリカの戦闘は宗教紛争か、深層に民族対立 悪政 嫉妬****
今回の紛争は2013年3月、主にイスラム教徒からなる武装勢力連合「セレカ」が首都バンギを制圧し、フランソワ・ボジゼ大統領(当時)を失脚させたことが始まりだ。

これに対し、キリスト教徒を中心としたボジゼ氏支持派の「反バラカ」と呼ばれる民兵組織が台頭し、イスラム教徒に復讐。以降、双方が虐殺、レイプ、略奪と血みどろの報復合戦を繰り広げた。

セレカはおおむね中央アフリカの北部と東部の出身者と、隣国のスーダンとチャドからやって来た主にイスラム教徒の戦闘員から構成されている。

一方の反バラカは、主にボジゼ氏の出身部族で、中央アフリカの中部と南部出身のムバヤ人から構成されている。

しかしセレカ、反バラカのいずれも、お守りや魔除けを使うなど精霊信仰が強く、専門家たちはお互いの憎悪は宗教ではなくもっと何か深いものに根差していると考えている。(後略)【2014年7月29日 AFP】
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“お互いの憎悪は宗教ではなくもっと何か深いものに根差している”・・・・それが何かはさだかではありませんが、汚職・腐敗が蔓延する政治、民主主義・人権に関する理解が未だ定着していない社会・政治、経済成長の果実が一部の者に独占され、多くの人々が貧困と失業に苦しんでいる経済格差・・・そうした状況での人々の不満がはけ口としての憎しみの対象を求め、ストレートな暴力となってぶつけられているように思われます。

中央アフリカについてメディアで取り上げられる機会は少なく、前回5月7日ブログ以降では、6月に和平維持にあたるフランス軍の現地子供への性的暴力(食料を与える見返りに性行為を強要)が報じられていました。

そして10月には、イスラム教徒からなる武装勢力連合「セレカ」とキリスト教徒を中心とした「反バラカ」と呼ばれる民兵組織の抗争が報じられています。

****<中央アフリカ>宗教間対立激化 衝突で42人死亡****
キリスト、イスラム両教徒の対立が小康状態となっていたアフリカ中部・中央アフリカ共和国で再び衝突が起こり、AP通信によると9月下旬からの死者数が少なくとも42人に上った。混乱を受け、10月18日に予定されていた選挙は延期となった。

9月26日に首都バンギで、殺害されたとみられるイスラム教徒の男性1人の遺体が発見された。これをきっかけに、両教徒の武装グループが互いに相手を襲撃する報復合戦になった模様だ。

治安が悪化する中、28日にはバンギ市内の刑務所から500人以上の受刑囚が脱走する事件も起きた。AP通信によると、脱走者には両教徒の民兵組織の幹部約60人が含まれており、さらなる事態悪化につながりかねない。

ロイター通信によると、29日には同国に展開する国連平和維持部隊とキリスト教徒の民兵組織との間で戦闘があった。(後略)【10月4日 毎日】
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こうした状況を懸念したローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は11月29日に中央アフリカを訪問し、宗教間衝突の当事者らに対し武器を置くよう求めました。

****武器を捨てよ」 ローマ法王、宗教対立続く中央アフリカで訴え****
アフリカ3か国を歴訪中のローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は29日、最後の訪問国である中央アフリカを訪れ、同国で続く宗教間衝突の当事者らに対し武器を置くよう求める平和のメッセージを発信した。

ウガンダから到着した法王は、首都バンギの大統領府までの短距離を専用車「パパモビル」で移動。子どもや若者など大勢の群集から熱狂的な歓迎を受けた。

大統領府では、カトリーヌ・サンバパンザ暫定大統領と会見。同暫定大統領は、同国を破壊した宗教間抗争という「悪」に対する許しを求めた。

法王はその後、バンギ大聖堂で執り行ったミサで、許しと和解に捧げられる「いつくしみの特別聖年」の始まりを象徴する「聖なる扉」を開いた。

特別聖年は12月8日に正式に開始されるが、「聖なる扉」の開放は象徴的な始まりを意味する。「聖なる扉」の開放は従来、バチカンもしくはイタリア・ローマの教会本部でのみ行われてきた。

ミサで法王はさらに、「現世の武器を不正に使う全ての者に訴える。こうした死の道具を捨てよ」と呼びかけた。

同国の人口の3分の1を超える170万人のカトリック教徒が暮らす中央アフリカは2年以上前、長期にわたり政権を担ってきたキリスト教徒のフランソワ・ボジゼ大統領が、イスラム教徒を主体とする反政府勢力「セレカ」に追放されたことがきっかけとなり、1960年の独立以来最悪の危機に突入した。

それ以来、旧フランス植民地の同国では、元セレカ構成員とキリスト教系民兵組織「反バラカ」との衝突が続いている。【11月30日 AFP】
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冒頭の「イスラム系の武装勢力が自治政府樹立宣言」というニュースからすると、法王の願いはしばらくは実現しないようです。

コンゴ:地域社会を破壊する『兵器』としてレイプ
中央アフリカ共和国の南に位置するのがコンゴ民主共和国(旧ザイール)。

コンゴも、特に東部では民族対立や地下資源をめぐる武装勢力の衝突で、多くの武装組織が跋扈する極めて不安定な状況が続いていおり、「失敗国家」「破綻国家」の代表例として挙げられることも多い国です。
地域社会を破壊する『兵器』としてレイプ・性暴力が横行していることで取り上げられることも。

****無差別性暴力、内戦の闇 コンゴ民主共和国、救済進まず****
内戦状態が続くアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)。紛争下で、多くの女性たちが無差別的なレイプを受け続けている。救済に取り組む現場の医師たちは、国際社会がもっと被害に目を向けるべきだと訴えている。

 ■連れ去られ、幼児までも
午前7時、東部ブカブ近郊のパンジ病院。鉄製の柵で守られた病院の中庭に、民族衣装の女性たちが集まってきた。太鼓のリズムに合わせて、スワヒリ語の聖歌を歌う。ほぼ全員がレイプの被害者だ。

病院では内戦が始まった1998年から、兵士らに性暴力を受けた女性たちを受け入れてきた。その数は計約3万人に上る。

被害女性の多くは、けがをしているだけでなく、家族の面前でレイプされ、精神的な傷を負っている。
そのため、病院では運び込まれてもすぐに手術をせず、まずは何が起きたのかを理解させる。多くは自暴自棄になっており、手術をしても、食事を取らなかったり、薬を飲まなかったりするからだ。産婦人科医は「元通りの暮らしに戻れるまでには、少なくとも1年かかる」と話す。

院内のケア施設では約200人の女性が暮らす。30代の女性が「事実を知ってほしい」と取材に応じた。

99年、教会で礼拝中に武装集団に囲まれ、2人の女性とともに森に連れ去られてレイプされた。翌日、女性2人は逃げようとしたが見つかり、灯油の入ったバケツを頭に担がされ、火をつけられて亡くなった。

その後、自身は武装集団の部隊長の「妻」にさせられ、森で暮らした。レイプは続き、3人の子どもを産んだ。4年たったある日、部隊長に「なぜ言うことを聞かないんだ」と銃剣でのどを刺された。数週間後、兵士らが出かけた隙に子ども3人を連れて逃げた。
 
「今の不安は子どもたちのこと。父親が戦場のレイプ魔だったと知ったら、どんなに悲しむか」
 
子どもの被害も少なくない。ブカブ北方の村で母親(33)の足にまとわりついていた少女(3歳10カ月)も、その一人だという。
 
母親によると、2014年9月上旬、少女を置いて外出している間に武装集団が侵入し、少女を襲った。村ではその日、18歳までの計20人がレイプされたという。母親は「毎日おびえている。逃げたいが、避難場所が見つからない」。
 
病院の運営担当者は「病院でケアを受けている200人のうち、25人は10歳未満の子どもだ」と話した。

 ■「影響、何世代も続く」治療するムクウェゲ医師
パンジ病院の設立者、ドニ・ムクウェゲ医師(60)は・・・・「この国の内戦は、資源の支配権をめぐる経済戦争だ」とも指摘する。

市民を殺し、レイプする武装勢力の支配地域は、世界中でつくる精密機器に欠かせないレアメタルの産地でもある。「経済的な利益の裏には、人生を破壊されている多くの女性がいることを知り、少しでも救済に手を貸してほしい」

 ■「年40万人以上」報告も 2006~07年
同国では13年末、政府軍と反政府勢力「M23」が和平協定を結んだが、東部を中心に内戦状態が続く。

昨年9月の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告書によると、東部では昨年初めの時点で54の武装集団が活動。武装集団だけでなく、政府側の治安部隊の隊員らも女性をレイプしており、「薪集めやトイレの使用ですら安全に行えない状況」だ。

レイプの被害者については、内戦状態で調査が難しく、大多数の被害者が名乗り出ないため、数を特定するのは難しい。

AFP通信によると、米国の公衆衛生専門家が11年に米学術誌に発表した報告では、06~07年の1年間でレイプされた15~49歳の女性は40万人以上。パンジ病院の関係者は「実際の数はだれにもわからない」と話す。【11月19日 朝日】
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ブルンジ:内戦の瀬戸際
荒れるコンゴ民主共和国東部に接する小国ブルンジもまた、今年7月に憲法規定の独自解釈で3選を決めたヌクルンジザ大統領の去就を巡り、当局と反大統領派の市民が衝突を繰り返し、不穏な情勢となっています。

そうした危機に、アメリカ・オバマ大統領が「深い懸念」を表明、国連安保理も国連事務総長に対応策を早急に求める決議を行ったことは、11月13日ブログ「アフリカ中部ブルンジ 隣国ルワンダで起きた大虐殺を想起させる表現で反対派弾圧を示唆」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151113でも取り上げました。

****首都の軍事施設襲撃で87人死亡、ブルンジ****
アフリカ中部ブルンジの軍当局は12日、同国首都ブジュンブラで11日に発生した武装集団と治安部隊の衝突により、79人の「敵」と8人の兵士が死亡したと発表した。

過去数か月にわたり政情不安が続く中、最多の死者が出たことが明らかになった。同市の路上には遺体が散らばり、その多くは銃で撃たれているという。

衝突は、身元不明の武装集団が同国の軍事施設3か所を襲撃したことから始まり、治安部隊が反撃。

目撃者数人の証言によると、警察と軍はブジュンブラ市内の反体制派の拠点をしらみつぶしに捜索し、複数の若者を屋外に引きずり出して殺害したという。

同国軍の報道官は、「11日の襲撃で79人の敵が殺害され、45人が拘束され、武器97個が押収された。政府側では、8人の兵士が死亡し、21人が負傷した」と述べた。【12月13日 AFP】
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****ブルンジは内戦の危機=国連弁務官****
ザイド・フセイン国連人権高等弁務官は17日、国連人権理事会で演説し、大統領派と反大統領派の衝突が激化しているアフリカ中部ブルンジ情勢について「内戦の瀬戸際にある」と危機感を表明した。【12月18日 時事】
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ブルンジは、隣国ルワンダ同様にツチ・フツの抗争による虐殺を経験しているだけに、内戦の混乱が再びそうしたジェノサイドに至る危険もあります。

いつも言うように、アフリカをこうした内戦や混乱、貧困と飢餓などの側面からのみ見ることは誤りで、アフリカは世界でも最も急速に経済成長している地域でもあります。

しかしながら、中央アフリカ、コンゴ、ルワンダ、あるいはソマリア、ナイジェリアのイスラム過激派などに見られるような「むきだしの暴力」が横行する地域が多いのも事実です。

旧植民地支配による社会の歪み、独立後の政権に蔓延する腐敗・汚職・人権軽視、豊富な資源を巡る利権争い、成長の恩恵を受けることなく貧困に捨て置かれた人々・・・そうした状況に民族・宗教の対立なども加わっての混乱と言えます。

ただ祈るだけでは「いつくしみの特別聖年」は訪れません。「忘れ去られた人道危機」とならないように国際社会が関心を向けて、対策を講じていく必要があります。
国際的な介入では根本的な問題は解決しないのも事実でしょうが、混乱を座視することもできません。
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